2005年09月22日

第11回「ジョニーさんといっしょ」

010.jpg

夏近い蒸し蒸しする日曜日。午後7時。ようやくザキにも夜の帳が下りようとしております。
ぶーーーっ、きっ。
桃屋の前に一台のタクシーが止まりました。
がちゃ。
「ぺらぺ〜ら(釣りはいらねーぜ)。」
出てきましたのは粋なツバ広帽そしてデカサングラスの痩身の男。ロイクです。上から下まで真っ白の服着てる。シャツだけはブルー。
続いて出て来ましたのは2人の美女美女。一人は背の高ーいロイク(黒い)の姉ちゃん。髪はパツキン(金髪)、上から下まで真っ赤です。そしても一人は中背のアジア人。デビド・ボイのチャイナガールのクリップに出てくるような日本人からしてみれば「美人?」ってお人です。外人好み美女の彼女、中国人か和人か不明。タクシーから出て来たとたん白の兄いを挟み撃ち。ぶら下がってます。
「へい。ぺらぺぺぺぺらぺら?(へい、ここがそのハコかい?)」
と話しかけたのは最後に降りてきました男。身の丈2メータ10センチあろうかちゅう物凄いでかロイク(黒い)です。でっかい黒のギターケースをトランクから出しながら。
「ぺーらぺ、ぺらぺえええぺら。(間違いない。ここだよ。入ってみようぜ。)」

店内では・・・・
待っています。ジョニー・ギター・ワトソン。今か今かと。ただ待っていても間抜けなので、ブギー兄弟一同と横浜ブギ・ホーンズの面々はセッションをやっておりました。軽めの4ビート・ブルース。ロッキン。サックスのキシダさんが曲に似合わぬコルトレーンばりのノンブレス奏法音の布団の下敷きやっておる時に。その男は入って来ました。
一転して黒い空気に変わる店内。満員のお客共々誰もが入店に気付いております。

誰も振り返ることが出来ず、兄弟もそろそろと演奏。キシダさんはさすがにハケました。
全身白の痩躯の男、ジョニーさん、入って来て立ち止まり店内を見渡します。左、右と。
カウンターにいるシローちゃんに気付きました。
ニっと笑って近づく。
シローちゃんカウンターから出ながら握手握手、抱き合ってお互い耳打ち、何か笑いながらしゃべってます。
そしてジョニーさん美女二人を紹介。シローちゃんも握手。でかロイクも紹介。握手。どうやらジャアマネ(マネージャー)のようです。
そしてステージ前のテーブル席を指差してジョニーさんを案内します。
ここで割れんばかりの拍手。
兄弟たちも演奏を止めて拍手拍手。
一行は席に着くと、ジョニーさん右腕を高くパッと上げました。
拍手ピタッと鳴り止み。
しーん。
誰かが・・・
「じょにー」
誰かが
「じょにー」
それに吊られてあちこちで
「じょにい、じょにい、じょにい、じょにい」
と大ジョニー・コール発生。最高潮に達したところで
ジョニーさん、左手を高くパッと上げます。

し〜〜〜〜ん。

ジョニさん兄弟たちに向かって
「ギミ・サム。ギミ・サム・ぺらぺらぺ〜ら。」
どーんと親方座りしてます。

ケン「おい。おさむ。何か言ってるよ。」
おさむ、笑顔をジョニさんに向けて、それから
「えーともしかして何か曲やれって言ってんじゃないのか?」
ケン「そうかな。オリジナルがいいかな。」
おさむ「いやこうなったら最初からあれやっちゃおぜ。一緒にやるなら早いほうがいいや。」
ケン「そうだな。やろう。    おめーたちよーく聞け。フォーメーション4−2だ。」
全員「いえーっ!」

かん、かん、かん、かん(マコのスティック)
♪ちゃちゃっちゃ、ちゃちゃっちゃっ。ちゃちゃっちゃ、ちゃちゃっちゃっ。
ちゃちゃっちゃ、ちゃちゃっちゃっ。ちゃちゃっちゃ、ちゃちゃっちゃっ。

これは。これはジョニー・ギター・ワトソン、1977年ブラック・シングル・チャート最高位5位の大ヒット
、A Real Mother for Yaのリフだ。

わーっと沸き立つ会場。
ニヤっと笑ってるぞ御大。


ここで皆さんにはコマーシャルっと(^0^)。


A Real Mother for Yaだ。
ケンがギターを弾きだした。
ニヤッと笑ったワトソンさん。ジャーマネにアゴで合図をしました。
ジャイアント・マネージャー氏、おもむろに黒のギター・ケースを開けると取り出しましたのはギブソンES335。上から下まで眺めて、ペロっと鳴らして。ジョニーにギターを渡す。

ジョニー・ギター・ワトソンがステージに上がりました。
イットクがサッとシールドを渡す。
かねて用意のフェンダー・トゥイン・リバーブ・アンプにシールドを差し込んで、ペロぺろって音を確かめ軽くチューニング。ニヤッと笑うとケンのそばに近寄って行きます。

耳元で何か囁く。
わかんないけどとりあえず微笑むケン。
弾け弾け弾けって言ってるようだ。
ごりごりごりとケンはフレーズ発射する。
それに併せて弾きだすジョニー。

わーーーー。
会場がざわめいた。

ひとしきりバトル展開後、またケンの耳元に。

「ぺらぺらぺーら(ソウルだ。ソウルだよケン。)」
ケンちゃん思わずお辞儀しました。
ジョニーさんもお辞儀。

次にバックでリズム刻んでたおさむのところに言って弾け弾け。
おさむくん、目をまん丸にして。ポケットからかねて用意のスライドバー取り出してぎゅいーーーん。
「おー、ファンタースティック!」
ジョニーが驚いた。そして一緒に弾きだします。
1周して最後はユニゾンでばっちり合した。
わーっと会場拍手。ジョニーさんも拍手。そしておさむの頭をパーンっとはたいて、親指を立てた。
お辞儀をするおさむ。嬉しそうです。

脇で片手でハーモニカ、ぷわぷわ吹いてるイットクの元へ。
「ブロウ!ウインドブロウ」
わかんないけど何となく察したイットク、必死に吹きます。ギターでからんでいくジョニー。
一周廻って機転を利かせたイットク君、さっきのキメのフレーズ出してジョニーと合せます。
決まった。
わーっと会場拍手。
親指立てたジョニー。肩をポンと叩きます。そしてケガをして包帯吊ってる右手に口を近づけて
「ふっふっふっ」と息を吹きかけた。OKマークを出して。
握手をして。お辞儀深々としますイットク。

ベースのショータのところへ。指差して弾き方を笑ってます。そして通り過ぎる。通り過ぎるー?
ショータ、弾くのをやめておいおいって手招きしちゃったりして。
会場爆笑。
通り過ぎた振りをして戻って来たジョニーさん、いきなりバリバリバリってすげーフレーズ出しました。
慌てて応酬するショータ。覚えたてのチョッパー、がんがんかまして青筋立ててる。
一周してさっきのフレーズでキメ。
決まった。
わーっと会場拍手。
ジョニーさん近づいて耳元で
「OKOK。ぺらぺらぺーら(お前のその弾き方最高だぞ。それでいい。それでいいんだ。)」
英語赤点のショータ君、何故かわかって喜んでます。ペコペコお辞儀して握手。ジョニーを指差して拍手。会場も大拍手。

奥でピアノを弾いてるアッコのところへ。
しばらく演奏振りを見ています。腕を組んで。
黙々とリズム弾いてるアッコ。併せてジョニーがソロフレーズを巧妙に絡ましだす。
そのうまさに思わず応酬してしまう。
キメのフレーズ。
わーっと会場大拍手。
バッキングに戻って引き続けるアッコに近づいて、額にキッスしてしまいました。
親指立てるジョニーさん。
アッコ顔真っ赤にして驚いてます。会場拍手。気を取り直して握手。お辞儀をしました。ジョニーさんも
お辞儀。

ドラムに近づいていきます。
きょろきょろしてどこだどこで叩いてるんだと探すふりするジョニー。
会場爆笑。
そしたら飛び上がってマコがトップシンバルをクラッシュしました。
「OH!!」と初めて気付いたふりしてるジョニーさん。叩け叩けと腕をパタパタする身振りしてます。
それを見てマコ。どだだだだどだだだんすこここんとドラム・ソロ。すぐ止めてタメにタメまくったファンク・ステディ・ドラムを叩き出す。それに併せて弾きだすジョニー。3周もやっちゃった。
キメのフレーズ。
決まった。
大拍手。
ジョニーさん笑いながら拍手しながら近づいて握手、額にキッス。耳元で何か囁いた。秘密です。
マコ、ニヤッと笑って叩きながらお辞儀。

ステージ中央に戻って
「ファンタースティック!ヨコハーマブギブラザース!マイ・ブラザー!」
会場歓声。
ジョニーが歌を歌いだした。

そしてギターソロ、ギターソロ、ギターソロ。
ギターソロを弾きながらお店真ん中の通路を入口に向かって歩き出します。
後ろを付いていくジャーマネとお付美女二人。
そのまま店の外出ちゃったよ。
シールドを引っこ抜いてギターをマネージャーに手渡すジョニー。
美女二人の肩を抱いて夜のザキに消えていきました。

おさむ「かっこよかったなあ。」
ケン「あいつアッコにキスしやがった。」
ショータ「あいつマコにキスしやがった。」
バコっ。
前を見ながら叩かれましたショータ君は。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


もうすぐコンテストの本選だなあと緊張感がじわじわっと増して来ました桃屋店内。
今日も今日とて夕方のライブを前にカウンターでバーテンのフィル・コリンズ・アッテンボローとケンちゃんがのんびり話してます。

「あ、そうだ。ケンちゃん、こないだ貸してもらったレコード聴いたよ。」
「えっ、聴いてくれた?それで、それでどうだった?。」
「いやー似てる似てるってあんまり言われるから避けてきましたけんど良いでした。フィル・リノットって歌うまいねえ。曲も気に入ってましてすっかり一緒にシンギン。出来るようになっちゃいました。」
「ほんとー!良かった良かった。じゃ聴かせてよ。
 みんなー。フィルがフィルやってくれっぞー。早くこっち来いよー。」
おさむ「何だ何だ。フィルがフィルって。訳わかんねえよ。」
「ま、とにかくこっち来いや。さあ、フィル頼んまっせ。」
「えーそんなあらたまみちよ、いや改まって言われても恥ずかしいヨ。出来ないヨー。」
「えーって。こっちだってえー、やっておくれよう。」とケン。

おさむ「ちょっと待ったケン。ぼそぼそぼそ。」
ケンに何やら耳打ちしました。
「ふむふむふーむ。ははは。そりゃいいや。ふむふむ。ぎゃはは。それ行こう。」
フィル「何ヨ。ふむふむって。気持悪いヨー。」
ケン「あ、恥ずかしいならしょうがないよね。とにかくレコード聴いてバッチリ歌って楽しんどいて。」
フィル「はい。それはたしろまさし。いや楽しみますが、何ヨ。ほんと。気色わるね。」
おさむ「ははは。気にするな。ほら奥でジャックさんがおいでおいでしてるよ。」
「はいヨー。今いくよー。    来るよー。」

ケン「みんな、あっちの机で話そうぜ。」

アッコ「何たくらんでんのよ。いったい。」
ケン「へへへ。フィルがシン・リジイ歌えるようになったってからさあ。作戦ナンバー2番決行だ。」
ショータ「そりゃ結構。って何でしたっけ2番。」
イットク「そもそも1番てありましたっけやんけ?」
おさむ「まあそれはいいから、みんな1曲だけシン・リジイ出来るように練習しよう。」
ショータ「何でですか?」
イットク「鈍いねえ。おまはん。あれでがしょ。もしかしてフィルにフィルやらせようってんじゃ?」
ケン「ぴんぽーん。」
アッコ「あははは。馬鹿ねえ。」

男ども「馬鹿ほど楽しいことは無し!」

ケン、店のテープ置場から持ってくるテープを。
「はい。これ。リジーの「やつらは町へ」が入ってます。」
イットク「おやまー。これはまた手回しが良いこって。」
ケン「それからっと。おさむ。おさむんちにノコギリと何か板無いかな?」
おさむ「えっ?何に使うの。確か店の裏にあったと思うけど。」
ケン「今日ライブ終わったら行くからさ。一緒に作ろうぜ。」
おさむ「だから何を?」
ケン「ひ・み・つ。アッコも手を貸してくれるかな?」
アッコ「いいけど。何よ。」
ショータ・イットク「いいないいな。楽しそうで。混ぜて混ぜてー。」
ケン「ははは。じゃあ明日にしようか。音をコピーした後、音合わせを兼ねて作ろう。」

と兄弟たち、次の日集合してあるもの全員で作りました。
そしてそれを持って桃屋にけんざん。

ケン「ちわー」
フィル「こんにちわネー。今日も元気でみなさんごくろーさん。」
おさむ「ちょっと時間あるかい?フィル。」
「今、暇な時間だから大丈夫あるヨ。」
ケン「じゃあ、ちょっとこれ着てみて。プレゼントだー。」
真っ赤なTシャツに黒の革ジャン。パンタロンのGパンを出しました。
「わー。嬉しいネ。素敵ですね。高かったですカ。」
おさむ「心配すな。古着だから。さあ着て着て。」
「はいはいはい。」

全員「おーーーーーーーー!!!」

フィル「何がおーですか。」

全員「そっくりだ。」

ケン「じゃあちょっと待ってね。」

兄弟たち、全員、急いでステージで演奏の準備。

おさむ「てめーら準備出来たか。」

全員「おーーー!」
おさむ「親方、準備出来たそうです。」
ケン「おー、そうかそうか。ではでは
   おーい、フィル。ちょっとこっち来てくれよ。」
フィル「はいはい。何ですか。何か企み感じるあるー。」
ケン「いいからいいから。じゃあこれちょっと持って。」
と差し出したのは、おさむん家に有った板っ切れにベースの絵を描いたものです。
フィル「何ですかこれは。えー。」
ケン「まー、いいからいいから。フィルは「やつらは町へ」歌えるだろ。」
フィル「はい。あれいい曲です。バッチリ歌えるだヨ。」
ケン「そうか。じゃあみんな、行くぞーーー!!」
マコ、カウント
1,2,3,4
♪ジャー、だだだだんだだん、ジャー、ジャー♪
♪ジャー、だだだだんだだん、ジャー、ジャー♪

フィル「わわわわ
Guess who just got back today?
Those wild-eyed boys that had been away
Haven’t changed, haven’t much to say
But man, I still think those cats are great

They were asking if you were around
How you was, where you could be found
I told them you were living downtown
Driving all the old men crazy

The boys are back in town じゃーんじゃーん
The boys are back in townあーあん
The boys are back in town

つい歌いだしてしまいました。

スタア誕生の瞬間です。



今日も今日とて桃屋では熱いライブが絶好調。演奏するは親父バンド「桃屋」です。

結局バンド名が決まらずいつのまにか「桃屋」ってことに。
めずらしくハナさんがオルガンを弾いてる。毛糸の帽子かぶって。
カメラが寄って行った。ハナさん上を向いて陶酔。おー画面がフリーズ。

サン・ラだ。

画面が溶けました。
すぐさま、ハナさんドラムに飛び乗ってドラム・ソロ開始です。

どがすご、しゅがくこ、ずどどどんどん。ぶひゃじゃべー。

そこに入って来たのが只ならぬ雰囲気を漂わせたコート姿の二人組みです。一人は30代後半、細面、般若のごとき厳しい面相。もう一人はやや小柄、丸顔でぎらぎらした若者のよう。
すぐにカウンターに向かう。

「やっ、シローちゃん、久し振り。」
「お、ナリタさんじゃないですか?お元気そうで。嬉しいなあ。何か飲んでいってくださいよ。」
ナリタ(ザキ署刑事)「いや、実はまだ勤務中なんだ。残念だけど。」
「今日は何か?」
「いや、何ね。この前このの店で若いバンドに殴られたって届けが来てね。まあ、どうやら未少年同志のことなんで事情を聞いてからと思って握ってはいるんだが。」
「そうなんですか。じゃこの前のあれかな。ひどいヤジが原因でちょっとしたいさかい有ったには有りましたが、血気盛んな若い連中のことなんで。騒ぐほどのことではないかと思いますが。」
「なるほど。そうなんだ。ちょっとお客さんに聞いてもいいかな?」
あ、っと待ってくれと言いそうになるシローちゃんを右手でサッと制して、ステージの方を向く。

カウンターの隅では
ジャックさん、ヤマモト、オサム、アキラのいつものおあ兄さんが。
ちっちゃくなってます。
ヤマモト小声で「ねえ、兄貴。なんで言わないんですか。何でも無かったって。あの時いたじゃないですか。うちらだって。」
ジャック小声で「ばかっ(ぼかっ)。お前うちらが信用される訳ないだろ。ヘンなこと言ったら逆に取られちゃうじゃないか。気付かれないように小さくなってんの。」


ナリタ、声に気付いて振り返る。
「何だ。ザキの名物兄さんたちが揃いも揃って。悪いことしてないだろうな。」
ジャック「はい。してませんです。お酒をちょっと飲ませて貰ってます。」
「そうだオサム、お前今の話聞いてただろ。あの時ここにいなかったのか?」
アキラ「あにき〜、呼ばれてますよ」
オサム「ぼかっ。ばか、わかってるよ」
ナリタ「何〜〜〜?」
オサム「あ、違います違いますバカはこっちのバカの方で。はい。あ、あの時ですか。確かいましたが。」
アキラ「えーっと、ここにいる兄さん方皆さんはライブの前にへべれけになっちゃいまして。はい。僕も含めて潰れてました。はい。」
オサム小声で「お前たまにはいいこというなあ。」
アキラ「うーん、あにき〜〜。たまには俺だって活躍しますよん。あにき〜〜。」

ナリタ「あ、そうか。わかった。」
連れの若手刑事石橋「わかったってナリタさん。こいつらの言うことなんか。」
ナリタ、右手で制して。

ステージ上ではドラム・ソロ真っ盛り。どだすがでんとでかく叩いてスネア・リブをちんこちんこ。
だんだん小さい音に。そのまま目の前のもの、そして床を叩きながらドラムを離れてステージ中央マイクの方へ。マイクの足元からスタンドを叩きながらせり上がって行く。
最後にマイクをちんこちんこ叩いてキメの

コンっ!

その時
ナリタ大声で「あー、楽しんでるとこ悪いがちょっといいかな。この前この店で若いバンドと客とで小競り合いあったそうだけど。その様子を見た人がいたら教えてくれないか。」
後ろでシローちゃんが、張り手のポーズしてそれからバッテン、必死にやってます。
ナリタちょっと振り返ってシローちゃん、パッとやめて「熱いなあ。熱いですねこの店」とぱたぱた扇ぐふり。

その時客席から若い兄ちゃんが
「あー、いましたよその時。ヘンなヤジ飛ばしてたやつらがいて。怒られたらコップ割って帰って行ったなあ。」
ナリタ「ほお、コップ割ったんだ。」
別なところにいたおじさんも
「そうそう。バツが悪くなったんじゃないかな。コップ割ってお金払って帰って行ったよ。ねえマスター。」
シローちゃん、うんうんと。
客席で
「そうそう。」
「失礼なやつらだったなあ。」
「ほんとほんと」
の声。

ナリタ「とすると暴力なんかはなかったんだ。」

「ないない」「ないない」「うん無いよそんなん。」

ナリタ「わかった。どうもありがとう。ハナちゃん、久し振り、続きやってくれ。」

ハナ、にかっと笑って、両手を挙げてサッと下げた。
じゃーーーん。曲のキメやって終了。

ナリタ、シローに向かって「やあ、迷惑かけたね。何でも無かったてんで安心したよ。また来るから。今度は非番の時に」
シロー、ホッとした様子。にこにこして何か言おうとする。
サッと右手で制して、若いのを促して店を出る二人。

イシバシ「いいですかナリタさん。あんな調べで。」
ナリタ「ああ、あのシローって男はいいかげんなことで嘘は付かないやつだ。あいつに任せて置けばあの店は安心だよ。」

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