2005年09月16日

第8回「明日のために」

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おさむ「んだ。じゃ明日日曜だからアッコの家行ってピアノ運ぼうぜ。」
アッコ「運ぼうぜってどこによ。」
ケン「ここここ。ここに決まってます。」
アッコ「馬鹿言わないでよ。親がそんなこと許すわけないじゃん。それに持ってきちゃったら私の練習はどうすればいいの。」
ケン「うーん。そういやあそうだな。そうだ。ショータ、お前ピアノ買え!!」
「買えって。わん。いくらなんでもそれは無理でござんすう。」
バコ。
おさむ「何見栄切ってるんだよ。駄目なくせに。」
「すまないでござんすう。」

そこへ奥から桃屋のマスター、シローが久し振りに登場。
「みなさん、久し振り元気です。」と画面に向かって挨拶。
おさむ「おじさんどこに挨拶してんの?」
「ははは。気にしないで。それはそーと、何もめてんの?さっきから。」
ケン「はい。今度アッコがピアノを弾くことになりました。」
「おー、そうか。それはめでたい。良かったじゃないかアッコ。けっこう弾けるよこの子は。
で、何が問題なんだそれが。いいことじゃないか。」
アッコ「まあ、それはしょうがないんだけど、ピアノをどう調達するかってことになって。」

そこへカウンターで夕方から酒飲んでたヤクザのあにい、ジャックが口出し、
「なるほど。そりゃ大変だ。腐ってもピアノだ。けっこう値も張るしな。おい、お前どっかあてないか」
子分ヤマモトがセッド。
「いやだなあ。兄貴。俺がそんなものに縁があるわけがないじゃないですか。それより兄貴こんなとこで油売ってるとまた大親分に嫌味言われますよ。早く取り立てにいかないと。」おろおろ。
「バカヤロ。俺は取立てが嫌いなの。悪役みたいじゃんか。かわいいんだから実は俺。」
そこへ臨席で同じく油売ってた同じくヤクザのオサムちゃんが
「あのお、ヤノピですかあ。よかったら昔世話になった渡辺プロに聞いてみてやってもいいんすけどう。ショーケンとか。」
アキラ登場。
「あにきいいいい。そんな見栄張ってえええええ。もうすっかり足洗ってオサムちゃんじゃないのう。駄目だよきっとおおお」
「っ前がじゃはうあじゃはじゃふきゃじゅしゅがあ。」
興奮するとオサムちゃん、何言ってるかわかりません。
「いつもこうなんですう。兄貴わあ。」

なんて大騒ぎ。してますと。マスターのシローちゃん肩を揺らして笑っております。
「くっくっくっく。」
ジャック「マスター、何笑ってんのよ。みんなでこんなに考えてんじゃない。何よ。失礼しちゃうなあ。」

シロー「いや何。嬉しいんですよ。嬉しいんですが、ピアノはですね・・・・」
と指をステージの奥のカバーかかってるモノに。
「あるんですもう。」「え」「あるんですよあそこに。」
「いや例の植木が実はペットの他にピアノも弾きましてそれで持ってきたとゆう訳で。」

ケン「わ、ラッキイ!。使わしてもらえるよう頼んでもらえますか?」
「ああ、もちろん。と言うより勝手に使ったっていいんだから。」
おさむ「ありがとうございます。これでピアノの件は解決。アッコ頼むぜ。練習せいよ。」
「練習せいよって、どれやるの。」
ケン「あ、まずは今かけたロックンロール黄金時代を。みんないいよな。」
「はーい」
「テープ作んなきゃ。どうしようか。家帰って作ってこようか。」
シロー「あ、レコードをカセットに録るの?それもここで出来るよ。」
「えっ!ほんとですか。ここ凄いことになってきましたねぇ。」
「あ、いや、夜のセッション見に来てくれてるお客さんの中にオーディオ・マニアの人がいてね、どうしても演奏録音したいってオープンリールとカセットのデッキを持ってきたんだ。自由に使ってくださいって言ってたよ。テープも箱ごとあるからそれ使いなさい」
「ああ、天国だ。ありがとうございます。お言葉に甘えます。」

ガサガサガサ。

ケン「さ、テープ出来たぞ。今日はこれで解散してみな家でコピーしてくるように。」
ショータ「俺、モット他の曲も聴きたいなあ。先輩レコード貸してください。」
おさむ「馬鹿、俺が先だ。」
イットク「あ、わてもわても」
「待ってくれー。俺だってまだ全部聴いて無いんだから。今度みんなに廻すから。」

おさむ「それはそうと他の曲も決めなきゃいけないな。あと4曲くらい全部新曲でやるんだろう。」
ケン「うん、そうだな。俺も明日レコード屋行って他にも探してみるけど。各人どうしてもやりたいってのがあったら今のうちに決めて言ってくるように。」
ショータ「え、俺らの希望も聞いてくれるんですか?」
ケン「それは曲にもよるけど。グッドなやつで全員賛成すればよろしい。」
イットク「うわ楽しみでんなあ。帰ったら色々考えよ。」

ケン「うん。まあまずは新体制での音合わせだ。みんな黄金時代しっかり練習せい。では解散。」
おさむ「その前にシロー大明神に全員で敬礼!」
「ありがとうございましたー」

シロー「いや、いいんだいいんだ。それより君たちはオリジナルそろそろやらないのかい?」
「オリジナルー?」


「オリジナルってたってなあ。考えもしてなかったからなあ。だいたい作曲なんて小学校の音楽以来やってないよ。ぶつぶつ。」
翌日、昼過ぎ横浜西口のレコード店に向かうケン、オリジナル問題に頭を痛めている。
「やりたいのはやまやまなんだけど。ぶつぶつ。」
レコード屋はオカダ屋とゆうデパートの7Fにあるスミ屋、一番大きい輸入盤売り場がある店だ。輸入盤LPにはカット盤とゆうのがあってアメリカでは売れ残りのレコードのジャケットの端を切ったり穴を明けたりして現品処分したりする、それが大量に置いてあって値段が980円、金の無いケンにはとても重宝するものであった。

「ま、いっか。とりあえずコピイコピイ。何かいいレコ無いかなあ。」

パタパタパタパタ、ぱたぱたぱたぱた

もうかなり慣れちゃって忍法高速LPめくりの技、毎秒5枚はいってるな。

ぴた。

「おおお、何だこれはフェイセズだ。こんなんカット盤にあるんだ。もうけー!。」

ぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱ

ぴた。

「うわ、こ、これわ。スレイド。あの噂に聞く。すれいどがあった。うーん2枚。予算的にはつらいけどなあ。この2バンドならやれるよなあ。買うかこのー。」

「よしじゃこれにしよう。」独り言連発で気持ち悪い男になってしもたケン、レジに向かおうとすると反対側ヘビメタ・コーナーにたたづむ、いやレコードめくってるオナゴが一人。どっかで見たような気がすると近づくと。

「あ、君!!もしかしてブギブラザースのヴォーカルの人?そうだよね。」
「え、あ、はい、そうですけど。もしかして君は。」
そのオナゴ、例の凶悪悪役ヘビメタ・バンド、コアラのマーチのボーカルの人であった。みるみるうちに顔が赤くなるケン。
「あのヘビメタバンドの子?」
「ええええそう。あ、ちゃんと話すのははじめてね。私モンキッキじゅん子と言います。この前はメンバーが迷惑かけちゃって
ごめんね。」
「あ、いや、えーとボクはケンと言います。いえあのいいんだ。あれはその事故だから。」
「あー良かったあ。怒ってるんじゃないかと心配してんだ。ところで君たちもちろん予選通過したよね?」
「あ、ええ、はい。何とか。」
「そうかー。うまかったからあとの一つはきっと君たちじゃないかって話してたんだ。」
「とすると君たちも。」
「やだーもちろんじゃない。私がなんてったってボーカルなのよー。あれぐらいで落ちるわけが無いわ。おーほほほほほほ。」
「あ、うん、そうだよね。うまかったし。」
「何言ってんのよ。あんただって相当うまかったわよ。ギターも歌も。あ、そうだ今度うちらの練習に遊びに来ない?もちろんギター持ってね。毎週土日火木の5時から2時間、ヤマキワでやってるから。いつでもいいから来てよ。」
「いやでもみなさんに迷惑では。」
「そーんなこと無いって。みんなももう一回会ってみたいって言ってたよ。じゃあ約束ね。きてね。じゃあ。」
「あ、その、そのレコードの清算。」
「わははははいいっていいって。おーほほほほほ」
レコード一枚持ったまま行ってしまいましたモンキッキじゅん子さん。

「あー、びっくりしたなあ。おおおまだドキドキしてるよ。しかしなあきれーだなあ。」

ポン。後ろから肩を叩かれる。

「ぎゃ」
「何がぎゃだ。何ボケーっと見てるんだよ。」
「あ、お、おさむ。いや何でもない。ないっすよ。」
「ないっすよって、ありありだけど。」
「いや。ところで何だお前は。こんなところで。」
「あの俺だってレコード買いにくるんだけど。」
「ははは、そうだな。でお前何買った?」
「買ったって今来たばかりやんけ。お前は何を。あースレイドとフェイセズだ。てめー先にいいの買いやがって。」
「ははは。いいだろいいだろ。すれいど?っだぜ。まーまだ見てない棚あるからそこを漁りたまえきみきみ。」
「てめ。わかった俺だって探してやるぞ。」
ぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱ。

ぴた。

「おーこれなんかどーだ。スイートだって。良さそうじゃん。」

スイート。そりゃすいーとでやんすよおさむ君。



「やあエブーリバデー。アーユー・ハッピい?。」
ケンが妙な外人化して桃屋に入場。
「へーい、フィル。アリバイやってるかい?」
続いておさむも登場。
「おさむ君、やめてちゃんらいいいかげんそれまーたシンリジでしょ。ボク、リノットじゃないのね。」
「のーのー、いい加減諦めてリノットしちゃいなよフィル。あ、そうだ、俺の希望曲アリバイにしよ。フィルにベース持た
せて、歌わせるのだ。」
「ぎゃはは、そりゃいい。やろうやろう。今度テープ持ってくるから。フィル頼んだよー。」
「頼んだよーってボク、イヤね。ぜたいやらないから。もう。」

アッコが厨房奥から出てきた。
「何ばーかやってんのよ二人で。みんなもう来て待ってるわよ。やるんならやるで早く早く。」
ケン&おさむ
「へ〜い」

ごそごそごそ。本日は初めてアッコがピアノで参加、曲は「ロックンロール黄金時代」でござるー。

「エブリバデー、準備はOKかい?」
「へ〜い」
「ちょっと待って、チューニングがまだ。」
ぼかっ
ケン「またお前かショータ、はやくせんかい。」
「あ、はい、えと出来ました出来ました。」
ケン「アッコは準備OK?」
「えーとOKだけど最初はどうする?ピアノとコーラス一緒に始まるけど。」
おさむ「あ、そうか。うーん。」
ケン「俺がこうやるよ。」と腕で三角形を大きく、「これで1,2,3。で始めればいいじゃん。」
おさむ「わはは、それ小学校の音楽で3拍子だな。」
イットク「すんまへん。でそのコーラスは誰がやるんでっか?」
にょみんと登場。
ケン「わ、何だ何だお前そのガンベルトは?うわそれ全部ハーモニカかー。」
「いやハーモニカって曲のキイ毎に1本なんですって。だからこの際全部揃えようかと思いまひて。」
おさむ「なるほど、やる気ばんばんだ。だからコーラスはお前とケンだぜ。」
ケン「何だと、お前もやるんだぞ」
おさむ「俺もか?後悔したってしらねえぜ。」
ケン「覚悟しております。そうかイットクもその気ならブラスのパートはお前に任せた。」
「へ〜い。そう来ると思ってました。喜んでやらしてもらいはりま。」
ケン「とゆうことです。よろしくお願いしますアッコさま。」
アッコ「なるほど。それならよろしい。」
ケン「あ、アッコさま。アッコさまにもコーラスお願いしたいんですが。」
アッコ「なにー?私もうたうのー。んー後悔したってしらねえぜ。」
ケン「じゃおめえらやる前にまずマイクセッティングじゃ。」

ごそごそごそ


「よし、さあいくぞー」(1,2,3)
ぽん、たたんたたんぽぽん。
ぽん、たたんたたんぽぽん。
ぽん、たたんたたんぽぽん。
ぽん、たたんたたんぽぽん。

たたたたたた、どたたたたたたた、たたたたたた、たたたたたた(以上ピアノの音です)

ぶうばぶっば、べべんぼ、ぶぶぶぶぶぶぶぶぼべんぼー
ぶうばぶっば、べべんぼ、ぶぶぶぶぶぶぶぶぼべんぼー(ハモニカー)


(1番)
エブバリ、へい
みんなでへい、今回行くならインド

時差なら時差早く言って
ハイカラ人間登場。

おおお。おおお。ハッピー、ポッキー、みなホッピイ
おおお、おおお
これでいいんじゃロックンロー

(2番)
上でガラガラぶう、出てきたぶう。
ギタギタはいほーはいほー
弱みもまあ出てきたぶう。
完全無欠の様相。

おおお。おおお。ハッピー、ポッキー、みなホッピイ
おおお、おおお レッツゴー
これでいいんじゃロックンロー

(展開)
これでいいんじゃロックンロー、夢は大
あれを見よ困ったにい、さざれ石

どれみふぁ、そらしど
どれみふぁ、そりゃしんど
どえみふぁ、くるしいからここからはギタアソロだー

グワゴローギルウウ、ギイギタギタギタグルグルウ(ギターソロを描写してる音です)

.....

じゃじゃじおん、じゃじゃじょんじゃじゃじゃじゃーん。

おさむ「わ、相談もしてないのに最後バチっと決まったぜ。俺ら天才か。」
ケン「おおおお、やるじゃんかアッコ。パーフェクト賞進呈です。」
「ありがたきしあわせ。ってなんじゃその歌詞はー!!」
「いや実を言うと考えてなかったんで口からでまかせです。」
ショータ「えー面白かったのにい。2度と歌えませんか?」
イットク「大丈夫。メルマガちゃぶ通読めば良い。」

お後がよろしいようで。



今日は火曜日だよー。新編成でのギグもどうやらうまくいきそうだし、てんでケンはコアラのマーチの練習を見学に行くことにしました。もちろんブギ兄弟の練習の前で行けるからだけど、なんつってもあの人がおるし・・・・。
練習場所はヤマキワ電気のスタジオ。イセザキ町の通りから一つ向こう側、バス通りで長者町5丁目のバス停のところにあります。照明が得意の電気屋さんだけど8階に楽器売り場があってそこに小さな貸しスタジオがあるのだ。一応、ここしかこの辺にここしか貸しスタジオは無し。桃屋で無料(タダ)で練習できてる兄弟はラッキーなのだ。感謝したまへ。
8階までエスカレーターでおっちらおっちら上がったケン君、スタジオ前でマーチのメンバーと出会います。
「おー、君かー。よう来たねえ。嬉しいよ。」とまず声を掛けてくれたのはリーダーらしいコアラさん。筆者必死に話し方を思い出してます。いいか誰もわからねえよ(^0^)。
次に気付いたジョンコさんが
「あらー、ぼうや、よくきたわねえ。よしよし、ギター持ってきたね。さあおめえら練習だ。気合入れていかんかいこらあ。」
「はいっ。」って思わず返事しちゃったよケンちゃんも。
実に狭いとこにえーと男5人、女おとこ一人ですからもうぎっちりこんだ。
「1曲目はパラノイド行くぜー。えーとケンは知ってるかい。パラノイド。サバスのだよ。」
呼び捨てにされてちょっと喜んでるケン。
「えーと一応は。キイはなんですか。」
「そんなんしらんわ。お前弾いてみろ。」
「はい」コアラはギター弾いてます。
じゃじゃじゃじゃ、じゃじゃじゃじゃ♪
「あー、わかったす。はい。」
「じゃあ行くぜーごらぁ。」

じゃじゃじゃじゃ、じゃじゃじゃじゃ、んじゃーんじゃ♪ ふんふんふんふん♪

八丈島のキョンのガキデカ氏でもあるまーに、ジュンコ嬢、ふんふん言いながら踊りまくって歌っております。
ははあ、だもんで男連中は隅っこにいるんだなと思いながら弾いてるケン。曲自体はラクチンちん。それはもうほぼ毎日練習してる身でして、思ってる以上に実力がついている。

じゃーん!!

「いえー、ナイスじゃん、ケン。」とジュンコ。
「ほんとだ。うまいもんだ。」コアラも。
「うんうん。やっぱギターふたつだと音厚くなるよなあ。」と悪役ベーシスト、水上まで。何か気持ち悪い。

「よーし、どんどん行くぞー。」

その後、何てたって18歳、じゃなかったヘビメタバンドですから知らない曲多数やるも簡単な音あわせだけでケンちゃん、何とかついて行きました。
2時間後、練習が終わります。
「お疲れー。ケン、ちょっと時間あるよねえ。あるよね。あるね?そう。」
「あ、はい30分くらいなら」
もう無理やりです。
仕方なくヤマキワ裏の茶店でメンバーとお茶することに。ああ、二人だけのデート?だったらなあとこっそり思ったりして


店に入ってそれぞれにアイスコーヒーを注文。異常な速さで出て来てかんぱーいと一口飲んだその時ジュンコさんセッド、
「単刀直入に言う」
「えっ?」
「ケン、君うちのバンド入ってくれない?君のその腕に惚れました。このマヌケとツイン・リード頼みます。」
「お願いしまーす。」と続けてバンドの全員も。
「うわ、こ、これ引き抜きかよー。」と心で思ったケン君、びっくりして言葉も出ません。

2005年09月15日

第7回「目指せ予選突破」

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そこへマコが涙で真っ赤な目の顔をしてケンの脇腹を突付いた。
ケン「ん、何?。しょうが無いよ。マコが悪いんじゃないから。え、何。違うの。」

アッコ「何?うん。うん。うん。」
アッコがかがんで。マコが背伸びして耳打ちする。
アッコ「えーーーーー!!」

ケン「何だって?」
アッコ「この子が叩くって。」
「えっ?」
アッコ「マコちゃんが自分がドラム叩くって言ってるのよ。自分のせいでこうなったんだからやるって。」


ケン「やるって言ったって。出来ないでしょ?」
マコ、アッコに耳打ち。
アッコ「兄ちゃんが学校から帰って来るあいだに家で練習してたんだって。曲も全部覚えてるから大丈夫だって。ほんとなの?」
思いっきりうなずくマコ。
ケン「イットク。お前んとこドラム買ったのか?」
「へい。わて出来んことばかりなんで少しでも練習しよ思って。それにしてもマコや。自分いつのまに・・・」

ケン「どうするよおさむ?」
おさむ「どうするよって....俺にもけんとう付かないよ。」

ケン「うーーーーーん。よしわかった。あそこいこ。」
アッコ「あそこって?」
ケン「桜木町にヤメハがあるじゃんか。あそこならハマ楽器よりだいぶここから近いし。あそこでマコちゃんの腕見せてもらおう。」
おさむ「うんうん。それがいい。それがいい。そうと決まったらもうほら1時半だ。早く行こうぜ。」
ケン「イットク。お前だいじょぶか?」
「はい。おおきに。わてはだいじょぶやけど。」

全員急いでバスに乗って桜木町に移動。ヤメハに向かった。
ケン「ええと。たしか奥にドラムコーナーが。あ、あったあった。」
「すみません。少し音聞かせてもらっていいですか?」
カウンターにいた店員「あ、いいですよ。どれですか?」
ケン「ええと、これがあそこのに近いな。あのこれ良いですか?」
店員「はい。スティックはありますか?」
イットク「はい。ありますう。」

マコがスティック受け取ってドラム椅子に座った。足がやっとこさバスドラペダルに。正面から見ると頭だけがタムタムの上に見える。
どんどんどんどんどんどん。
飛び上がるように叩く。

ケン「マコちゃんじゃちょっと。スローライドの最初の方叩ける?」
うなずくマコ。

カンカンカンカン
ドン・・・・どん・・・・どん・・・・どん
ドン・・・・どん・・・・どん・・・・どん

たん!どんたどんたどんたどんた。どんたどんたどんたどんた。

おさむ「おおおおおお。すげえええええ。」
ケン「うわあほんとかよ。」
どんつどんつどんつ、づだだづだだだ。

ケン「はいー。ちょっと待ってー。」

どんづど。

ケン「じゃじゃ、タッシュやってみてくれる?」
うなづくマコ。

かんかんかんかん

づっづだん。づっづだん。づっづだん。づっづだん。
づっづだん。づっづだん。づっづだだん。づっづだん。

づっづだん。づっづだん。づっづだん。づっづだん。
づっづだん。づっづだん。づっづだだん。だごんだごん。

「うひょー。」

づっづだん。づっづだん。づっづだん。づっづだん。
づっづだん。づっづだん。づっづだだん。づっづだん。

づっづだん。づっづだん。づっづだん。づっづだん。
づっづだん。づっづだん。づっづだだん。だごんだごん。

ケン「はーい。いいよー。」

づんごづ。

いつの間にか店中の店員が集まっている。目が全員まん丸である。

ケン「うほんごほん。ええっと。マコちゃんこれ気に入ったんだね。じゃ誕生日の時はこれにしようか。」
店員に向かって「ありがとうございました。よくわかりました。また買う時に来ますので。はい。」
店員A「はは、はい。お、お待ちしております。」

ケン「さ、みんな行こうか。」

全員でそそくさと店の外へ。

おさむ「凄かったなあ。音はでかいし。ノリもあるし。シャッフルなんてもう・・・・」
ケン「しっ!」
指を口に当てて。
見ればイットク、顔が真っ青である。

ケン、小声で「お前なあ。妹の方がこんなうまいんだぞ。骨折っただけでもあれなのに。イットクの気持考えてみろや。」
おさむ「あ、ごめんごめん。」

おさむ「ごほん。うん。それでどうする?ほんとに全部曲覚えてるの?」
マコ、うなずく。
ケン「うーん、あれだイットクさえ良かったらマコちゃんに頼んでみようじゃないか。どうせチャレンジのコンテストだ。一か八か
で。・・・・・・イットク、どうだ。それでいいか?」

「・・・・・・・・・・・はい。わてらの不注意で迷惑おかけしましたんで。マコお前やってくれるか」

強くうなずくマコ。

アッコ「そうと決まったらもう2時過ぎよ、早く会場行きましょう。遅れたら大変たいへん。」

全員、脱兎の如く移動。はたして間に合うかブギ兄弟。



桜木町から関内まで超特急で移動した彼らブギ兄弟。時は2時半であった。
急いで会場へ。
ホールを覗くとやっていたのは彼らの出番前7バンド目。まだ全然楽勝である。予想通り1時間ぐらい遅れていた。
おさむ「なーんだ。まだまだじゃんか。あせって損した損した。あっ、そうだ。ケンちょっと出掛けていいか?すぐ戻るから。」
「えっ、いいけど。気をつけろよ。お前までケガしたらたまらんからな。」
「おう」
脱兎の如くおさむが会場を後に。どこへ行くことやら。

ケン「一応メンバーが変わったから受付に報告しなきゃいけないかな。」
アッコ「うん多分。言わなきゃいけないかも。」

受付に行きこれこれしかじかと事態を説明、メンバー変更の許しを願った。
受付「困りましたねえ。今頃メンバー変更って言われても。規定だとあくまでも届出のメンバーじゃないと出場出来ないんですが。」
アッコ「そんな。急な事故だし。妹が兄の代わりに出るって言ってるのですから。お願いします。何とかなりませんか。」
ケン「お願いします。精一杯やりますんで。他のバンドには迷惑かけませんし。」
受付「うーん。私の一存ではどうも。いくらここで言われても。うーん。」
イットクいきなり横に現れ土下座して
「すまんです。わてのせいで。お願いします。一生懸命練習してきたんで。ここで許してもらえへんとわてら兄弟みなさんに申し訳がたちまへんのや。」
受付「あ、そこでそんなことされても。うーん。」

そこへホール奥の扉から一人のおじさん登場。立派な口ひげを生やしている。(役:大泉あきら)
「どうしたんだね。君達。受付で騒いで。おおお、君君手を上げて手を上げて。何だね君、若い子にこんなことさせて。」
受付「あ、大泉本部長。今になってメンバー変更させてくれって言ってるのです。規定だと許可できないことなんで...」
大泉「うんうんメンバー変更?うーんどうしたの君たち今頃になって。」
ケン、アッコ再びこれこれしかじかケンケンガクガクええやこらどんとこらと必死に事情説明。
大泉「そうそううんうん。ケガしちゃったの。ここで。それでこのちいちゃな。妹さんが代わりに。くー。泣いていいおじさん。良い話じゃないの。君たち、OKです。丸。出なさい出なさい。一生懸命な若者のためにこのコンテストはあるのです。はい。」
受付「でも規定では...」
「君。固いだけじゃ受付は出来ないよ。私が許可するって言ってるのです。文句何かありますか。」
受付「いえ・・・」

ケン「ありがとうございます。一生懸命がんばりますので。」
イットク「おおきに。おっはん。一生このご恩は忘れませんて」

大泉「うんうんいいのいいの。それよりしっかり演奏してね。許可した私の顔を潰さないように。おっほん。」

アッコ「ありがとうございます。」

ケン「よしこれで演奏できる。おめーら大泉さんのためにも気合入れてぶちかますぞ。っておさむはまだ帰って来ないの?」

そこへおさむが息を切らして戻ってきた。何かを買ってきたようであった。
「はあはあはあ。あー急いだ急いだ。ん。何だ何かあったのか?」
ケン「何かって大変だったんだぞ。メンバー変更許可してもらえないかと思った。今やっとで。もう。どこ行ってたんだ。」
おさむ「ははは、ご苦労ご苦労。ところでイットク、お前これ振れ。」
と手に持ってる包みから出したのはマラカスであった。
「二つは振れないから一つでいい。それで踊ってコーラス付けろや。」
イットク「はい?・・・・・・。おおきに。先輩。ライブ出させていただいてよろしいんでっしゃろか。」
おさむ「ケン、いいだろ?これで。こいつだって一緒に走った仲じゃないか」
ケン「ははは。おさむもたまにはグアイデア出すなあ。こりゃいいや。イットク、踊れ踊れ。それでもしマコが困ったら助けてあげろや。な。」
イットク「はい。そうさせていただきます。ほんと。おおきに。」

ケン「さてステージはどれくらい進んだかな。見に行ってみよう。」

全員会場ホール内に。

ヘビメタ・バンドが轟音演奏中。ボーカルは女性でシャウトしまくっている。

ショータ「ぎゃ、うるせー。」
おさむ「ええとこりゃうちらの3つ前のバンドだ。あれ、あいつら・・・・あれじゃんか。マコにぶつかったやつらじゃないか?ほらあのドラムとキーボード。」
ケン、ぼーっとして女性ボーカルを見てる。
「きれーだなあ...」
おさむ「えっ?何ぼーっとしてんだ。きいてんのか?
ケン「あ、ああ。あー。」
おさむ「あーって。しっかりしろや。どうしたんだ。」

その時演奏終わりステージ上では
「みなさーーーん。どうもありがとう。決勝でまたあえるね。ぐっばあああい。」

「ぐばああい」
おさむ「何言ってんだケン。おお、次の次じゃんか。みんな準備するぞ。さあ行こう。」

いよいよライブ目前である。


「よしみんな行くぞ。いいか?」
「おっし!!」

ステージ上、ライブ前輪になって気合タイム決行。
スポットライトが当たった。

カンカンカンカン
どん、 どん、 どん、 どん、

客席がざわめく。なんせドラムに誰もいないのに音が聞こえてくるのだ。マコの身長では正面からではドラムに隠れて姿が見えず
特に後ろの席の方でざわめきが広がっていった。

じゃじゃっじゃ、じゃじゃっじゃ、じゃじゃっじゃ、じゃじゃじゃー、じゃじゃっじゃ、
じゃじゃっじゃ、じゃじゃっじゃ、じゃじゃじゃー
くいいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜ん

じゃんじゃん

「♪すろーらい          てきにーじい」
「♪スローライ          てきにいいじい」

シンバル連打で歌が始まったとたん大歓声。飛び上がって叩いたマコの姿が会場の全員に見えたのだ。
気がつきゃあとはもう大変、その派手なプレイとグルーヴィなリズムに全員がノックアウト。ブギ兄弟もその熱演に煽られる始末
である。ハナから心配ご無用、むしろバンドを引っ張っているのは初めて参加したマコの方であった。

どがすかぐぎょおおーーー〜ん。
じゃん。

「ありがとう。」

「終わったなあ」
「ああ」
スポットライトが落ちてケンとおさむ。
ケン「おお、マコちゃん!! お疲れー!!」
おさむ「ごくろーさん。まったく今日はマコの日だわ。持ってきやがってもう」
頭をくちゃくちゃになでる。
マコ、ニターって笑って。

驚いたことにステージを降りてホールに向かう通路でも拍手が起こった。
ショータ「いやもう、すんません。はい。がんばりました。」
ボカっ
ケン「ばか。お前じゃ無いだろう。」
「ははは、やっぱし。」

ホールにて
アッコ「みんな、お疲れ様。ウケたわよー。すっっごく」
イットク「まったくこいつのおかげやわ。まじわしよりうまいわ。降参です。」
深々、妹に頭を下げる兄。
「先輩方、もう気にせんでください。バンドの新しいドラマーはこいつでんねん。自分は新しいもんめっけますんで。はい。」
ケン「そうか。俺も考えてることあるから。お前もめげないでいろよバンドに」
「はい」

おさむ「お、あそこに例のヘヴィメタがいるぞ。」

ちょうど反対側に楽器を片付けて帰ろうとしていた。

ショータ「あー、お前ミズカミ!」
ヘヴィメタのベーシスト「お、お前ショータじゃんか。」
おさむ「ショータ、なんだ知り合いか?」
「はい、こいつ、同じクラスなんすよ。ミズカミってやつなんすが」

ミズカミ(役:水上コージ)「へええ、あのヘンテコな弾き方してたベースってお前だったんだ。おかしくって腹がよじれたぜ。しょぼい音出しやがってよう。」
ショータ「なんだとー。お前らこそ。見ろ。お前らのせいでうちのメンバーがこんなことになって。
     まず謝るのが筋だろ。」

ミズカミ「ふん」
それだけ言って全員ホールから出て行ってしまった。

呆然とするブギー兄弟たち。
おさむ「なんだあれは。 うお、今頃腹が立ってきた。そうだろケンっ。ケンっ。」

ケン「きれいだなあ。」

ショータ「くくくくくそー。先輩、俺やります。あんな野郎にバカにされて。くそー。絶対に勝ってやるぞ。くう。」


一週間後。いやコンテストの予選の次の日から中間テストが始まったのである。そりゃもう全員一夜漬けてなもんで無し。落第だけは避けねばならぬと血眼になったもののどうなっていることか。結果が怖い。私は知らない。

で一週間後の今日とゆう日、テスト終了で久し振りに桃屋に集合したブギー兄弟たち。一様に悲惨な顔付きをしていたが、店にたどり着いたとたん嬉しい知らせを聞くことになる。

「こんちわー。やーフィルっ!ベース弾いてるかい?」
「おーケンさん、何ねベース弾いてるって。私料理人よ。」
きんどうフィルさんをいぢりながらケンが店に入ってきた。
「ごめんごめん。遅くなって。レコード買って来たんで遅くなっちゃったよ。」
おさむ「遅いぞこらあ。せっかく良い知らせあるっつうに。」
「何だなんだ。いい知らせって。」

奥から何かをピーラピラさせながらアッコ登場。
「はああい。これこれ。ごらんなさいましい。」
机の上に置いた。

ケン「何じゃこりゃあ。血だ。じゃなくて。えーと。おおおおお。豪華合格通知じゃあーりませんか。」
マコが笑った。
ショータ「ボクにも見せて下さいよう。えー、なになに。あんたがたバンドはこりゃ偉いしうまいしい素敵だしーだったので
合格。次の関東地区大会に出るように。ほれ。」
ぼかっ。
「ばかやろう。そんな文句なわきゃないだろ。」とケン。
「えー。ほんとですよ。ほら。」
「どらどら。あ、ほんとだ。下に何か書いてあるぞ。「がんばってねボクちゃんたち。期待してるわよんbyオオイズミ」。」
イットク「うひょ。あのおっさんカマオさんだったのかー。自分好かれてたらどうしよう。」
ケン「まあ、それはそれでいいとして。場所と日にちは?」
アッコ「えーと7月8日。横浜文化体育館ホールだって。」
おさむ「うげ。また期末テスト前かよ。狙ってんのか落第を。」
ショータ「ま、ボクなんか普段からたゆまぬ努力ですから全然大丈夫なんですけど。」
ボカ。    ボカぼかぼかぼか。

ケン「ところで決戦用の新しい曲なんだけど。」
おさむ「お、新曲。何しようか?何か合格するの当然みたいな準備の良さ。」
ケン「へへへ。あったりめえよ。それでえーっと実は今日これ買ってきたんだ。アッコ、かけてくれる?」
アッコ「また使う。自分でやりなさいよう。しょうがないわねえ。」

アッコ、おっとり刀でレコードをかけに行く。

♪たたたたたたたた、たたたたたたたた、ばーぽばーぽばっばばぽばーぽ♪

おさむ「おーいかすなあ。なんだこれ。」
ケン「モット・ザ・フープル。ラジオでこの前聴いていいなあっと思って。買っちゃった。ロックンロール黄金時代と申す。」
ショータ「でもこれピアノとかラッパ入ってますよ。」
ケン「それが問題で。でもなあピアノ入りの曲もやりたいよなあ。イットクお前ボンボンだからピアノくらい出来ないか?」
イットク「そないなこと言わはっても。できまへんて。やれてりゃとっくにやってますわ。」
ケン「はははそりゃそうだ。うーん困った。どうしよう。やりたいなあ。」

そこへアッコが戻って
「私ピアノ出来るわよ。ま少しだけだけど。」
ケン「えっ、お前弾けるのか?お嬢様じゃないのに。」
「お嬢様なのっ。うちにピアノだってあるんだから。」
おさむ「よし。そのピアノここに運ぼう。」
アッコ「よしって。もう決めちゃって。人にモノを頼むのには何かあってもよろしくって。」

全員「へへえ。アッコさまよろしくお願え申しますだ。」
「うーん、どうしよっかなあ。」
さらに全員土下座。
「お願ええしますだああ。」
「ほほほ。そこまで言うのならやってやってもよろしい。」

ショータ「で、ラッパはどうするんで。」
ケン「それだ。いるじゃないかラッパ隊。」
「へ?」
ケン「おやじ隊だよ。岸田さんと植木さんに頼もうかと思って。派手でいいじゃんか。」
おさむ「がはは、そりゃいいや。あれから毎晩ここでガンガンやってるんだろ。頼んでみようぜ。今晩でも。」
ケン「どうせならおやじさんたち全部出れるようなプログラムにしてみようぜ。」

イットク「あのー、それで自分は何をしたらいいんで。」
ケン「あ、お前は踊れ。ただひたすら。  ってのは冗談で。これ買って来たぞ。これやったらどうだ。」
袋から何か取り出してイットクに渡す。
「あ、これハーモニカ」
「そうだ。プレゼントするからこれ吹けや。教則本はこればっかは許す。自分で買え。」
「もしかしてブルースハープってやつですか。おおきに。うれしゅうおます。やらさせていただきます。これならいけるかも
小学生の時けっこう得意だったんでっせ。」
おさむ「この前買ってやったマラカスも忘れるなよ。」
「へい。もちろん。先輩方感謝します。頑張りますんで。」

決戦の日も決まり又も燃えてきたブギ兄弟たち。
気が付けばマコはドラムを練習している。
ばこばこばこばこ。

2005年09月13日

第6回「目標発見」

006.jpg

何となく帰りが一緒になったケンとアッコ。なことは滅多に無いので無口である。

ケン「なあ。ウエイトレスばっかやってて何も飲んで無いだろ。ちょっとそこで座ってな。」
アッコ「ううん。けっこう合間見て・・・。あ、行っちゃった。」

アッコを商店街の道中央のベンチに座らせケンは缶コーヒー買いに行く。

ケン「ほら。これ。オゴリだぞ。」
アッコ「サンキュ」

アッコ「あったかいね。」
ケン「メシは食えたのか?」
飲みながら
アッコ「う、うん。大丈夫。夜になったらそんな忙しくなかったから。」

ケン「マネージャーのことなんだけど・・・。いいのかな。まあ大して忙しくなるこたアないけどさ。」
飲みながら
アッコ「うーん、しゃあないね。腐れ縁じゃん。」
ケン「(学校じゃ)クラブとか入ってないのか。まさかまた剣道部とか。ははは。」
アッコ「もうこりごり。運動部は。ってゆうか、シローおじさんのとこで働いてお小遣い貰う方が良いから。」
ケン「ま、大したマネージャーじゃなかったからなあ。向こうでお断りとか。」
アッコ「何よー。あんなにやってあげたじゃない。誰が好きで道着の洗濯とかするかー。」
ケン「だってやりたいからやったんじゃないのか。」
アッコ「まさか。部長先生に無理やり頼まれたからやったんじゃない。」
ケン「ほー、おさむとかに惚れてたんじゃないのー」
アッコ「何言ってんの。バカ。下らないこと言うのなら私行くわよ。」
ケン「おい、待てよ。何怒ってんだよ。おい。明日も行くからなー。」

ケン「あああ、行っちゃったよ。俺何か言ったか。んー」

コーヒー飲みながら無性に腹が立って帰るアッコ。
(・・・・もうまったく。あんたの道着いつも・・・。もう)

翌日・・・・・・・
午後5時、ブギ兄弟達は当然桃屋に大集合する。
店の前で4時50分ごろ
おさむ「ちわー。あれー。開いて無いぞ。どうしたんだ。」
そこへケンもやって来た。
「おう。どうしたんだ。」
「何か閉まってるんだ。どうしたんだろう。」
そこへイットクとマコ、ショータも登場。
「こんちわー。」「ちわー」
ケン「おう。ごくろーさん。」
おさむ「おーは良いけどどうする。」
ケン「とりあえずドアを叩いてみよう。」

ドンドンドン、どんどんどん

ケン「こんちわー。いますかマスター。シローおじさーん。こんちわー。」

がちゃ。ドアが開いた。
アッコ、登場。
ケン「お、アッコ。」
おさむ「いたのかー。」
アッコ「いたのかーじゃないわよ。うるさいわねえ。」
ケン「おじさんは?」
アッコ「何か今朝までやったんだってさ。演奏を。当然バタンキューみたい。」
おさむ「え、朝まで。うわ。うーんやりかねない。」
ケン「じゃあ、練習させて貰ったら悪いかな。うるさいもんな。」
アッコ「うーん。」

そこへ奥からシロー登場。

「ああ、君達おはよう。」
ケン「おはようじゃないすよ。もう5時っすよ。しかも新装開店そうそう休んじゃってまあ。」
シロー「あはは。まあ良いじゃないの。先は長いし。」
おさむ「あはは。でも練習させてもらっていいんすか。」
シロー「ああ、いいよ。どうせもう起きるし。今日はもう店開けないからじっくり練習出来るよ。」
イットク「ああ、良かった。またライブだったらどうしよ思ってましたん。おおきに。」
シロー「さあ、入った入った。」

何やかやと全員店の中に。

アッコ「あ、そうだ。マネージャーとして初めの仕事してきました。よく聞く様に。」
おさむ「えー、何何ー?」
アッコ「コンテスト出場応募してきました。よく練習するように。」
ケン「うわ、まさか。ほんとかよ。わ。そ、それでいつだよそれ。」
アッコ「はい。一月後です。曲目は2曲。頑張ってね。」
ショータ「頑張ってねって。他人事だと思ってー。」
ばこん。これはアッコが張り手の音。
アッコ「さあ、ぐずぐずしないで練習練習!!。」

ケン「うーん、この光景どっかで見たような気が・・・」
アッコ「ほらそこのボケタン!はやくせんかい!!」

はーい。



練習また練習である。学校が終わって5時から8時まで3時間。一応お客さんが入ってくると休憩するがそんなガンガンやってる店に誰が入って来るものか。
少しづつ上達している。それは確かだ。ベース・ギターをジミヘン弾きしてるショータも問題無くこなす。初めからそれだから問題は無いようである。しかしながら相変わらずの問題はいまだあり。一抹の不安が彼らの頭の片隅に春の雑草の根っこのようにめりめりともーりもり。
桃屋での最初の練習日から1週間経った土曜日、いつものように店に来たブギブラザースの面々。習慣でいつもみな同じ時間に。店の前で既に集合している。

一同「ちわー。」
「いらしゃーいませーべーいび。」
ケン「わ、どなたですか?」
そこには見たことの無いでかい男が。カウンターにエプロンして仕事していた。
男「はーい。貴方たち、ケンくんたちねー。キイテルヨー。ミーはねえ、フィルいいます。いよろしく。べいべ。」
おさむ「わ、外人さんだ。フィルさんて...。うーんどっかで見たことある風貌だなあ。」
ケン「わ、そうだ。シン・リジイのフィル・リノットそっくりだ。マカロニほうれん荘で見ました。」
おさむ「ま、まさか。ほんものさん!。はう・ワウ・ユー?ミスタ・リノット?」
フィル「ノーノノー。違うねー。よく言われるけど。私の名前フィル・コリンズ・アッテンボロー・ゴンザレスね。大体、知らないね、リノットさんって。誰ねそれ。オウイエイ」
ケン「何だそうかー。びっくりしたなもー。でも何でいるんですか?フィルさん。」
フィル「フィルって呼んでくだせー。親しみ大。いやな、ミスタシローに頼まれて。ほらアコちゃんだけじゃカワイそうだからゆうてねん。」
おさむ「そうですかい。そりゃま確かにそうですねん。いやだわこっちまで日本語おかしくなってきた。それはともかくよろしくフィルさん。みんなもほらキチンと挨拶せんかい。」
一同「は=い。よろしくー。」

奥からアッコ登場。
「来たねえみんな。さー外だ外だ。」
ショータ「何で外なんですかー?」
「荷物早く置いて。外に出ればわかるわかる。」

アッコ、いつの間にか自転車で登場。
「さあ走れ走れ。」
おさむ「走れ走れってなぜ走る。」
「いいからいいから。あんた達の演奏には腰が入って無いよー。だから走れ走れ。」
イットク「そないな殺生なあ。あきまへんでー」
ケン「うん、それもそうだ。お前も文句言ってないで走れ走れ。」バコっ。
ショータ「いたー。わてまだ何も言ってまへんでー。そんしたなー。あ、大阪弁移った。」

全員仕方なくザキの商店街を走リ出す。

アッコ「これは良い宣伝になるわねえ。今度から旗でも立てて走ろうかしら。」
おさむ「ぜえぜえ。何言ってんのかねこの女は。まったく。」

10分後
BGM。♪とんからかったんとんからかったんとんからかったんぷー
ショータとイットクが大きく遅れる。
「おおい速おますね〜。大坂人は走るの苦手やさかい。」
「おーい待って下さいよう。辛いっスよう。」
へなへなへな。その場に座り込む。
上からハトの糞、二人の顔面に落下。
「へーーーーーっ。ついてまへん。何でこないなことになったんやら。。」
マコはゆうゆう先頭を切って走ってる。
「ほらほらマコちゃんだってこんなに元気だよ。あんた達ぐずぐずしてるとケツ蹴り飛ばすぞー。」
「こわー。アッコさんこわー。」

ぜえぜえぜえ。
さらに10分後、その辺を1週して桃屋にご帰還。
「みんな、明日もあさってもずーっと練習前は走るからね。そのお・つ・も・り・で。」
全員、文句言う気力も最早無し。
「は〜〜〜い」

「さあ練習練習とっとと準備する!。」
「は〜〜〜〜〜い」

ようやく練習。音を出す。心なしか足腰据わった音のような・・・訳は無い。

そこへ一人の男が店に入って来た。
「こんちわ。良いかい。ここ座って。」

シロー「あ、ジャックさん。久しぶりです。あ、君達ちょっと音止め...。」
ジャック「ああ、いいいい。そのままそのまま。」

そこへもう一人の男が入店。ジャックに駆け寄る。
「兄貴〜。良いんですか。こんなとこで油売っててー。また親分に文句言われますよ〜。」
「バカタレ。いちいちうるさいんだよお前はー。しばらく俺はここにいるからお前はその辺で客引きでもやってろ。」
「そんな殺生なあ。」
ばかばかばかばか。全身をはたかれてジャックの子分山本が悲鳴を上げながら外に。
「まったくあのバカタレはいつまでたってもバカタレタレタレ」

席に戻ったジャック、ただ黙って練習してるブギブラザースを見続ける。



それから2週間、コンテストの日まであと1週間となり、ブギブロスの面々は、走っては練習走っては練習のひたむきな毎日をおくっておりました。それなりに演奏もしっかりしてきた問題のZZトップのタッシュ、シャッフルの曲もイットクは必死にくらいついて何とか必ず完奏出来るように。タッシュはスライド・ギター、ギンギン、ブルースの基本、シャッフルとゆうことでおさむが絶対やるのだと言って聞かなかったのである。

演奏が上手くなるにつれて問題が一つ。

音量が上がっていった。ロックバンド七不思議の2.5に上げられる音量問題。自信につれてヴォリューム以上に音が前に出ますのね。一応この前の改装で防音処置を追加した桃屋ではあるがこれには分が悪く、ドアの向こう側に音が漏れ出し、前を通る人がぼちぼち中を覗き込むようになってきた。

そんな中...

いつものようにどがんどがん練習中、曲はホット・レッグス♪。
いきなりドアを開けて、ちゅうより蹴り開けて知らない兄さんが入って来た。ポケットに手を突っ込み、ステテコ、腹巻、帽子ってまるで寅さんじゃん。口を意味不明にあごあごして体を左右にマリオネットのようにふりふりカウンターのシローちゃんの方に向かって歩いていく。

ブロスの面々は夢中で気が付かない。

ほっれっ、足が無い♪ あれがほれ♪

近づく兄さん、いきなり椅子を蹴飛ばし両手ををガンとカウンターに叩きつけた。

「われーーーっ。誰に断ってこんな音出しトンじゃい。やめんかいこのー。」
「やめんかいこのー。」
いつのまにかもう一人後ろにいた。いささかおどおど貧弱なリーゼントの兄さん。

ばっ。

さすがにケンたちも気付いて演奏を中止する。
「何だ何だ。誰だ。あの人たち」

「だ・れ・に・断ってやっとんじゃいって聞いとんじゃい。われ〜。こたえんかい。」「こたえんかいおらー」

シロー「誰に断ってって、あんた。ここは私の店だ。好きにやらせてもらうよ。」

おさむ小声で「おー、おじさんかっこいー。がんばれー。」
ケン「ばか。呑気なこと言ってるんじゃない。やばいかも。わわわ。」

「われ〜。くそなまいきなこと抜かしおってからにー。ここがカラタチ組のシマだって知っててそんなこといってんのか。われ
ー」「われー。」

わ、ゴスペルみたいだとケンは思った。コール&レスポンスって言ったっけなそうゆうの。

どん!!

カウンターの奥から大きな音が

「兄さん、騒がしいじゃないか。いい音楽聴いて飲んでるんだから邪魔しないでくれるかな。」

おさむ「おージャックさんだ。奥で飲んでたんだ。気付かなかったよ。」

「誰に向かって口きいとんじゃ・・・・・」
振り返った兄さん、ジャックの顔を見て凍りつく。
「わわわわ。ジャック兄さん。いつのまにこんなとこに。だって親分があのナシつけて来いって。あの。」

ベン!!頭を思いっきり引っ叩かれる。

「バカヤロ!!今時んなカッコでイキガルやくざがいるかい。ちっとは考えろみっともない。」
「えー、でも久しぶりの晴れの舞台だったもんで...」「もんで」
「ばかたれ。まとにかくここのことは親分には話を付けとくから。ま、大人しく座って酒でものめや。」
「はい。すんません。ちそうになるっす。」
「あ、マスター。こいつ俺の弟分の弟分でオサムって言うバカです。こんなんだけど根はいいやつなんで。堪忍してやって。」
「あ、まあ。そうゆうことなら。よろしく。オサム兄さん。おさむが二人になっちゃったな。ははは。」
「アニキイ〜。俺も俺も。俺も紹介してくださいよう。」
「ばか。お前はいいの。」
ジャック「まあ、いいじゃないか。お前名前なんてんだ?」
「はい。わたくしアキラって言いますっ。以後お見知りおきを。」
シロー「アキラさん、こちらこそよろしくー。」

ジャック「あ、おめーら。何やってんだ。ライブ近いんだろ。早く練習戻りな。」

ブギのブロス「あ、はい。あああ、はい。」

オサム兄さん「あのー。いいですか?」
ジャック「何だ。まだ何か文句あっか。」
「いえ、文句なんてとんでも無いっす。あのーお願いが。」
ジャック「何だよー。ぐずぐずしてないで言うことあるなら早くいえよー。」
「えーと1曲歌わせてもらっていいすか?昔ちびっとやってたもんで。あの。懐かしくなっちゃって。」
「何だ。そんなことか。おーい。お前ら。このあんちゃんが歌いたいってよ。頼むわひとつ。」

ケン「あ、はい。えーと弾けるかな。何の曲やるんですか?。」
オサム兄さん「あ、君達。頼むね。これこれ。」なぜか楽譜持ってる。なんでだ。

おさむ「あ、ボクもおさむって言います。よろしくー。あ、これですね。これなら出来るよ。きっと。」

しばしミーティング後、ブギブラザース・フューチャリング・オサム兄さんで演奏開始。
曲はもちろん

「大坂で〜生まれた〜女や堺〜。♪」


「ホールだよ。」 ケンが言った。
「ホールだな。」 とおさむ。

「先輩、感慨にふけってると受付に遅れますぜ。」
ばかっ。
ケン「うるさいなあ。やっとここまで来たんだからもう少し感動させろや。」
おさむ「まあ、いいだろこれくらいで。ははは。先は長いし。」

イットク「では乗り込みまっせ。」

場所は関内馬車道にある横浜市民ホール。ホールはホールだが収容人数は満杯で500人くらいの小ホールである。
それでもケンたちにとっては初の大舞台、緊張するなって言っても無理か。
今日はヤマヘ・ミュージック・コンクール・東西バンド合戦横浜中央地区予選の日。会場にてのブギ兄弟たち。

アッコ「何やってんの早く早く。」
「へ〜い。」

小さいながらちゃんと有るロビーは頭の形が50種類くらいの妙な人間どもで溢れかえっていた。
アッコ「えーっと。受付はどこかしら。  あ、あそこだ。あんたたちここで待ってなさい。何か聞かれるかもしれないから。
うろうろするんじゃないよ。」

「へ〜い」

5分ほどして。
おさむ「ねえ、楽屋は?立ってるのもしんどいなあ。」
アッコ「無いって。」
ケン「へ?」
アッコ「無いんだって。楽屋は。ここで着替えてここで待機してここで待ってろだってさ。リハは3番目あと15分したら始まるから早く準備してね。」
ケン「ひえー。あわただしいな。仕方が無い。あの階段下に陣取ろう。行け!ショータ。れっつごー。」
「はい!。」ぴゅーーーーー。
「陣取りました!リーダー!」
「よくやった。ぼかっ」
「ひー、褒められる時もハタかれるの〜」
マコ、声出さないで大笑い。あ、ちゃんとマコもおります。

15分後。
「えー横浜ブギ・ブラザースの人はいますかー。次の次リハーサルですんでステージのそばで待機してて下さいー。」
「はーい」
アッコ「準備出来た?チューニングは?あ、ショータ、遅いわねえ。弦が少ないんだから速く出来るだろうに。さあさあ。」
ショータ「はいはい。出来ました出来ました。どうも不安で。何回もやっちゃったよ。」

前のバンドはキャロルみたいなロケンロールバンド。マイクにかじりつくように歌っております。
ケン「ぎゃ、やだなあ。あのマイク。リーゼント病が移っちゃうよ。アルコール誰か持って無いか?」
アッコ「そんなもんあるわけないじゃない。文句言ってないで。  ほら終わったわよ。はい。リハ頑張って=」

うんこらしょどっこいしょとセッティングあっとゆうま。桃屋で毎日やってるぶん慣れたものである。

ケン「えーっと。ちぇっくちぇっくチェック。あーあーあー。」
おさむ「ちぇちぇちぇちぇっく。えーっとアンプのボリュームこんなもんで良いですか?あ、良いですか。お前ら覚えとけよこれ。さあやるかケン。」
ケン「みんな行くぞー。」




1,2,3,4

いざリハーサル開始。曲はスロー・ライドである。

どん、どん、どん、どん
ずずっじゃ、ずずっじゃ、ずずっじゃ、ずずじゃー、ずずっじゃ、ずずっじゃ、ずずじゃー
くいー〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん、ずずじゃー
♪すろーらいっ、てきにーじー。すろーらいっ、てきにーじー。
♪すろーらいっ、てきにーじー。すろーらいっ、てきにーじー。
♪飴飲む?〜〜〜〜〜〜

「はーいっ。そこまでー。OKですー。」
ずだだだだだー。

ケン「へっ?もういいんですか?」
PAの兄ちゃん「はい。OKですー。次の人準備してー。」

すごすごと片付ける兄弟たち。入れ替わりのバンドにせっつかれるようにステージを降りホールに再び集合。
おさむ「何だよなあ。短すぎるんじゃないのか。」
ケン「ほんとだ。あれじゃリハって感じにもならないよ。」
アッコ「ええとね。出場バンドが15あるってゆうから時間が押してるんじゃないの?でもばっちり音はまとまってたよ。」
おさむ「うーん。まあ音は。さんざやってきたから。それにしてもお前たち、だいじょぶかこれで?」
イットク「セッティングが違ったんで。とまどいましたけど。まあ何とか。ええんじゃないでしょうか。」
ショータ「ううんと僕はですね。あのですね。モニターがですね。聴こえにくかったんですけど。それでですね。あの・・」
ばこっ。
ケン「そーゆーときはアンプにひっついとけ。とにかくこれで本番だから。頑張るしかないぞおらあ。」
一同「は〜〜〜い」

おさむ「ところで本番は何時頃?」
アッコ「えーとね、始まるのは1時からだけど出番は4時ごろの予定。」「セッティングは5分演奏時間15分で9バンド目
だから」

おさむ「まあ遅れるだろうけど3時半にはここにいた方がいいんじゃないか?」
ケン「そうだな。それじゃ3時半にここに集合ってことで。」

イットク「先輩たちはそれまでどうしてるんでっか?」
ケン「今12時だから。そうだな、まず腹ごしらえだ。2階に喫茶店があるからそこで食おうかなっと。お前たちは?」
アッコ「じゃ私も」
おさむ「俺もそうするか。」
ショータ「えー?茶店ですかあ。うどんが食べた・・ばこっ・・くないです。一緒に行きます。」
イットク「ほなわてもお相伴を。マコもええわな。」
マコ黙ってうなづく。
そして2階へ向かって走り出す。

アッコ「あ、危ない!!」
2階から降りてきたヘビメタ兄ちゃん二人組みにマコが階段でぶつかった。
スローモーションのように体が浮いて下に飛ばされる。
その時、
イットクが走ってジャンプ、横になってマコの下敷きになって受け止めた。
「何だよ。危ねえじゃんか。気をつけろよ」とヘビメタ兄ちゃん。
ケン「なんだとー。お前らこそどこに目を付けてんだよ。」
えーーーーん。マコが大声で泣き出す。
イットク「先輩。ええがな。こいつも不注意だったけんね。すまんです。堪忍してください。」
「ふん」鼻鳴らして二人は行ってしまった。

「ううう。」
おさむ「どうしたイットク。」
ショータ「あ、先輩!イットクの指が。真っ赤です。」
おさむ「やばいなこれ。」
ケン「・・・・。早く病院行こう。近くに外科あったよな確か。あそこは12時半までやってるから。早く行こう。」
えーーーーーん。一際大きい声でマコが泣く。
アッコ「マコちゃん、さあ泣いてないで。早くお兄ちゃん病院に連れて行かなきゃ。」
マコ泣きやみ、こくんとうなずく。

30分後。診察終わってイットクが出て来た。右手が包帯でぐるぐる巻き、肩から吊っている。
ケン「どうだった。」
イットク「・・・・。折れてましたわ。」
おさむ「何ー?。それで演奏はー。」
イットク「無理みたいです。このままにしとかなきゃいかんて。すまんです。ほんとに。」
一同「・・・・・・・・・」
ショータ「どうしましょう。コンテスト。先輩。先輩」
ケン「まいったな。うーーーーーーーーーーーーん。」

そこへマコが涙で真っ赤な目の顔をしてケンの脇腹を突付いた。
ケン「ん、何?。しょうが無いよ。マコが悪いんじゃないから。え、何。違うの。」
posted by 山 at 08:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 第6回「目標発見」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月11日

第5回「いざライブ」

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かくして1979年の5月、新芽吹き出し天気明朗至ってうららかな日にバーガー・シローは新装開店となりました。ついでにお店の名前も変わって「桃屋」に。昼は普通のバーガーショップ。一転夜はライブハウスに変身も可能とゆう2重人格であります。これもひとえにシローちゃんのロッキン心に火を付けた猪突猛進の若者どものなせる業かも。

その日は日曜でありました。朝10時の開店時点には店を手伝うケン、おさむはもちろんのことイットク、マコ、ショータとブギブラザースの面々は全員集合。さらに近所のよしみ来来軒のトクエ親父、マナミ姉ちゃん、ハマ楽器の岸田兄ちゃん、そして歳とってる割りに何かモダンで若作りなおじちゃん連中数人も混じってセレモニイ敢行です。

ぽーん。10時の時報と共に店の前でシローおじちゃんの挨拶開始。店の中からマイク持ち出し、そんな装備はおちゃのこさいさいになっている。

「えー。あ、声が高いな。えー、ごほんごほん。えーえーチェックチェック。入ってるな。えー。」
「おーい、はやくしろー。腹減ったぞう。」
その場の全員爆笑。
それで落ち着いたシローちゃん。
「みなさま。ご紹介にあづかりまして5月の天気明朗うららかな日和いかがおくらしですか。本日はバーガーシロー新装開店、生まれ変わって桃屋の新装開店にお付き合いくださりくだされくださろ」
「きゃあおじさんが壊れたー\(^o^)/」
「えーくださりありがとうございます。これもひとえにここにおります若者二人の甘言、いや熱心さにほだされたおかげさまでございまして、ええいめんどくせい。みんな開店だ。一杯食べていっておくれー!!」
わーわーぱちぱちぱちぱちぱち。大歓声と拍手。

「いらっしゃいませ。いらっしゃいませ。」

ぐっと明るく若返った店構えのおかげで盛況も盛況。店満杯でケンとおさむ、そしてアッコはてんてこ舞い。おじさんはのんびりと挨拶周りしております。残ったブギブロスの連中はと言えば奥のステージの隅に陣取りこそこそとアンプにつながない状態で音あわせをしております。

そんなこんなで夕方6時。シローの閉会宣言。
「えーみなさんありがとうございます。当店の昼の部はこれで終了。これから夜の部になりますがそれは様子を見て再開店とゆうことで今日はどうもありがとうございました。今後ともバーガーシロいや桃屋をどうかよろしくー。」
と一般客ピーポーを全員追い出しにかかる。

「さあ身内だけのパーテーだ。ほらほら君達何してる。演奏だ演奏だ。早く準備したまえ。」
ケン「えー、練習じゃないんすか。お客さんがまだいっぱいいるじゃないですかー。」
「いいんだいんだ身内なんだから。ほらほら。あーのこーの言ってると尻蹴飛ばすぞー。」
今日のシローちゃん。男らしくてす・て・き。
ショータ「わ、わ、わ、わ、どうすんですか。やるんすか。これライブ。ライブ。」
ぼかっ。
おさむ「しゃあないだろ。こうなったら肝据えてやんべえ。最初だから失敗してあたりまえだーのクラッカー。」
隅でそそくさと準備する面々。アンプにシールドぶっさし、シローの手伝いで何とかドラムセッティングし。アンプのヴォリュームもシローちゃんまかせ。

「えーみなさん。パーテーオーン。今日はありがとう。まず最初はこの連中。この若いやつらのおかげでこんなことになりました。横浜ブギー・ブラザース。気合入れて行ってみよー!!」

ケン「チェックちぇっく、おーうーあー。声こんなんでいいすか。うえー。えー、ご紹介にあずかりますたブギブラザースでででででー」
おさむ「ええーい。みんなのってるかー。」
うおー。やれー。
おさむ「いくぞー。最初はスローライドだー!!」
ケン「え、スローライド。おいみんなスローライドだ。いくぞー。」

イットク、スティックでカウント。
かんかんかんかん。
ズズッジャズズッジャズズジャー。ズズッジャズズッジャズズジャー。
ひゅああああああああああああああん。おさむのスライドがカットイン。おおなかなかかっこいいぞ。
「ソーライ。てか意ー地ー。そーだい。てか意ー地い。♪」
途中そろりそろりながらツインリードも無事こなし。なんとか終了。

シーン。

ケン「わわわわ。駄目かあ」

わーーーーーー。わーーー。ぱちぱちぱちぱち。
いいぞう。兄ちゃんもっとやれー。ひゅうひゅううう。

おさむ「わわわわウケちゃったよ」
事前にこっそり音合わせしてて良かったなあと思う全員である。


「わー受けちゃった」
スロー・ライド一発決めたあと、大拍手、大声援をいただいたブギー・ブラザース、興奮で顔真っ赤喜んで顔真っ赤であります。
「よっしゃあ。続けてキャロラインいこう!ステイタス・クオーのナイスなナンバーですっ。」
ステージでMC仕切るのはおさむの独壇場になってしまった。

1,2,3,4
デコデドードド、デコデドードド、デコデドードド、デコデドードド♪
印象的なリフでずんずん
〜会いたーいーお前ーに〜つくづくなんてもんじゃー、ありゃせぬほんとだー♪
〜ちゃおお、すいキャロラー、なんとすいキャロラー、置いてけほらのってけほら♪

ズズジャズズジャズズジャジャー♪

「わー。わー。いいぞおらー。。」「おおおかっこいいいい」

「わーまた受けた。(小声で)しかしすげえ歌詞だなまったく。」とおさむ。
ここでケンも奮起、MCで頑張る。
「ありがとう。ありがとうございま。初めてみんなで合わせたとゆうのに。何とか2曲出来ました。えー続けてこ、この曲で初めてシローおじさんにギターを教えて貰いました。ロッド・スチュワートのスリー・タイム・ルーザーそしてホットレッグス!!」

完全にやりました。できっこないのにここまでかなりいけてる演奏。その2曲も何とかミス無く勢いでかましたブギブラだ。

「ははははははは。やったやった。」
「えーそれではZZトップのタッシュ行きます。    いけるかな。」

何か感じるとこあったか最後の方でやることになったタッシュ。

1,2,3,4
じゃッジャジャーッジャッジャジャー、あう、じゃッジャジャーッジャッジャ
ジャー、じゃッジャジャーッジャッジャジャー♪
〜あげな、ジャッジャジャー、
〜ことじゃ、ジャッジャジャー
〜俺は、ジャッジャジャー
〜まいらーないぞ、俺は負けない、ふううふうう
〜あれなんてことするだ、一目散にダッシュ♪

と歌の部分までは快調。だったが間奏ギターソロに入ってドラムのイットク焦り始める。
「お、お、お、お、お、」
初のシャッフルに合わせられなくなり収拾がつかないことに。
ばらばらとなりでこでんと演奏停止。
ケン「あー、やばー。やっぱしこうゆうことに」

「おーどうしたー兄ちゃん。シャッフルはでけんかー」と一番前席にいる親父。

おさむ「イットク。だいじょぶか?続けて出来るか?」
イットク「えろうすんまへん。何かひっかかっちゃって。すっまへんけどこの曲飛ばしてくれまへんでひょか。もっと練習してきまっから。」
ケン「わかった。じゃ最後のあれ行こう。」

「何してんだー。おらー。しっかりしろー」

ケン「すみません。まだまだ未熟です。それではこれにめげずに最後の曲。シローおじさん、お願いします。監獄ロックやります。」
シロー「お、お、お、俺がやるのか?いいだろう俺は。やんなくて」
ケン「しっかりバックしますからお願いしますぜひ。みなさん。シローおじさんがギターやってくれます。拍手をー」

「おーーーおーーーーいいぞうシロー、やれやれー」

シロー「仕方ないなあ。」と言いつつもすぐギター抱えて登場。どっかで一発やらかすつもりで用意してたようだ。

♪捕まるつもりじゃありゃしない、お手手が勝手に気の迷い、注意一秒怪我一生、気が付けきゃまたまたいつものところで♪

いよいよギターソロ。
爆発シローのギャロッピングギター。さすが元プロ、演奏の格しっかりしてどんどん引っ張り、ひっぱり、ひっぱりひっぱり

「わー、いいぞうやれやれーい」

シローの合図で盛大なるエンディング、  ぎゃんぎゃんぎゃんぎゃんぎゃああああああん。 
  ギャン。
ばっちりきまった。



じゃあああああん じゃん。

おーいえー。いいいぞーいいぞーーー。ぱちぱちぱちぱち。ひゅー。ほーほーほーほー。

大声援の中何とか演奏終了。

「ありがとうございましたー。」

まったく最初の本格的バンド練習がライブになるなんてなあと思いながら一同退場。って行っても楽屋が無い。
汗をぬぐいながら席に付きました。
シローおじさんがやってくる。
「やー、君達なかなかやるじゃないか。まさか初めてであそこまでやるとは思わなかったよ。」
ケン「もーーー。びっくりしたっすよ。」
おさむ「聞いてないっすよおお。」
ショータ「おおおおおれ、音出てましたかでてましたかでてまたしか。」
バコっ。
イットク「・・・・・・・」

そこへアッコが飲み物を。
「お疲れ様ー。コーラをどうぞー。おじさんのおごりだって。」
ショータ「あー、先輩のだけ氷入ってるすよー。贔屓だー。」
確かにケンのだけ氷がサービス。
アッコ「あ、あ、あ、えーと私は君達のマネージャーみたいなもんだからね。」
ショータ「全然答えになってないなあ。」
ばこっ。ケンとアッコ同時にショータをパンチ。
「ぐげ。そこまで気を合わす事ないすよお。」
ケン「うぐ、ああ、うーん。えーとアッコ、マネージャーやってくれんだ。」
「ええ、まあね、あんた達だけじゃ何やらかすかわからんし。」
おさむ「確かに。」

わははははははははは。一同大爆笑。

勢いでマネージャーになってしまいましたアッコちゃん。こうなりゃ腐れ縁だ。

シロー「めでたくマネージャーも決まったことだし、あれだ、ちょっと楽器貸してくれないか君達。」
ショータ「わああこれもつながってない質問だー。」
ケン手を上げるも叩かずすかす。ショータ「ひっ」。
おさむ「え、何ですか。いいすよ。あんなんで良かったら。なあみんな。」
「は〜い」

シロー「よ〜し。おーい、ちょっとやってみないか。昔みたいに。」
シロー、ステージ真ん中まん前に陣取っている謎のハイカラ親父群に声をかける。
無責任そうな親父「ひゅー。やるかやるかー。せっかくだしなあ。」。トランペットを持っている。
サンラ似の親父「おう。それじゃいくか」
ゴリラ似の親父「ういーっす。」

シロー「おーい、岸田君、君もやらないか。持ってきただろ。言われた通りに。」

いつのまにか来ているハマ楽器の岸田さん。しかもウイズ・サクソフォーン・テナー。
「ええ、お祝いですから。やりましょう。」

とゆうことで突然始まる親父バンド・ジャム・セッション。サンラ似の親父はドラム、ゴリラはベースであった。
シロー「えー、みなさん。若い衆の元気な演奏が終わったあとで何ですが・・・昔取った杵柄、おじさんバンドの演奏に良かったらお付き合いください。」

おさむ「なんだなんだー。凄いぞ。うおーーーーーいいぞいいぞおお。」
イットク「いよっ。大統領。死にぞこないっ。」バコッ。
ひゅーひゅーひゅーうううう。

無責任「おーし。何やるか。ズンドコかー。」
シロー「あれやりましょう。」こちょこちょ。みんなそれぞれに耳打ち。

どでどどどど、どでどどどど。ベースから入った。チッコクッタカチンコクッタカ。ドラムがからむ。
ばおばおばおばおばおばお。サックスのリフ。テロリツリリラテリツリロリら。ギター。

ぷぱぱぱーぽぱらつぴー。ぷぱぱぱーぽぱらつぽー。トランペットが主旋律。

ここれは、チェニジアの夜だ。モダーン・ジャズ。もちろんブギブラの面々わかろうはずもなく口あんぐり。

何回かメロ繰り返したあと、いきなりドハデな展開に。

パーロットパーロットパラテュチャン、パーロットパーロットパラテュチャン♪
そしてサックス・ソロに突入。
ブババボブベブリブリブリブリ〜〜〜〜〜〜。

ケン「うわーーーーー。岸田さーーーーーん。」
おさむ「わわわわわ、俺達すげえ人に囲まれてたんだなあ。やべえぞこりゃあ。」

驚くのも無理は無い。それはまさしくプロ。トンでもない演奏であった。


シロー・バンド、親父部隊の演奏はさらに続いた。
続いてベンチャーズのウォーク・ドント・ランを軽やかにかましディック・デイルのミザルーではシローおじさんのトゥワンギン・ギター炸裂、新装間もない店の壁が震える。次のベートーベンの喜びの歌までサーフ仕様。一転マイルス・デイビスのラウンド・アバウト・ミッドナイトでは無責任親父のトランペットが会場を酔わせる。かと思えばミンガスはんの直立猿人で岸田さんのサックス爆発。プレスリー・メドレーをやってマンボやって最後はチャック・ベリーのジョニ・ビー・グッドで〆。シローおじさんボーカルもなかなかやるぞ。あまりのことにブギ・ブラザースの面々は口アングリ。ただただワアワア言って拍手のし通しだ。それはアッコも同様でおじさんの演奏する場面を始めて見てハンバーガー、オーダーされるもいつまでも作る事無くボーっとして見続けていた。

シロー「えー、どうだったかな。最後はそこのおじょうちゃんのためにサザエさんいこか。」
ジャンジャンジャンジャン。インストでサザエさん。
マコは大喜びで踊っている。

「ありがとう。ちょっと休憩です。もうあれだ飲み物とかは勝手にやってください。わはは。」

親父ども全員汗だくで席に戻る。
無責任親父「あー、熱い熱い。おいシローちゃん、ビール無いか?」
シロー「おうおう、今仰山持ってくるから。」
シローとアッコ、そして手伝わされたブギーの面々、大量の大生ジャッキを持ってくる。
サンラ親父「おー、来た来た。さあいくぞー。」
シロー「えー、じゃみんな。久々のギグに乾杯!」
「かんぱーーーーい。」
ぐおおおおおおおおお。
「うめーーーーっ」
「たまんねえなあ。やった後の一杯は。」
「ぎゃはははははははははは」

ケン「お、おじさんたち凄いです。改めてびっくりしたなあ。おじさんたちっていったい。」
シロー「ああ、紹介がまだだったな。えーっとこの無責任そうな兄さんは植木さんって言うんだ。」
植木「よっ!よろしくな。」
「そしてこのでかい顔の親父はハナさん。」
ハナ「よろしくー。」
「ベース弾いてたゴリラさんは、イカリヤさん。チョーさんって呼べばいいよ。」
イカリヤ「ういーっす。ゴリラはひでえやなあ。」
「岸田さんはもうみんなお馴染みだな。」
岸田「ははは。来ちゃったよ。」
「そしてこの若い人たちが横浜ブギブラザースだ。」
一同「よろしくおねがいしまーす。」

ケン「おじさんたちは昔シローおじさんと一緒にやってたんですか?」
植木「ああ。でかいバンドでなあ。もっと他に一杯メンツいたんだけど。」
ハナ「最後まで一緒にやったのはこのメンバーだな。」
イカリヤ「昔はこの辺のキャバレーはみんな生バンドでショーをやってだんだよ。」
シロー「まー忙しいはモテるやらで大変だったわ。」
ハナ「あの頃がハナだったわなあ。ぎゃはははは。」
おさむ「それにしてもレパートリー広いですねえ。と言っても曲はわからなかったけど。」

一同爆笑。

ハナ「まあな。客がやれって言ったらすぐ出来なかったら恥だったから。」
植木「そりゃもう必死に覚えたもんだ。」
ケン「岸田さんも凄いや。全然知らなかったサックスやってるなんて。」
岸田「ふふふ。」
シロー「この人は完全にジャズの人で。うちらとはあまりやったことはなかったけど有名だったぞ。ヨコハマに岸田有りって。」
岸田「いや。それほどでも。」
イカリヤ「ジャズも最近はすっかり下火だからなあ。悲しいよ俺は。ういーっす。」
植木「それはそうと君達さっきのが初練習だって。」
ハナ「そりゃ凄い。初練習がリサイタルかい。」
おさむ「ええ、実は。全然聞いてなかったすよー。おじさん。」
シロー「ははは。すまんすまん。待ちに待ったからなあ。まあ偶然お客さんもいたし良いじゃないか。」
ケン「いいじゃないかってもーーー!」
植木「いやでも大したもんだよ。なかなか最初からああは出来ないぞ。」
ハナ「そうだそうだ。あれでもっと練習したらプロになられるかもしれないぞ。ははは。
おい、ドラムの兄ちゃん。」
イットク「はいっ。イットク言います。どうかよろしゅう。」
ハナ「そうか。イットクちゃんか。うまくやったぞ。シャッフルの曲がうまくいかなかったんでへこんでるみたいだけど気にするな。最初からあれをガンガンやろうなんて百年早いわ。」
イットク「そやけど百年かかったらここにもうおらんで。」
一同大爆笑。
ハナ「なら半年にオマケしてやろう。練習せーや。」
イットク「はい。おおきに。頑張ります。」
マコにやり。
ショータ「ぼ、僕のベースはどーでしたか?」
イカリヤ「いやあのベースは良い楽器だわ。まさか本物弾けるとは思ってなかったよ。」
ショータ「えとえと楽器じゃなくて演奏なんですが」
「ああ、面白かったぞ。でもなんであんな弾き方するんだ?」
「えっ?弾き方?」
ケン「しーーーーっ!良いんだいいんだ。あれで。ばっちし。」
一同にウインクしまくり。
イカリヤ「おっ、何だ何だ。そうかそうか。おう、あれでいい、あれでいいぞ。」
がははははははは。

ハナ「よおし一杯やったし、そろそろ本気出していくかー。」
植木「そうだな。暖まってきたしな。」
シロー「ははは。そうだ。君達は適当な時間に勝手に帰りなさい。遅くなると家族の人たち心配するし。」
「はーい。」

そして親父達の再会ギグは続いた。ブギブラザースの面々、そしてアッコは9時ごろ帰ったが噂に聞くと演奏は夜通し。まじ朝まで続いたそうである。

ケン「そいじゃなあ。みんな。ごくろーさん。」
おさむ「おつかれー。次の練習は明日学校終わってからだ。」
ケン「授業終わったらバーガーシローいや桃屋に全員集合!」
「はーい」
「じゃあなあ」「どうもー」
全員散会。

ケンとアッコの家は比較的近く方向が同じだったので最後は自然と二人で帰ることになりました。
posted by 山 at 09:57| Comment(0) | TrackBack(1) | 第5回「いざライブ」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月09日

第4回「全員集合」

004.jpg


翌日、各々バーガー・シローに向かう。集合時間は5時。だったがほんとに来るか心配になったケンとおさむ。一足先に落ち合ってイットクとショータを迎えに行くことに。
イットクのうちはイセザキ町からちょっと離れた京浜急行ヒノデ町の駅の向こう側、山間とゆうか丘の中腹にある。ここらでは金持ち住宅街。近くにはノゲヤマ動物園あり。おっちらおっちら坂を上った二人、どでかい邸宅の前に。
ケン「うわ、こんなにでかかったっけ。イットクの家。」
おさむ「親は何やってんだろ。ケン知ってるか。」
ケン「いや、謎。だけど共働きだって言ってたな。だもんでいつも妹の面倒みろって連れてるんだろ。」

ぽーーーん。ひじょーに上品な音のするチャイム。
インターフォンから声が。
「はい。」女性の声だ。
ケン「えーと。こんにちわ。イットク君の友達のケンですけど....。イットク君いますか。」
女性「はい。おります。ちょっとお待ち下さいませ。」
しばし.....。
がちゃ。玄関の白いドアが開いた。
中からマコ連れたイットクが出てくる。
「こんちわ」。マコもペコリ。
おさむ「お、準備いいな。グッドタイミングだったのかな。」
イットク「丁度今出ようと思ってたんで。」
ケン「よっしゃ。まだ時間はたっぷりあるからショータんち行った後、楽器屋にみんなで行こう。」
イットク「は〜い。」
妙に聞き分けが良い。
ケン「そういやインターフォンで出た人誰だったんだ。」
イットク「あー、あの人でっか。お富さん。お手伝いはんです。」
ケン&おさむ「お手伝いはんっ!?」

一同昨夜訪れたばかりの蛇屋に今日も到着。
ケン「問題はここだな。」
ピンポーン
がちゃ。
ショータ「あ、どうもどうも。先輩。迎えに来てくれたんですか?。」
パコっ。頭はたきながらおさむ「おう早くしろよ。」
ショータ「はいはい。準備OKです。行きましょう行きましょう。」こちらもやけに機嫌がいい。
ショータ「あ。これ持って行かなきゃ。」
レコードを袋に入れて手に。
ケン「おー、聴いたかステイタスクオー。気に入ったか?」パカパカパカ、ロールで頭はたく。
ショータ「ひ。気に入ったもなにも。良かったすよー。特にロール・オーバー・レイダウン。あれが一番良かった。」
イットク「おいおいおいおい何いってんねん。イズ・ゼア・ア・ベタアウエイちゅう曲が一番やでー。」
ショータ「なことないよ。レイダウンっ。」

ケン&おさむ「おまえらなあ」

ショータ「これお返しします。ばっちしテープに録ったんで。」
イットク「あ、わても。おおきに。」
ケン、それぞれのレコードをジャケットに納める。2枚組が戻ってきた。
ショータ「あとでそのバンドのこと詳しく教えて下さい。もっと聴きたいんで。」
イットク「あ、わてもわても」

ケン&おさむ、にまあと笑う。

さて
一同向かった先はお馴染みハマ楽器。団体さんで2階に上がる。
ケン「あー、いたいた。岸田さん。」
岸田さんはハマ楽器の店員さん。
おさむ「ベース下さいな。下さいなって言ってもこいつが買うんですけど。」
ごそごそ。
岸田「お、君達か。何やらえらいことになってるな。話は聞いてるぞ。シローさんがこの頃しょっちゅう来て。今朝ももう。あの人のんびりそうに見えてけっこうせっかちなんで。あ、今日、店に行くんだろう。ははは。びっくりするぞう。」
「おう、この子がベースやるのか。こっちの女の子じゃないよなまさか。」
おさむ「ははは、違います。今日何かシローで起きてるんですか?」
岸田「口止めされてるからなあ。親父さんびっくりさせたいんだろう。とにかく行ってみな。」
ショータ「はじめまして。ショータって言います。あのう、ベースっていくらくらいなんですか?。」
岸田「私は岸田。こちらこそよろしく。えーと予算はいくらくらいなんだい?」
ショータ「とりあえず20万持って来たんですけど。足りますか。」
一同「に、20万ーーーーー!!」
ケン「おまえんち、見かけによらず金持ちなんだなあ。」
岸田「20万もあれば本物が買えるな。これなんかどうだい。」
岸田が見せたのはフェンダー・ジャズ・ベース。
「新品だけど17万で買えるよ。弦もサービスで付けちゃおう。」
ショータ「どうなんすか先輩。何かこうかっこがあまり良くないようですけど。」
おさむ「お前何をゆう。フェンダーさまだぞ。ジャズベさまにそんな口きくと口が曲がっちゃうぞ。」
ケン「まーまー。興奮ストップ!。これはだな。アメリカのギターのメイカーじゃ一番を争うとこのもんなんだぞ。ジャズベースっていって音は極上なんだ。そうですよね、岸田さん。」
岸田「そう、その通り。うちにあるのはその中でもピカイチのものだよ。」
ショ−タ「じゃあそれにします。くださいな。」
岸田「ブラウンサンバーストのジャズベお買い上げー。」
もうニッコニコである。
「ソフトケースも付けちゃおう!!」

おありがとーございましたー
の声を背中に一同ハマ楽器出発。
ケン小声で「おいおさむ。やったな。これでベースの音だけはばっちりだ。」
おさむ小声で「ああ。これは何としてもショータをいっちょまえのベーシストにしなけりゃ。」
マコがそれを聞いて思い切りニマーっと笑った。
それ見て二人もニマー。

イットク「あ、わて忘れ物ありまっさ。ドラム・スティックっているんじゃないでっか」
ケン「あっ、そうだ。」
イットク「マコのことちょっと見といてくだはりませーーー」
と言いながら駆け足で店に戻るイットク君。



 慌ててドラム・スティック買いに行ったイットクも合流、5人はバーガー・シローの前に到着する。店の様子がおかしい。玄関が工事中。おそるおそる入って行く5人。

ケン「こんちわー。わ!どうしたんだこれは。」
おさむ「工事中だ店の中も。」

奥にシローを見つけた。

ケン「おじさん、これどうしたんですか?」
シロー「どうしたもこうしたもご覧の通りだよ。」
おさむ「ご覧の通りって....何工事してるんですか?」
シロー「わからんかなあ。店の模様替え。それと防音工事だよ。」
5人「防音工事ーーー!」
シロー「ああ。面白そうなんで夜はライブハウスでもやろうかと思ってね。」
5人「ライブハウスーーーーー!」
シロー「ライブハウスってんだろ。今時のナイトクラブは?」
ケン「うーん、ちょっと違うかもしれないけど...。」
おさむ「よくお金ありましたねえ。」
シロー「へへ。パチンコに使わなきゃこれくらい出来るよ。あ、それはともかくこれをご覧。」
シロー、奥の一角にあるスペースに置いてある荷物の白いカバーをめくる。
イットク「あーー、ドラムやー。」
ショータ「あーー、それ、ベース・アンプですよねー。」ボカっ。
ケン「あ、脇にマイクスタンドまであるぞ。」
おさむ「すげえや....すげえ。」
シロー「ははは。どうだい。一式あるぞ。すぐ演奏出来るからな。バンドさん。早くものになっておくれ。」
ケン「え、バンドってうちらのことですか?」
シロー「ああ、他に誰がいるんだ。」
おさむ「おじさんも気が早いなあ。」
6人、爆笑。

アッコ「ほんとせっかちなんだから。」
奥からアッコ登場。
「君達のおかげでおじさんに火がついちゃったわ。」「まあ、パチンコばかりするよりましでしょうけど。」

ケン「へへへ。あ、おじさん、紹介します。こいつショータって言います。ベースやらせますので。」ペンっ。
ショータ「あ、どうも、あの、あの、はじめまして。ショータって言います。何だかわからないのですが、ベースだけは買いました。はい。」
シロー「おー、君がベーシストか。どらどらベース見せてごらん。」
ショータ、おずおずとソフトケースからベースを出す。
シロー「おっ、これは驚いた。本物のジャズベースじゃないか。よく買えたなあ。」
ケン「おじさん、こいつ、ほらあそこの蛇屋さんの息子ですよ。」
シロー「ああああ、あそこの子か。どうりでどっかで見たことあると思ったよ。あそこの子ね。だったらお金持ってるなあ。ははは。」

シロー「そうだ。せっかくだから音出してみるかい?」
おさむ「音って、工事してるじゃないですかー。」
シ「ああ、いいんだいいんだ。ステージはもう今日の工事、終わってるから。」
ケン「終わってるって、まだあっちじゃ工事中で。おいおいマコちゃん。」
マコ、ドラムセットに座ってパンパン叩き始める。
おさむ「じゃあ、せっかくだからなあ。」「出してみるか」
ショータ「えー、僕初めてベースさわるんですよー。」
ボカっ「テキトーにあわせりゃいいんだ。どうせみんな初心者だし。」
ショータ「うそー。」ベシっ。
イットク「おいマコ。お兄ちゃんが叩くから。どきなはれ。」
ぱたぱたぱた。なかなかどこうとしないマコ。しぶしぶスティックをイットクに渡す。
ショータ「えーと。このコードどこに刺すんですか。」
シロー「ああ、これはここに。ボリュームはこんなもんだ。」
まったくベースを触ったことがないショータ。とんでもなく低い位置でベースを構える。しかも左右逆。それを見たシロー、
「あ、それじゃあ。君弾きにくい....」
ケン「あ、おじさんおじさん。こいつはこれで良いんです。」
シロー「えっ?」
ケン、おさむのほうを振り返って舌を出す。小声で「あの方が何かかっこいいもんな。」「ああ、そうだそうだ。」
「おじさん、この前のロッドの曲、やりたいんですけど。ベースどう弾かせましょうか?」
「そうだな。君は、えーっと。逆だからわかりにくいな。はは。この指でここを押さえて。そうそう。左手の人差し指で弾いてごらん。ほら。」
べんべん。4弦のAの音。
「はは。楽器が良いからちゃんと音が出るな。ぼんぼんぼんとあの二人のギターのリズムに合わせて弾けばいい。」
ショータ「はい。なんとか...。こうですね。」
イットク「あのー?」
ケン「何かー?」
イットク「どうやって叩けばええのでっか?」
シロー「ああ、スティックはえーとロックはこうやって持てばいいんだろ。それで右足はそこのペダル、でっかい太鼓のだ。そこに置いて。左足はその左側の金物のペダル。とりあえずずっと踏んでなさい。それで右手でその金物をぺんぺんと」
イットク「ぺんぺんと」
シロー「左手は真ん中のドラムをたんと」
「たんと」
「それでぺんぺんはずっとやりながら左手でぺんたんぺんたん叩いてごらん。」
「ぺんたんぺんたん」
「そうそう」
「あのう。右足は〜」「あ、右足は調子に合わせてテキトーに踏んでごらん。」「テキトーでっか。」
ぺんたたぺんたどすんぺんたどすん。出来てないと思う。
ケン「よーしこれでばっちしだ。やろうやろう。」
シロー「そうだそうだ。君達バンド名は何にするんだ。」
ケン「それならもう決まってます。」
おさむ「きまってるのかーーー!?」
ケン「横浜ブギ・ブラザース!!。レッツゴー。1,2,3,4.」
ずずちゃちゃずずちゃちゃどんどづべんぼごぶるぶるずずずず。

アッコ「きゃああ。何これ。ひどすぎー。」
シロー「よっしゃよっしゃ。横浜ブギ・ブラザースか。チラシ刷らなきゃな。」




数十分、曲の構成も無視、音楽だか騒音だかわからぬ音を出し続けたブギー・ブラザースの面々。さすがに精も根も尽き果てて演奏を終了する。

ケン「うひょー。楽しいなあ。」
おさむ「やっぱバンドで音出すと違うなあ。」
イットク「でかいすねえ。ドラムの音って」
ショータ「これでいいのかなあ」
マコ、にやり。

アッコ「あー、やっと終わったー。何なのこれ。」
シロー「ははは、最初だからなあ。こんなもんだ。とにかく音を出さなきゃ。」

落ち着くと自分達が出した音がトンデモないものであることに全員が気付き始めた様子。

ケン「うーん、それにしてもやっぱ初心者、何とかしなけりゃ。」
おさむ「そうだな、そりゃ練習しかないけど。・・・・まず何をやるか決めなきゃ。」
ケン「おじさん、ぼくらものになるまでちょっと時間かかりそうです。」
シロー「ははは。そりゃそうだ。音楽はそんな甘くないからなあ。ま、じっくり相談して練習して。ここ夜、店を閉めた後なら使っていいから。」
おさむ「でもライブハウス、すぐ開くんじゃないですか?」
シロー「いやいや。元はといえば君達のせいでこんなになったんだ。最初のバンドは君達だよ。まああせらないでやるといい。」
ケン「すんませんいつも。それじゃてめえら。俺に付いて来い。」
おさむ「てめえらってお前がリーダーかい。このー。」
ケン「わはは。そゆうこと。おじさん、今日は工事中なんで邪魔になるから失礼します。打ち合わせして曲覚えて、練習出来るようになったらまたよろしくお願いします。」

全員「お願いしまーす。」

シロー「へたくそだけど息だけは合ってるな。よっしゃよっしゃ。まかしときなさい。工事は一週間くらいかかるんでその間に曲を覚えたら良い。」

ケン「はい。それじゃ失礼します。」

全員、会釈して店を出る。

歩きながらの打ち合わせ。
ショータ「先輩、それでどうしたらいいんすか。ベース弾けるようになるには。教則本を買わなきゃいかんですか。」ボカっボクっ。
ケン「馬鹿ゆうなよ。ブギに教則本はいらん。おいイットクもおさむもこのバンドでは教則本禁止だからな。」
イットク「そないな殺生な。ほなどうやっておぼえたらええのですか。」
おさむ「へへへ」
ケン「そりゃあもちろん耳で聴いてその音を出せるようになれば良いんだ。さっき基本的なことはおじさんに教わっただろ。そうだわかんなくなったらおじさんに聞けばいいよ」

「は〜い。」

おさむ「それで曲はどうする。」
ケン「そうだなー。とりあえず3曲くらい覚えようか。」
おさむ「1曲はスリー・タイム・ルーザーとして。」
ケン「ホットレッグスもやりたいなあ」
おさむ「スロー・ライドも」
ケン「ZZトップのタッシュもかっこいいぞ」
おさむ「そんなこと言ったらロッキ・オー・オバザワールド♪も絶対だ。」
イットク「もう5曲でっせー先輩〜」
ケン「わはは。5曲だ。じゃあ5曲にしょう。」
ショータ「ええかげんなリーダーだなあ。」ボカッ。

ケン「よっしゃ、おさむ、後でレコード借りるよ。テープ4本作って明日渡すからそれで覚えることにしよう。」

ショータ「あ、先輩。俺もブギのレコードもっと聴きたいんですけど。レコード屋さんに付き合ってもらいますか?」
イットク「あ、わいもわいも」

おさむ、小声でケンに「おいおいこいつら金持ってるからこいつらに色々買わせようぜ。うっしっし。」
ケン、ウインク。

ケン「ごほん。う、ああ。時間無いけどな。しょうが無いから付き合ってやる。」

何と全員いつのまかハマ楽器の前に。

おさむ「お、いつのまに。やっぱ神に導かれてるのか。」



翌朝、製作したテープをケンは店に行っておさむに渡し、さらにショータに殴りながら渡し、ショータは学校でイットクに渡した。ショータとイットクは同じ私立のY高校の生徒なのだ。おさむはY高校と甲子園出場を争うことも多い市立Y商業。ケンは県立H高校。一応受験校だが、そこそこの大学に一発で受かるほどの頭の持ち主はいない。当然、ケンもすぐ就職は嫌なのでどっかの大学に入りたく思ってはいるよう。だが実感全然無く先日学校でやったO文社の模擬試験の結果がすべからく「合格確率0〜5%」でも、おお0じゃないのかと至って呑気。どうするのだ。

その日の夜
おさむの家。
「何だよー。ロッキンじゃないじゃないか。」
テープをかけたおさむが文句を言っている。気が付けばテープのケースの中に紙。
「「ロッキンも良いけどキャロラインの方がのれると思ったぜ。だから替わりにキャロライン。よろしくー」」
「まったく勝手なやつだぜ。キャロラインでも良いけど。でもこれライブのテイクじゃないか。メドレーでつながってるよ。終わりどうすんだ。」
文句言いながら、教則本禁止のお達しに関わらずこっそり買っておいたコード本見ながらコピー開始開始。

ショータの家
シローの店での初ギグの時に教えて貰った通り、ベースを反対側に持ちながら悩んでいる。
「えーと、こうやってベース持つんだよなあ。何かしっくりこないような。うーん。取りあえずアンプのBASSを上げて音を拾ってみよう。あれー、もわもわして逆にわからないよ。普通でとるか。えーとこの音だな。どんどんどん♪。ははは、同じ音ばっかだ。簡単かも〜。どんどんどん♪。ここで替わるんだな。おっし。えと同じのが多いから問題は順番だ。紙に書こう。」
曲が変わったのも気付いておりません。

ケンの家
「あいつら文句言ってるだろうなあ。キャロラインの方が歌いやすいんだもん。へへ。えーと歌詞か。英語だなあ。うーん英語だ。うちにあるレコードは歌詞カードあるからまだいいけど。無いやつは聴きとるのか。出来ん。電話しよう。」

ぷるるるぷるるる
じょわいーんじょわいーん
「はい来々軒。」
電話を取ったのは真奈美姉ちゃん。
「もしもしケンですけど。こんばんわおさむくんお願いします。」
「あらケンちゃ〜ん。おさむ?いるわよ〜。ちょっと待って。」
おさーむうう。おさむーーーー。電話の向こうで物凄い声で呼んでる。
「今来るからね。ああ、そうそう、お兄ちゃん元気〜。帰って来てるの〜?」
「あ、はい。ええと全然帰ってこないんで。あ、わかりません。今度帰って来たら一緒にラーメン食べに行きますんで。」
がっかりした様子で
「あーーんそうなの。(急に立ち直って)ほんと帰ったら一緒に来てね。大盛りにするからーん。」
悶えている。
「あ、ケン。なんだよ。おう、あれじゃんか曲が変わってるぞ。」
「おうすまんすまん。あっちの方がいいだろう。いいじゃんか。大して変わらないし。あはは」
「そりゃ全部ブギだからなあ。変わらないと言えばかわらんけどよ。あっちもこっちも同じくらい好きだし」
「えーとそれで歌詞のことなんだけど。適当に日本語で作っていいか?」
「おいおい日本語かよ。だっせーんじゃないの?」
「だって英語だって俺が歌うんだぜ。情けない発音だからなあ。その方がださいぞ」
「そうか。あはは。それもそうだな。それでかっこいい歌詞つくれんのか」
「まかせなさい。それは。って自信ないけど。取りあえずやって見るから。助け求めることもあるかもしれないけど
そのときゃよろしく」
「よろしくって。まあしゃあないな。とにかくやってみんしゃい。」
「ああ。この件、あいつらにはどうする?」
「ああ、いいよいいよ。どうせそんな余裕はやつらにはないでしょ。気がつきゃせんて。えーとそれだけか?コピーで忙しいんだから邪魔すんな」
「このやろ。俺はコピー+歌詞なんだぞー。じゃあな」
電話を切ったケン。うーんこれはこれで大変だーと思いながらラジカセのスイッチを入れた。

翌日の昼。
私立Y高校。イットクの教室。数学の授業中。
たかたかたかたかたかたかたかたか たかたかたかたかたかたかたかたか
「こらあ誰だ。机叩いて妙な音出してるのわああ!!」

イットク、はたっっと気付き顔が真っ赤に。下を向く。
「どうもすんまへん。」



テープを渡して3日目である。進行状況ととあることをたくらむケンは各メンバーに召集をかけた。場所はおさむんち、来来軒の2階である。

ガラガラガラ。
「こんばんわー。」まずはケン登場。ぞろぞろと後ろからイットク、ショータ、マコがついて来る。ケンと待ち合わせをしてから来たのだ。怖いらしい。

ショータ「こんばんわ。お久しぶりです。」
イットク「こんばんわ。」
マコ。ニコっ。

親父「おう、来たな。みんなでっかくなって。」
マナミ姉ちゃん「ようこそいらっしゃい。あらマコちゃんお姉ちゃんのこと覚えてる〜?」
マコ首を横に振る。
マナミ「あら、あんなにラーメンご馳走したのに。ま。」
親父「おいおいちいせえんだからしょうがねえだろ。ま、ま、そこにすわんな。」

2階からおさむが降りてくる。
「おいおい、父ちゃん。そこに座らせたら話が出来ないだろ。」
親父「何言ってんだ唐変朴。みんな懐かしいじゃねえか。うちに来たらもうラーメン食ってもらわなけりゃなあ。」
カウンターの方向いて
「なあ腹減ってんだろ。まず食って食って。」
全員カウンターで凍ってる中どんどん麺を茹で準備準備。
「はいよ。ラーメン4丁。中学時代以来だからなあ。今日だけはおごりだ。さあ食え食え。熱いから気をつけろよ。」
全員「いただきまーす。」

ずるずる
マナミ「あんたたち剣道は今もやってんの?」
ずるずる
ショータ「あ、いややってません。元々弱かったんで。先輩も悪かったし。」
ボカ。
ゲホゲホゲホ。
ケンが後頭部はたくと麺が鼻から出てむせた。
マナミ「相変わらずねえ。あんたたち。」
イットク「はい。そのようで。」
全員爆笑。

「ごちそうさまでした。」
「美味しかったなあ。」
「やっぱここのラーメンが一番や。」
マコ、うなずく。
親父「ははは、そうだろそうだろ。今度はお客連れて来てな。どんどんどんどん」
「はーい」

ケン「じゃあ2階おじゃまします。」
全員2階のおさむの部屋へ。ショータはベースをケンもエレキを持って来ている。

親父「何するんだろなあ。あいつら。」
マナミ「何か楽器持ってきたみたい。まさかバンドでもするんじゃないわよねえ。」
親父「おい、後で様子見て来い。」

おさむ「今日は何なんだよ。みんな集めて。」
ケン「おう、おじさんの店で練習する前に1回ここで合わせておこうかと思って....。それとな。もう1曲テープ持って来たんだ。」
イットク「も1曲でっか?きついなあ。」
ケン「いや、とゆうのもこうなったのも全部おじさんのおかげだろ。1曲ぐらいおじさんが喜んで参加出来る曲やりたいなあと
思って。」
おさむ「うん、それもそうだ。で何だよその曲?」
ケン「じゃーん!これだ。」
テープには監獄ロックって書いてあった。
おさむ「監獄ロックうう!プレスリーかい?」
ケン「ノーノーノーノーノー。甘いな。我らブギ・ブラザースにとって監獄ロックと言えば....」
全員ぽかん。
おさむ「あ、わかった。ZZトップだろ。」
ケン「ピンポーン。大正解。これなら文句ないだろ。まあ簡単なんで各自、家に帰ってコピイするように。」
「へ〜い。」

ケン「それではと。何かそっと合わせてみようか。出来たんだろコピイ、お前ら」
ショータ「一通りやりましたけど。自信はあんまり。大体良いのか悪いのか。」
ボカっ。
「うじうじ言わないっ。ブギはひたすらやるのみだー。そら全員で。」
「やるのみだー」
おさむ「じゃあホット・レッグスやろうか。最初に入ってた曲だからさすがに出来てるだろう。」
ケン「おう。実は仮の歌詞もそれしか出来てない。わはは。」
イットク「しっかりしてや〜リーダー。」
ケン、イットクをはたこうとするも空振り。しかたないからショータをはたく。
ボカっ。
「いてえなあ。俺じゃないっすよ。言ったのは。」

「よしやろう」
ずずじゃずずじゃ
   ずずじゃ ずずじゃ
ぽぺぱぽこぺんぱ ぷうぺぽーん 「お、すげえ弾けるじゃん」
ぽぺぱぽこぺんぱ ぷうぺぽーん

♪走りたいーけど 走れないのさ ここ最近走り過ぎ (最初は小声で)
  3年続けてー 毎日放課後 
シゴキさ

「はい全員で」
ホットレッグス 飛び出す
ほっれー 君じゃない
ほっれー 叫ぶぜ

「うるせーっ。おめえらいったい何騒いでんだ。コラーっ。」by花沢徳衛in階下ラーメン。

ケンびっくりして急に小声で・・・

「好きよ骨♪」

おさむ小声で「何だよその歌詞。部活動じゃんか。」
ケン「わはは。足の歌だから陸上部だと思って。 まあとりあえず仮の歌詞だ。かっこいいやつに直すよ。」
おさむ「頼むよ。ほんとだろうなあ。」
ケン「えへん。ところで君達なかなか出来そうじゃないか。安心したよミーは。」
ショータ「誰なんすかそれ」
ボカ。
「よしもう少しやってみよー。そっとな。」

5人顔つき合わせてそーっとしょぼーいギグ。

うんうん楽しいなあ。
posted by 山 at 08:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 第4回「全員集合」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月08日

バンドやろうぜ

003.jpg

アッコ「はーい。何。おじさん。」
2階から女子、学生風がのんびり降りてくる。顔には赤透明のざあますおばさまメガネ着用です。
シロー「お客さんなんだが。頼んでもいいかね。」
ア「いいわよ。あ、君たち!」
ケン&おさむ「あ!」
シロー「あ!はいいからとりあえず。お客さん待ってるぞ。」
ア「はい。えーと。何にしますか。」
アッコちゃん急いでエプロン付けて接客中です。
ケン「おい、アッコってあの子アッコじゃないか。」
おさむ「おお、アッコだぞ。なんでここにいるんだ。」
アッコ「はい。チーズダブルジャンボベーコンエッグポテトバーガーとポテトLとコーラLですね。合わせて380円です。」
ケン「おじさん?」
手早く調理するアッコちゃん。相当やらされてるらしく慣れております。
・・・・・・・・
料理が出来ました。お客さんに渡してアッコがやってくる。
アッコ「ケンちゃんとおさむ君じゃない。久しぶり〜。」
ケン「ああ。」おさむ「ああ。」
シロー「ああって君たち知り合いかい?」
ケン「ええ、一応近所なんで幼馴染です。」
おさむ「小学校が一緒。いぢめられたぞ。」
アッコ「何言ってんの。いぢめたの、あんたたちじゃない。」
シロー「ははは、こいつならあり得るな。」
アッコ「おじさんまで、もう。」
ケ「何でここにいるんだ。」
シロー「ああ、この子は私の姪でね。私がやもめなんで彼女の両親が心配してたまに様子見によこしてくれるんだ。」
おさむ「そうなんですか。ちーともしらんかったよ。」
アッコ「ところでおじさんも何かがちゃがちゃうるさいと思ったらみんなで何してんの?」
シロー「見ての通りギターを弾いてるんだ。」
アッコ「見ての通りって何で3人で」
シロー「ああ、この二人がギター始めるって言うんでね。ちょっとレクチャーしてたのさ。アッコちゃんもやるか?」
アッコ「お前もって、お店は」
シロー「ああ、そうか。じゃアッコちゃんしばらくお店頼むよ。」
アッコ「頼むよって。もう。バイト代は貰うから覚悟してね。」「それとあまり大きい音でやらないこと!」
ケ、お、シ「はーい。」
ケン、おさむに耳打ち「おい、アッコけっこうでかくなったな。」
おさむ「何がだ。」
ケン「バカ背丈だよ。背丈。」
シロー「おい、君たちやるのかやらないのか。」
ケ&お「はい。やりますやります。」
妙ないきさつで一つの目的を持った3人、一斉にブギを奏でようとしてます。
音はもちろん...
でっかいに決まってる。
アッコ「もう」。

ケン「いやあ、面白かったなあ。」
シローの店を出てようやく帰路につく二人。
おさむ「うん。でもおじさんがギタリストだったとは。しかもギンギンだし。」
ケ「ほんとたまげたぜ。」
たまげながらぽちぽちギターを背負って歩く。ケンはシローの店にギターを置かず結局家に持って帰ることに。やっぱり触りたかったのだ。

おさむの店の前で二人は別れる。

ケ「じゃあな。明日また。」
お「おう。家でさんざ怒られろよ。ははは。」
ケ「なんだよ。お前こそ。ここでへこまされるの見てようかなあ。」
お「へーだ。」

そーっと店に入るおさむ。客はいない。親父は奥で。しめしめとそーっと歩いて階段上がり無事2階へ到着。と思ったら2階で姉ちゃんにばったり。
マナミ姉ちゃん「何、あんたこそこそと。あー、何かついでんの。白状しなさいよ。ほら。ほらー。」
おさむ「えーっとこれはギターだけど。うんといや買ったんじゃなくてほら友達に借りたんだよ。うん。」
マナミ「いやだー。ほんとうかしら。まあお前にそんなお金無いしねえ。稼いだって言ったってギター買うほど上げてないし。」
おさむ「まあ、そうゆうことだから。あしからずー。」
だーっと自分の部屋に。
お「やべーよなあ。しっかしばれたらどうすんべ。まいっか、それはその時で。」
と着替えもそこそこ早速、ギター取り出して。そして机の上に置いてあった本を傍らに置き、ポッケからスライドバー取り出して。
本の名前は
「スライドギター講座」。
「えーとオープンAチューニングってやつはと....こうだな。」
ぺんぺんぺん。
「俺指短いからなあこうしないとブギーのリフ弾けないのだ。へへへ。」独り言が気持ち悪い。
オープンAチューニングとは開放弦をそのまま弾くとAのコードが鳴る変則チューニング。これなら2フレット分でリフが弾ける代物である。
「うーん、これしちゃうとスライド専門ギタリストになっちゃうけどまあ良いか、それも。」グイーン。



店の前でおさむと別れたケン、足取り相当重い。
「・・・・どうしようかなあ。怒られるよなあ。・・・・」
などと逡巡するも歩いてれば当然自分の家、毛糸屋に到着。店入り口の引き戸をそおおっと開ける。
がらがらがら。そーっとは無駄であった。
「あ、ケン。お前今何時だとおもっとるんじゃ。あ、何じゃそれは何かついでるんじゃ、えギター?。何でお前がギターもっとるんじゃ、え、友達に借りた。うそをつけお前が買ったんじゃないのか、なに本当だって?それにしてもそんなもん...」
「なんだー婆さん。騒いで。」
奥からのんびりした声で爺さんが出てくる。
・・・今だ!・・・婆さんが後ろ向いた瞬間たたたたたと2階へ駆け上がる。
「あ、ケン、話はまだおわっとらんぞ。この腐れ極道が。こら」
とその時電話が鳴る。じょりーんんん。

えんえんとしゃべっていたのはケンの婆さん、泉ばあちゃん。般若の顔の持ち主でこの毛糸屋の主、齢70を超えるとゆうのにさらに編み物教室などやってしまってるとゆう豪傑である。奥から出てきたのがタイジじいさん。仕事などせず髪結いの亭主状態をずっと続けている養子さん。ケンの一応味方ではあるがなんせ力が無い。ケンの父親は石油タンカーの船員でほとんど家におらず、この二人に育てられて今に至るとゆうわけだ。母親は4歳の時病死したと聞かされている。

「・・・まあああやって一回わあわあ言えばな。あとは忘れるだろっと・・・」

場面変わってシローの店。
「うーん、あれだな。これからあの二人が弾きに来るとすると...アンプ一つじゃ足りないな。よっしゃ、あれを修理に出すか。」
シローちゃん、るんるんしている。パチンコ行くのも忘れて奥から古いアンプ引っ張り出して来て楽器屋に行く準備。やっぱ根っからの音楽屋さんだったようであるアイデアル。


次の日うららかな春の日差しも感じられる北風の強い日。
家でのギター購入疑惑を何とかかわした二人が再びバーガー・シローを訪れる。ケンもシローもレコードを持っている。
ケン「こんちわー」
おさむ「どーもおじさん。昨日はありがとう。また来ました。」
シロー「ああ、君達。今日もやるか?」
ケン「あ、アッコだ。今日も使われてるんだ。」
アッコ「あ、じゃないわよ。おじさんあんたたちの来るの首長くして待ってたんだから。どっちにしろギターやるつもりだから私呼ばれたのよ。日曜なのにい。」
プリプリ怒っている。
シロー、視線を合わさずに
「おお、君達なんだいそのレコードは?」
ケン「ええと昨日あの後こいつと電話してどんなのやるつもりか、おじさんにレコード持って行こうって。」
おさむ「企みました。ははは。」
ケ「これがステータス・クオーってバンドのライブ盤です。」
お「これはロッド・スチュワートって歌手のアトランティック・クロッシングってアルバム。」
シ「ふーん。じゃあ聴かせてもらおう。そうだそれならその中の何か1曲聴いてそれを練習するってのはどうかい。」
ケ・お「あ、いいすね。」
シ「なら君達、練習の前にちょっと力仕事だ。ついてきたまえ。」
2階へ上がるシローの後を二人は付いて上がる。シローの部屋に初めて入る二人。
ケ「おーー。いかした部屋じゃないすか。おじさん。」
お「ほんと。ハイカラだぜ。」ケ「ハイカラってお前。ははは」
シ「まあ、それはいいから。ここにしまってあるステレオを下に持って行くんだ。」
ケ「おじさんステレオ2台持ってるんすか。すごいなあ。」
よいっしょっと各自デカスピーカーとアンプとプレーヤーが一体となってるとゆうレシーバーをもって下に降りる。
シ「このアンプの横にセッティングしよう。」
お「あーーー。ケン!ギターアンプが3台になってるぞ。」
ケ「ほんとだ。しかも増えたのはフェンダーのアンプだすげええ。」
お「どうしたんすか、これ、おじさん。」
シ「はは。一台は昔から私が使ってたやつだ。ちょっと修理したらまだ使えるみたいなんでね。もう1台は...。」
アッコ「おじさん、買っちゃったのよ。あの後、楽器屋行って。修理だけだって言ったのに。」
シ「いや岸田君に聞いたら中古があるって言うもんだから。3人いるんだからやっぱり3台ないとね。」
恥ずかしそうに笑っている。
お「いやさすがおじさん。いや師匠。」ケ「ほんとありがとうございます。」
アッコ「3台なんて音絞んなきゃきっと大変よー。」
シ「まーまー。じゃ聴いてみようか。どれが良いんだい。」
ケ「えーと。おさむじゃあロッドにすれば。」
お「おお。スリー・タイム・ルーザーにしようか。」
袋からLP引っ張り出して掛け始める。ミディアム・テンポのロックロール。MG’Sのビートも心地よい3回目の負け犬。
♪   ♪    ♪
シローがニコニコして聴いてる。

聴いてる。

聴いてる。

ノッテル。

ノッテルノッテル。

お「どうすか。おじさん。」
シ「へえ、けっこういいじゃないか。これなら私らがやってたのとさほど変わらんよ。」
ケ「やりー!!」
シ「じゃあ、早速やってみようか。最初だから3人でバッキング合わせてやってみよう。コードはこの前教えたやつだ。それができたら、私がリードとるから君達がバッキングしてみなさい。」
お「えー、おじさんもうコードわかったんですか。」
ケ「それにリードのフレーズも。さすがプロだなあ。」
シ「おべんちゃらは良いから。さあ、このシールド使って」
シールドもちゃっかり3人分用意してあったシローさん。
3人はアンプにそれをぶち込んでヴォリュームアッーーープ。
「1,2,3,4」
ずずぢゃぢゃずずぢゃぢゃ。
アッコ「もーーーーーーうるさーい。お客さん全然来なくても知らないからねっ!。」


1時間終わってはやり終わってはやりでようやく休憩のご様子の三人。
アッコ「あーーーー、やっと静かになった。」
シロー「やー、君達何とか出来るようになったじゃないか。」
ケン「おじさんこそ、すげえや。ばっちりソロ弾けるんだもん。さすがプロだなあ。」
おさむ「うちらも早く弾けるようになりてえなあ。」
シロー「その分ならじきに出来るようになるよ。」
おさむ「楽しいなあ。ほんと。」
シロー「ところで君達、バンドはしないのかい?」
ケン「ええ、もちろんしたいす。でも他の楽器やるやつ見付けなくちゃなあ。」
おさむ「なるべく言うことを聞くやつがいいな。ケンお前後輩で適当なの知らない?」
丁度その時
バーガーシローに久しぶりの客、高校生らしき少年と小学生の女の子が一緒に。
少年「えーと、わいはハンバーガーとチェリオ。じぶんは?」
女の子は黙ってメニューを指差す。なりはかわいいが顔はぶすっとえらい不機嫌。ちいともかわいくない。
少年「あ、チーズバーガーか。飲み物は?ああ、レイコね。お前随分生意気なののみはるなあ。」
女の子、ぷいっと横を向く。奥にいる3人に気付いて指を指す。
少年「あ、ケンさんとおさむさんや。」
ケン「あ、イットクだ。おいおさむイットクがいるぞ。」
おさむ「あ、ほんとだ。久しぶりだなあ。元気かイットク。」
ケンとおさむギターを置いてイットクの方へ。
ケン「お前なんだよ。その女の子は。」
アッコ「あのーご注文作って良いでしょうかあ。」
イットク「あ、はい。すみまへん。お願いしますわ。」
ケン「あ、じゃあ俺もハンバーガーとコーラ頼むよアッコ。」
おさむ「あ、俺も。」
アッコ「何呼び捨てにして。あーこんなにたくさん。」
シロー「おお、友達通しなのか。じゃあ私も一緒に作ろうか。」
ケン「あ、すみません。おじさん。こいつ、中学の時の剣道部の後輩なんです。」
シロー「ほー、そうなのかい。ゆっくりしていきなさい。」
イットク「はい。おおきに。」
イットクは中学の時大阪からケンの学校へ転校して来た少年である。実はケンとおさむも中学時代は同じ剣道部。
おさむが部長でケンが副部長であった。
イットク「あ、こいつでっか。いや妹でんねん。親がめんどくさがりよって何かちゅうと一緒に連れてけぇって
うるさいんでおます。おいマコ、お兄ちゃん達に挨拶せえ。」
マコ、不機嫌そうな顔のまま、ペコリとお辞儀。その顔はどうやら地で実際はさほど不機嫌でないらしい。
ケン「おい、おさむ。こいつって手があるぞ。」
おさむ「あっ、そうか。しめしめ。」
イットク「先輩、何がシメシメでんねん。」
ケン「あ、何でもない何でもない。ところでお前まだ剣道やってるのか?」
イットク「いやもういくら練習しても弱いさかい中学卒業してから竹刀も触っておりまへんわ。」
おさむ「ふーん。まあうちらもそうだけどな。で、もしかして音楽とか興味無いか。」

そこへアッコが出来上がったハンバーガーを持って来た。
アッコ「はい、どおぞ。」
ケン「おいアッコ覚えてないか?こいつイットク。大阪からやってきた妙なやつ。」
アッコ「え、うーん、あ、そうかイットク君。」
アッコは剣道部で試合の時だけ臨時マネージャーをしていたのだ。弱小小規模部だったので常時はマネージャーがいなかったのである。
イットク「あ、この方、アッコ先輩でっか。お美しくなりはったさかいわからんかったわ。」
アッコ「まあ、相変わらず冗談ばっかり。」バシっと強烈な平手をイットクの背中へ。
イットク「おおいて。冗談やあらへん。ほめたのに。」「あ、音楽でっか。好きでっせ。時々歌謡曲聴く程度でっけど。」
ケン「おお、それは良かった。それならお前バンドやる気ないか。何か出来るだろう楽器。」
イットク「何かって...」
おさむ「おお、そうだ、お前ドラムやれ。剣道部だから何か叩くことくらい出来るだろう。」
イットク「えー、そない無茶な。」
ケン「まさか断るなんて・・・・・出来ないよなあ。」
マコがイットクの袖を引っ張る。
イットク「えっ、お前までやれちゅうのんか。うーん、しゃーない。やりまっさ。でもドラムなんて買えまへんで。」

シロー「ドラム・セットなら私が用意しようじゃないか。」

三人「えっ。」

シロー「私の昔仲間で使ってないやつ持ってるのがいたはずだ。借りて来てやるよ。ここに置いて練習すればいい。
あ、そうだ、ついでにベース・アンプと何か鍵盤も借りてきてあげるから誰か探すといい。」

ケン「すげー。いいんですかー。ありがとうございます。」
おさむ「さすがお師匠!。おいイットク、この方が俺らの先生、プロのギタリストのシローおじさんだ。挨拶せぇ。」
イットク「はい。イットク申します。以後よろしゅう。」
・・・・・
 「仕方ありまへんなあ。やりまっさ。そのかわり練習の時こいつもいつも付いてきまっせ。」
ケン「良いよ良いよ。よろしくマコちゃん。」おさむ「よろしくー」
マコ、にこっと笑う。凄い顔だけど一応笑うと子供らしくかわいい。
おさむ「やったな、ケン。これでバンドが出来るぞ。」
ケン「イットクって手があるんならおい、おさむ、ベースにはあいつはどうだ。ほら蛇屋。」
おさむ「あ、蛇屋か。うん、あいつならいけるかもしれない。帰りに寄ってみようか。」
ベーシストの当てもあるようである。
一同何かにとりつかれたように一つの方向へ。これもバンドの魔力であろうか。


「そんじゃおじさん、よろしく。今日もありがとうございました。」
「さいなら。」ペコリ。
夜もとっぷり暮れた頃、バーガー・シローを出た三人。いやあと小人一人、向かうは蛇屋の息子のところである。
イセザキ町5丁目の向こう、シローの店よりさらにさびれた方に5分ほど歩くと右手に古びた漢方薬店がある。一際目立つその店構え。一段下がったところに引き戸の入口があり、中を伺うとアルコール漬けの巨大蛇がどーん。それでこの界隈ではもっぱら蛇屋の愛称で親しまれている。さらにはクマの手、怪しげな虫などのアルコール漬けも並んで置かれているその風景たるや圧巻で普通の人間が入りそうな雰囲気ではとてもありません。

なもんで三人、裏に廻ってそちらから。
ビー。ビー。
「へ。お待ちを。」
ギーっ。
中から老婆が出て来た。
「おお、お前たちか。久しぶりじゃのう。」
ケン「こんばんわ。遅くすみません。ショータ君いますか?」
「ええよええよ。ショータか。今呼んでくるから、ちと待っておくれ。」
今のはショータの母、老婆に見えるが実はそれほど歳取って無いらしい。

どんどんどん。階段下りる音。

「あ、どうも先輩。久しぶりっす。あ、おさむ先輩も。あ、イットクも。」「今日はどうしたんすか。みんなで。」
おさむ「久しぶりー。ちょっと散歩出来ないか。すぐ終わるけど。話があるんだ。」ボカっ。
ショータ「はい。はい。母ちゃん、ちょっと話してくるから。すぐ帰るよ。」
母ヒデヨ「ああ。あまり遅くまでふらふらすんでねえよ。」

三人、いや+子供とショータ、それほど遅くないのにすっかり人通りが絶えた商店街を歩く。
ケン「元気かー。最近何してるんだお前。」ボカっ。
ショータ「いてえすよう。最近って言っても相変わらずで何もしてないすけど。」
ボカっ。
おさむ「そうかそうか。なら好都合。お前音楽好きか。好きだよなー。」ボカ。
ショータ「え、音楽すか。うーん、あんまり聴かないなあ。ひっ。え、聴かないけど好きです好きです。」
ケン「そうかそうか、好きか。じゃお前うちのバンド入れ。ベースだ。入るよなあ。」ボカ。
ショータ「え、ベース。何すかそれ。え、楽器。ギターのでかいの?。だって持ってないす....」
ボカ
おさむ「買うだろう。けっこう小遣い貰ってるって昔言ってたじゃないか。大丈夫簡単簡単。」ボカ
ケン「またお前と何か出来るなんて俺たち幸せだなあ。」
ショータ「買うんですか?ひっ、買います買います。でも全然弾けませんよ俺。え、先生がいるんですか。バーガー・シローのマスター?ほんとですか?練習もそこで。え、明日から。じゃすぐ買わなきゃいけないじゃないですか。明日楽器屋さんに連れて行ってくれる。学校から帰ったらすぐ。明日ですかー?ひっ、いいですいいです明日で。待ってますから。はい。」

ケン・おさむ・イットク「お前、相変わらず聞き分けが良いなあ。」
マコうなづく。

この会話中50回はぶたれた、はたかれキャラ、ショータがバンド入り。これで最小人数は揃ったぞ。

あ、ショータはイットク同様、ケンとおさむの中学時代の剣道部の後輩であります。

イットク「先輩、ところでどんな音楽やるんですか?」
ケン「ああ、そうかそうか。聴かせなきゃわかんないよなあ。」
おさむ「じゃあこれ持ってけ。」
シローに渡したのがロッドのアトランティック・クロッシング。なもんで渡していないステイタス・クオーのライブ、2枚組な
んでこれを一枚ずつ二人に渡した。
ケン「これしっかり聴いとけよ。」
ショータ「聴いとけよってどこのバンドなんだか、イットクのと違う曲入ってるし」
ボカ。

2005年09月07日

登場人物

毛糸屋ケン(植草カっちゃん)
ラーメン屋おさむ(大徳寺くん、酒井トシヤ 。)
ラーメン屋親父(花沢徳衛)
ラーメン屋姉ちゃん(フジマナミ)
バーガー・シロー改めライブハウス桃屋、マスター、シロー(大坂志郎)
質屋店主(田中小実昌)
ハマ楽器店員キシダ。実はサックス吹き。(岸田森)
アッコ(坪田直子)
ケンの家の婆さん(原セン)
ケンも家の爺さん(殿山タイジ)
ケンの兄、トミユキ(国広トミユキat不揃いのリンゴ)new
イットク(岸部いっとく)
イットクの妹マコ(緑マコの子供時代)
蛇屋ショータ(森川ショータ)
ショータの母(天本ひでよ)
無責任そうな親父、植木。トランペッター。
サンラ似の親父、ハナ。ドラム叩き。
ゴリラ親父、イカリヤ。ベース弾き。
桃屋店員フィル・コリンズ・アッテンボロー・ゴンザレス(フィル・リノット)
やくざジャック(石立てつお)
やくざの子分ヤマモト(山本ノリヒコ)
やくざ兄さんオサム(しょーけん)
やくざ兄さん子分アキラ(水谷ユタカ)
コンテスト本部長(大泉あきら)
メタルバンド、コアラのマーチ、ベーシストミズカミ(水上コージ)
メタルバンド、コアラのマーチ、ヴォーカル、モンキッキじゅん子(ミハラジュンコ)
メタルバンド、コアラのマーチ、リーダー、ギター、コアラ(コアラ)
横浜すから座入場券モギリのおじさん(森川信)
横浜すから座売店店員(ウツミミドリ)
横浜すから座キンキン(きんきん)
映画館客親父(エバタタカシ)
ジョニーギター・ワトソン(特別出演)と美女二人(ふぃおな・あぽー誰?とオギノメ・ソレア・k子)
ジョニーのマネージャー(ドン・コーネリアス)
ナリタ・ミキオ(ザキ署刑事)
石橋ショージ(ザキ署刑事)
ショータの同級生ペペ(ほずみぺぺ)
シュータの学校の教頭(ホズミたかのぶ)
ショータの学校の先生(柳生ひろし)
ショータの学校の校長(片岡チエゾウ)
ショータの学校の理事長(りゅうち衆)
タカギアスカ(オカザキユキ)
キャシャリン芸能社社長 センダミツオ
タクシー運転手 谷K
屈強な男A きらカン
屈強な男B マツザキまこと
パンク姉さん(オカダ川井演ずるスージー・すー)
コンテスト決勝PA担当(管ぬき太郎)
コンテスト決勝PA担当会社社長ヒデジ(大滝ヒデジ)
posted by 山 at 08:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 配役 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

楽器を買おう

002.jpg

2,3日経過だ。

「おーやってるかあ。働けよー。」
バーガーシロー店先にやって来たはラーメン屋おさむ。今日はまじでラーメン屋。白ユニフォームでオカモチ持って。お前は岡本信人か。
「おーおさむ。やってるぞ。」
「なかなかよくやってくれるよ。ケン君は。最も時々居眠りしとるが。ははは。」
「マスターだってパチンコばっかじゃあないですかー。」
「ははは。けっこうけっこう。働け働け。」
「あ、お前ラーメンのびちゃうんじゃないのかー。」
「あ、いけね。じゃあなあ。」
とお約束の場面の中、♪あーなたーがのぞむなら〜っと♪とロッカーとは思えん鼻歌でおさむ退場。

と働き働きひたすら働き。土日も無しで働き働き。2ヶ月も経ったころかのう。
場所はまたしてもバーガー・シロー、カウンター。
「どうだ。2回目の給料日だったろ今日。けっこう稼いだんじゃないか?」おさむ。
「はは、まあね。お前こそいくら貰ったんだ。」ケン。
「俺か。おれはなあそうだな5万くらいだな。」おさむ。
「俺もそんなもんだ。」
「おお。じゃあ、そろそろか?」
「そろそろだな。」
「どこで買うか?」
「そうだなあ、アンプまで買わなきゃ話になんないだろ。だからやっぱあそこじゃないのか?」
「あそこかあ。しょうがないなあ。あるかなあ良いやつ。」
「まあ、行ってみなきゃな。駄目元だし。」

と2人が向かった先はそうです質屋。大岡川に沿った道沿いにあります。入ってみると店主はどう見ても田中小実昌。
「いらっしゃーい。」
「えと。エレキ置いてますか?2本」
「お、エレキ欲しいのかい。そこにぶらさがってるよ。好きに見て。」
「はーい。」
ぶら下がってるのは5本あまり。
「えーと、モズライトかあ。5万。どこのメーカーだこれ。」ケン
「これはストラトだけど...トムソンだ。ち、せっかく1万なのに。」おさむ
「お、このテレキャスはグレコだ。2万。グレコで一番安いやつだけど...」ケン
「良いじゃんかそれで。お前レット・イット・ビーで感動したんだろ。」おさむ
「うん、これにしよかな。お前は?」
「俺はこれだな。」
「何だよ、フライングVかよ。いくらだー」
「3万だぞ。安いぞ。一応グヤトーンだぞ。なぜ安いんだろう。グヤだからか。まいっか。派手だし。ははは」
「おじさん、ソフトケース置いてますか?」
「うーん、無いなあ」
「無いのかあ。じゃあそれは楽器屋だな。」
「あ、アンプもある。」
「えーとエルクだ。あ、ファズが付いてる。これにしよ。」
「一台しか無いぞ。どっちが買う?。」おさむ
「9800円だから俺が買うよ。お前もう3万じゃん。ギターだけで」
「おー太っ腹。おじさーん。これとこれ下さい。」
「はいはい。」

ついにギターを手に入れたブギブラザース。裸のギターとアンプ抱えて次に向かうはハマ楽器。かなりかっこ悪いす。



「おい、考えてみたらこれ持って楽器屋行くのまずいんじゃないか。」おさむ
「うーん、そうだな。かっこわるいし。ははは」ケン
「どーしようか。」お
「お前のとこに置いてくか?」ケ
「うちはやばいよ。親父にまだ言ってないんだから。とりあえず火吹くぞあいつ。」お
「何だよ。どーすんだ。」ケ
「何とかするよ。一通り怒れば気が済むからあの人。ははは。そーゆうお前は言ってあるのか?」お
「へ、うちもまだだ。」ケ
「婆ちゃん、怖いぞー。」お
「ま、何とかなるでしょ。借りたとか何とかごまかせば...。あ、そーだ、んじゃこれマスターとこ置かせてもらおうか。」ケ
「おお、それが良い。あそこなら安全だ。」
とゆことで二人で楽器屋の前にバーガーシローへ向かいます。中に入るといつもどおりマスター一人。これで食っていけるのが不思議。
「どーも、マスター」ケ
「おー、お二人さん。どうした今日は。働いていくか?。」マ
「働いていくって暇そうじゃないすか。ははは。えーと今日はこれをちょっと置かせて貰えないかと思って。」ケ
「お、なんだい。ギターじゃないか。そうか、買ったなあ。良いよ。そこへ置いていきな。」マ
「はい。すみません、感謝します。」お
「すぐ戻って来ますからー。」ケ

二人で今度こそハマ楽器に。ハマ楽器はおさむの中華料理屋からさらにさびれた方に5分ほど歩いたところにあるレコード屋兼楽器屋さん。1階がレコード、2階が楽器屋になる。二人ともレコ部門の方はひやかしでしょっちゅう行ってるので常連である。2階にもこれはほんとにひやかしで行ってるのでお馴染みさん。そこにはニヒルな店員兄さんがいる。雰囲気凄いけど意外と世話好きで親切。
「こんちわー。」
「あー、おさむ君か。ケン君もか。」兄さん(岸田森)
「えーと、エレキのソフトケース下さい。」ケ
「えっ。ギター買ったの。」
ケン、おさむにこっそりウインク。
「いやー、使ってない友達から強奪したんで。ははは。」お
「二人ともかー。(疑いのなまこ)まあいいや。なんだい。機種は。」
「えと、テレキャスとフライングVです。」
「こりゃまた渋いのと渋くないのの組み合わせだ。よしちょっと待った。.....これを使えば。どうせ金無いんだろう。」
と奥から埃まみれのケース二組持って来てくれた。
「あー、汚ねえなああ。」二人
「でも無料(タダ)だぞ。Vにはきついかもしれないけどこっちはベース用だから何とか入るだろう。」
「えー、貰います貰います。いいんですか。」
「あー。キズ付で売れ残りで奥で腐ってるやつだから。そのかわり他のはうちで買いなさい。」
「はい。えーとじゃあ弦も下さい。」
「太さは?」
「あ、ブギ用で。」ケ
「ブギ用ってお前あるかい。うーん、そうだなそれなら太めの方がいいんじゃないか。ちょっと弾くの大変だけど...
安いのがいいな。これを使ってみたら。」
とヤマハのライト・ゲージを出す。1セット。千円。
「はい、じゃあこれ一つずつ。えーとあとピックも。」
「ピック使うのか。贅沢だなあ。ははは。指で弾きなさい。」
売る気があるんだか無いんだかわからない。
「使いますよー。やってみないとわからないし」お
「ここにあるから好きなのにしなさい。」
「どれがいいかなあ。」ケ
「リッチーモデルじゃないことだけは確かだな。」二人で形見て大笑い。それはべっこうホームベース型。
「やっぱこれがいいんじゃないか。俺はピックだけでも本物。」とケンはフェンダーの三角形型ヘヴィ。硬ーいやつ。
「あーそうか。じゃあ俺も本物で。」とギブソンの黒いやつ。やっぱヘヴィ。
「あと何がいるかなあ。あそうだチュウニングしなけりゃ。」ケ
「チューニングしたいんですけど。」
「ですけどって金無いんだろ。だったら音叉とかでやりなさい。」 「はーい」
「あ、俺これにする。」っておさむが見つけたのが6個吹き口が付いた笛みたいなの。
「なんだそれ。」「ブー。」「俺はこれでチューニングする。」
それぞれ吹くと各弦の音に鳴っている笛のようである。
「ははは」マ
「あ、これも買おう。」プラスチック製のくるくる廻るやつを見つけるケン。
「何だそれ。あ、弦巻くやつか。贅沢だなあ。」「へへ」
それはバンドマンの間で「有ると便利」と呼ばれる弦巻き器。本当にそうゆう名前らしいのだが真偽は不明。
「えーとあと俺これも」
ケンが取ってきたのはスライドバー。金属製のものである。




おさむ「けっこう金使っちゃったな。」
ケン「まあ、サービスしてくれたし、しょうがないな。」
とか何とか言いながらも上機嫌な二人。憧れの楽器屋で買い物をしたんだから無理もありません。
スキップをしながら、なんて訳はありませんがいかにもしそうな勢いで我が愛器の待つバーガー・シローへ向かいます。

てくてくてく。店の近くまで来ました。するとバーガーシローの中からギターの音が聴こえるじゃありませんか。しかもギャロッピング・スタイルの轟音。チェット・アトキンスやジョージ・ハリソンもかくやちゅうもの。
お「何だ何だ何だ」
ケ「おいおいうちらのギターの音かありゃ。」
急いで店内に駆け込む二人。
「ただいまマスター。あーっ。」
店の奥でマスターのシローがケンのテレキャスをアンプ、フルボリュームでぐわんぐわん弾いてる。
「マスター、マスター」
「あ、君たちか。なかなか良いギターだよ。こりゃ。」
ケ「こりゃじゃないですよ。マスター、ギター弾けるんですか?。」
「あ、うん、ちょっとね。」
お「ちょっとねどころか達人じゃないですか。」
「うーん。君たち山下ケイジローって知ってるかい。若い時彼のバックでちょっとね。キャンプとか廻ったりして
「勝手に触って悪かったけど、見てたら懐かしくてねえ。つい触っちゃったよ。」
ケ「マスター、シールド持ってたんですか?あーシールド買うの忘れたー。」
「ああ、一応昔のものは取ってあったんだよ。あ、これで良かったら使っていいよ。」
ケ「あ、すんません。じゃギターとかもあるんですか。見せて見せてー。」
「ああ、あるよ。ちょっと待ってな。」
とマスター2階へ行く。2階が住居になっているのだ。
お「しっかし、仰天したなあ。ありゃ本物だぞ。」
ケ「近くにこんな凄い人がいたとは。」
お「全然知らなかったよ。」

マスターがギターを抱えて降りてくる。
「これだよ。」
ケ「おー、それギブソンじゃないですか。しかもフルアコ。」
お「でっけえなあ。ピカピカじゃないすか。」
マスターの抱えてるのはレッドサンバーストのギブソンES350Tである。
「へへ。何となくほっとけなくてね。手入れだけはしてるんだよ。」
ケ「音聴かせて下さいよ。」
「ああ。ちょっと待てよ。」
びんびんびん。あっとゆうまにチューニング。アンプにシールド突っ込む。
びろりんびろりん。ぎゃおんずおーん。びろびろびろびろー。
ケ「すげー。良い音だなあ。」お「音だなあ。」
聴きほれる二人。

ケ「決めた。俺マスターにギター習うわ。」
「なんだい。勝手に決めて(笑)。そりゃ良いけど。君たち何をやりたいんだい、音楽は?」
お「ブギーです。ブルースの速いやつ。」
「最近のスタイルはわからないけど、出来る事なら教えて上げるよ。
「久しぶりに音聴いたら私もまた少しやりたくなっちゃったよ。ははは。」
ケ「おー、ラッキイ!!ありがとうございます師匠。」
「師匠てあんた。」
ケ「お前はどーすんだ。」
おさむ、何やら考えている。
「うん、俺は遠慮しとくわ。考えてる事あって...。」
「そうかー。何やらかそうってんだ?」
「うーん、まだ出来るかどうかわかんないからなあ。あ、さっき買ったスライドバー、貸してくんない?」
「うん、いいけど。」
ごそごそごそ。袋から出して手渡す。
ケ「師匠。お願いがあるんすけど」
「おいおい師匠だけはやめてくれないかね。ただのおじさんにしといてくれ。」
ケ「このアンプ、ここに置かせてくれませんか。で、バイトの後教えて下さい。良いよなおさむ?」
お「おー、それはいいや。家に持って帰ってバリバリやるわけにはいかないからなあ。」
「ああ、それでいいならいいよ。
ところで君たちチューニングくらいは出来るんだろう?」
とか何とか言いながらやる気満点のシローおじさん。
この間客は一人も無し。やってけるのかこの店は。



「ところで君たちチューニングくらいは出来るんだろう?」
ケン「えっ。出ると思いますけど...」
「思いますけどじゃ心細いな。何か買ってきたのかね。」
おさむ「えー、はい。これと、これを。」
一つは謎のチューニング笛、も一つは音叉をシローに見せる。
「ははは。これは便利なものが今はあるんだな。これなら良いけど。出来れば音叉で合わせた方が良いよ。」
ケ「これどうやって使うのですか?」
「ああ、これはね。こうやるんだ。」
シロー音叉を持って、ひざに軽くぶつける。コーンとゆう音がなる。
「これをな。ギターのここに当てるんだ。するとな。」
音叉をギターボディの下に当てると、音が共鳴してこーーーーおおおんと大きくなった。
お「あーでかくなった。すげー。」
「でな。5弦の12フレット。ここだな。ここに軽く薬指を当てる。まあどの指でもいいのだけど。当てる。そして弦を弾くんだ。」
ピーンと高い音が出る。普通に弦を弾いた時の音とは1オクターブ高いようだ。
「これがハーモニクスちゅうものだ。この音とさっき出した音叉の音が一緒になるようにすれば良い。近くなると音がうねうね言うからそのうねうねが消えれば合ったことになるぞ。」
うねうねが消えた。
「音が高くなりすぎたらいったんペグを多めに緩めて音を下げてそれから合わせれば後で音が狂いにくくなるぞ。」
「これで5弦がチューニング出来た。それでな。まあ簡単な方法だと6弦の5フレットをその5弦の開放弦の音に合わせる。これがAの音なんだが。」
ケ「ちょちょっと待って下さい。何か書くものありますか。かいとかないと忘れちゃうよ。」
「何だ。忘れちゃうのか。ははは。うーんじゃあこれ使いなさい。」
二人にレジ脇の伝票とボールペンを渡す。
「ああ、そこまで自分でここでやってみたらいい。今付いてる弦でもチューニングくらい出来るだろう。」
お「はい。おおお、マイ・ギター持っちゃったよ。あ、フライングVって座って弾きにくいなあ。」
ケ「へへへ。俺は大丈夫。」
ケンが先に音叉で音出してみる。
「あ、やっぱ俺のギター、板だから音が小さいですね。えーと、これに合わせるのか。」
不器用にペグをぎろぎろしては何回も音叉鳴らしぎろぎろしては音叉鳴らしようやく合わせられたようだ。
「むずかしいなあ。お前やってみろよ。」
お「ああ」
シロー「まあ、最初はなれないからね。慣れるとAの音自体覚えちゃうからすぐ出来るようになるよ。」
おさむも七転八倒、何と言ってもギターが安定しません。何とか合わせてみる。
お「ひー、これだけで汗かいちゃった。ははは」
ケ「これを6弦の5フレットと。」
びーんびーん、二人で合わせる。
「そうそう、次は5弦の5フレットの音を4弦の開放弦の音に、4弦の5フレットの音を3弦の開放弦の音に合わすんだ。簡単だろう。」
ケ「はい。」お「はい。」書きながら合わせるのでなかなか忙しい。
「3弦だけは4フレットを押さえて2弦の開放弦にあわせるんだ。あとは2弦の5フレットを1弦の開放弦にあわせると...ほらこれがレギュラーチューニングだ。」
二人必死になってべんべんべんと。
お「お前音うるさいぞ。」
ケ「お前だってうるさい。わからないじゃないか。」
結局背中を向き合って合わせる事に。アンプにはシローのギターしかつないで無いからやりにくいのなんの。
ケ「はい。出来ました。」お「お、俺も。」
「ちょっと貸してみな。」
シローにギターを渡す。微調整するシロー。
「うーん、ちょっと甘いがまあ最初はこんなものか。チューニングがしっかりしてないとどんなにかっこよく弾いても笑い物だからな。これだけは時間がかかってもばっちりやっといた方がいいよ。」
ケ・お「はいっ。」「あ、はっぴおかえしなし。」ベシ。お互いにぶつ。
「ははは。良い返事だ。あーところで音楽は何やるんだっけ。ハワイアンかい。」
ケ「あーーー、違いますよブギ。ロックンロール、ブルースです。」
「あ、ロカビリーかい。それなら任しときな。えーとまずコードだな。君達コードは何か知ってるかい。」
お「ええと。ローコードなら。AとCとEとGと、あとうーんとこれだF知ってます。あーエレキの方が押さえやすい。」
ケ「俺もそれぐらいなら知ってるぞ。こうだろ。」
べろんべろんと不器用に弾いてみる。「あ、ほんと弾きやすい。」
「ケンぼう、君はもっとフレットのそばを押さえる方がいいな。軽く押さえるだけできれいな音が出るよ。」
「はい。」
「そうか。それはそれでいいんだけど、ロックンロール弾く時はなコードはまずほらそのFの押さえ方から始めるんだ。」
「わ、この一番いやなコード。」
この時点でまだお客は一人も来ない。
やってけるのかこの店は。



「そうか。それはそれでいいんだけど、ロックンロール弾く時はなコードはまずほらそのFの押さえ方から始めるんだ。」
お「ひゃーやっぱし。こうやるんですか。」
おさむは指が太くて短い俵のようである。ケンは細くて長いので楽々。
「お、おさむ君は辛そうだな。簡単なやりかたもあるけど、バーにしないでこうやって親指と人差し指で握るようにして残った指でそうEの形で押さえるんだが。でもあれだ。ブギやるんだろ。ならちゃんと押さえないとな。」
お「やっぱ辛いです。何でバーにしなきゃいけないすか。」
「ああ、それは5弦と6弦でリフしなきゃならんだろ。その形のままバーを5フレットにもって行きなさい。そうそうそれでAのコードになる。でその形のまま4弦押さえてる小指を外して5弦の9フレットを押さえるんだ。」
お「わ、曲芸だな。」ケンは軽々。
「ま、言うとめんどくさいんだけど。普通の状態とそれをリズム良く交互にやってごらん。ほらこうゆう風に。」
シローが弾く。ズズジャジャずずじゃじゃズズジャジャずずじゃじゃ。
ケ「あ、ブギのリフだ。」
「そうそう、これがピアノでやると左手で弾くブギのリフ。これやるためにはやっぱりちゃんと押さえないと。」
お「う”−。練習します。    または奥の手で。」
ケ「何だよ、奥の手って?。」
お「秘密ひみつ。」
「でだ。次はこのコードだ。君たちB♭のコードは知ってるかい。」
ケ「えーと。Aの上だからFみたいに押さえるやつですか。うーん。こうかな。」
「そうそう。それそれ。その形を覚えといて。それのバーの部分を5フレットに持っていきなさい。そうするとDのコードになる。Aの5こ上だな。」
お「うーこれも辛い。」
「そしてさっきと同じように小指外して今度は4弦の9フレットだ。」「繰り返してごらん。」
ケ「はい。」
ズズジャジャずずじゃじゃズズジャジャずずじゃじゃ。
「おおケンはうまいな。その調子その調子。それをそのままバーの指を上げて7フレットにして同じようにやってみなさい。」
ケ「はい。こうですか。」
「そうそうそのコードがE。まあブギならその3つでコードは足りるかな。」
お「えー、この3つですか!」
「ああ、まあとりあえずだが。それが基本。しばらくはそれで練習だな。でもそれだけでもブルースの伴奏は立派に出来るよ。ちょっとやってみるか。僕に合わせて弾いてみなさい。」
3人で弾き始めようとしたその時
「あの〜」
お「あ、お客さんだ。」
シロー「おーい。アッコ。お客さん頼むよ。」
「はーい。」
初のお客さん登場。
そして初の女性キャラ登場。

2005年09月05日

第1回 はじまりはロッド

001.jpg

1979年2月地下鉄九段下駅。一人の少年が改札から出てくる。中背やせぎす顔は3人前、上から下まで近所のホテイヤで買った服装、靴は月星、ジャンバー、頭にはハンチング帽、唯一のお洒落らしい。CISCOと書いてある黄色のビニール製のレコード袋と大きなバッグを手に持っている。出たとたんきょろきょろ。どうやら初めてここに来たらしい。壁にある周辺地図を見つけるとなめ回すように注視。しばし考えた後右手の出口階段から外へ。長い坂道がある。凄い人ごみ。頭金髪パンタローンのお兄ちゃん、その彼女らしき派手なお姉ちゃんなんも混じった長い列、そして列。その中で一番目立たないその少年はこれに混じって行けば間違いなかろうとそろそろと後をついて行く。途中何回かビラ配りのお兄さんと遭遇、その全部を貰う。イーグルス来日、リンダ・ロンシタッド来日、ボブ・マーレー来日。2色刷りのそのチラシを大切そうにレコード袋に入れてお堀にかかっている橋を渡る。傍らにたこ焼きの屋台。お腹が空いていたが横目で見て名残惜しそうに通り過ぎる。昼間そのレコードを買うためにお金はもう帰りの電車賃しか残っていなかったのだ。あとあれに使う分と...。

門をくぐると建物が見えてきた。足は棒、かなり疲れていたけど元気一杯、わくわくして目がぎらぎらしてる。

 どこに並べばいいんだろう。きょろきょろして探す。席は2階席だけど...。うろうろして右手に駐車場がある道を進む。いつかあの駐車場を使ってここに来る日があるだろうかなどと考えながら。2階西。あったここだ。長い列の最後尾に並ぶ。周りはもうすっかり暗くなっている。まだかまだかと待っているとようやく開場のよう。凍り付いてた列がいきなりだーっと進み出す。どきどき心臓が。楽しみだってこともあったけど、バッグの中にでかいラジカセを念入りに隠してあるのだ。階段を上ってチケットを切ってもらい問題の手荷物チェックを。冷や汗かいたけど通り一遍中を覗かれただけで済んだ。えーとパンフレットはどこに売っているんだろう。あそこだ。わあわあ言っている。1500円。ひえー。半分泣きながら買う。人ごみでぐちゃぐちゃにされながらドアを開けて中に。ああ、これが武道館だ。

とりあえず席を見つけたかった。西の2階席一番前。えーと、どこだろう。うろうろしながらもやっと席に着く。タンタンタンとかチェックチェックとかサウンド・チェックの音だけでもうどきどきわくわく。足元のデカラジカセの準備を確かめてと。パンフとかゲットしたチラシを眺めてそわそわしてるうちに、場内暗転。いよいよだ。カセットのスイッチを入れてと。
暗闇の中でメンバーが出て来る。
大歓声の中でいきなりガンガンと強烈リフ。
右手からサッカーボールを蹴飛ばして登場は
ロッド・スチュワート。
曲はホット・レッグス。
彼にとって初めてのライブが始まった。


場内照明点灯。少年は凍り付いている。みんなやってくれた。あの曲もこの曲も。アンコールではセイリングも。あの曲あんまり好きでは無かったけど。それでも...。またアンコールしてくれないかなあとパラパラとした拍手が終わる頃名残惜しそうに尻を席から引っ剥がして会場ドアから出た。テープにしっかり録れてるだろうか。何か気になっちゃった。今度のライブでは録るのやめようかな。急に寒くなってきた。トイレに一直線。長蛇の列だ。駅からずっと行ってなかったから相当あせっております。ようやく順番が来てほっと一息。じょわーっと。ふと右を見ると。
「あ、ラーメン屋」
「お、毛糸屋じゃん。」
そこで連れションとなっていたのは近所のラーメン屋の息子だった。

九段下の下り坂。長い行列の中二人は歩く。ライブの興奮がまだ残ってるため口数は少ない。良かったよなあ。かっこ良かったよなあ。同じようなことを言っている。九段下の駅。どぶのような臭いがうっすらとする。東西線に乗って日本橋まで。そこで乗り換えて都営浅草線へ。京浜急行直通の特急で横浜まで行く。当然帰宅大ラッシュ。しかしともかくも落ち着いて来た二人。車内でようやく話始める。
「お前、ロック好きだったんだ。」
「へへへ。」
「ちっとも知らなかったな。中学の時は全然聴いてなかったんじゃないのか。」
「まあね。」
「何が好きなんだ。まあロッドは好きなんだろうけど。」
「まあ、いろいろ。で、お前そのレコード何?」
「あー、これー。へへ。ちょっとね。」
「何だよ、気になるな教えろよ。」
「うーん、これだよ。」
と言って袋から中身をちょっと出す。
「あ、何これ。ステータス・クオーじゃん。」
中身は英国のブギ・ロック・バンド、ステータス・クオーの77年のライブ盤2枚組。
「へへへ。」
「そんなの聴くのか?」
「いいじゃないかよ、聴いたって。」
「あ、怒った。怒るなよなあ。俺も好きなんだから。」
「えー、お前ブギ好きなの?そうなのか。」
「まあね。へへへ。よく買えたなあ。2枚組だろそれ。」
「いいだろ。実はカット盤。1480円。」
「いいなあ。貸してくれ。今。」
「何言ってんだ。駄目に決まってんだろ。」
「くそ。良いじゃんか。じゃあしょうがない。お前が聴いてからで良いよ。」
「なんか偉そうだなあ。しょうがない。数少ない同志だしあとで貸してやるか。じゃあお前も何か貸せ。」
「何だよ。」
「ブギが好きなら何かレコード持ってるだろ。とっておきのを貸せ。」
「なんかえらそうだなあ。しょうがないこの前買ったフォガットのライブを貸してやるか。」
「おお、フォガット!それ聴きたかったんだ。すぐ貸せ今貸せ早く貸せ。」
「なんだよ。交換だよ。」
などど馬鹿話してるうちに横浜に到着。普通電車に乗り換える。
「しかしお前ほんとにブギ好きなんだなあ。」
「へへ。まあな。」
日の出町に到着。橋を渡って二人でイセザキ町の方に向かって歩く。
「あー、バンドやりてぇなあ。」
「やりてえなあ。やりてえええなああ。」
オデオンビルの交差点を右に曲がりすぐのところで
「じゃあな。」
「あさって昼ごろ良かったら持って行くよ。レコード。暇だろお前。」
「忙しいよデートだよ。」
「ばーか。昼に行くぞ。」
「へーい。」
デートなどあろうはずの無いにきび面のラーメン屋、ここにあり。


陽は照っていても底冷えのする冬の日曜、毛糸屋の少年はラーメン屋を訪れた。横浜だとゆうのにここはイセザキ町の中心から外れているためまったく普通の中華料理店である。
「こんちわー。」
「お、ケンちゃん。ひさしぶり。」
「あら〜、ケンちゃんじゃな〜い。随分大きくなったのねぇ。」
「へへへ。オサム君いますか?」
「上で何やってんだかー」。
「おじゃましまーす。」
店内は広くは無い。カウンターと机2つ。椅子は緑色のビニール製パイプ椅子。調理場にはオサムの父親(花沢徳衛)と姉の(富士真奈美)がいてケンを迎えてくれた。

店の奥の階段を上がってすぐがオサムの部屋。寝転んでミュージックライフを読んでやがった。
「おいおい、せっかくレコード持って来たんだから出迎えろよなー。」
「お、来たか、出迎えられるような偉人さんかえ。まあそこらへんに座れよ。」
「おう。はいこれ。」
「おーサンキュさんきゅ。クオーね。くおー」
部屋の壁にはもう地の壁紙が見えないほどポスターが貼られている。ロッド・スチュワート、フェイセズ、ストーンズ、バッド・カンパニー、モット・ザ・フープル、襖にもZZトップ、ヤードバーズ、CCR、ジョン・フォガティ、ZZトップ。
「しっかしすげえなあ。貼りまくってるじゃん。お、モットだ。これよく手に入れたなあ。」
「へへ。T都無線に入り浸ってたもんで兄ちゃんと仲良くなっちゃって。貰っちゃった。」
「え、いいなあ。お前愛想良いもんな。得するよ。」

そこへ下から階段を上がってくる音が。
「おまちどうさまーー。」
ラーメンを持って姉が上がって来た。
「あー、お構いなしで。どうもすみません。」
「何言ってんのよう。うちに来たらこれ食べてってもらわなくっちゃ。嫌でも食べてねぇ。」
「はい。いただきます。」
「ところでお兄さん元気〜。最近見ないけど。彼女とか出来たんじゃな〜い。」
「いや、全然最近帰って来なくて。あの人、よっぽど大学が好きみたいで。泊り込んで研究ばかりしてます。俺と違って頭良いからねえ。」
「あらー。そうなのー。たまには食べに来てねえって言っといてねー。」
姉は独身らしくケンの兄のことをどうやら狙っているらしい。お約束の展開である。

「ラーメン置いたら早く下行ってくれよー。大切な話があるんだから。客が来るぞ。」
「なにが大切だか。そうやってすぐ姉ちゃんを邪魔にするんだから。」
プリプリしながら姉は降りていった。降りながらまだ何か言っている。

「ところでお前、どんなの持ってんだ。レコード。」
「おー、とりあえず食べてるあいだ、この前のロッド聴いてみるか。へへ、俺もテープに録っておいたんだ。」
ラーメンは昔と同じでかなりうまい。これは儲けた、これからも来ようとケンが心に決めてることに気付いてか気付かずか、オサムはラジカセのスイッチを入れた。

ざわざわとした中、ホットレッグスが流れてきた。


ライブの模様を想い出してボケーとしてるうちにテープが終わる。音質はうちのとあまり変わりないなとケンは思う。あれだ手拍子とか入っちゃってまともに聴けないのね。
「いやー思い出すなあ。」
「良かったよなあ。」
「ギター3人でガンガン来るのが良かった。」
「また見てえなあ。」
感慨にふける。
「バンドやりてえなあ。」
「俺も...。」
「お前、なんか楽器出来るか?」
とケン。
「うーん。生ギターなら少しは出来るけど。。。」
「俺もそんなとこだなあ。。。。」
「エレキ買おうかなあ。」
「お、お前がやるんなら俺も買うぞ。おい、バンドやろうぜ。」
「おーやろうやろう。」
「おい、生ギター出せよ。」
「ちょっと待って。」
ゴソゴソ。押入れからギター出すオサム。
「えーと、チューニングはと。」
びゅんびゅん。びゅんびゅん。びゅんびゅん。
「こんなものかな。」
「ホット・レッグス弾いてみろよ。」
「えー出来るかなあ。」
「だいたい3コードだろ。Eなら押さえられるだろ。」
「そりゃローコードなら知ってるけど。EとA押さえりゃいいかー。あ、明星の歌本があるぞ。」
「おへー。お前そんな本買ってるのかー。ははは」
「うるせー。だって洋楽の楽譜が載ってるじゃないか。」

ずんずんずんずん、ずんずんずんずん。

「へーいけるいける。その調子その調子。」
けっこうリズム感は良さそうなオサム。小さな音で遠慮がちに。それを続けてるうちに・・・。

フザノッキンオマドー、ガタビアカタトゥフォー

歌本のカタカナ見て小声で二人で歌い出してしまう。すべからく合っていない。

イズイットユーアゲン、カミランフォモア

だんだん大きく

ウェユキャラッミーツナイフユウォン
バットインザもーにんメイクシェユゴーン
アイトーキントゥユ

絶叫!!

ホットレーッグス!ウェリンミアウー!
ホットレーグス!ユキャンすクリーミンシャウ
ホットレーグス!アーユースティルインスクール。

「うるせーっ。おめえらいったい何騒いでんだ。コラーっ。」by花沢徳衛in階下ラーメン。

二人びっくりして急に小声で・・・

「アラブユほね。」


気まずさと恥ずかしさの中しばし沈黙の時。時々おさむがギターをびろーんとつまびき。
「なあ。....エレキ買わなきゃな。」
「うん。」
「お前、金有るか?。」
「なもんあるわけない。そうゆうお前は。」
「ははは。なもんあるわけない。」
「バイトだな。」
「バイトだ。」
「俺は店の出前手伝えばいくらかくれると思うけど...お前当てあるか?」
「うーん、考えたことなかったからなあ。」
「そうか。.........よしついて来い。」
「何だよ。」
と二人で慌てて階段を降りようとする。
「あ、レコード、レコード。フォガット、貸せよなあ。」
「ははは、やっぱり聴くのかあれ。」
「当たり前だろ。そのために来たんじゃないか。」
「わりいわりい。.......はいこれ。」
「おお。じゃ行こう。」
だんだんだん。
「騒いですみませんでした。」
「おう、もう帰るのかい?ゆっくりしてきな。」親父。
「そうよ。少しぐらい騒いだっていいじゃない。若いんだから。それをお父さんたら。」
「うるせー。客が一番だろが。」
「ははは。すみません。ラーメンご馳走様。ほんと美味しいす。ここのラーメン。」
「ラーメンならいつでも食いに来な。金出したらチャーシューメンにしてやっからよー。」
「ははは。おじゃましましたー。」

店を出る二人。
「俺の親父すぐカミナリ落とすっからなあ。」
「いいじゃんか。うちの婆ちゃんに比べりゃ優しいよ全然。」
「相変わらずこえええんだ。」
「うん。最近ますます迫力出てきてさ。だから頼むよ。(これからも)お前のとこ行くからさあ。」
「それはかまわんけど。」

「おおここここ。」
おさむの店のすぐ近く松竹の映画館の向かいのハンバーガー屋に二人で入る。当時出てきたマクドなんかと違って古くからやっている個人営業の店だ。
「こんちわー。    どーもマスター。」
「お、来来軒のオサム君じゃないか。ひさしぶりだなあ。   近くなんだからたまには食べに来なよ。」
「ははは。すんません。家にいるとラーメンばっか食わされちゃって。」
ハンバーガー店のマスター(大坂志郎)。顔は悪いが気は良さそうな人だ。二人は親しいようである。
「どうも。こんにちわ。」
「お、君は七丁目の毛糸屋の息子さんだね。えーと...」
「ケンです。」
「ああ、ケン君だったね。それで今日は何にする?」
「あ、おじさん、違うんです。今日はお願いが有って...」とおさむ。
「なんだい。やぶからぼうに。」
「えーと。こいつを使ってやってくれませんか?もちろんバイトですけど。」
「バイトかい? うーん、最近不景気だからなあ。.....。よし、いつから来れるかい?」
「えと、すぐ出来ます。平日の夕方からと、土日は全部出来ます。」
「よし、じゃあ頼むわ。さっそくだけどちょっと店番頼むよ。これ付けてさあ。」
とエプロンをケンに着せて行ってしまうマスター。
「あー、あのーおじさん。そうやったらいいんですかーーー!!」
「あー、ありゃパチンコだ。まいいか俺が教えてやる。  実は中学の頃手伝ってたんだ俺。」
てな訳でバイト決定。
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