
翌日、各々バーガー・シローに向かう。集合時間は5時。だったがほんとに来るか心配になったケンとおさむ。一足先に落ち合ってイットクとショータを迎えに行くことに。
イットクのうちはイセザキ町からちょっと離れた京浜急行ヒノデ町の駅の向こう側、山間とゆうか丘の中腹にある。ここらでは金持ち住宅街。近くにはノゲヤマ動物園あり。おっちらおっちら坂を上った二人、どでかい邸宅の前に。
ケン「うわ、こんなにでかかったっけ。イットクの家。」
おさむ「親は何やってんだろ。ケン知ってるか。」
ケン「いや、謎。だけど共働きだって言ってたな。だもんでいつも妹の面倒みろって連れてるんだろ。」
ぽーーーん。ひじょーに上品な音のするチャイム。
インターフォンから声が。
「はい。」女性の声だ。
ケン「えーと。こんにちわ。イットク君の友達のケンですけど....。イットク君いますか。」
女性「はい。おります。ちょっとお待ち下さいませ。」
しばし.....。
がちゃ。玄関の白いドアが開いた。
中からマコ連れたイットクが出てくる。
「こんちわ」。マコもペコリ。
おさむ「お、準備いいな。グッドタイミングだったのかな。」
イットク「丁度今出ようと思ってたんで。」
ケン「よっしゃ。まだ時間はたっぷりあるからショータんち行った後、楽器屋にみんなで行こう。」
イットク「は〜い。」
妙に聞き分けが良い。
ケン「そういやインターフォンで出た人誰だったんだ。」
イットク「あー、あの人でっか。お富さん。お手伝いはんです。」
ケン&おさむ「お手伝いはんっ!?」
一同昨夜訪れたばかりの蛇屋に今日も到着。
ケン「問題はここだな。」
ピンポーン
がちゃ。
ショータ「あ、どうもどうも。先輩。迎えに来てくれたんですか?。」
パコっ。頭はたきながらおさむ「おう早くしろよ。」
ショータ「はいはい。準備OKです。行きましょう行きましょう。」こちらもやけに機嫌がいい。
ショータ「あ。これ持って行かなきゃ。」
レコードを袋に入れて手に。
ケン「おー、聴いたかステイタスクオー。気に入ったか?」パカパカパカ、ロールで頭はたく。
ショータ「ひ。気に入ったもなにも。良かったすよー。特にロール・オーバー・レイダウン。あれが一番良かった。」
イットク「おいおいおいおい何いってんねん。イズ・ゼア・ア・ベタアウエイちゅう曲が一番やでー。」
ショータ「なことないよ。レイダウンっ。」
ケン&おさむ「おまえらなあ」
ショータ「これお返しします。ばっちしテープに録ったんで。」
イットク「あ、わても。おおきに。」
ケン、それぞれのレコードをジャケットに納める。2枚組が戻ってきた。
ショータ「あとでそのバンドのこと詳しく教えて下さい。もっと聴きたいんで。」
イットク「あ、わてもわても」
ケン&おさむ、にまあと笑う。
さて
一同向かった先はお馴染みハマ楽器。団体さんで2階に上がる。
ケン「あー、いたいた。岸田さん。」
岸田さんはハマ楽器の店員さん。
おさむ「ベース下さいな。下さいなって言ってもこいつが買うんですけど。」
ごそごそ。
岸田「お、君達か。何やらえらいことになってるな。話は聞いてるぞ。シローさんがこの頃しょっちゅう来て。今朝ももう。あの人のんびりそうに見えてけっこうせっかちなんで。あ、今日、店に行くんだろう。ははは。びっくりするぞう。」
「おう、この子がベースやるのか。こっちの女の子じゃないよなまさか。」
おさむ「ははは、違います。今日何かシローで起きてるんですか?」
岸田「口止めされてるからなあ。親父さんびっくりさせたいんだろう。とにかく行ってみな。」
ショータ「はじめまして。ショータって言います。あのう、ベースっていくらくらいなんですか?。」
岸田「私は岸田。こちらこそよろしく。えーと予算はいくらくらいなんだい?」
ショータ「とりあえず20万持って来たんですけど。足りますか。」
一同「に、20万ーーーーー!!」
ケン「おまえんち、見かけによらず金持ちなんだなあ。」
岸田「20万もあれば本物が買えるな。これなんかどうだい。」
岸田が見せたのはフェンダー・ジャズ・ベース。
「新品だけど17万で買えるよ。弦もサービスで付けちゃおう。」
ショータ「どうなんすか先輩。何かこうかっこがあまり良くないようですけど。」
おさむ「お前何をゆう。フェンダーさまだぞ。ジャズベさまにそんな口きくと口が曲がっちゃうぞ。」
ケン「まーまー。興奮ストップ!。これはだな。アメリカのギターのメイカーじゃ一番を争うとこのもんなんだぞ。ジャズベースっていって音は極上なんだ。そうですよね、岸田さん。」
岸田「そう、その通り。うちにあるのはその中でもピカイチのものだよ。」
ショ−タ「じゃあそれにします。くださいな。」
岸田「ブラウンサンバーストのジャズベお買い上げー。」
もうニッコニコである。
「ソフトケースも付けちゃおう!!」
おありがとーございましたー
の声を背中に一同ハマ楽器出発。
ケン小声で「おいおさむ。やったな。これでベースの音だけはばっちりだ。」
おさむ小声で「ああ。これは何としてもショータをいっちょまえのベーシストにしなけりゃ。」
マコがそれを聞いて思い切りニマーっと笑った。
それ見て二人もニマー。
イットク「あ、わて忘れ物ありまっさ。ドラム・スティックっているんじゃないでっか」
ケン「あっ、そうだ。」
イットク「マコのことちょっと見といてくだはりませーーー」
と言いながら駆け足で店に戻るイットク君。
慌ててドラム・スティック買いに行ったイットクも合流、5人はバーガー・シローの前に到着する。店の様子がおかしい。玄関が工事中。おそるおそる入って行く5人。
ケン「こんちわー。わ!どうしたんだこれは。」
おさむ「工事中だ店の中も。」
奥にシローを見つけた。
ケン「おじさん、これどうしたんですか?」
シロー「どうしたもこうしたもご覧の通りだよ。」
おさむ「ご覧の通りって....何工事してるんですか?」
シロー「わからんかなあ。店の模様替え。それと防音工事だよ。」
5人「防音工事ーーー!」
シロー「ああ。面白そうなんで夜はライブハウスでもやろうかと思ってね。」
5人「ライブハウスーーーーー!」
シロー「ライブハウスってんだろ。今時のナイトクラブは?」
ケン「うーん、ちょっと違うかもしれないけど...。」
おさむ「よくお金ありましたねえ。」
シロー「へへ。パチンコに使わなきゃこれくらい出来るよ。あ、それはともかくこれをご覧。」
シロー、奥の一角にあるスペースに置いてある荷物の白いカバーをめくる。
イットク「あーー、ドラムやー。」
ショータ「あーー、それ、ベース・アンプですよねー。」ボカっ。
ケン「あ、脇にマイクスタンドまであるぞ。」
おさむ「すげえや....すげえ。」
シロー「ははは。どうだい。一式あるぞ。すぐ演奏出来るからな。バンドさん。早くものになっておくれ。」
ケン「え、バンドってうちらのことですか?」
シロー「ああ、他に誰がいるんだ。」
おさむ「おじさんも気が早いなあ。」
6人、爆笑。
アッコ「ほんとせっかちなんだから。」
奥からアッコ登場。
「君達のおかげでおじさんに火がついちゃったわ。」「まあ、パチンコばかりするよりましでしょうけど。」
ケン「へへへ。あ、おじさん、紹介します。こいつショータって言います。ベースやらせますので。」ペンっ。
ショータ「あ、どうも、あの、あの、はじめまして。ショータって言います。何だかわからないのですが、ベースだけは買いました。はい。」
シロー「おー、君がベーシストか。どらどらベース見せてごらん。」
ショータ、おずおずとソフトケースからベースを出す。
シロー「おっ、これは驚いた。本物のジャズベースじゃないか。よく買えたなあ。」
ケン「おじさん、こいつ、ほらあそこの蛇屋さんの息子ですよ。」
シロー「ああああ、あそこの子か。どうりでどっかで見たことあると思ったよ。あそこの子ね。だったらお金持ってるなあ。ははは。」
シロー「そうだ。せっかくだから音出してみるかい?」
おさむ「音って、工事してるじゃないですかー。」
シ「ああ、いいんだいいんだ。ステージはもう今日の工事、終わってるから。」
ケン「終わってるって、まだあっちじゃ工事中で。おいおいマコちゃん。」
マコ、ドラムセットに座ってパンパン叩き始める。
おさむ「じゃあ、せっかくだからなあ。」「出してみるか」
ショータ「えー、僕初めてベースさわるんですよー。」
ボカっ「テキトーにあわせりゃいいんだ。どうせみんな初心者だし。」
ショータ「うそー。」ベシっ。
イットク「おいマコ。お兄ちゃんが叩くから。どきなはれ。」
ぱたぱたぱた。なかなかどこうとしないマコ。しぶしぶスティックをイットクに渡す。
ショータ「えーと。このコードどこに刺すんですか。」
シロー「ああ、これはここに。ボリュームはこんなもんだ。」
まったくベースを触ったことがないショータ。とんでもなく低い位置でベースを構える。しかも左右逆。それを見たシロー、
「あ、それじゃあ。君弾きにくい....」
ケン「あ、おじさんおじさん。こいつはこれで良いんです。」
シロー「えっ?」
ケン、おさむのほうを振り返って舌を出す。小声で「あの方が何かかっこいいもんな。」「ああ、そうだそうだ。」
「おじさん、この前のロッドの曲、やりたいんですけど。ベースどう弾かせましょうか?」
「そうだな。君は、えーっと。逆だからわかりにくいな。はは。この指でここを押さえて。そうそう。左手の人差し指で弾いてごらん。ほら。」
べんべん。4弦のAの音。
「はは。楽器が良いからちゃんと音が出るな。ぼんぼんぼんとあの二人のギターのリズムに合わせて弾けばいい。」
ショータ「はい。なんとか...。こうですね。」
イットク「あのー?」
ケン「何かー?」
イットク「どうやって叩けばええのでっか?」
シロー「ああ、スティックはえーとロックはこうやって持てばいいんだろ。それで右足はそこのペダル、でっかい太鼓のだ。そこに置いて。左足はその左側の金物のペダル。とりあえずずっと踏んでなさい。それで右手でその金物をぺんぺんと」
イットク「ぺんぺんと」
シロー「左手は真ん中のドラムをたんと」
「たんと」
「それでぺんぺんはずっとやりながら左手でぺんたんぺんたん叩いてごらん。」
「ぺんたんぺんたん」
「そうそう」
「あのう。右足は〜」「あ、右足は調子に合わせてテキトーに踏んでごらん。」「テキトーでっか。」
ぺんたたぺんたどすんぺんたどすん。出来てないと思う。
ケン「よーしこれでばっちしだ。やろうやろう。」
シロー「そうだそうだ。君達バンド名は何にするんだ。」
ケン「それならもう決まってます。」
おさむ「きまってるのかーーー!?」
ケン「横浜ブギ・ブラザース!!。レッツゴー。1,2,3,4.」
ずずちゃちゃずずちゃちゃどんどづべんぼごぶるぶるずずずず。
アッコ「きゃああ。何これ。ひどすぎー。」
シロー「よっしゃよっしゃ。横浜ブギ・ブラザースか。チラシ刷らなきゃな。」
数十分、曲の構成も無視、音楽だか騒音だかわからぬ音を出し続けたブギー・ブラザースの面々。さすがに精も根も尽き果てて演奏を終了する。
ケン「うひょー。楽しいなあ。」
おさむ「やっぱバンドで音出すと違うなあ。」
イットク「でかいすねえ。ドラムの音って」
ショータ「これでいいのかなあ」
マコ、にやり。
アッコ「あー、やっと終わったー。何なのこれ。」
シロー「ははは、最初だからなあ。こんなもんだ。とにかく音を出さなきゃ。」
落ち着くと自分達が出した音がトンデモないものであることに全員が気付き始めた様子。
ケン「うーん、それにしてもやっぱ初心者、何とかしなけりゃ。」
おさむ「そうだな、そりゃ練習しかないけど。・・・・まず何をやるか決めなきゃ。」
ケン「おじさん、ぼくらものになるまでちょっと時間かかりそうです。」
シロー「ははは。そりゃそうだ。音楽はそんな甘くないからなあ。ま、じっくり相談して練習して。ここ夜、店を閉めた後なら使っていいから。」
おさむ「でもライブハウス、すぐ開くんじゃないですか?」
シロー「いやいや。元はといえば君達のせいでこんなになったんだ。最初のバンドは君達だよ。まああせらないでやるといい。」
ケン「すんませんいつも。それじゃてめえら。俺に付いて来い。」
おさむ「てめえらってお前がリーダーかい。このー。」
ケン「わはは。そゆうこと。おじさん、今日は工事中なんで邪魔になるから失礼します。打ち合わせして曲覚えて、練習出来るようになったらまたよろしくお願いします。」
全員「お願いしまーす。」
シロー「へたくそだけど息だけは合ってるな。よっしゃよっしゃ。まかしときなさい。工事は一週間くらいかかるんでその間に曲を覚えたら良い。」
ケン「はい。それじゃ失礼します。」
全員、会釈して店を出る。
歩きながらの打ち合わせ。
ショータ「先輩、それでどうしたらいいんすか。ベース弾けるようになるには。教則本を買わなきゃいかんですか。」ボカっボクっ。
ケン「馬鹿ゆうなよ。ブギに教則本はいらん。おいイットクもおさむもこのバンドでは教則本禁止だからな。」
イットク「そないな殺生な。ほなどうやっておぼえたらええのですか。」
おさむ「へへへ」
ケン「そりゃあもちろん耳で聴いてその音を出せるようになれば良いんだ。さっき基本的なことはおじさんに教わっただろ。そうだわかんなくなったらおじさんに聞けばいいよ」
「は〜い。」
おさむ「それで曲はどうする。」
ケン「そうだなー。とりあえず3曲くらい覚えようか。」
おさむ「1曲はスリー・タイム・ルーザーとして。」
ケン「ホットレッグスもやりたいなあ」
おさむ「スロー・ライドも」
ケン「ZZトップのタッシュもかっこいいぞ」
おさむ「そんなこと言ったらロッキ・オー・オバザワールド♪も絶対だ。」
イットク「もう5曲でっせー先輩〜」
ケン「わはは。5曲だ。じゃあ5曲にしょう。」
ショータ「ええかげんなリーダーだなあ。」ボカッ。
ケン「よっしゃ、おさむ、後でレコード借りるよ。テープ4本作って明日渡すからそれで覚えることにしよう。」
ショータ「あ、先輩。俺もブギのレコードもっと聴きたいんですけど。レコード屋さんに付き合ってもらいますか?」
イットク「あ、わいもわいも」
おさむ、小声でケンに「おいおいこいつら金持ってるからこいつらに色々買わせようぜ。うっしっし。」
ケン、ウインク。
ケン「ごほん。う、ああ。時間無いけどな。しょうが無いから付き合ってやる。」
何と全員いつのまかハマ楽器の前に。
おさむ「お、いつのまに。やっぱ神に導かれてるのか。」
翌朝、製作したテープをケンは店に行っておさむに渡し、さらにショータに殴りながら渡し、ショータは学校でイットクに渡した。ショータとイットクは同じ私立のY高校の生徒なのだ。おさむはY高校と甲子園出場を争うことも多い市立Y商業。ケンは県立H高校。一応受験校だが、そこそこの大学に一発で受かるほどの頭の持ち主はいない。当然、ケンもすぐ就職は嫌なのでどっかの大学に入りたく思ってはいるよう。だが実感全然無く先日学校でやったO文社の模擬試験の結果がすべからく「合格確率0〜5%」でも、おお0じゃないのかと至って呑気。どうするのだ。
その日の夜
おさむの家。
「何だよー。ロッキンじゃないじゃないか。」
テープをかけたおさむが文句を言っている。気が付けばテープのケースの中に紙。
「「ロッキンも良いけどキャロラインの方がのれると思ったぜ。だから替わりにキャロライン。よろしくー」」
「まったく勝手なやつだぜ。キャロラインでも良いけど。でもこれライブのテイクじゃないか。メドレーでつながってるよ。終わりどうすんだ。」
文句言いながら、教則本禁止のお達しに関わらずこっそり買っておいたコード本見ながらコピー開始開始。
ショータの家
シローの店での初ギグの時に教えて貰った通り、ベースを反対側に持ちながら悩んでいる。
「えーと、こうやってベース持つんだよなあ。何かしっくりこないような。うーん。取りあえずアンプのBASSを上げて音を拾ってみよう。あれー、もわもわして逆にわからないよ。普通でとるか。えーとこの音だな。どんどんどん♪。ははは、同じ音ばっかだ。簡単かも〜。どんどんどん♪。ここで替わるんだな。おっし。えと同じのが多いから問題は順番だ。紙に書こう。」
曲が変わったのも気付いておりません。
ケンの家
「あいつら文句言ってるだろうなあ。キャロラインの方が歌いやすいんだもん。へへ。えーと歌詞か。英語だなあ。うーん英語だ。うちにあるレコードは歌詞カードあるからまだいいけど。無いやつは聴きとるのか。出来ん。電話しよう。」
ぷるるるぷるるる
じょわいーんじょわいーん
「はい来々軒。」
電話を取ったのは真奈美姉ちゃん。
「もしもしケンですけど。こんばんわおさむくんお願いします。」
「あらケンちゃ〜ん。おさむ?いるわよ〜。ちょっと待って。」
おさーむうう。おさむーーーー。電話の向こうで物凄い声で呼んでる。
「今来るからね。ああ、そうそう、お兄ちゃん元気〜。帰って来てるの〜?」
「あ、はい。ええと全然帰ってこないんで。あ、わかりません。今度帰って来たら一緒にラーメン食べに行きますんで。」
がっかりした様子で
「あーーんそうなの。(急に立ち直って)ほんと帰ったら一緒に来てね。大盛りにするからーん。」
悶えている。
「あ、ケン。なんだよ。おう、あれじゃんか曲が変わってるぞ。」
「おうすまんすまん。あっちの方がいいだろう。いいじゃんか。大して変わらないし。あはは」
「そりゃ全部ブギだからなあ。変わらないと言えばかわらんけどよ。あっちもこっちも同じくらい好きだし」
「えーとそれで歌詞のことなんだけど。適当に日本語で作っていいか?」
「おいおい日本語かよ。だっせーんじゃないの?」
「だって英語だって俺が歌うんだぜ。情けない発音だからなあ。その方がださいぞ」
「そうか。あはは。それもそうだな。それでかっこいい歌詞つくれんのか」
「まかせなさい。それは。って自信ないけど。取りあえずやって見るから。助け求めることもあるかもしれないけど
そのときゃよろしく」
「よろしくって。まあしゃあないな。とにかくやってみんしゃい。」
「ああ。この件、あいつらにはどうする?」
「ああ、いいよいいよ。どうせそんな余裕はやつらにはないでしょ。気がつきゃせんて。えーとそれだけか?コピーで忙しいんだから邪魔すんな」
「このやろ。俺はコピー+歌詞なんだぞー。じゃあな」
電話を切ったケン。うーんこれはこれで大変だーと思いながらラジカセのスイッチを入れた。
翌日の昼。
私立Y高校。イットクの教室。数学の授業中。
たかたかたかたかたかたかたかたか たかたかたかたかたかたかたかたか
「こらあ誰だ。机叩いて妙な音出してるのわああ!!」
イットク、はたっっと気付き顔が真っ赤に。下を向く。
「どうもすんまへん。」
テープを渡して3日目である。進行状況ととあることをたくらむケンは各メンバーに召集をかけた。場所はおさむんち、来来軒の2階である。
ガラガラガラ。
「こんばんわー。」まずはケン登場。ぞろぞろと後ろからイットク、ショータ、マコがついて来る。ケンと待ち合わせをしてから来たのだ。怖いらしい。
ショータ「こんばんわ。お久しぶりです。」
イットク「こんばんわ。」
マコ。ニコっ。
親父「おう、来たな。みんなでっかくなって。」
マナミ姉ちゃん「ようこそいらっしゃい。あらマコちゃんお姉ちゃんのこと覚えてる〜?」
マコ首を横に振る。
マナミ「あら、あんなにラーメンご馳走したのに。ま。」
親父「おいおいちいせえんだからしょうがねえだろ。ま、ま、そこにすわんな。」
2階からおさむが降りてくる。
「おいおい、父ちゃん。そこに座らせたら話が出来ないだろ。」
親父「何言ってんだ唐変朴。みんな懐かしいじゃねえか。うちに来たらもうラーメン食ってもらわなけりゃなあ。」
カウンターの方向いて
「なあ腹減ってんだろ。まず食って食って。」
全員カウンターで凍ってる中どんどん麺を茹で準備準備。
「はいよ。ラーメン4丁。中学時代以来だからなあ。今日だけはおごりだ。さあ食え食え。熱いから気をつけろよ。」
全員「いただきまーす。」
ずるずる
マナミ「あんたたち剣道は今もやってんの?」
ずるずる
ショータ「あ、いややってません。元々弱かったんで。先輩も悪かったし。」
ボカ。
ゲホゲホゲホ。
ケンが後頭部はたくと麺が鼻から出てむせた。
マナミ「相変わらずねえ。あんたたち。」
イットク「はい。そのようで。」
全員爆笑。
「ごちそうさまでした。」
「美味しかったなあ。」
「やっぱここのラーメンが一番や。」
マコ、うなずく。
親父「ははは、そうだろそうだろ。今度はお客連れて来てな。どんどんどんどん」
「はーい」
ケン「じゃあ2階おじゃまします。」
全員2階のおさむの部屋へ。ショータはベースをケンもエレキを持って来ている。
親父「何するんだろなあ。あいつら。」
マナミ「何か楽器持ってきたみたい。まさかバンドでもするんじゃないわよねえ。」
親父「おい、後で様子見て来い。」
おさむ「今日は何なんだよ。みんな集めて。」
ケン「おう、おじさんの店で練習する前に1回ここで合わせておこうかと思って....。それとな。もう1曲テープ持って来たんだ。」
イットク「も1曲でっか?きついなあ。」
ケン「いや、とゆうのもこうなったのも全部おじさんのおかげだろ。1曲ぐらいおじさんが喜んで参加出来る曲やりたいなあと
思って。」
おさむ「うん、それもそうだ。で何だよその曲?」
ケン「じゃーん!これだ。」
テープには監獄ロックって書いてあった。
おさむ「監獄ロックうう!プレスリーかい?」
ケン「ノーノーノーノーノー。甘いな。我らブギ・ブラザースにとって監獄ロックと言えば....」
全員ぽかん。
おさむ「あ、わかった。ZZトップだろ。」
ケン「ピンポーン。大正解。これなら文句ないだろ。まあ簡単なんで各自、家に帰ってコピイするように。」
「へ〜い。」
ケン「それではと。何かそっと合わせてみようか。出来たんだろコピイ、お前ら」
ショータ「一通りやりましたけど。自信はあんまり。大体良いのか悪いのか。」
ボカっ。
「うじうじ言わないっ。ブギはひたすらやるのみだー。そら全員で。」
「やるのみだー」
おさむ「じゃあホット・レッグスやろうか。最初に入ってた曲だからさすがに出来てるだろう。」
ケン「おう。実は仮の歌詞もそれしか出来てない。わはは。」
イットク「しっかりしてや〜リーダー。」
ケン、イットクをはたこうとするも空振り。しかたないからショータをはたく。
ボカっ。
「いてえなあ。俺じゃないっすよ。言ったのは。」
「よしやろう」
ずずじゃずずじゃ
ずずじゃ ずずじゃ
ぽぺぱぽこぺんぱ ぷうぺぽーん 「お、すげえ弾けるじゃん」
ぽぺぱぽこぺんぱ ぷうぺぽーん
♪走りたいーけど 走れないのさ ここ最近走り過ぎ (最初は小声で)
3年続けてー 毎日放課後
シゴキさ
「はい全員で」
ホットレッグス 飛び出す
ほっれー 君じゃない
ほっれー 叫ぶぜ
「うるせーっ。おめえらいったい何騒いでんだ。コラーっ。」by花沢徳衛in階下ラーメン。
ケンびっくりして急に小声で・・・
「好きよ骨♪」
おさむ小声で「何だよその歌詞。部活動じゃんか。」
ケン「わはは。足の歌だから陸上部だと思って。 まあとりあえず仮の歌詞だ。かっこいいやつに直すよ。」
おさむ「頼むよ。ほんとだろうなあ。」
ケン「えへん。ところで君達なかなか出来そうじゃないか。安心したよミーは。」
ショータ「誰なんすかそれ」
ボカ。
「よしもう少しやってみよー。そっとな。」
5人顔つき合わせてそーっとしょぼーいギグ。
うんうん楽しいなあ。