
おさむ「んだ。じゃ明日日曜だからアッコの家行ってピアノ運ぼうぜ。」
アッコ「運ぼうぜってどこによ。」
ケン「ここここ。ここに決まってます。」
アッコ「馬鹿言わないでよ。親がそんなこと許すわけないじゃん。それに持ってきちゃったら私の練習はどうすればいいの。」
ケン「うーん。そういやあそうだな。そうだ。ショータ、お前ピアノ買え!!」
「買えって。わん。いくらなんでもそれは無理でござんすう。」
バコ。
おさむ「何見栄切ってるんだよ。駄目なくせに。」
「すまないでござんすう。」
そこへ奥から桃屋のマスター、シローが久し振りに登場。
「みなさん、久し振り元気です。」と画面に向かって挨拶。
おさむ「おじさんどこに挨拶してんの?」
「ははは。気にしないで。それはそーと、何もめてんの?さっきから。」
ケン「はい。今度アッコがピアノを弾くことになりました。」
「おー、そうか。それはめでたい。良かったじゃないかアッコ。けっこう弾けるよこの子は。
で、何が問題なんだそれが。いいことじゃないか。」
アッコ「まあ、それはしょうがないんだけど、ピアノをどう調達するかってことになって。」
そこへカウンターで夕方から酒飲んでたヤクザのあにい、ジャックが口出し、
「なるほど。そりゃ大変だ。腐ってもピアノだ。けっこう値も張るしな。おい、お前どっかあてないか」
子分ヤマモトがセッド。
「いやだなあ。兄貴。俺がそんなものに縁があるわけがないじゃないですか。それより兄貴こんなとこで油売ってるとまた大親分に嫌味言われますよ。早く取り立てにいかないと。」おろおろ。
「バカヤロ。俺は取立てが嫌いなの。悪役みたいじゃんか。かわいいんだから実は俺。」
そこへ臨席で同じく油売ってた同じくヤクザのオサムちゃんが
「あのお、ヤノピですかあ。よかったら昔世話になった渡辺プロに聞いてみてやってもいいんすけどう。ショーケンとか。」
アキラ登場。
「あにきいいいい。そんな見栄張ってえええええ。もうすっかり足洗ってオサムちゃんじゃないのう。駄目だよきっとおおお」
「っ前がじゃはうあじゃはじゃふきゃじゅしゅがあ。」
興奮するとオサムちゃん、何言ってるかわかりません。
「いつもこうなんですう。兄貴わあ。」
なんて大騒ぎ。してますと。マスターのシローちゃん肩を揺らして笑っております。
「くっくっくっく。」
ジャック「マスター、何笑ってんのよ。みんなでこんなに考えてんじゃない。何よ。失礼しちゃうなあ。」
シロー「いや何。嬉しいんですよ。嬉しいんですが、ピアノはですね・・・・」
と指をステージの奥のカバーかかってるモノに。
「あるんですもう。」「え」「あるんですよあそこに。」
「いや例の植木が実はペットの他にピアノも弾きましてそれで持ってきたとゆう訳で。」
ケン「わ、ラッキイ!。使わしてもらえるよう頼んでもらえますか?」
「ああ、もちろん。と言うより勝手に使ったっていいんだから。」
おさむ「ありがとうございます。これでピアノの件は解決。アッコ頼むぜ。練習せいよ。」
「練習せいよって、どれやるの。」
ケン「あ、まずは今かけたロックンロール黄金時代を。みんないいよな。」
「はーい」
「テープ作んなきゃ。どうしようか。家帰って作ってこようか。」
シロー「あ、レコードをカセットに録るの?それもここで出来るよ。」
「えっ!ほんとですか。ここ凄いことになってきましたねぇ。」
「あ、いや、夜のセッション見に来てくれてるお客さんの中にオーディオ・マニアの人がいてね、どうしても演奏録音したいってオープンリールとカセットのデッキを持ってきたんだ。自由に使ってくださいって言ってたよ。テープも箱ごとあるからそれ使いなさい」
「ああ、天国だ。ありがとうございます。お言葉に甘えます。」
ガサガサガサ。
ケン「さ、テープ出来たぞ。今日はこれで解散してみな家でコピーしてくるように。」
ショータ「俺、モット他の曲も聴きたいなあ。先輩レコード貸してください。」
おさむ「馬鹿、俺が先だ。」
イットク「あ、わてもわても」
「待ってくれー。俺だってまだ全部聴いて無いんだから。今度みんなに廻すから。」
おさむ「それはそうと他の曲も決めなきゃいけないな。あと4曲くらい全部新曲でやるんだろう。」
ケン「うん、そうだな。俺も明日レコード屋行って他にも探してみるけど。各人どうしてもやりたいってのがあったら今のうちに決めて言ってくるように。」
ショータ「え、俺らの希望も聞いてくれるんですか?」
ケン「それは曲にもよるけど。グッドなやつで全員賛成すればよろしい。」
イットク「うわ楽しみでんなあ。帰ったら色々考えよ。」
ケン「うん。まあまずは新体制での音合わせだ。みんな黄金時代しっかり練習せい。では解散。」
おさむ「その前にシロー大明神に全員で敬礼!」
「ありがとうございましたー」
シロー「いや、いいんだいいんだ。それより君たちはオリジナルそろそろやらないのかい?」
「オリジナルー?」
「オリジナルってたってなあ。考えもしてなかったからなあ。だいたい作曲なんて小学校の音楽以来やってないよ。ぶつぶつ。」
翌日、昼過ぎ横浜西口のレコード店に向かうケン、オリジナル問題に頭を痛めている。
「やりたいのはやまやまなんだけど。ぶつぶつ。」
レコード屋はオカダ屋とゆうデパートの7Fにあるスミ屋、一番大きい輸入盤売り場がある店だ。輸入盤LPにはカット盤とゆうのがあってアメリカでは売れ残りのレコードのジャケットの端を切ったり穴を明けたりして現品処分したりする、それが大量に置いてあって値段が980円、金の無いケンにはとても重宝するものであった。
「ま、いっか。とりあえずコピイコピイ。何かいいレコ無いかなあ。」
パタパタパタパタ、ぱたぱたぱたぱた
もうかなり慣れちゃって忍法高速LPめくりの技、毎秒5枚はいってるな。
ぴた。
「おおお、何だこれはフェイセズだ。こんなんカット盤にあるんだ。もうけー!。」
ぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱ
ぴた。
「うわ、こ、これわ。スレイド。あの噂に聞く。すれいどがあった。うーん2枚。予算的にはつらいけどなあ。この2バンドならやれるよなあ。買うかこのー。」
「よしじゃこれにしよう。」独り言連発で気持ち悪い男になってしもたケン、レジに向かおうとすると反対側ヘビメタ・コーナーにたたづむ、いやレコードめくってるオナゴが一人。どっかで見たような気がすると近づくと。
「あ、君!!もしかしてブギブラザースのヴォーカルの人?そうだよね。」
「え、あ、はい、そうですけど。もしかして君は。」
そのオナゴ、例の凶悪悪役ヘビメタ・バンド、コアラのマーチのボーカルの人であった。みるみるうちに顔が赤くなるケン。
「あのヘビメタバンドの子?」
「ええええそう。あ、ちゃんと話すのははじめてね。私モンキッキじゅん子と言います。この前はメンバーが迷惑かけちゃって
ごめんね。」
「あ、いや、えーとボクはケンと言います。いえあのいいんだ。あれはその事故だから。」
「あー良かったあ。怒ってるんじゃないかと心配してんだ。ところで君たちもちろん予選通過したよね?」
「あ、ええ、はい。何とか。」
「そうかー。うまかったからあとの一つはきっと君たちじゃないかって話してたんだ。」
「とすると君たちも。」
「やだーもちろんじゃない。私がなんてったってボーカルなのよー。あれぐらいで落ちるわけが無いわ。おーほほほほほほ。」
「あ、うん、そうだよね。うまかったし。」
「何言ってんのよ。あんただって相当うまかったわよ。ギターも歌も。あ、そうだ今度うちらの練習に遊びに来ない?もちろんギター持ってね。毎週土日火木の5時から2時間、ヤマキワでやってるから。いつでもいいから来てよ。」
「いやでもみなさんに迷惑では。」
「そーんなこと無いって。みんなももう一回会ってみたいって言ってたよ。じゃあ約束ね。きてね。じゃあ。」
「あ、その、そのレコードの清算。」
「わははははいいっていいって。おーほほほほほ」
レコード一枚持ったまま行ってしまいましたモンキッキじゅん子さん。
「あー、びっくりしたなあ。おおおまだドキドキしてるよ。しかしなあきれーだなあ。」
ポン。後ろから肩を叩かれる。
「ぎゃ」
「何がぎゃだ。何ボケーっと見てるんだよ。」
「あ、お、おさむ。いや何でもない。ないっすよ。」
「ないっすよって、ありありだけど。」
「いや。ところで何だお前は。こんなところで。」
「あの俺だってレコード買いにくるんだけど。」
「ははは、そうだな。でお前何買った?」
「買ったって今来たばかりやんけ。お前は何を。あースレイドとフェイセズだ。てめー先にいいの買いやがって。」
「ははは。いいだろいいだろ。すれいど?っだぜ。まーまだ見てない棚あるからそこを漁りたまえきみきみ。」
「てめ。わかった俺だって探してやるぞ。」
ぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱ。
ぴた。
「おーこれなんかどーだ。スイートだって。良さそうじゃん。」
スイート。そりゃすいーとでやんすよおさむ君。
「やあエブーリバデー。アーユー・ハッピい?。」
ケンが妙な外人化して桃屋に入場。
「へーい、フィル。アリバイやってるかい?」
続いておさむも登場。
「おさむ君、やめてちゃんらいいいかげんそれまーたシンリジでしょ。ボク、リノットじゃないのね。」
「のーのー、いい加減諦めてリノットしちゃいなよフィル。あ、そうだ、俺の希望曲アリバイにしよ。フィルにベース持た
せて、歌わせるのだ。」
「ぎゃはは、そりゃいい。やろうやろう。今度テープ持ってくるから。フィル頼んだよー。」
「頼んだよーってボク、イヤね。ぜたいやらないから。もう。」
アッコが厨房奥から出てきた。
「何ばーかやってんのよ二人で。みんなもう来て待ってるわよ。やるんならやるで早く早く。」
ケン&おさむ
「へ〜い」
ごそごそごそ。本日は初めてアッコがピアノで参加、曲は「ロックンロール黄金時代」でござるー。
「エブリバデー、準備はOKかい?」
「へ〜い」
「ちょっと待って、チューニングがまだ。」
ぼかっ
ケン「またお前かショータ、はやくせんかい。」
「あ、はい、えと出来ました出来ました。」
ケン「アッコは準備OK?」
「えーとOKだけど最初はどうする?ピアノとコーラス一緒に始まるけど。」
おさむ「あ、そうか。うーん。」
ケン「俺がこうやるよ。」と腕で三角形を大きく、「これで1,2,3。で始めればいいじゃん。」
おさむ「わはは、それ小学校の音楽で3拍子だな。」
イットク「すんまへん。でそのコーラスは誰がやるんでっか?」
にょみんと登場。
ケン「わ、何だ何だお前そのガンベルトは?うわそれ全部ハーモニカかー。」
「いやハーモニカって曲のキイ毎に1本なんですって。だからこの際全部揃えようかと思いまひて。」
おさむ「なるほど、やる気ばんばんだ。だからコーラスはお前とケンだぜ。」
ケン「何だと、お前もやるんだぞ」
おさむ「俺もか?後悔したってしらねえぜ。」
ケン「覚悟しております。そうかイットクもその気ならブラスのパートはお前に任せた。」
「へ〜い。そう来ると思ってました。喜んでやらしてもらいはりま。」
ケン「とゆうことです。よろしくお願いしますアッコさま。」
アッコ「なるほど。それならよろしい。」
ケン「あ、アッコさま。アッコさまにもコーラスお願いしたいんですが。」
アッコ「なにー?私もうたうのー。んー後悔したってしらねえぜ。」
ケン「じゃおめえらやる前にまずマイクセッティングじゃ。」
ごそごそごそ
「よし、さあいくぞー」(1,2,3)
ぽん、たたんたたんぽぽん。
ぽん、たたんたたんぽぽん。
ぽん、たたんたたんぽぽん。
ぽん、たたんたたんぽぽん。
たたたたたた、どたたたたたたた、たたたたたた、たたたたたた(以上ピアノの音です)
ぶうばぶっば、べべんぼ、ぶぶぶぶぶぶぶぶぼべんぼー
ぶうばぶっば、べべんぼ、ぶぶぶぶぶぶぶぶぼべんぼー(ハモニカー)
(1番)
エブバリ、へい
みんなでへい、今回行くならインド
時差なら時差早く言って
ハイカラ人間登場。
おおお。おおお。ハッピー、ポッキー、みなホッピイ
おおお、おおお
これでいいんじゃロックンロー
(2番)
上でガラガラぶう、出てきたぶう。
ギタギタはいほーはいほー
弱みもまあ出てきたぶう。
完全無欠の様相。
おおお。おおお。ハッピー、ポッキー、みなホッピイ
おおお、おおお レッツゴー
これでいいんじゃロックンロー
(展開)
これでいいんじゃロックンロー、夢は大
あれを見よ困ったにい、さざれ石
どれみふぁ、そらしど
どれみふぁ、そりゃしんど
どえみふぁ、くるしいからここからはギタアソロだー
グワゴローギルウウ、ギイギタギタギタグルグルウ(ギターソロを描写してる音です)
.....
じゃじゃじおん、じゃじゃじょんじゃじゃじゃじゃーん。
おさむ「わ、相談もしてないのに最後バチっと決まったぜ。俺ら天才か。」
ケン「おおおお、やるじゃんかアッコ。パーフェクト賞進呈です。」
「ありがたきしあわせ。ってなんじゃその歌詞はー!!」
「いや実を言うと考えてなかったんで口からでまかせです。」
ショータ「えー面白かったのにい。2度と歌えませんか?」
イットク「大丈夫。メルマガちゃぶ通読めば良い。」
お後がよろしいようで。
今日は火曜日だよー。新編成でのギグもどうやらうまくいきそうだし、てんでケンはコアラのマーチの練習を見学に行くことにしました。もちろんブギ兄弟の練習の前で行けるからだけど、なんつってもあの人がおるし・・・・。
練習場所はヤマキワ電気のスタジオ。イセザキ町の通りから一つ向こう側、バス通りで長者町5丁目のバス停のところにあります。照明が得意の電気屋さんだけど8階に楽器売り場があってそこに小さな貸しスタジオがあるのだ。一応、ここしかこの辺にここしか貸しスタジオは無し。桃屋で無料(タダ)で練習できてる兄弟はラッキーなのだ。感謝したまへ。
8階までエスカレーターでおっちらおっちら上がったケン君、スタジオ前でマーチのメンバーと出会います。
「おー、君かー。よう来たねえ。嬉しいよ。」とまず声を掛けてくれたのはリーダーらしいコアラさん。筆者必死に話し方を思い出してます。いいか誰もわからねえよ(^0^)。
次に気付いたジョンコさんが
「あらー、ぼうや、よくきたわねえ。よしよし、ギター持ってきたね。さあおめえら練習だ。気合入れていかんかいこらあ。」
「はいっ。」って思わず返事しちゃったよケンちゃんも。
実に狭いとこにえーと男5人、女おとこ一人ですからもうぎっちりこんだ。
「1曲目はパラノイド行くぜー。えーとケンは知ってるかい。パラノイド。サバスのだよ。」
呼び捨てにされてちょっと喜んでるケン。
「えーと一応は。キイはなんですか。」
「そんなんしらんわ。お前弾いてみろ。」
「はい」コアラはギター弾いてます。
じゃじゃじゃじゃ、じゃじゃじゃじゃ♪
「あー、わかったす。はい。」
「じゃあ行くぜーごらぁ。」
じゃじゃじゃじゃ、じゃじゃじゃじゃ、んじゃーんじゃ♪ ふんふんふんふん♪
八丈島のキョンのガキデカ氏でもあるまーに、ジュンコ嬢、ふんふん言いながら踊りまくって歌っております。
ははあ、だもんで男連中は隅っこにいるんだなと思いながら弾いてるケン。曲自体はラクチンちん。それはもうほぼ毎日練習してる身でして、思ってる以上に実力がついている。
じゃーん!!
「いえー、ナイスじゃん、ケン。」とジュンコ。
「ほんとだ。うまいもんだ。」コアラも。
「うんうん。やっぱギターふたつだと音厚くなるよなあ。」と悪役ベーシスト、水上まで。何か気持ち悪い。
「よーし、どんどん行くぞー。」
その後、何てたって18歳、じゃなかったヘビメタバンドですから知らない曲多数やるも簡単な音あわせだけでケンちゃん、何とかついて行きました。
2時間後、練習が終わります。
「お疲れー。ケン、ちょっと時間あるよねえ。あるよね。あるね?そう。」
「あ、はい30分くらいなら」
もう無理やりです。
仕方なくヤマキワ裏の茶店でメンバーとお茶することに。ああ、二人だけのデート?だったらなあとこっそり思ったりして
。
店に入ってそれぞれにアイスコーヒーを注文。異常な速さで出て来てかんぱーいと一口飲んだその時ジュンコさんセッド、
「単刀直入に言う」
「えっ?」
「ケン、君うちのバンド入ってくれない?君のその腕に惚れました。このマヌケとツイン・リード頼みます。」
「お願いしまーす。」と続けてバンドの全員も。
「うわ、こ、これ引き抜きかよー。」と心で思ったケン君、びっくりして言葉も出ません。