2005年10月07日

第15回「今夜決めよう」

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ジリリリリリ〜ン、ジリリリリリ〜ン、ジリリリリリ〜ン、ジリリリリリ〜ン、ジリ
「うごうぐ、うーん。眠いー。」とがさごそ起き出したのはケンちゃんです。
まあ、今日は決戦の日ですから歯を磨いて顔を洗って鼻毛チェックしてメシを食って準備するのだ。
現在9時。10時に日之出町駅に集合なのでいささかあせっている。
「これでよし。・・・・よしかな。」
とその時
「おはようございまーす。」

「おい、婆さん、客じゃ無いか。」
「はいはい。・・・あ、アッコちゃん。迎えに来てくれたのかい。すまないねえ。」
「どうも。早かったでしょうか。準備出来てるかなケン。」
「はいよー。出来てる出来てる。」
と階段を下りてきました。
「ははは。お迎えですか。すまぬのう。」
「だってどう考えても心配だ。」とアッコ。
「なるほど。しかり。」
「なるほどかー!あ、バンダナ忘れた。」
「ほら、やっぱり。」

奥から爺ちゃんが「お、やるな彼女がお迎えか。まあ、今日は、今日は頑張ってこいや。」
珍しく真面目な顔で。
「うん、わかった。やるだけやってくるわ。」
「おい、婆さん。婆さんも何か言ってやれや。・・・出てこんわ、まったく。まあ、あれでも昨日は随分心配してたんじゃ。気持ち汲んで頑張ってこい。」
「はーい。」二人揃って。

駅に向かって歩く二人。
「お婆さん、バンドに反対なの?」
「うん、まあね。最初に言わないで勝手に楽器買っちゃったから。まあ、ずっと面白く無いみたい。」
「ふーん。」
「ま、しゃあないわ。いいって聞いても反対されただろうし。兄貴が出来がいいんでまいっちゃうわ。」
「ほんと出来悪いからねえ。」
「このやろー」

と言ってるうちに駅の前。既にいるのはショータにおさむ、そして
「お、ショータ君、早いねえ感心感心。ところであれ、ほんとの兄弟は?」
「それがまだ来てないんだ。」とおさむ。
「時間はちゃんと言ったよな。」
「はいキャップ。言いました昨日確かに。」
「そうか。あいつら滅多に遅れないのにおかしいな。」

10時10分です。
「うーん。困ったな。11時半までに受付に行かなければいけないんだろ。そろそろ電車に乗らなきゃ。」
おさむ「電話してこようか?」
「そうだな。」
とその時、
「すんまへんすんまへん。ようけ遅くなりまして。」
「あー良かった。どうしたんだ。遅刻なんて珍しいじゃんか。」とケン。
「おはよう。Tシャツ、似合ってるねマコちゃん。」とアッコが声をかける。
ニコっと笑うマコ。
イットクが「すんまへん。とりあえずはよ電車のりましょ。事情は中でお話します。」

全員、キップ買ってホームへ。すぐ来た普通電車に乗って横浜に。すぐ2駅だから着いちゃいます。
急いで横須賀線に乗り換えて一路新橋へ。
これまた丁度電車が来たので急いで乗り込む兄弟たち。
ケン「これで何とか間に合いそうだな。それで何かあったのか。」
イットク「へい。実は昨日いきなり親が家に帰ってきはりましてん。」
アッコ「親って。いつもいないのイットク君ちは?」
ショータ「こいつんち、親が商売でしょっちゅう外国とか行ってるんです。そうだよな。」
イットク「うん、まー、そうゆうことで。二人で取締役だから責任あるみたいで。まあそれはそれでけっこう自由に出来るんでええんですけど。いきなし帰って来まして。どこからかバンドのこと聞いてましてお前はともかくマコまで引っ張り出して何事やとそりゃもう説教説教で。まいりましたわ。」
おさむ「そうかー。そりゃ大変だ。それじゃよく今日出て来れたな。」
ショータ「はい。お手伝いはんがええ方で。ずっと面倒見てくれはる人なんですけど、バンドも応援してくれはって、こっそり裏口からさっき出してくれました。」
ケン「おいおい、それじゃその人、後で大変なんじゃないか。お前たちも。」
「まー、だいじょぶでっしゃろ。あの人がいるんで家がちゃんとしてるんですし。わてらも優勝でもすりゃ逆に鼻高々じゃないかと。頼みまっせ。みなはん。今日はだから優勝しないと困りますー。」
全員「OK!そりゃだいじょぶだー。」
ケン「いかん。電車の中だ。」
と再び小声で・・・

「だいじょぶだー。」。



電車はけっこう混んでて座れません。全員立ってたんだけど大森で入口脇二人掛け席の一つが空い
たんでマコを座らせます。
ケン「はい。レディ・ファーストだからどうぞ。」
スタタと座るマコ。アッコを指差してる。
ショータ「はは、この方?この方はレディーとゆうよりもーー・・・」
ばこっ
ショータ「いてーなあ、アッコさんまだ何も言って無いのにー。」
アッコ「どうせ私はレディじゃありませんよーうっだ。」
ケン「どーどー、レディさん。堪忍してやっておくんなましー。」

などとふざけてるうちに新橋に到着。
おさむ「皆の衆、着きましたぞ。ささ。ささ。」
全員「はーーーい。」

改札を出たところで
イットク「ここからけっこう歩くんでっしゃろ?どっちへ行けばええんかい委員会。」
ケン「えーっと。地図を見ますと日比谷公園はあっちだな。さあさあ行こう遅れちゃう。若いからあっちゅうまだぞ。」

てくてくてくてく10分あまり。
すると
「おーーーーーい」
窓から顔出して声をかけながら車が通過。
ショータ「あ、あれハナさんだ。凄いマイクロバス!。乗せてもらえばよかったすねえ。」
ケン「駄目駄目。けっこうロートル陣いるし。楽器もあるからあれでもけっこう一杯だぞきっと。」
おさむ「そうだな。それよりおじさんたち遅れなくて良かったじゃないか。」
アッコ「そうね。これで一安心。」

さらに
てくてくてくてく5分あまり。公園に入ってしばらく行く

ケン「お、ここ、ここ。さてと受付はどこかな。」
アッコ「やっぱり楽屋のほうじゃないの。とすると裏の方かも。」
ケン「そうだな。行ってみよう。」

おさむ「あ、あそこあそこ。あれーあそこに立ってる人は〜〜」

「やー、君たちやっと来たね。待ったよ待ったよ。何たって優勝候補だから。ははははははは。」
「はははははははって大泉さんじゃないですか。どうしてここに?」
地区大会で親切にしてくれた主催のヤメハの職員さんが大泉さん。
「はははははは。ボクけっこう偉いんだから。今回は会社代表して審査委員長。君たちのことは大好きだけどそれはそれ。厳正に審査いたしますからそのつもりで。さ、さ、ここに名前書きなさい。」
ケン「はい、今日はよろしくお願いします。ほらみんなも。」

全員で「よろしくお願いしまーす。」

大泉「ははははは。いいねえ若いってのは。元気で。あ、そうそう、そこにね、はい書いて。はい。いいよ。はい。それで。はははははは。あ、そうだ実は頼みがあるんだけど。君たちが出番最後なんだ。それでね。リハーサル最初にやってくれない?音合わせもやるんで協力してくれないかな。」

ケン「はい。もちろん。僕たちに出来ることがあったら何でも言ってください。」
おさむ「は、いいけれど。おじさんたちはまだなのかな。」
ケン「大泉さん。僕たちより先に中年のラッパ軍団がここに来ませんでしたか?」
大泉「いや来ないよ。君たちのバンドの人達なの?あ、ほらもしかしてあの・・・・」

じゃーーーーーん

「中年のラッパ軍団は無いよー、ちみい。」
中年のラッパ軍団揃って登場。

ケン「あ、植木さん。ごめんなさい。どうもうまく形容できなくて。」
ハナ「がはは。まあそれには間違い無いからなあ。よっしゃよっしゃ。」
シロー「いやー、参ったよ。駐車場がわからなくて。ぐるぐる廻っちゃったわ。」
汗をふきふき。
「そうだったんですか。ご苦労様です。」とケン。
「それで最後出番で逆リハだそうで早速なんですけど。いいですか。」
イカリヤ「ういーっす。こっちは大丈夫。行くかどーんと。」
大泉「これは凄いメンツなんだねえ。じゃ楽屋はこっちだからその辺り、うん、そこでいいよ。
じゃ頼んだよ。準備出来たらステージに行ってね。あと5分で出来るかな。」

ケン、シローおじさんに目で合図。うなずくおじさん軍団。
「はい、大丈夫です。」
ケンはきっぱりと答える。

ショータ「えー、5分ですかー。ピース・バッジ全部付けられないっすよー。」
ぼかっ。
「いてー。見て無いのに凄い命中率。」
後ろ手でドツくケン。
おさむ「バカだなあお前。リハなんだから衣装はいいの。」
ショータ「えー、気分出ないなあ。ってみんな用意早いですねえ。ボクもしなけりゃ。」

いざ、ブギ兄弟今日の戦いの始まり。


そそくさと準備してステージに上がる兄弟たち、と桃屋オールズターズの親父達。

「おはようございまーす。よろしくお願いしまーす。」
と生意気にも業界時刻用語で各自三々五々に声掛け。

すると

「遅ぇんだよ。何時だと思ってんだ。早く準備しろよ。」
とおっかない声でPAのお兄ちゃんが。(役:管貫太郎)

ウエキのおじさん、むっとして食って掛かろうとするところ、イカリヤさんが手を振って抑える。

ケン「すみません遅くなって。何から始めましょうか?」

PA:管「何からって決まってんだろ。マイクだ。マイク。声出せ。」

ケン「はっ?」

PA管「声出せってんだ。音決めるから。」

ケン「はい。チェック、チェック。只今マイクの試験中。あーあー。」

PA管「馬鹿。明治時代じゃねえよ。まあいいか。次、隣のお前。」

おさむ「あ、ボク?。はいはい。チェック、チェック、あーーー、出てますか。」

PA管「次。ハーモニカのボク。音出せるかなーボクちゃん。」

イットク、むっとした顔をしながら「パプー、パプー」。

PA管「よし。あんまりマイクにツバかけるんじゃねえぞ。弁償させっからな。次、そこのラッパの親父達。」

これには今度はイカリヤさん、形相変えて。それをウエキさん抑える。それ見てキシダさん笑いこらえて。

一人一人、ぷー、ぷー、ぷー、ププパポと出して全員で

ばーーーーっ。

凄い音。生音だけでいいくらい。

PA管、少々びっくりして「あ、よしよし。それはそれで良し。次はギター・アンプ。」

シローおじさんが最初に引く。♪ぷりぴろぱらぷりぷろぷろぷろ〜。
凄いプロの音だ。アンプの音を絞ってシールド抜いて、ケンに
「ボリュームは8だよ。覚えておきなさい。」
「はい」。ケンが次にシールド指して
♪が、が、が、が、が、ぐぎょーん、アマアマアマ。
アマの音だ。しかし若さ抜群。

PA管、「よし。次もう一台のギター。」
おさむ「はいはい。」ケンが寄って行って「ヴォリュームは8だよ。覚えておきなさい。」。

♪ぎょいーーーーーーーーーーーーーーーーーん。スライドでひょいーーーーーーーーーーーーん。ひょ

PA管「O−K。やめ。次はベース。」

これからばりばり弾こうと思ってたとき止められてずっこけるおさむちゃん。

ふと見ると横でショータが変な動きしてる。ぶるぶる動いて踊ってるかのようで。

ケン「ショータ、お前何踊ってるんだ?」

ショータ「お、踊ってるんじゃあ、ありません。こここ興奮して、あああああ上がっちゃってああああ。」
シールドをアンプに刺そうとしてますがなかなか刺さりません。

ショータ「くくくそ、ははは入らないぞ。ちちち小さいんじゃななな無いかここの穴。」

PA管「何やってんだ兄ちゃん。早くしろよ。棄権させるぞ。ぐずぐずしてると。」

それ聞いて益々焦るショータ。とんでも無く踊ってるみたいに見え。

「こら。何ふざけてんだ。もうやめやめ・・・。お前らもうコンテストなんか出るな。」

大変です。ブギ・ブラザース。退場処分になってしまう。

「ちょっと待って。そうあせらないでねお兄ちゃん。」と前に出て来たのはウエキさん。
「ショ−タ君!」
「は、は、はいっ。」ぶるぶる震えながら返事してます。
「き・み・な・ら・出来るっ!!」とでっかい声で言いながら両手でショータの両肩を

パン!!!!

ふにゃふにゃふにゃ〜としましたショータ君。

「びっくりしたなあ。やめてくださいよウエキさん。あれ俺どもってない。あれ震えも止まった。あはは。」
「どうだ。効き目は?もう大丈夫だろう。」
「あはは。だいじょぶです。どうもありがとうウエキさん。さすが大ベテラン!。」
「ま、ま。礼はいいから早く音出しなさい。おっかないお兄ちゃんが睨んでるよ。なあ。  
おい、兄ちゃん。今音出すから。待たせたね。」

PAの管さん「何が兄ちゃんだ。ふざけやがって。」

べんべん、べこべこべこべこ♪
ショータ君、憑き物取れたように快調に音出します。

PA菅さん「よし。それでOK。」

♪べこべこべこ、ぶおん、びろろろろ、ぱっつんぱっつん

「よーし。それでOKって言ってんだろこら。いつまでやってんだおら。」

♪ぶ

「あははは。うまいでしょ。あ、あ、すんません。つい調子に乗っちゃって。あは。」

くすくす笑うケンとおさむ、アッコ。

イットクはマコのとこに行って椅子の高さとか調整してやってます。

「バカ。じゃ次はドラム行くか。バスドラア。バスドラ音くれ。」

♪ぺん、ぺん、ぺん

「ちょっと待って。まだペダルの準備が・・・」とイットク。

PAの菅さん「こらあ。音が小さいぞ。何やってんだ。まったく。そんなガキに叩かせるなんて100年はえーんじゃないのかあ。」とペっとツバを吐きました。

イカリヤさん、真っ赤になって
「おいおいおいおいおい、黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって。PA屋かなんだかしらねえけどんなことばっかほざいてたら出しちゃうよあれ。出しちゃうから。」

「何だお前は。出せるもんなら出してみろってんだ。」

イカリヤさん脇に置いてあったバッグからいきなり何か取り出して

「ひかえおろう。この黒スティックが目に入らぬか。」

じゃーん。カメラ慌てて寄ります黒スティックに。PA管さん、目をぱちくり。

「何を隠そうこのお方は、先の日本ジャズ界で上に立つものはいないと言われた名ドラマー、ハナ”ウルトラロール”ハジメ様だ。一同の者、頭がたかーああい。」

「へへえ」と言ってブギブラザース全員、コウベを垂れます。

ハナ「あ、何、俺?俺のこと?・・・・あっと驚くタメゴローっとくりゃあ。じゃなかった。ごほん。そうじゃ、わしがハナじゃ。コラっ。お前っ。どこのPA会社のものだ?ああん。新宿音響?
そうじゃ。ヒデジ。ヒデジがおるだろう。ヒデジを出せ。」

PA管「社長、社長。なんだかあいつらが呼んでますよ。」

隣でかがんで線を整理してたおじいちゃん(役:大滝ヒデジ)、おもむろに起き上がって「え、なんだい。呼んでる?・・・お、おうおう。ひさしぶりー。ハナさんじゃ無いですかあ。あの節はそりゃもうご贔屓に。久し振りですねえ。何やってるんですか、こんなとこで?」

ハナ「おお、いるじゃないかヒデジ。元気そうで何より。どう?これから一杯?」
隣でイカリヤが横腹突付く
「あはは。そうじゃなかった。何だヒデジ、お前のとこはそんな無礼なミキサー使ってるのか。本来なら打ち首獄門なれど、今日は忍びの身じゃ。表ざたにせず・・・」

ヒデジ「いやー。すまんことですこの男、腕は確かなんですが・・・」

ハナ「最後まで決めさせてくれよー。」

ヒデジ、聞こえない振りして「口が悪くてねえ。ご迷惑おかけしました。こら管、このお方はそりゃーー偉い方なんだ。お前が直接口をきける方じゃないぞ。・・・ああ、いい、いい。わしがやるから。そう、このバンドだけはわしが卓に座るって。お前はそっちでケーブルでもさばいてなさい。」

管、急にへりくだって「へ〜〜〜〜い。」

ハナ「わかればよろ・・・・」
ヒデジ「はい。お嬢ちゃんがドラムやるのかい?かわいいねえ。はい。ちょおっと音くれるかな。」
ハナ「言わせてくれよー」

♪ドンドン。

ヒデジ「はい。OK。次スネア。あ、はいOK。次はタムね。はいOK。じゃちょっと適当に叩いてみて。」

♪どんどきゃあ、ずどだだだだどんぼかべこーん。

凄いドラム・ソロだー。

ヒデジ目をまん丸にして「はい、いいよー。いいねいいねえ。いやーさすが血は争えませんねえ。お嬢さん、素晴らしい腕前です。」

頭をかく、マコ。

ハナ「いや、この子はワシの娘って訳で無く・・・・」

ヒデジ「はいー。じゃお兄ちゃんたち。曲頼むよ、期待してるからね。リハは1曲だけでいいね?上手いからだいじょうぶっ。」
とニコニコしながら言うので、思わずケンちゃん
「はい。大丈夫です。」って言っちゃった。

おさむ「おい、1曲だけで大丈夫か?」
ケン「しょうがないよ。だいぶ押してるみたいだし。1曲目のあれならみんなで音出すからいいだろう。

さあ、みんな、いいか。1曲目だ。

1,2,3,4

♪ぱぱぱぱぱぱぱ

何はともあれ強力な味方を見つけた兄弟たち。何とかリハも無事に終わりそうです。

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