2005年09月28日

第13回「スカウト」

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コンテスト決勝の日まで2週間であります。
今日も今日とて兄弟たちは桃屋でライブ決行中。ショータの問題も無事解決、絶好調なのだ。このところ毎日毎日ライブ、よくまー同じ曲やって飽きないものだわと思いきや、どーんと楽しんでるぞ。飽きてるって言えばとっくに飽きてるけど、そこはやってるのがブギィつう特殊音楽、やればやるほど別な世界に突入だ。
今日も今日とてその別な世界に突入した桃屋で突入した兄弟とぐんぐん増える突入したお客さんたちでライブ決行中。
コンテスト決勝の日まで2週間であります。

「きゃああ、いいぞーアッコちゃん。すってっきいい!」

「なんやあのおっさん、また来とるがな。ういとるわなあ。全く。」
ハーモニカ、すっかり上達、ポール・マーガリンフィールドさんくらいにはなったイットク君、思わずつぶやいてしまいました。

ケン「ははは。・・・えー、今日も熱狂的ファンの方が来てるようですが。そろそろ最後の曲を・・・。アッコの歌で。如何にするかー!」

「よ。待ってましたア”ッコ”ぢゃーーん。」

♪じゃじゃっじゃん、じゃじゃじゃん、じゃじゃじゃじゃーーん♪
「ありがとございましたー。」

パチパチパチパチ。うっほー。いえーいい。もとやれー。

うまく行ったぞ演奏はとホッとしております兄弟たち。
そこへ先ほどの男がどこに隠し持っていたか赤い花束小脇に抱えて近づいてきます。
「いやー。どうもどうもどもども。良かったです歌。どうかこれを。」
とそれをショータに。なわけないだろ、アッコに渡します。
「あ、どうも。いつも応援すみません。」
「いやーどもどもどもども。謝ることなんかないっすよう。だって素敵ですからー。」
「いえ、そんなことは。」
「まー、ご謙遜を。ところでちょっとお話があるんですが。あ、申し遅れまして。私はこゆう者でございます。」
と名刺をメンバー達に渡します。
ショータ「キャシャリン芸能社 社長 センダミツオ 出身那覇?」
「はい。一応れっきとした芸能プロ社長でございます。ナハ!」
おさむ「ケン、お前聞いたことあるかキャシャリン芸能社って?」
「うーん、ちょっと知らないなあ。」
「無理もありません。知る人ぞ知るって由緒ある会社ですからー。なは。
「ですから、すみません、アッコさん。ちょっとお時間を。はい。是非お願いします。」
「うーん、どうしようかなあ。」
「何でも好きなものご馳走しますんで。」
「じゃフジヤのパフェでもいい?」
「はいはい。」
「じゃ。行くわ! みんな、ちょっと行ってくるから。」
ケン「おいだいじょぶか?」
「平気平気ーーー。」
と一緒に出て行ってしまいました。

ケン「何か心配だなあ。」
イットク「見に行かはんで良いのでっかー?」
ケン「うん、おい、おさむ。ちょっと様子見に行こうぜ」
おさむ「あ、おう。行こう行こう。」

アッコとミツオ社長の後ろ3メーター。電信柱に隠れながら後を付けます。怪しいぞ二人組。
「さ、さ、どうぞどうぞ。あ、お姉ちゃん!オーダ、オーダー。どうです。やっぱパフェですか。」
「もっちろん。これ。」
と指差すは・・・・。

二人組も店内突入です。フジヤは1階喫茶部の前にへこちゃんキャラのお菓子を売ってるコーナー有り。そこで色々買おうと悩んでるふりをしながら覗き見覗き見じゃ。
ケン「あー、アッコのやつ。あんなもん頼んでやがる。」
おさむ「でっけーパフェだなあ。よくあんなもん食えるなあ。」
「おい感心してる場合じゃないぞ。何話してるのかなあ。」
「聞こえないなあ。」
「ア、笑ってるぞ。楽しそうじゃんか。」
とまー、気をもみもみすること小30分。
「あ、出てくる隠れろ。」

「どうもどもども。お願いします。どうか考えて見てください。なは。また連絡しますんでって、明日もライブ見に行くね。」
「はあ。」
「じゃ帰り気をつけて。なはなはなはー。」

「君たち!もう出てきてもいいよ。」
おさむ「あー、ばれてたか。」
「何よばればれじゃない。恥ずかしかったー。」
ケン「で、話って何だったんだ?」
「えーとねえ。スカウトされちゃった。」

二人「えー、スカウトーーーー!!。」


アッコ「うん、事務所に入ってデビューしないかだって。じゃあねー。」
おさむ「じゃあねーって、おい。行っちゃったよ。ケン、お前行かなくていいのか。あ、ケンも行っちゃった。」

「おーい。待てよアッコ。待てったら。」
と必死に追いつきましたケンちゃん。
「何?」
「何ってお前、マジかよ。それでほら。断ったんだろ当然。」
「えー?考えときますって言っちゃった。」
「何でだよ。」
「だって、もうバンド用意してるんだって言ってるんですもの。何でもチャーとかエディ藩とかつのだひろとか内山田洋とか鈴木ひろみつとかにもう声をかけてあるんですって。誰だかよく知らないけど。
有名人みたいだし。すぐ断るの悪い気がして。」
「うーん、何かそれおかしいぞ。だってお前なんかにその豪華メンツをいきなりなんて。」
「何それお前なんかって!。実力あるってこの前まで言ってくれたじゃないの。それに社長だってデビューしたら絶対売れるって保証してくれたんだよ。」
「だってそれはそれ、これはこれだろ。何か話うますぎるし。」
「私なんか騙したってしょうがないじゃない。話はそれだけ。遅いから私帰る。」
「おい待てよ。送るよ。」
「結構です。」
てんてんてんてん、早足で行っちゃいました。
「うーーーーん。」

翌日、桃屋にて
おさむ「おい、お前昨日あれからアッコに何て言ったんだ。」
ケン「うん、ちょっとね。失敗したかも怒らせちゃったよ。」
「またこれだ。よくケンカするなあお前たち。だいたいお前が野暮天なんだよ。」
「どこが海老天だって。だってさー、チャーとかジミー・ペイジとかジョン・ディーコンとかフランク・ザッパとか用意してレコーディングさせてやるって言ったんだって。おかしいと思わないか。そりゃ俺だ
ってアッコの才能凄いと思うけど、実績無いじゃないか。」
「うん、そりゃ確かにそうだ。心配だな。あの社長調べた方がいいんじゃないか。」
「そう思うけど・・・どうしようか。」
「それより今日アッコ来るかなあ。いつもなら一番最初にいるのに・・・」
「あっ」
アッコ登場、ブスっとしてこっち向いてくれません。
おさむ「あー怒ってるぞやっぱ。おいケン待てよ。今のとこはそっとしといた方がいいぞ。ちょっと落ち
着かないとあの様子じゃ。」
「だってライブが。」
「来たんだからライブはやるよきっと。大丈夫。」
「まあ、そうだろうけど。困った困った。」
「俺が後でとりなしてやるから、安心しろ。」
「それがまた安心できないんだよなあ。」
「このやろー!!」
ショータ「あー、先輩達何楽しそうに話してるんですか。混ぜて混ぜてー。」
「ばかやろー。能天気に。こっちは大変なんだぞー。」
ボカボカボカ。
「ひゃあ、二人で叩かなくても。おっかないなあ。だって何にも事情知らないしー。」
ケン「いいからお前はチューニングしっかりしてな。最近音程甘いぞこらー。」
「ひえ、とばっちりだ。わかりましたー。」
マコがそれを見て笑ってます。

チリンチリンと桃屋入口の扉が次々と開き始めて。
お客さんたちが続々入ってきました。
その中に・・・

「なはー。今日も元気ー?今日も見に来たよー。みんな頑張ってね。」

ケン「あのやろー!!」
おさむ「今はまずい。まあ待て落ち着けよ。」
「だって」
「こうなったら何か証拠無いとアッコも納得しないだろう。それからだ。」
「くそー。むしゃくしゃするなあ。」

当日のライブは大荒れ。ケンちゃん、力入り過ぎるは、アッコは途中で弾かなくなるわ。
さんざん。
まだ未熟者。若いブギ・ブラザースたちです。


へろへろのライブが終わりました。
客席から又も花束持ってセンダ登場。客席からは時ならぬブーイングが。センダさん受けたと思ってあのポーズしてるよ。今日の花は紫の薔薇でございます。
一直線にアッコのとこ寄って行って何事か耳打ち。アッコは手を振っていやいやしてます。そしたら土下座してやんの。根負けしてしぶしぶ承知した様子。

汗を拭いてカウンター席に座ったケンとおさむ
ケン「アッコたち何話してたんだろ。気になるなあ。」
「うん。でもなあ。下手に口出すとまたヘソ曲げちゃうからなあ。」
「あ、アッコ着替えてあいつと出かけるぞ。ついていこうか。」
「やめとけ。今度見つかったらやばい。」
「でもなあ。」
「またフジヤでプロ入りくどくんじゃないか。」
「ならまだ安心だけど。」

そこへイットクがマコの手を引いてやってきた。
「ケン先輩、聞いてくらなはれ。マコがアッコはんたちの話聞いてたらしいんですわ。」
「えー!何話してたの。教えてマコちゃん。」
マコ、イットクにごしょごしょ耳打ち。
「それがでんねん。何か有名なミュージシャンを待たせてるから会ってくれないかつうてお願いしてたようで。」
「ふーん。でも何であんなに嫌々してたのかな。それなら別に行ったっておかしくないのに。」
マコ、慌ててまたもごにょごにょ。
「えー、ほんまかいな。早くそれを言いなはれや。大変ですわ。その会う場所ってのがホテルなんですって。なもんで必死に断ってはったんですなあ。」
おさむ「ですなあって呑気なこと言ってる場合じゃないねん。どこで会いなはるんだろう。あ、移った。」
ショータ外へ慌てて出る。戻って来て。
「先輩ー。アッコさん達、タクシー乗って行っちゃいましたー。」
ケン叩くのも忘れて「ってお前も呑気だな。うーん、困った。探しようが無いぞ。」
マコ、ごにょごにょ。
「何?何?。うんうん。何か山下公園の前のちゃんとしたホテルだから大丈夫だからって土下座してたらしいでっせ。」
「ほんと?とするとどこかな。」
バーテンのフィル「ケンさーん。それならきとホテール・にゅヨコハマあるよ。まん前だしに。にゅグランドは格調有りすぎですねん。どっちにしろそのどれかですの。」
おさむ「フィルは妙なこと詳しいなあ。」
フィル「ははは。ホテル王フィルでんねん。」
ケン「よっしゃあ。行くぞ。追いかけるぞー。」
おさむ「あ、おじさん。今日、ジャックさん来てないんですか?」
シロー「あ、ああ。今日は珍しくいないんだが。」
「じゃ電話お願いします。応援頼みますって。あ、それとほら成田警部にも。電話して下さい。」
「でもまだ犯罪って訳じゃないし。」
「未成年をホテルに連れ込むだけで充分、悪い奴です。それに成田さんはもう友達だし。」
「ああ、わかった。じゃあ取り合えず急いで行って来なさい。」
ぴゅーっと二人は飛んで行きました。

「ええと電話電話。」
じーこじーこじこじこじーこ。
「もしもし」
「は〜いこちら綾部探偵事務所。じゃ無かったイチゴ組でーす。僕アキラちゃん。ふふふーん。何か用?」
「あ、こちら桃屋のシローですがアキラちゃんかい。、兄貴、じゃなかったオサムさんはいるかな。急用なんだよ。」
「ふーん。何おじさん血相変えて。兄貴ならここにいるよー。ちょっと待ってね。」
「はいオサムです。すんません今日行けなくて。組長の説教があって。はにゃほにゃはにゃ。えー何だってー!。そりゃやばい。やばいっすよ。すぐ向かいますから。あやー。はい。ジャック兄貴も一緒に行きます。はい。はい。」
ガチャン
「兄貴ー。ああああアッコちゃんが大変だー。」
ジャック「何だ何だ静かにしろや。何。何だってー。何ぐずぐずしてる。緊急出動だ。ノリヒコお前も来い。」
どどどどどど。全員出動イチゴ組。


センダ社長と表に出たアッコであります。
ぶーーーっ。ぎぃぃぃぃぃっ。
バタン。
「社長お待たせしました。」
「ああ、いい。いい。グッドタイミン。鯛がみんなでたいみんぐ。なんちゃってなははははは。」
アッコ「あのー、タクシーで行くんじゃ無いんですか?」
「うん、今日はね、社長カー付。凄いでしょ楽しいでしょ。さー乗った乗った。」
追い立てられるように乗ってしまいました。後席に二人で。
「あのー前の方たちは・・・?」
前席には屈強な男二人が。
「ああ、こいつら?この人達はうちの社員。こんな顔してるんだけど見掛けばっかりよ。かわいいんだから
ねぇ?」
「へぇ」
「それにしてもアッコちゃん。近くで見るとかわいいねえ。」と近づいてくる。
「ひ」。思い切りドア側に寄るアッコ。
「それ以上冗談すると帰りますから私。」
「ははは。冗談?そう冗談冗談ジョーダンズ。なんちゃって。なは。楽しいねえ今日は。」
裏道を一路山下公園へぶっ飛ばしてます。

場面変わってケンとおさむ。
後を追って外に。
おさむ「た、たーくしー!!」
ケン「お願いあれ止まってくれ!。」
ぎーいぃぃぃっ。
「あ、止まった。さあ早く早く。」
バタン。
ケン「す、すみません。山下公園のえとえと・・・」
おさむ「慌てるな。あの、にゅーヨコハマってホテルまで。お願いします。」
「へーい。」
ぶおーーーー。タクシーはもちろんトウキョウ無線。
おさむ「うーん、道混んでるなあ。やばいなあ。」
ケン「おい、お前、いくら持ってる?」小声で。
おさむ「え?金?(小声)えーっと。」
じゃらじゃらじゃら。ポケットを探る。
「650円。」いっそう小声で。
ケン「俺は・・・・」
じゃらじゃらじゃら。
「400円。うーん微妙だ。」
「どうしよう。」
運転手(谷K)「お客さん、何かあったのかい?」
ケン「あの実は僕たち、さっき乗ったところのお店でバンド出演してる高校生なんですけど。バンドのメンバーの女の子が今しがた怪しい芸能プロの男に連れて行かれちゃって。急いで追いかけて連れ戻そうと思って。」
運転手「何だってそりゃ大変だ。へーあそこに演奏出来るとこあるんだ。実は私も昔はバンドマン・・てなことはいいや。それはいかん。ちょっと飛ばすからつかまってろよ。」
「飛ばすっておじさん、どこを?」
ぐおおおおおおおおおおお。
くるっと曲がってすげー細い路地に突入。パーパーパーパー。
「ええいどけどけい。谷様のお通りだい。」
「ひえー、おじさんお助け〜〜〜〜〜〜。」
ぶわーぐおーききききき、どーーーーー、ぱふぱふぱふ。
「さー着いたよ。ほら急いだ急いだ。」
ケン「でもお金が。」
「いいいい。そんなこと言ってる場合じゃないだろ。早く行きなさい。ここで待ってるから。女の子取り戻したら、すぐ乗って帰ろう。」
ケン「ありがとうおじさん。感謝します。」
おさむ「ありがとう。」
バタン。たったったった。駆ける二人。
ケン「まずどこへ行けば・・・」
おさむ「そうだ。フロントで聞いてみよう。」

ケン「すみません。こちらにキャシャリン芸能社の社長のセンダさんって方、泊まってらっしゃいますか?」
フロント(フレディ・フェンダー)「ああ、バンドマンの皆さんですね。4階の404にお泊りです。あのエレベーターをお使い下さい。」
ケン「あ、はい。すみません。」

おさむ「おい、バンドマンの皆さんですかってさ。あながち嘘じゃ無いのかなあいつの話。」
ケン「うーん。取り合えず早く行ってみよう。」

エレベーターで4階へ。
ケン「ええと404。あっちの方だ。」
たたたたたた。駆ける二人。
どすん。何かにぶつかった。
屈強な男A(きらカン)「何だお前たちは」
屈強な男B(マツザキマコト)「ここはお前たちみたいなやつらの来るところじゃ無い。帰った帰った。」
ケン「あの、でも。僕の大切な・・・」
屈強な男B「うるさいっ。グズグズしてると座布団で丸めちゃうぞ。」
屈強な男A「モンゴリアン・チョップしちゃうぞ。」
と無理やりエレベーターにまた押し込んだ。
「ぐぐぐぐぐ」

1階に逆戻り。

ケン「くそー。もう一回俺は行くぞ。あんなやつらがいるってことは・・。ますます心配じゃないか。」
おさむ「まあ待てケン。また行ってもあんな連中じゃ・・・悔しいけどかなわないよ。」
ケン「でも・・・・・。ええいどうしたらいいんだ。」


「おい、お前たち!!」
ケン「あ、ジャックさん!オサムさんも!」
「へへーん。アキラちゃんもいるよー」
ジャック「どうした。こんなとこで。ここにいるんじゃないのか?」
ケン「あの・・・部屋の前に馬鹿でかい凶暴な男が二人いて。どうしても通してくれないんです。」
アキラ「何だって〜。よっしゃあああ。お兄さんたちに任せておきなさい。」
ジャック「部屋番号は?」
おさむ「404です。」
ジャック「よーしお前ら、イチゴ組の実力見せてやろうじゃねえか。堅気の衆に迷惑かける悪玉けっちょんけっちょんにしちゃうもんね〜〜〜〜〜」
ヤマモト「兄貴、見栄はいいから早く行きましょう。」
「はーーーい。」
全員でエレベーター乗ってぎっしぎし。


アキラ「兄貴〜、このエレベーター遅いね。」
オサム兄貴「そうだな。何か2週間くらいかかってる気がするぞ。」
ぴーん
全員「よっしゃあ。」と飛び出る。
ジャック「どどどどどどどど、どっちだ。」
ケン「あっちです。」
どどどどどどど。

おさむ「ほら、あそこにいる二人。でかいのがいるでしょ。」
ジャック「何。あれか。おおでかいな。よっしゃまずお前から行け。」
とヤマモトを押し出す。
「え、僕ですかー。」
「そうだ。」
「まったくいつも俺先にいかせるんだから。」
オサム兄貴「お前も行け。」とアキラを押し出す。
「えー兄貴〜。ずるいや〜。」

そろそろと近づく二人。
「あのー。」
屈強な男Aきらカン「何だ。何か用か?」
アキラ「俺たちこの先の404号に用があるんだ。ちょっとどいてくれないかな〜〜〜。」
屈強な男Bマツザキ「駄目だ。あそこは今立ち入り禁止だ。」
ヤマモト「何言ってんですか。あの部屋には知り合いの女の子が閉じ込められてんですよ。どいてください。」
屈強な男カン「駄目だって言ったら駄目だ。」
と二人でアキラとヤマモトの頭押さえて押し返す。
二人手だけばたばたしてるけど一向に前進せず当たらず。
アキラ「兄貴〜。駄目だこいつら強ーよー。助けてくれよー。」

ジャック「全くいつまでたっても半人前だな。よっしゃいっちょ行くかオサムや。」
オサム兄貴「いくぞオラー。」
飛び込む二人。

漫画に出てくる格闘場面。煙の中でどかどかしてるのあるでしょ。もしくはモンキーズで早回しになってるやつ。時々画面から「BANG!」とか「BOMB!」とか「OUCH!」とか飛び出してます。

どんなにかかって行っても二人は涼しい顔。
戦いながら
ジャック「くそー、こいつら強いなあ。ぼかっ。」
オサム兄貴「おりゃあ。全然歯が立たないっすよ。」

どすん。ばたん。ごつん。どどどどど。

ケン「ちょっと待ったーーーー!!。」

一同びっくりしてそのままの格好で硬直。

ケン「おじさんたち。おじさんたちはそんな怖い顔してるけどほんとはいい人なんでしょ。」

屈強な男二人、不意を付かれてびっくりする。怪訝そうな顔。

ケン「だってそれだけ殴られてるのに全然応酬しないじゃないですか。きっとほんとはケンカが嫌いな優しい人なんだ。」

きらカン「何言ってんだ。こいつ。俺らは。俺らは。怖いんだぞ。」

ケン「いや僕は怖く無いです。あの部屋には僕の大切な人がいるんです。大切な人が壊されてしまうかもしれない。僕は行きますから。おじさんたちなら通してくれるはずです。」

マツザキ「何だって。通してたまるもんか。だって俺らだってクビになっちまう。」
涙声になっている。
ケンが通ろうとする。
マツザキ一歩前に。
そこを、きらカン手で制して
「止めだ止めだ。もう我慢出来ん。こんなことするため会社入ったはずじゃないはずだ。」
マツザキしょぼんとして
「・・・・・ああ。・・・・・・そうだな。お前行け。これが鍵だ。彼女のこと。大切にするんだぞ。」
とポンと鍵を投げた。
「ありがとう。おじさんたち。」
走っていくケン。

残りのメンバーは一斉にへたり込んだ。
「ああ、助かったー。終わったよ。」

「さー、どーぞ。どーぞ。この部屋だから。どんどん入ってね。なはなは。」
すっかりハイテンションのセンダ社長です。
「あ、はい。お邪魔します。」
「うんうん、はい。あー、とりあえずそこの椅子に座ってね。はい。」
と窓際の応接セット、ベッドの脇。不安そうに座るアッコ。

「あのー。皆さん。まだ来ないんですか。」
「えっ?皆さんって?。」
「チャアさんとか、ツノダさんとか。来るんですよね。」
「あ、チャアね。あ。あ。あ。さっき電話があってちょっと遅れるからって。やだねー音楽屋さんは。時間にルーズで困っちゃう。なははははは。」
「それじゃ下のホールのとこで打ち合わせした方がいいんじゃ無いんですか。」
「あ、いや。ここで待ってるって言ってるからねー。待とうよ。あ、そうだ。今お茶入れてくるから。」
背中向きで何やらお茶を入れるセンダ。何かがさごそやってます。

「はい。はい。紅茶です。どうぞどうぞ。お砂糖は好きに入れてね。ミルクは無いからいいや。なはは。」
「あ、いただたきます。すみません(・・・・・やだなあ。何か薬とか入れてるんじゃ無いかなあ。・・)
「え、飲まないの。そうか。何かおやつになるものあったよな。ちょっと待ってね。」
部屋の隅にある冷蔵庫へ向かうセンダ。

(・・・・どうしよう。カップ取り替えちゃおうか。でも取り替えるの予測してたらまずいし。あ、戻ってきそう。ええい。飲んだ振りしちゃお。ついでに寝たふりしてみたら・・・)
センダががさごそしてる間に、アッコはカップのお茶をそばにあった観葉植物の鉢の中にどっと。
センダがケーキ持って戻ってくる。

「はい。ショートケーキがあったよー。甘いもの好きでしょう。さー食べた食べた。ってあれ、もう飲んだの?そんなに。で・・・・寝ちゃった。そう。寝ちゃったのね。
まったく警戒もしないで最近の若い子は。ほんと。ゲーノー界ってゆうとすぐついてくるんだから。私がおいたして楽しんだ後、どっか遠い国へ叩き売って上げちゃうから〜。楽しみにしてなさいねー。なはは。」

(・・・・あっ。こいつやっぱりそんなことを。どうしよう。まいったなあ。)

その時、外で

どっかん、ばっかん、どどどど、このやろう、ずどど。ぐお。

「わわわ、何だ何だ。外が騒がしいぞ。」とセンダ振り返る。

(今だ!)
アッコ、股間を思いっきりキーーーーック!。

ヅド。

「ぎゃあ。痛い痛い。何だ寝てなかったの。ぎゃあ。」
不意を突かれて直撃してしまいました球袋すじたろう。
「ぐおー。大事なとこを何するの。この仕返しはー。わかってるわねー。あらオカマになっちゃったわ。」
「何よ、嘘ばっかついて。始めからやらしいことするつもりで誘ったんでしょう。」
と手に掴めるものを何でも投げるぞ、アッコちゃん。
「わ、止めなさいやめなさい。こら逃げるか。こら。」
追いかけるセンダ。
アッコ、棚の上にあったアルミ灰皿を投げました。

ぱこーん。
見事命中。

その時。

どだん。
ドアが開いて飛び込んで来ましたケンちゃん。

「こらあああ。俺のアッコに何するんだ。このやろー。」
ぼかぼかぼか。
「ひゃあああ。ごめんなさい。やられてるのはむしろ僕の方なんですけどー。なははははー。」
と頭を押さえながら外に逃げるセンダ社長。
入口まで追いかけてケツを蹴り上げるケン。
振り返って戻る。



「今、ケン、俺の・・・・って」

ケン、アッコをじっと見つめて。

「さあ、帰ろう。・・・・うちへ。」

ぎゃあっと泣いてケンに抱きつくアッコ。
ケン、びっくりして何も言えない。
上着を脱いでアッコにかける。
「ありがとう」

手を握って二人で部屋の外へ。

「ひゃっほー。ブラボー!!。やったねケンちゃん。」
イチゴ組&おさむ君による熱烈歓迎です。

ケン、頭掻きながら恥ずかしそうに、肩を抱いて一緒に下のホールへ。

外に出ると谷さんのタクシーが待っていてくれました。
二人、乗り込んで。
その後からおさむが乗ろうとすると。
ジャック「おい、おさむ。お前はこっちだ。」
近寄って来て耳打ち。
(二人だけにしてやんな。)
(はい。わかりました。)
ジャックさん、運転席の谷さんにも近寄って何やら耳打ち。こっそり何かお金渡してます。

谷「さー、行こうか。桃屋で良いんだね。」
ケン「はい。ありがとう。お願いします。あ、ジャックさん、皆さん、ほんとにありがとう。」
隣でアッコもペコリとお辞儀。

ジャック「よせやい。あたりめーじゃないか。それよりしっかり送っていけよ。この色男さん。」
アキラ「いろおとこー!!」

ははははは。

タクシーが発車しました。Uターンして右折、まっすぐ行って中華街の前まで行って停車。

谷「ちょっと待っててね。」

しばし後、戻って来た谷さん。
「ほら、これ肉マン。美味いぞう。おじさんのお祝いだ。ちょっとトイレ行ってくるからゆっくり
食べてなさい。」

「ありがとう。おじさん。さあ、食べよう。」
二人で食べる肉まん。
アッコ「熱いね。あったかいね。肉まん。」
ケン「ほんとあったかいや。」
涙流しながら二人で食べて。


(いやー、まいったまいった。失敗だなあ。せっかくあそこまで行ったのに。いやでも惜しかった。アッコちゃんかわいかったのに。)
走ってぜいぜい言ってますセンダさん。
(でもいいっか。逃げられただけでもラッキー。なははははは)

「ちょっとあんた。」
すれ違いざま声掛けられてビクっと止まる。
「センダだな」
「いいえ違います。誰ですかセンダって。なはなは。」
「全国指名手配センダミツオ。特徴は語尾に”なはは”と言うところ。逮捕するセンダミツオ。」
「ひゃあ」
と逃げ出そうとするところ、足を引っ掛けてすってんころりん。
上から押さえつけて手錠ガッチャン。
「悪い」ことは出来ないもんだな。」
見事、捕まえたその人は駆けつけたザキ署刑事ナリタ”クール”ミキオさんでした。


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2005年09月25日

第12回「密告」

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ここはショータ君の学校、私立Y高であります。ちょうどお昼のお休み時間が始まったところ。馬鹿友のペペ(穂積)君と一緒で。
ショータ「おい、今日は何食おうか?」
ペペ「へーん、どうせお前今日もうどんだろ。聞いても無駄なのに。」
「へへ。まあな。うどんだ。」
「どうしたんだ最近。全然お金なさそうじゃないか。」
「うんちょっと色々使うことがあってさ・・・」

とそこに、そうです同じクラスなんですの、コアラのマーチのミズカミ君登場。
「おい、ショータ。この前桃屋に刑事が来なかったか?」
「何ー!。なんでお前がそのこと知ってんだ。そうかあれ仕組んだのお前んとこのあの女か。」
「あの女とは失礼な。ジュンコさまと呼べ。だって被害者じゃないか。当たり前だ。
それでどうだった?捕まったかお前んとこの鍵盤女。可哀想になあ。もうコンテストはXだな。」
「何言ってんだ。捕まる訳無いだろう。何にもしてないんだからな。」
「お前こそ何言ってんだ。殴ったじゃないかあの時。」
「えー、うそー。誰もそんなん見てないって言ってたらしいよ。」
「そんな馬鹿な。」
「それよりそっちのジュンコさんは大丈夫?みんながコップ割ったって証言してたってよ。」
「このやろー。それで刑事はそんなんで帰ったのか?」
「ああ、それで納得して帰ったって。そりゃそうだ。」
「くそ。そんなんありかよ。覚えてろよ。」
とぶつぶつ言いながらミズカミ退場。途中でパンっと拳で手のひら叩いて。振り返ってニーって笑った。

ペペ「何だあいつ気持ち悪いな。」
ショータ「ほんと。しかし何思いついたんだろ。気になるなあ。また悪巧みかよ。」

と二人はお互い見合って両手を広げて
「オー・ノー」ってか。


その翌日...
またもお昼休み。
ショータ「おい、今日何食おうか?」
ペペ「また聞くか。ウドンでしょ。ウドン。ははは。」
「いいじゃんか。一応悩んでみたいお年頃なのよ。」
とか馬鹿言ってますとそこに現れたのがこんなんなのに柳生一族の末裔だとゆう柳生先生(やぎゅうヒロシ)とペペのお父さんではありませんましてや兄じゃありませんのホズミ教頭(ホズミたかのぶ)さん。
ホズミ「おい、君。君がショータ君かね。」
「あ、はい。一応そうですけど。」
「ちょっと職員室に来たまえ。話があるんだ。」
「えーでもこれから飯ですし。何ですかいったい。」
柳生「何だね君は。教頭先生がじきじきお呼びしてるのだよ。ランチなんかどうでもいい。来なさい。」
「うへ。はーい。わかりました。
おい。先に食いに行っていいよ。すぐ戻るから。」
柳生「すぐ戻れるとは限りませんっ!」
「はーい。だそうです。」
「OK−。何やったんだお前。うどん食いすぎか。ははは。」
キっと柳生先生に睨み付けられて、両手を「おうのー」のかっこしながらペペ君は食事に行きました。

さて職員室にて
ホズミ「聞くところによると君は何だね。あの恐怖の歓楽街、ザキ町のいかがわしい場所にあるいかがわしい店でロックなどとゆういかがわしい音楽を演奏してるそうだがね。それはほんとかね。」
「え、そんなこと誰が言ったんですか?」
柳生「そんなこと誰だっていい。大事なのは本校のような由緒正しい折り目正しき生徒がそんなとこでアルバイトをしてるとゆうことだ。そうですよね教頭先生。」モミ手付。
ホズミ「君は私が言いたいことを言ってしまって。けしからん。まあいい。そうゆうことです。何ですか。言いたいことがあるなら言いなさい。。」
「えー。確かに演奏してますけど...。だいたいギャラなんて貰ってませんし。出る時間も夕方ですし。お店だって桃屋っていう古くからあるハンバーガー・ショップさんですし。もちろんお酒なんて飲みませんし、それに...」
柳生「えええい。何をぐだぐだと。ネタは上がっているんですよ。ねえ教頭先生。」
ホズミ「その通り。これは重大問題です。校長先生並びに理事長とも相談して職員会議にかけます。かけた上で厳しい処分をするんでそのつもりでいるように。
もちろんそんな店で演奏するなんてもってのほかです。
学校には通常通り来てもよろしいが、家では静かに謹慎してるように。」
柳生「謹慎ちっ居です。下がりおろう。」右手でゴールデンハンマー叩く。
「でも先生!」
柳生「下がりおろう。」
ホズミ「またキミ、かっこいいところ持っていって...。あ、もう昼休み終わりですか。
何を食べにいきましょうかね。寿司は飽きましたね。たまにはウナギでも食べに行きますか?」
柳生「イイですね教頭先生。行きましょう行きましょう。ほほほほほ。」



そして満腹になった二人の先生、校長室にて。理事長もおりますです。
ホズミ「かれこれこうゆう訳なんです。けしからんでしょう。これは決然たる処分をせねば」
柳生「本校の品位が落ちるとゆうものです。」
ホズミ「また持っていくー。」
柳生「すみません。つい」

校長先生(片岡チエゾウ)は腕を組んで考えてます。おもむろに顔を上げると
「確かにその通りなら問題だ。職員会議にかけねばなるまい。」
ホズミ「そうです。そうです。いつにしましょう。早速明日でも。」
その時、理事長(りゅうち衆)声を掛けます。
「ちょっと待った。あー、たしかにけしからん話だ。けしからん話だが、片方の話だけ聞いてはいかん。
こちらはこちらでキチンと調べんと。なあ片岡くん。」
「もちろんです。その店の店長とやらを呼び出して話を聞きましょう。なぜそんなことさせてるのか聞いてみなければなりませぬ。」
理事長「うん、うん。ホズミ君、悪いが連絡取って来て貰うよう言ってくださらんか。まずそれからじゃ。」
ホズミ「そんな時間をかけては噂が広ま...」
校長「何か言ったかね」
柳生「いいえ。いいえ。はい。早速。」

大変なことになってきました。


ジリリリリーーン。
「はい。桃屋です。あ、何だショータ君か。えっ。おお。みんなもう集まってるよ。うん。わかった。おーい。ケンちゃん。ショータ君から電話ー。」

「はーい。」
ステージ前でみんなでチューニングしてたケン君でした。
「あ、すみません
おい。何してんだ。もうみんな揃ってるぞ。何ー!来れない。何で。うん。うん。うん。えっ?まさか。うん。うん。うわ、そりゃやばいな。うん。うん。うーん。それじゃ今日は大人しくしといた方がいいかも。えっ?ライブ?。おう。やるよ。えっ?スターがいないとお客さんが納得しないって。大丈夫何とかなるさ。がはは。とりあえず大人しくしてなさい。こっちはこっちで作戦練るから。ああ。わかったって。電話するよ。じゃあな。」

ガチャン。

「おじさん。困ったことになりました。ショータ、今日来れないみたいなんです。」
「えっ?何で。カゼでもひいたのかい?」
「いやそんなんならいいんですけどどうやら学校にここで演奏してることバレてあることないこと咎められてるみたいなんです。」
「何だそりゃ。別にやましいことしてる訳でなし。大丈夫。誤解はすぐ解けるから。それより、今日はどうする、ライブ?やめるかい。」
「とんでもない。シュー・マスト・ゴー・オンですから。やります。何とかなるでしょ。」
「何とかなるよな。ははは。」

ケンが机に戻った。
「おい。やばいぞ。今日ショータ来ないんだ。」
おさむ「何で。下痢でもしたか。」
イットク「食い意地はっとるからなあ。」
マコ、声を上げず笑う。
「違う違う。それがやばいんだ。これこれしかじか。」
アッコ「えー!ちょっとそれやばいんじゃない。あそこの教頭ちょっとおかしいって評判だよ。悪いことしてなくても何か企んでるかもしれない。」
おさむ「うーん。もうちょっと様子見ないとどっちみち動けないな。それはそうと今日はどうする。」
ケン「やるよ。もちろん。わざわざ見に来る人に悪いもん。」
イットク「あれでも抜けたら困りはるわな。どないしますベースは。」
ケン、振り返って「おーい、フィル。今日さ。ベース弾いてくれるかい?」
フィル「何言てますからす。ワタシ、シンリジにてまっけど弾けんですバイスティーヴバイ。」
ケン「そうだよなあ。ルックスだけじゃ駄目か。」
おさむ「駄目だよ。」




ケン「うーん、知恵が出ん。」
おさむ「よっしゃ。俺が弾こう。これからショータん家行ってベース持ってくるよ。」
ケン「お前、弾けるのか。」
おさむ「コードはもちろんわかってるしルートを押さえりゃ何とかなるだろう。」
ケン「うん、それもそうだ。頼むわロン・ウッド。」
おさむ「うるせー。俺あんな下手ッピじゃないやい」

その時

ジリリリーン ジリリリーン
「はい。桃屋です。はい私が店主のシローですけど。あ、ショータ、あ、いやモリカワ君の学校の教頭さんですか?これはどうもいつもお世話になっております。えっ?別にお世話になってない。はあ。それもそうですね。はい。はい。その件ですか。はい。はい。わかりました。はい。はい。もちろん、行きます。いつがいいですか。今からだって行きますよ。あ、それはまずい。明日ですか。伺います。3時に。校長室ですね。はい。わかりました。それでは。はい。失礼します。」

がちゃん。

「おい。みんな。ショータ君の学校に呼ばれちゃったよ。」
ケン「えっ!早速。」
おさむ「お願いしますおじさん。これはもうおじさんの働きにかかってますだ。」
アッコ「コンテストも近いし。困ったわ。どうなるんだろ。」
イットク「大丈夫でっせ、姉さん。何とかしてくれまっさマスターなら。」
真面目な顔で頷くマコ。

シロー「うん。これは何とかしなけりゃいかんな。まかしときなさい。こうゆうことには自信があるん
だなこれが。」
フィル「ほんとかねマスタ。この前町内会の寄り合いでゴミ当番押し付けられたってボヤッキーでったじゃないの。」

「わはははは。」
一同爆笑。
するもその後、静かになってしまいました。



「こちらです。どうぞ。」
柳生の案内にしたがってシローおじさんは校長室に入りました。

片岡校長「どうもこの度は。わざわざご足労願いまして。」
シロー「いえ、どうもこちらこそご迷惑をおかけしたようで...」

と両者深々とお辞儀をして、パッと顔を上げましたとたん

「あ、あんたもしかして源さん、いやシローじゃないか。」
「あー、そうゆう貴方こそ御前、いや片岡先生じゃないですか。」

お互い両手を握り締めてぷるぷる振ってます。

「おおおお、元気だったか。わしは会えて嬉しいぞ。嬉しいぞ。」
「私だって。先生、校長になったんですねえ。大した出世だ。」
「いやーただいつまでも学校にいついてただけなんだ。それはそうとほらこちらは...」

「あ、校長!」
「おおお。君はあの時の。悪ガキのシロー君じゃないか。すっかり立派にのう。」
「いや立派なんてことはありませんよ。校長こそどうしたんですか。今は?」
片岡「笠置先生は理事長になりなさったんだよ。」
「そうなんですか。そんなことも知らないであの時はご迷惑ばかりおかけして。どうもすみませんでした。」
「いや、いい。いい。あれも今となってはいい思い出じゃけ。」

穂積教頭「あのー。こちらとはどうゆう関係で?」

片岡校長「あ、すまんすまん。彼はなオーサカシロー君って言ってな。ここの卒業生なんだ。わしの教え子でもある。
あ、待て待て君の言いたいことはわかる。わかるがこの男のすることなら大丈夫、わしが保証するよ。そりゃもう悪ガキだったけど根は正直で良い子でねえ。努力家だったし。あ、そうかあの時進駐軍のGIににギター貰って夢中になって弾いてたっけ。それでライブハウスの主人に。」

シロー「いや、卒業したらほんものの音楽屋になっちまいまして。ずっとジャズやってたんですけどこんなご時勢ですっかり下火で。で、あそこに、ハンバーガー屋開店したんです。」

その時
バタン
「どうぞ。お茶を。お茶を持ってきました。」
校長「おお、よく気がついたなアスカ。ここに。ここに。」
シロー「あ、いただきます。すみません。」
「これはな。わしの姪なんだよ。ちょっと事情があってこの学校に入れておるんだ。」
「は、はじめまして。タカギアスカと申します。」
「はじめまして。良いお嬢さんで。」
アスカ(オカザキユキ)「あ、おじさん、知ってる。桃屋のマスターでしょ。」
校長「何を。もうみっともない。」
アスカ「だって有名なんですよ。桃屋。この学校の生徒なら誰だって一回はハンバーガー食べたことあるんじゃ無いかな。」
「あ、ところでブギーズのみんなは元気ですか?」
「ブギーズ?あ、ブギ・ブラザースのことかい?まあ、元気は元気なんだが。」
「今度全国大会の決勝でしょ。頑張るように伝えておいて下さい。みんな応援してますから。」
「あ、うん。もちろん。」
校長「何だ。何だ。そのバンドは全国大会に出るのかい。」
アスカ「もっちろん。この前関東大会で優勝したんだから。」
シロー「あ、まあ、そうなんですが。」
校長「なぜそれを早く言わない。これは本校の誇りじゃないか。」

ホズミ「あのー、お言葉を返すようですが、所詮はロックなどとゆう不良の音楽。コンテストなど滅相も無い。由々しきことかと。」

校長「何を言うか。うん。まあ君の心配もわからんではないが。・・・・よしっ。わしが直接見て確かめて来
るわい。それでちゃんとしておったら君も納得してくれるな。」
ホズミ「あ、まあ、その、そこまで校長がおっしゃられるなら。」
理事長「わしも連れてってくれ。わしも見たい。」
校長「はい。シロー君、いいな。今日はそのライブってやつやってるかい?」
「は、あの、出来るのは出来るんですが、例のショータ君が謹慎中でして。」
「何!そんなもの解除解除だ。アスカ!今から行って彼に伝えて来なさい。」
「はーい。」
バタン。

校長「久し振りにザキ町へ行くかー。なんだか体がカッカカッカしてきたぞ。わははははは。」

バタン。ドアがまた開いた。
「あ、あの今アスカがここに来ませんでしたか?あ、行きましたか。ははは。すみません」
バタン

シロー「あれ今のジャックさんに似てたような・・・・。」


ばたばたばたばた、ばたん。ドアが思いっきり開きます。
アスカ「はあはあはあ。ショータ君もう帰っちゃった。」

校長「何だそのかっこは。はしたない。
うーん。しょがないな、じゃあ、ショータ君のところへの電話はわしがするから。」
シロー「あ、では私も帰り際寄って行きますよ。親御さんも心配してるでしょうし。」
校長「そうか。じゃそうしてくれるか。もう少ししたら私らも桃屋に向かうから。」
シロー「店の場所わかりますか?」
「何、アスカと一緒に行くよ。いいよな?」
アスカ「えー、連れてってくれるの。わーい。久し振りにライブ!テツヤも呼んじゃおうかしら。」
校長「いかんいかんそれはいかん。目立つ目立つ。」
シロー「はぁ?」
「ははは。気にしないで。じゃあよろしく。」
「失礼します。」

とゆうことでシローおじさんは蛇屋に向かいました。

てくてく てくてく

ぴんぽーん
「はーい。」
と出てきたのは蛇を持ったショータの母。
シロー「ぎゃっ。」
「あ、ごめんよ。今これさばいてクスリにしようとしてたとこで。」
「はぁ。」
母「ところでお宅は?あ、もしかしてシーさん?あいんやシローちゃんかえ。」
「あ、はい。この度はうちのことでご迷惑をおかけしました。」
「あ、いんや。さっき校長先生から直々電話いただいてね。侘び入れてもらっちゃって。
こっちこそバカ息子のことで皆さんにご足労かけちゃって。おい、ショータ!ショータああ!。」

どたどたどた

「なんだよ母ちゃん。今着替えてたのに。あ、おじさん。わざわざ来てくれたんですか?」
「ああ、一回挨拶もせにゃいかんと思ってね。」
「気ぃ使わなくていいのにー。今、準備できたとこです。行きましょう行きましょう。」
母「よろしくお願いしますよ。しっかりやってこいや。」
「それでは失礼します。」

てくてくてくてく

ショータ「何か変だなあ。最初はうちの母ちゃん怒ってたんだけどおじさんのとこでやってるって言ったら急に態度変わっちゃって。どうしてだろ。」
「あ、はあ、へ。まあ。っね。」
シローちゃん、昔はこの辺りではほんとにアイドルさんだったみたいです。ショータの母ちゃんもファンだったのね。

きいいい。ばたん。

おさむ「お、ショータだ。いいのか来ても。」
ショータ「へへへ、ご心配かけました。」
ケン「おじさん、凄いや。早い解決。やっぱ言ってただけあったなあ。」
シロー「ばかいえー。見くびってもらっちゃ困るなあ。早足のシローさんといやあこの辺じゃちょっとした名前よ。」
ショータ「おじさん、見得切るのはその辺にして、ほら、あの話しなくていいんですか?」
「あ、そうか。今日、ショータの学校の校長先生と理事長さんが君たちのライブ見に来るよ。」
全員「えーーーっ!!」
「ははは、気にすることは無い。何も脅かしに来る訳じゃないから。今度全国大会に出るんですっ
て言ったら興味を持たれてね。それでだからいつもの通り、いつもの通りでいいんだよ。」
ケン「何だ。びっくりしたなあ。じゃいつもに増して気合入れるか。なあ、みんな。」
「おーー!」

夕方5時半になりました。
ライブが始まってます。
校長と理事長はカウンターに座って。
校長の服装は多羅尾坂内そのまま。理事長は・・・やっぱ着物。東京物語、いやここは横浜物語。
隣には・・・何とヤクザのジャックさん。よせばいいのに校長に話しかけるよ。
「失礼いたしやす。お見掛けいたしやすとどこぞの親分さんとお見掛けいたしやした。どうかサカ
ヅキ受けてくださいやし。」
「おお、おお、酒か。ま、いいだろ。喜んで。ところであんたもこのバンドのファンかい?」
「へ、もちろんでやす。出来た時から僭越ながらお世話してやした。」
「ほうそうかいそうかい。」
そこへ前で聴いてたアスカがやってきて。
「あ、テツヤ。来てたの。何そのかっこ。だっさーい。」
「へ?テツヤ?あねさん。なんか勘違いしてるんじゃ。」
校長「あ、あ、アスカ、この方は違うんだええっと」
「名乗るほどのものじゃごぜえませんが、ジャックと申します。
「ボク、ヤマモト!」
「お前は良いんだ」ばこっ。

隣で理事長
「それにしてもこの楽団、ええのう。目がきらきらしておる。若者はこうでなくちゃいかん。」
校長「はい、私もそう思います。楽しいですなあ。これがわからんのは人間じゃない。我が校の誇りです。」

シローおじさんはそばでニコニコ。お二人ともブギー兄弟になってくれたようです。
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2005年09月22日

第11回「ジョニーさんといっしょ」

010.jpg

夏近い蒸し蒸しする日曜日。午後7時。ようやくザキにも夜の帳が下りようとしております。
ぶーーーっ、きっ。
桃屋の前に一台のタクシーが止まりました。
がちゃ。
「ぺらぺ〜ら(釣りはいらねーぜ)。」
出てきましたのは粋なツバ広帽そしてデカサングラスの痩身の男。ロイクです。上から下まで真っ白の服着てる。シャツだけはブルー。
続いて出て来ましたのは2人の美女美女。一人は背の高ーいロイク(黒い)の姉ちゃん。髪はパツキン(金髪)、上から下まで真っ赤です。そしても一人は中背のアジア人。デビド・ボイのチャイナガールのクリップに出てくるような日本人からしてみれば「美人?」ってお人です。外人好み美女の彼女、中国人か和人か不明。タクシーから出て来たとたん白の兄いを挟み撃ち。ぶら下がってます。
「へい。ぺらぺぺぺぺらぺら?(へい、ここがそのハコかい?)」
と話しかけたのは最後に降りてきました男。身の丈2メータ10センチあろうかちゅう物凄いでかロイク(黒い)です。でっかい黒のギターケースをトランクから出しながら。
「ぺーらぺ、ぺらぺえええぺら。(間違いない。ここだよ。入ってみようぜ。)」

店内では・・・・
待っています。ジョニー・ギター・ワトソン。今か今かと。ただ待っていても間抜けなので、ブギー兄弟一同と横浜ブギ・ホーンズの面々はセッションをやっておりました。軽めの4ビート・ブルース。ロッキン。サックスのキシダさんが曲に似合わぬコルトレーンばりのノンブレス奏法音の布団の下敷きやっておる時に。その男は入って来ました。
一転して黒い空気に変わる店内。満員のお客共々誰もが入店に気付いております。

誰も振り返ることが出来ず、兄弟もそろそろと演奏。キシダさんはさすがにハケました。
全身白の痩躯の男、ジョニーさん、入って来て立ち止まり店内を見渡します。左、右と。
カウンターにいるシローちゃんに気付きました。
ニっと笑って近づく。
シローちゃんカウンターから出ながら握手握手、抱き合ってお互い耳打ち、何か笑いながらしゃべってます。
そしてジョニーさん美女二人を紹介。シローちゃんも握手。でかロイクも紹介。握手。どうやらジャアマネ(マネージャー)のようです。
そしてステージ前のテーブル席を指差してジョニーさんを案内します。
ここで割れんばかりの拍手。
兄弟たちも演奏を止めて拍手拍手。
一行は席に着くと、ジョニーさん右腕を高くパッと上げました。
拍手ピタッと鳴り止み。
しーん。
誰かが・・・
「じょにー」
誰かが
「じょにー」
それに吊られてあちこちで
「じょにい、じょにい、じょにい、じょにい」
と大ジョニー・コール発生。最高潮に達したところで
ジョニーさん、左手を高くパッと上げます。

し〜〜〜〜ん。

ジョニさん兄弟たちに向かって
「ギミ・サム。ギミ・サム・ぺらぺらぺ〜ら。」
どーんと親方座りしてます。

ケン「おい。おさむ。何か言ってるよ。」
おさむ、笑顔をジョニさんに向けて、それから
「えーともしかして何か曲やれって言ってんじゃないのか?」
ケン「そうかな。オリジナルがいいかな。」
おさむ「いやこうなったら最初からあれやっちゃおぜ。一緒にやるなら早いほうがいいや。」
ケン「そうだな。やろう。    おめーたちよーく聞け。フォーメーション4−2だ。」
全員「いえーっ!」

かん、かん、かん、かん(マコのスティック)
♪ちゃちゃっちゃ、ちゃちゃっちゃっ。ちゃちゃっちゃ、ちゃちゃっちゃっ。
ちゃちゃっちゃ、ちゃちゃっちゃっ。ちゃちゃっちゃ、ちゃちゃっちゃっ。

これは。これはジョニー・ギター・ワトソン、1977年ブラック・シングル・チャート最高位5位の大ヒット
、A Real Mother for Yaのリフだ。

わーっと沸き立つ会場。
ニヤっと笑ってるぞ御大。


ここで皆さんにはコマーシャルっと(^0^)。


A Real Mother for Yaだ。
ケンがギターを弾きだした。
ニヤッと笑ったワトソンさん。ジャーマネにアゴで合図をしました。
ジャイアント・マネージャー氏、おもむろに黒のギター・ケースを開けると取り出しましたのはギブソンES335。上から下まで眺めて、ペロっと鳴らして。ジョニーにギターを渡す。

ジョニー・ギター・ワトソンがステージに上がりました。
イットクがサッとシールドを渡す。
かねて用意のフェンダー・トゥイン・リバーブ・アンプにシールドを差し込んで、ペロぺろって音を確かめ軽くチューニング。ニヤッと笑うとケンのそばに近寄って行きます。

耳元で何か囁く。
わかんないけどとりあえず微笑むケン。
弾け弾け弾けって言ってるようだ。
ごりごりごりとケンはフレーズ発射する。
それに併せて弾きだすジョニー。

わーーーー。
会場がざわめいた。

ひとしきりバトル展開後、またケンの耳元に。

「ぺらぺらぺーら(ソウルだ。ソウルだよケン。)」
ケンちゃん思わずお辞儀しました。
ジョニーさんもお辞儀。

次にバックでリズム刻んでたおさむのところに言って弾け弾け。
おさむくん、目をまん丸にして。ポケットからかねて用意のスライドバー取り出してぎゅいーーーん。
「おー、ファンタースティック!」
ジョニーが驚いた。そして一緒に弾きだします。
1周して最後はユニゾンでばっちり合した。
わーっと会場拍手。ジョニーさんも拍手。そしておさむの頭をパーンっとはたいて、親指を立てた。
お辞儀をするおさむ。嬉しそうです。

脇で片手でハーモニカ、ぷわぷわ吹いてるイットクの元へ。
「ブロウ!ウインドブロウ」
わかんないけど何となく察したイットク、必死に吹きます。ギターでからんでいくジョニー。
一周廻って機転を利かせたイットク君、さっきのキメのフレーズ出してジョニーと合せます。
決まった。
わーっと会場拍手。
親指立てたジョニー。肩をポンと叩きます。そしてケガをして包帯吊ってる右手に口を近づけて
「ふっふっふっ」と息を吹きかけた。OKマークを出して。
握手をして。お辞儀深々としますイットク。

ベースのショータのところへ。指差して弾き方を笑ってます。そして通り過ぎる。通り過ぎるー?
ショータ、弾くのをやめておいおいって手招きしちゃったりして。
会場爆笑。
通り過ぎた振りをして戻って来たジョニーさん、いきなりバリバリバリってすげーフレーズ出しました。
慌てて応酬するショータ。覚えたてのチョッパー、がんがんかまして青筋立ててる。
一周してさっきのフレーズでキメ。
決まった。
わーっと会場拍手。
ジョニーさん近づいて耳元で
「OKOK。ぺらぺらぺーら(お前のその弾き方最高だぞ。それでいい。それでいいんだ。)」
英語赤点のショータ君、何故かわかって喜んでます。ペコペコお辞儀して握手。ジョニーを指差して拍手。会場も大拍手。

奥でピアノを弾いてるアッコのところへ。
しばらく演奏振りを見ています。腕を組んで。
黙々とリズム弾いてるアッコ。併せてジョニーがソロフレーズを巧妙に絡ましだす。
そのうまさに思わず応酬してしまう。
キメのフレーズ。
わーっと会場大拍手。
バッキングに戻って引き続けるアッコに近づいて、額にキッスしてしまいました。
親指立てるジョニーさん。
アッコ顔真っ赤にして驚いてます。会場拍手。気を取り直して握手。お辞儀をしました。ジョニーさんも
お辞儀。

ドラムに近づいていきます。
きょろきょろしてどこだどこで叩いてるんだと探すふりするジョニー。
会場爆笑。
そしたら飛び上がってマコがトップシンバルをクラッシュしました。
「OH!!」と初めて気付いたふりしてるジョニーさん。叩け叩けと腕をパタパタする身振りしてます。
それを見てマコ。どだだだだどだだだんすこここんとドラム・ソロ。すぐ止めてタメにタメまくったファンク・ステディ・ドラムを叩き出す。それに併せて弾きだすジョニー。3周もやっちゃった。
キメのフレーズ。
決まった。
大拍手。
ジョニーさん笑いながら拍手しながら近づいて握手、額にキッス。耳元で何か囁いた。秘密です。
マコ、ニヤッと笑って叩きながらお辞儀。

ステージ中央に戻って
「ファンタースティック!ヨコハーマブギブラザース!マイ・ブラザー!」
会場歓声。
ジョニーが歌を歌いだした。

そしてギターソロ、ギターソロ、ギターソロ。
ギターソロを弾きながらお店真ん中の通路を入口に向かって歩き出します。
後ろを付いていくジャーマネとお付美女二人。
そのまま店の外出ちゃったよ。
シールドを引っこ抜いてギターをマネージャーに手渡すジョニー。
美女二人の肩を抱いて夜のザキに消えていきました。

おさむ「かっこよかったなあ。」
ケン「あいつアッコにキスしやがった。」
ショータ「あいつマコにキスしやがった。」
バコっ。
前を見ながら叩かれましたショータ君は。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


もうすぐコンテストの本選だなあと緊張感がじわじわっと増して来ました桃屋店内。
今日も今日とて夕方のライブを前にカウンターでバーテンのフィル・コリンズ・アッテンボローとケンちゃんがのんびり話してます。

「あ、そうだ。ケンちゃん、こないだ貸してもらったレコード聴いたよ。」
「えっ、聴いてくれた?それで、それでどうだった?。」
「いやー似てる似てるってあんまり言われるから避けてきましたけんど良いでした。フィル・リノットって歌うまいねえ。曲も気に入ってましてすっかり一緒にシンギン。出来るようになっちゃいました。」
「ほんとー!良かった良かった。じゃ聴かせてよ。
 みんなー。フィルがフィルやってくれっぞー。早くこっち来いよー。」
おさむ「何だ何だ。フィルがフィルって。訳わかんねえよ。」
「ま、とにかくこっち来いや。さあ、フィル頼んまっせ。」
「えーそんなあらたまみちよ、いや改まって言われても恥ずかしいヨ。出来ないヨー。」
「えーって。こっちだってえー、やっておくれよう。」とケン。

おさむ「ちょっと待ったケン。ぼそぼそぼそ。」
ケンに何やら耳打ちしました。
「ふむふむふーむ。ははは。そりゃいいや。ふむふむ。ぎゃはは。それ行こう。」
フィル「何ヨ。ふむふむって。気持悪いヨー。」
ケン「あ、恥ずかしいならしょうがないよね。とにかくレコード聴いてバッチリ歌って楽しんどいて。」
フィル「はい。それはたしろまさし。いや楽しみますが、何ヨ。ほんと。気色わるね。」
おさむ「ははは。気にするな。ほら奥でジャックさんがおいでおいでしてるよ。」
「はいヨー。今いくよー。    来るよー。」

ケン「みんな、あっちの机で話そうぜ。」

アッコ「何たくらんでんのよ。いったい。」
ケン「へへへ。フィルがシン・リジイ歌えるようになったってからさあ。作戦ナンバー2番決行だ。」
ショータ「そりゃ結構。って何でしたっけ2番。」
イットク「そもそも1番てありましたっけやんけ?」
おさむ「まあそれはいいから、みんな1曲だけシン・リジイ出来るように練習しよう。」
ショータ「何でですか?」
イットク「鈍いねえ。おまはん。あれでがしょ。もしかしてフィルにフィルやらせようってんじゃ?」
ケン「ぴんぽーん。」
アッコ「あははは。馬鹿ねえ。」

男ども「馬鹿ほど楽しいことは無し!」

ケン、店のテープ置場から持ってくるテープを。
「はい。これ。リジーの「やつらは町へ」が入ってます。」
イットク「おやまー。これはまた手回しが良いこって。」
ケン「それからっと。おさむ。おさむんちにノコギリと何か板無いかな?」
おさむ「えっ?何に使うの。確か店の裏にあったと思うけど。」
ケン「今日ライブ終わったら行くからさ。一緒に作ろうぜ。」
おさむ「だから何を?」
ケン「ひ・み・つ。アッコも手を貸してくれるかな?」
アッコ「いいけど。何よ。」
ショータ・イットク「いいないいな。楽しそうで。混ぜて混ぜてー。」
ケン「ははは。じゃあ明日にしようか。音をコピーした後、音合わせを兼ねて作ろう。」

と兄弟たち、次の日集合してあるもの全員で作りました。
そしてそれを持って桃屋にけんざん。

ケン「ちわー」
フィル「こんにちわネー。今日も元気でみなさんごくろーさん。」
おさむ「ちょっと時間あるかい?フィル。」
「今、暇な時間だから大丈夫あるヨ。」
ケン「じゃあ、ちょっとこれ着てみて。プレゼントだー。」
真っ赤なTシャツに黒の革ジャン。パンタロンのGパンを出しました。
「わー。嬉しいネ。素敵ですね。高かったですカ。」
おさむ「心配すな。古着だから。さあ着て着て。」
「はいはいはい。」

全員「おーーーーーーーー!!!」

フィル「何がおーですか。」

全員「そっくりだ。」

ケン「じゃあちょっと待ってね。」

兄弟たち、全員、急いでステージで演奏の準備。

おさむ「てめーら準備出来たか。」

全員「おーーー!」
おさむ「親方、準備出来たそうです。」
ケン「おー、そうかそうか。ではでは
   おーい、フィル。ちょっとこっち来てくれよ。」
フィル「はいはい。何ですか。何か企み感じるあるー。」
ケン「いいからいいから。じゃあこれちょっと持って。」
と差し出したのは、おさむん家に有った板っ切れにベースの絵を描いたものです。
フィル「何ですかこれは。えー。」
ケン「まー、いいからいいから。フィルは「やつらは町へ」歌えるだろ。」
フィル「はい。あれいい曲です。バッチリ歌えるだヨ。」
ケン「そうか。じゃあみんな、行くぞーーー!!」
マコ、カウント
1,2,3,4
♪ジャー、だだだだんだだん、ジャー、ジャー♪
♪ジャー、だだだだんだだん、ジャー、ジャー♪

フィル「わわわわ
Guess who just got back today?
Those wild-eyed boys that had been away
Haven’t changed, haven’t much to say
But man, I still think those cats are great

They were asking if you were around
How you was, where you could be found
I told them you were living downtown
Driving all the old men crazy

The boys are back in town じゃーんじゃーん
The boys are back in townあーあん
The boys are back in town

つい歌いだしてしまいました。

スタア誕生の瞬間です。



今日も今日とて桃屋では熱いライブが絶好調。演奏するは親父バンド「桃屋」です。

結局バンド名が決まらずいつのまにか「桃屋」ってことに。
めずらしくハナさんがオルガンを弾いてる。毛糸の帽子かぶって。
カメラが寄って行った。ハナさん上を向いて陶酔。おー画面がフリーズ。

サン・ラだ。

画面が溶けました。
すぐさま、ハナさんドラムに飛び乗ってドラム・ソロ開始です。

どがすご、しゅがくこ、ずどどどんどん。ぶひゃじゃべー。

そこに入って来たのが只ならぬ雰囲気を漂わせたコート姿の二人組みです。一人は30代後半、細面、般若のごとき厳しい面相。もう一人はやや小柄、丸顔でぎらぎらした若者のよう。
すぐにカウンターに向かう。

「やっ、シローちゃん、久し振り。」
「お、ナリタさんじゃないですか?お元気そうで。嬉しいなあ。何か飲んでいってくださいよ。」
ナリタ(ザキ署刑事)「いや、実はまだ勤務中なんだ。残念だけど。」
「今日は何か?」
「いや、何ね。この前このの店で若いバンドに殴られたって届けが来てね。まあ、どうやら未少年同志のことなんで事情を聞いてからと思って握ってはいるんだが。」
「そうなんですか。じゃこの前のあれかな。ひどいヤジが原因でちょっとしたいさかい有ったには有りましたが、血気盛んな若い連中のことなんで。騒ぐほどのことではないかと思いますが。」
「なるほど。そうなんだ。ちょっとお客さんに聞いてもいいかな?」
あ、っと待ってくれと言いそうになるシローちゃんを右手でサッと制して、ステージの方を向く。

カウンターの隅では
ジャックさん、ヤマモト、オサム、アキラのいつものおあ兄さんが。
ちっちゃくなってます。
ヤマモト小声で「ねえ、兄貴。なんで言わないんですか。何でも無かったって。あの時いたじゃないですか。うちらだって。」
ジャック小声で「ばかっ(ぼかっ)。お前うちらが信用される訳ないだろ。ヘンなこと言ったら逆に取られちゃうじゃないか。気付かれないように小さくなってんの。」


ナリタ、声に気付いて振り返る。
「何だ。ザキの名物兄さんたちが揃いも揃って。悪いことしてないだろうな。」
ジャック「はい。してませんです。お酒をちょっと飲ませて貰ってます。」
「そうだオサム、お前今の話聞いてただろ。あの時ここにいなかったのか?」
アキラ「あにき〜、呼ばれてますよ」
オサム「ぼかっ。ばか、わかってるよ」
ナリタ「何〜〜〜?」
オサム「あ、違います違いますバカはこっちのバカの方で。はい。あ、あの時ですか。確かいましたが。」
アキラ「えーっと、ここにいる兄さん方皆さんはライブの前にへべれけになっちゃいまして。はい。僕も含めて潰れてました。はい。」
オサム小声で「お前たまにはいいこというなあ。」
アキラ「うーん、あにき〜〜。たまには俺だって活躍しますよん。あにき〜〜。」

ナリタ「あ、そうか。わかった。」
連れの若手刑事石橋「わかったってナリタさん。こいつらの言うことなんか。」
ナリタ、右手で制して。

ステージ上ではドラム・ソロ真っ盛り。どだすがでんとでかく叩いてスネア・リブをちんこちんこ。
だんだん小さい音に。そのまま目の前のもの、そして床を叩きながらドラムを離れてステージ中央マイクの方へ。マイクの足元からスタンドを叩きながらせり上がって行く。
最後にマイクをちんこちんこ叩いてキメの

コンっ!

その時
ナリタ大声で「あー、楽しんでるとこ悪いがちょっといいかな。この前この店で若いバンドと客とで小競り合いあったそうだけど。その様子を見た人がいたら教えてくれないか。」
後ろでシローちゃんが、張り手のポーズしてそれからバッテン、必死にやってます。
ナリタちょっと振り返ってシローちゃん、パッとやめて「熱いなあ。熱いですねこの店」とぱたぱた扇ぐふり。

その時客席から若い兄ちゃんが
「あー、いましたよその時。ヘンなヤジ飛ばしてたやつらがいて。怒られたらコップ割って帰って行ったなあ。」
ナリタ「ほお、コップ割ったんだ。」
別なところにいたおじさんも
「そうそう。バツが悪くなったんじゃないかな。コップ割ってお金払って帰って行ったよ。ねえマスター。」
シローちゃん、うんうんと。
客席で
「そうそう。」
「失礼なやつらだったなあ。」
「ほんとほんと」
の声。

ナリタ「とすると暴力なんかはなかったんだ。」

「ないない」「ないない」「うん無いよそんなん。」

ナリタ「わかった。どうもありがとう。ハナちゃん、久し振り、続きやってくれ。」

ハナ、にかっと笑って、両手を挙げてサッと下げた。
じゃーーーん。曲のキメやって終了。

ナリタ、シローに向かって「やあ、迷惑かけたね。何でも無かったてんで安心したよ。また来るから。今度は非番の時に」
シロー、ホッとした様子。にこにこして何か言おうとする。
サッと右手で制して、若いのを促して店を出る二人。

イシバシ「いいですかナリタさん。あんな調べで。」
ナリタ「ああ、あのシローって男はいいかげんなことで嘘は付かないやつだ。あいつに任せて置けばあの店は安心だよ。」

162

2005年09月20日

第10回「僕らハコバン」

011.jpg

「ちょっと待ったーーーーー!!!!」

突然店の入口の方から大声が。

ケン「あーびっくりしたー。ウエキさんじゃないですか。」
「そうそう。私がかの有名なウエキです。おしさしぶりー!!」
おさむ「あ、キシダさんも。ハナさんも。イカリヤさんも。」

ブギー兄弟うち揃って
「こんにちわー。久し振りです。」

イカリヤ「おー相変わらずチームワークばっちりでけっこうけっこう。」
奥からシローちゃんも出て来ました。
「いやー来たね諸君。どうだいこの子らの演奏は?」
ハナ「そうそうそれそれ。いや随分腕上げたねえ。びっくりしました。アッと驚くためごおろう。」
ウエキ「ほんまほんま。話には聞いてたけどアッコちゃんピアノうまいねえ。おじさん感心しちゃったよ。」
ハナ「それにほらこのオチビちゃん、マコちゃんだっけ、この体のどこにこんなパワーあるのかねえ。」
と頭をナデナデ。マコはもうニター。
「あのー僕達はどーでしょーか?」とおずおずとショータ。

後ろからイカリヤそーっと近寄り紙巻きメガホンで頭をポカっ。
「ナーイス・ヒット!!」とケン。
「ははは。まだまだー。褒められようなんて百万年早いわー。」
「ぐすん。まだですか。」へこむショータ。
「でもこの前よりは90万年進歩したから褒めてあげよう。」
「え、90万年ばんざーい。」
「ははは。それよりさっきの曲。なんだい?あれは。」とウエキ。
ケン「えーとオリジナルです。僕が作りました。てへ。」
「ほー凄いじゃない。驚いたねナイスな曲だよ。でも何か悩んでいたようだけど。」
「そうなんです。イントロのとこが寂しいんじゃないかって。」
「ふーん。ちょっと待ってね。」
とウエキさん、カバンから何やら紙出してすらすらすらーっと。書き上げるとキシダに渡した。
「へー、面白いですね。さすがウエキさん。」
「さあ君たち、演奏したまえな。」とウエキさん、キシダさん、それぞれ自分のラッパ取り出して。
おさむ「えー、参加してくれるんですか?凄いぞこりゃ。」

アッコ「うまく出来るかなあ。うーん。では行きます。」
1,2,3,4
パーパパパパッパラパ、ぱーぱ、ぱーらっパッパパー♪

ピアノに併せて絡む2本の管。

♪ずずぢゃぢゃ、づづぢゃぢゃ、ずずぢゃぢゃ、づづじゃじゃ
如何にするかーはどうでもよい このまーま行けたら良いな
如何にするかーは気にしない  間違うくらいが良いよ
如何にするかー 何も浮かばない 何も何も無い




間奏でも炸裂。あの曲この曲のフレーズを織り交ぜて。

最後もびったし〆ておくれだ。

ケン「わああ。凄い。何か雰囲気変わったなあ。もう贅沢で。」
おさむ「ほんとだわ。これなら最後の曲でもいけるんじゃないか。」
ケン「もうお願いしちゃおう。すいません。お二人とも本番でもお願いできませんでしょうか?」
ウエキ「どーしよっかなあ。ご褒美なんかないとなあ。」
キシダさんはニヤニヤ笑っている。
「ま、しゃあない。アッコちゃんが歌う曲だから協力しちゃおう。キシダ君もいいよな?」
「いいですよ。いきがかりですから。ははは。」

「と、オリジナルも形になったことだし、さあ君たちステージだ。今晩から頼むね。」
とシローおじさん、いきなりとんでもないこと言い出した。
ケン「えー、ライブですか?聞いてないよー。」
「ほらプログラムとチラシ。用意できてるだろ。」
イットク「ほんとだ。わ、何時の間に。写真まで入ってる。」
シロー「今日からいよいよ桃屋もライブハウスとして本格発進だ。コンテストへ向けた練習としてもいいだろう。まあ遅くなるとマコちゃんも眠いだろうから君達は1番手、7時からのライブだよ。」
ウエキ「その後、我々の登場って訳だ。まあ最後の曲には出て上げるから。」

ケン「うーん、こうなりゃ男は度胸一番。OKです。みんないいよな?今晩からやっちまおう。」
ブギー兄弟一同「おーーー!」

こうして横浜ブギブラザーズ、ライブバンドで本格発進することになったのです。



「えー、えーっと今日になって決まったことでしてはい、それなのになぜこんなに

(し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん)

桃屋ライブ発進ばんざーーーーい!!

(し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん)

とゆうことで、なぜこんな一杯お客さんが...」

「何言ってんだー代表バンド!。」
「あの時見てたんだぞー。」
「がんばれー兄弟。」

「ありがとーーー。ええいさっそく行っちゃいます。1曲目はロックンロール黄金時代だー。」
ケンちゃんやっと吹っ切れてぶっ飛ばしたぞ。

<わーーーーーーーーーーーーーー>
客席も大爆発。

♪かかかかかかかか、かかかかかかかか、かかかかかかかか、かかかかかかかか
ふぁあふぁっ、ふぁあふぁ、ふぁっふぁっふぁふぁあふぁ、ふぁふぁふぁふぁふぁふぁふぁふぁ
ふぁふぁっふぁあ

みんでヘイ、おいらもヘイ、とってんころりんヘイホー

上がっちゃって歌詞がめちゃくちゃだー。

♪じゃじゃじゃ、じゃじゃじゃ、じゃじゃっじゃーーーーーーーーん、じゃん♪

(し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん)

「えっ?だめっ?」

<わーーーーーーーーーーーーーー>
「いいぞー!」
「さいこー!」
「だいとうりょーー!」「たまやー」

おさむ「わ、わ、わ。ありがとーーー。ありがとー。いえー。じゃどんどんいっちゃおー。」

のりにノッた兄弟たち、すっかり緊張もほぐれて快調に曲を次々と。客席の熱気もどんどんアップだ。

そんなこんなで5曲目タッシュを軽く決めたその時、客席もちょっと一段落落ち着いたその時、店の右奥の机に陣取ってる連中から声が

「へいへい。うまいぞー。ヘボにしては。」
「だせー曲をようよくやるよな。一生懸命。」
きゃはははははは。

ショータ「あ、あいつら。コアラのマーチだ。」

「くそだぞ。くそ。みなさんこんなクソにだまされてないで帰って寝ましょうね。」と叫ぶは確かにコアラだ。
するとコアラの隣、今まで黙っていた姉さん、もちろんそれはジュン子姉さんです。立ち上がって
「きゃああ。しびれるー。ボーカルのだーりん。カマ男だけどーーーーん。」
とくねくねと。

客席がざわざわし始めた。

店のカウンターにいつものように座ってたジャックさん
「あいつらー。何者だ。こんなめでてえ時に。」
「ええ、確かあの子達のライバルバンドのコアラのマーチってのかと。」と子分ヤマモト。
アキラが興奮してます。
「あにきい〜。なんとかしてくださいよう。あいつら凍っちゃってますよう。」
「くそう。俺が行ってきます。」
とオサム兄貴が立ち上がったその時

ピアノの前でマイク・セッティングしてたアッコ、スクっと立ち上がると客席に向かって歩き出した。

かっかっかっか。

ジュン子姉さんの前に立った。

ばしーーーーーーんっ。

「おだまり!!」

顔を思い切りはたきました。

はたくとくるっと180度。回転してたったった。元のピアノ椅子でマイク・セッティング。

(し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん)

(し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん)

ケン「おだまりーーーーーーー!!」とシャーウト。

ショータがパプーとハープを鳴らした。

すると客席が

「おーだまり。おーだまり。おーだまり。おーだまり。」
一斉に巻き起こるおだまりコール。

ほっぺたを押さえて呆然と立ってたジュン子姉さん。
「お前たち。帰るよ。帰るんだよ。」と立ち上がって机のコップを床にパシーンと投げつけた。
バラバラになったコップ。

(し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん)

入口に向かって歩き出すコアラのマーチ。

「おーだまり。おーだまり。おーだまり。おーだまり。」再びおだまりコール段々大きくなって最高潮に。
ジャックさんもヤマモトもアキラもオサム兄貴も参加です。

満員のお客さん、モーゼの奇跡みたいに真っ二つに割れたその通路を歩いて入口に差し掛かった時

「ちょっとあんたち待ちなさい」
シローちゃん登場。

「飲み物代、食べ物代、それからコップ代、しめて3000円となりまーす。」

ジュン子姉さん、アゴでコアラに合図するとおずおずと財布から出して払います。

「おありがとうごーざーい。」

「おありがとうござーい」と会場全員も。

ケン「さーみんな、盛り上がってきたところで最後の曲だー。
最後の曲はオリジナルだぜ。
それにー
特別ゲストがおります。
横浜ブギイ・ホーンズ!!  ミスター・ウエキとミスター・キシダ! みなさん拍手をーー。」


<わーーーーーーーーーーーーーー>「キシダさーん」「よ無責任男!」

1,2,3,4、5,6,7、はい

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


桃屋レギュラーライブ初日のブギー兄弟達。
うまくいったようです。



「ちょっと君たち。来て来て。」

土曜日の昼の部のライブを終わって満員のお客さんにいえーいえー、頭はたかれるわ体触られてきゃあって言うわもー大変なブギー兄弟たち。シローちゃんにカウンター席に来いと呼び止められます。

「えー、なんすかー。」
「お疲れ様ー。今日も良かったよ。新曲もまとまってきたねー。」
「いやどもども」とケン。
「いや実はね。このレコードなんだが。」
と取り出だしましたのは、黒人さんが巨大乳母車に乗ってお母ちゃんに押されてるジャケ。

ケン「何ですか、このレコード。」
ショータ「あ、ボク、この人知ってます。この前ソウルトレイン出てました。かっこよかったなあ。」
バコっ。
ケン「こらいいかげんなこと言ってんじゃない。」
ショータ「えーほんとですよー。いてーなー。」
シロー「ははは。それはぶたれて気の毒だ。当たりだよきっと。これはジョニー・ギター・ワトソンって人のレコードなんだ。」
ケン「あ、そなんですか。ごめんショータ。ほら俺をぶっていいぞ。ガツーンと。」
ショータ「いいですいいです。後で倍になって帰って来そうなんで。ははは。」
おさむ「お前意外と頭いいんだなあ。あんまり変わりないと思うけど。」
イットク「それはええねんでっからどうゆうことですかいの。そのレコードは。」
ケン「お前しばらくしゃべって無いと思ったら関西弁下手になったなあ。偽者かー?」
シロー「ははは。そりゃほんものだろ。ねえマコちゃん?」
ニターと笑って首を振るマコ。
イットク「そんな殺生な。じぶんいつからそんな芸身に付けたんや。まいるわ。ほんま。」

一同爆笑。

ケン「で、ほんとにそれが何なんでしょうか?」
シロー「あ、そうそう、それでね。このレコードをコピーしといてくれないかね。いや昔と音が変わってすっかり今風なんでうちらがやるより君たちがいいんじゃないかと思ってね。」
ケン「それは構わないんですけど。なあ。みんな。」
一同うなずく。
「昔っておじさん、その人知ってるんですか?」
「うん。まあね。ちょっと。それはいいとしてほら。」
と言って下からポスターをぞわっと。ぱあっと広げて後ろに貼りました。


ショータ「えーっと”今話題のファンキイ・ブルース・ギタリスト、ジョニー・ギター・ワトソン、桃屋に来店。兄弟と共演かーー!!?”って東スポ風ですね。って来店っ。らいてーん。」
ケン、はたくのも忘れて
「えーワトソンさん来るんですかーっ?そ、それで僕らが共演っ!!」
「いや来るのは確かなんだけど。共演できるとは限らんが。もしかして出来たら楽しいだろ?」
「はいはいはい」と一同。
「でいつなんですかそれは?とポスター見たら、えー明日ー!!!」
「明日です。だから今日の夜の君たちのライブはお休み。家でコピーしてきてね。はい。」
とカセット6本出して
「さあ早く早く。間に合わないよー。」

「はーい」と全員追い立てられるように帰ります。

「あ、出来そうなやつだけ選んどいたから、きっと大丈夫。」と後ろからシローさんの声がしました。


とゆう訳でジョニー・ギター・ワトソンさんの曲を覚えるように言われたのが土曜日の午後。各自一生懸命覚えたもののやっぱ外タレさんと共演ともなると不安満杯、翌日出番の前にみんなで集まってミーティングしようとゆうことになりました。場所はもちろんおさむん家、来来軒の2階とゆうことに決定。

がらがら〜。(引き戸を引く音です)
ケン「こんちわー。毎度おじゃまします。」
おさむの親父徳衛「へい。いらっしゃいまし。お、ケンちゃん。いらっしゃい。みんな揃ってるよ。それに・・・」
ケン「あ、ほんとだ。ごめん最後になっちゃったか。」
メンバー全員カウンター席についてラーメン食べてる最中。どうやらそれを当てにして早く来てたらしい。
ショータ「あ、リーダー。いや別にまだ時間じゃないんでいいですけどね。それはそうと。」
と長〜いアゴで角の席を指してます。
ケン「えっ。何?あそこ?   あ、兄貴。」
角のカウンター席でラーメン食ってる男、麺をすすりながら手だけ上げます。
ケン「兄貴。どうしたの。帰ってたんだ。しかし何でここに・・・」
ケンの兄、トミユキ、麺を口に入れたまま
「ふがふが、今さっき着いたばかり。腹減っちゃってね。急にここを思い出して食べたくなったんだ。」
とおさむの親父に会釈。
「まったくありがてえじゃねえか。こーんなちっちゃい時から食べてるもんねえ。帰ってきたら直行なんて涙が出るよほんとに。なあマサコ、いやマナミ。」
「やーねえ父ちゃん。名前間違えちゃいかんずら。ほんとにねえ。嬉しいねえ。と、ケンちゃんケンちゃん」と背中越しに何やら2枚のチケットをケンに見せる。指差して凄い顔でトミユキ兄ちゃんの方を顔で指してます。
「どうかしましたか?」トミユキ。
「いえあの、何かそのー背中痒くて。ねえ。困っちゃうわ。ほほほ。」姉。
ケンの方に寄って来て小声で
「鈍いわねえまったく。これスカラ座の券2枚。前からお兄さんが帰って来たらよろしくって頼んでたじゃない。」
「あ、そうでしたそうでした。すんません。ってことはおデート申し込みですね。何とかやってみます。」
「頼むわよ。うまくいったらラーメンしばらくご馳走してあげるから。」
「ラーメンですかー。チャアシュウ麺が食べたいなあ。」
バコっ。ケンの頭叩いて。
トミユキ、顔を上げて怪訝そうに。
マナミ、振り返ってニコーっと笑います。
ケンに
「こらっ、足元見るんじゃないっ。うーん、仕方が無い。交渉成立だ。そのかわり失敗したらー。」
とゲンコツぐりぐりしてます。
「はい。只今やりますやります。」
「父ちゃん、ケンちゃんにチャーシューメン一丁ね。」
「おや今日はケンちゃんチャーシューメンかい?」
「はいはいいいのいいの。ねえケンちゃん。」
「いいなあリーダーだけチャーシュウメン。」とショータ。
バコっ。
「いてぇー」
すかさず姉ちゃん、ショ−タ引っぱたく。
ケンの方を見て凄い顔。アゴで指す。
「ひえ。あ、あの兄ちゃん。」
「何?」
「今日この後時間があるんだろ。久し振りに映画なんか見ない?スカラ座の券2枚あるんだけど。」
「リーダー、そんなん2枚あるんだったらアッコさんとデートしなさいよ。」とショータ。
バコっ。
「いてー」
「何?」
「いや何でもない。どう、見ない。えーと今は確か宇津井ケンのザ・ガードマン東京砂漠だったかな。」
「うーん、そりゃ休みで帰ってきたから時間はあるけど、宇津井ケンかあ。面白いかな。」
「あ、田口計と今井ケンジも出るよ。」
「ほんとか。じゃあ行こうかな。でも券2枚あるんだろ。あと一枚は?」
「あ、ほんとだ。あと一枚ある。あ、そうだ。マナミ姉さんこの前これ見たいって行ってませんでしたっけ。」
「え、私。うーーん、確かに見たい映画だけどー。どうしよっかなあ。忙しいかもしれないしー。」
と体をくねくねさせてます。気持悪い。
「行きませんか?」とケン。
「うんにゃ。いくいく。行きますわよ。」とニターっと笑います。
「じゃ決定!兄ちゃんと姉ちゃんで映画に行くっと。」
トミユキ「決定ってお前。この人と俺が映画にいくのかい?」
マナミ「あら、私じゃご不満だって言うのかしら?」
トミー「いえいえそうゆう訳じゃ・・・」
「じゃあちょっと着替えて来るからちょっと待ってて下さいしゃんせ〜。」
るんるんしてトントン2階に上がる。
「お待ちどうさま。」
「はえーなお前」父ちゃん。
「君達、君たちの分のラーメンは今日は私のおごりねぇ。さあトミ〜。一緒にいきましょう。」
「トミ〜ってあーた。」
と強引に手をつないで行ってしまいましたお二人は。

「すまねえなあケンちゃん。面倒かけて。」と父ちゃん。
「すまないケン。面倒かけて。」とおさむ。
「いいっていいって。さあおめーたち!こっちはミーティングだ。2階へGO!」
「へ〜い。」

マナミ「私、映画久し振りだわ。うれしくって。」くねくね。
トミユキ「はあ。僕もずっと見てません。」そわそわ。
マナミ「ねえ、手つないでいい。せっかくだし。」くねくね
トミユキ「はあ。えっ。けっこうですけっこうです。」
マナミ「いいじゃない。ほら。うぶなのねん。」。手どころか腕にむしゃぶりついてしまいました。くねくね。
トミユキ「まいったなあ。」赤くなってます。
マナミ「ねえ、トミーって呼んでもいいん?」くねくね。
トミー「はあ。別にいいですけど。初めてだなあそんな風に呼ばれるの。」
マナミ「嘘おっしゃいマツとコンビ組んでたくせに。」
トミー「はあ。」
マナミ「学校の方はいかがですの?」くね。(もう止めたとにかく必ずくねくねしてると想像してお読み下さ
い)
トミー「いや、何せ地味なことやってるんで。時々嫌になることあるんだなあ。」
マナミ「トミーは何を研究してらっしゃるの?」
トミー「知ってますか。ミジンコってゆうの。あれの研究なんだけど。」
マナミ「ミジンコってあの坂田明ちゃんが増やしてるやつー?嫌だほんと地味ねえ。」
トミー「けっこうあれはあれはかわいいんだ。マナミさんも増やしますか?」
マナミ「えっ!そんな気持悪い。(でも育てればまた会えるかも・・・)、何でもありませんわ。ええ喜んで。

トミー「ほんと?じゃあ今度持ってくるね。いやー楽しみだなあ。中華ミジンコだ。」
マナミ「あ、ここここ。時間も丁度いいし。入りましょ入りましょ。」

二人は横浜すから座に到着。古くからある老舗の映画館で建物は古いものの風格があります。
入場券モギリのおじさん(森川信)「いやーいらっしゃい。おやマナミちゃん。珍しいねえ。今日はデートかい。楽しんでおくれ。バカだねートラは。」
マナミ「嫌だおいちゃん。からかわないで。でも良い男でしょ。うっふん。」

ホールに入った二人。

マナミ「まだちょっと時間があるわ。なんかこう小腹が空いてきたわねえ。ねえトミー何か買って〜〜。」
トミー「じゃあ売店に行ってみようか。」
マナミ「えっ売店っ。あそこにはまだあいつがいるかもしれぬ。」
トミー「何か?」
マナミ「いえいえ無いでもあないわ。いきましょいきましょ。」
とホール端っこにある売店に向かいました。

マナミ「ええと。何がいいかしらねえ。おっ、出たな妖怪。」
売店の売り子(うつみみどり)「あらあらあーら。マナミさんじゃなーい。しばらく。今日はおデート?あなたがまさかねえ。夢じゃないかしら。」
マナミ「へへん。そのおデートじゃ。悔しいかお化け。」
ミドリ「え、ほんとにおでーと。悔しいわ悔しいわ何だかとっても悔しいわ。キンキ〜ン。」
キンキン「何かあったのかーいダイザエモ〜ン。パラリ登場キャット空中三回転。」
マナミ「何このおじさん。まあいいわ。そのお煎餅頂戴。ふたつ。」と直径1mの巨大煎餅を指差す。キンキン「これ食うのか〜い。ダイザエモーン。こんなん1年に1回出るか出ないかにゃよー。1枚千円です。」
マナミ、ひじでトミーの脇腹を突付く。
トミー「痛。あ、はい。払います払います。これ食べるんですか。あ、そう。払います。」
マナミ「ご馳走様。」

二人ででか煎餅持って中に入りました。
マナミ「あ、あそこが空いてるわ。あそこにしましょ。はやくはやくう。」
と全速力で前から20列目ど真ん中にダッシュ。
マナミ「ごめんなさいごめんなさいあらごめんなさい。あら一つしか空いて無いわ。おじさんそっちへズレテくださる?」
親父(エバタタカシ)「うるせえな。いやだね。」
凶悪な顔ながら最後のオシラスの場面までは決して登場せず途中で仲間に殺されてしまう雰囲気の親父が文句言います。
マナミ「ナンだって?」とコブシを見せる。
「はいはいずれますずれりゃいいんでしょ。くそ今日もついてねえなあ。」
マナミ「まー何て親切な方でしょう。ありがとう。はやくはやくトミー、ここ空いてるわよ。」
トミー「すみませんすみません。」

ばりっ、ばりっ、ばりっ。

マナミさん、すげー音で煎餅食ってます。スクリーンでは宣伝のホテルのCMが。
♪「貴方と私のめくるめく一時。ホテル・シャトーはナウなカップルのお越しをまってます」♪
マナミ「まあ、何て素敵なホテル。ねえ、今日あそこ行きません?」
トミー「えっ!!」
マナミ「冗談よ冗談。(ち。行こうって言うかと思ったのに)」
トミー「ごほん。ところでさっきの売店の店員さん。お知り合いですか?」
マナミ「え、ちょっとね奥様は18歳で。いや、あれよ高校の時の同級生。嫌な女でしょあいつ。」
トミー「あー。」
ばりっ、ばりっ、ばりっ。一挙に煎餅ばりっ。
「うるさいなあまったく」前の親父が振り返って。
マナミ「何よ。売店で売ってるんだから何食べたっていいじゃない。あああ。辛いもの食べたら甘いもの食べたくなっちゃった。」
そこへホール担当の売り子さんがやって来ました。
売り子(どらえもん大山)「えーオセンニきゃらめる、ジュースにレッド・ツェッペリン、ままーにオグリキャップいかが。」
マナミ「あ、いいところに来た。そのアイスクリームちょうだい。2個ね。」
トミー「あ、僕煎餅まだなんでいいです。」
マナミ「何いってんのよ。私が2個食べるの。払っといて。」
売り子「駄目だなあ、ノビタくん。じゃーん、あいすくり〜む〜。乳脂肪分18%。食べたら激太りするから注意して食べましょう。」
マナミ「色々うるさいわね。はやくよこしなさい。ばくばく。」
売り子「あー、もう食べちゃったののびたく〜ん。知らないよママに怒られても。」

きーんこーんかーんこーん

そんなこんなで映画がはじました。

♪べーんべんべんべん♪ ザ・ガードマン東京砂漠です。

158

2005年09月18日

第9回「おかゆ食べた?。」

009.jpg

会談終わり一人出てきたケンちゃん。
「わー、びっくりしたなもー。引き抜きかよ。とりあえず返事保留してきたけどさあ。うーん、彼女がいるしなあ、思ったより悪いやつらじゃなさそうだし。」
と誰にしゃべってるんだお前。

そんな不謹慎なこと考えてるリーダーに天誅を食らわすべく天は一転カキ曇り、雨が降ってまいりました。
しかもざあざあ。
もの思いにふけりながら歩いてる彼はそんなこともいっこうに気にせず。

桃屋に到着しました。

ぎぃぃぃぃい。
「やー、みんな。お、全員揃ってるじゃん。」
おさむ「揃ってるんじゃんじゃないよ。遅いーーーー。」
ショータ「遅いっすよー。今何時だと思ってんですかー。」
ケン「え、何時って。あ、10分過ぎ。ごめんごめん。」
おさむ「ごめんってお前しかもびしょ濡れじゃんか。おいおい。」
アッコ「あららー。これ着替えないとカゼ引いちゃうよ。」
ケン「いやだいじょぶ。だいぶ暖かくなってきたから。ぶるるるっるう。うー。」
アッコ「何言ってんの。震えてるじゃん。じゃせめて拭いて。フィル、そこのタオル取ってー。」
「はい、お嬢様。これでよろしいですか。お嬢様。」
ショータ「お、パーカーになってるよフィル。」鳥塚しげきが変装してるのに誰も気付かず。
アッコ「はい、はい、はい」
ケン「あ、もういいよ。これで。サンキュサンキュ。」
アッコ「だって。」
ケン「だいじょぶ。遅れてるからさ練習しよ。」
「じゃロックンロール黄金時代もう1回やってみよか。」
「へーい」

1,2,3
ぽん、たたんたたんぽぽん。
ぽん、たたんたたんぽぽん。いんとろー

(1番)
エブバリ、うーんと。
うーんとうーんと。あれ。うーんと。
ちょっとまったー。
ででででででで〜。

ケン「ごめん。歌詞が出てこないや。ちょっと待って。」
ショータ「んだよー。しっかりしてよー。リーダーなんだからさぁ。俺達はばっちりなのに。」
けっこう言いたいこと言うショータ。空気が凍る。
「ごめん、ごめん。今思い出すからえーと。うーん。気にしないで最後までやってくれ。」

1時間半、終始ケンちゃんボロボロ、何とか終了した。
「うわ、今日はみんなすまん。どうかしてた。うん。この次はしっかりやるから。」
ショータ「頼みますよー。ぶつぶつ。」
おさむ「ま、ショータ堪忍してやってくれや。こんなやつでも調子悪い時もあらあな。」

片付けて店を出る。
おさむ「おい、ケン何か悩み事あるんなら正直に白状せい。聞いて殴ってやるから。ははは。」
ケン「いや、平気平気。大したこたあないよ。ぶるぶる。うー冷えるね今夜。」
おさむ「えーけっこう暑いぜ今日。カゼひいたんじゃないのかお前。」
ケン「だいじょぶだいじょぶ。じゃあな。また明日。」

・・・・うーん頭痛くなって来ちゃった。やべえなあ・・・・

家にたどり着いた。
「ただいまー。」
久し振り原セン婆さん登場。
「こら毎日毎日。遅いじゃないかー。メシ冷えちゃってるよ。」
「ごめんごめん。冷えててもいいか・・」どたっ。
「そうゆうこと言ってんじゃ・・、お、ケンどうしたケン。爺さん爺さんケンが。  ケンが寝ちゃったよ。」
奥からタイジ爺さん出てきた。額に手を当てて
「あ、こりゃいかん。凄い熱だ。とにかく寝かさねば。婆さん足持て。運ばんと。」

ケンちゃん無茶して倒れてしまいました。



何か廻りがもやっとしている。どうやらまたヤマキワのスタジオに来ているようだった。
目の前でコアラのマーチの連中が騒いで。こっちを指差して笑っている。
するとジュンコさんが笑いながらコアラに抱きつき、マジだよ、キッスしちゃったよ。

場面転換

目の前にジュンコさん。どんどん顔が近づいてくる。あと15cmのとこでなぜかアッコに変わった。
なおかつどんどん近づいてきて。マジかよ、キスしちゃったよ。

「わっ。」
くわっとケンは目を見開いた。
「わっ。びっくりしたなあもう。起きたんだ。やっと。」
ぱっと離れてしゃべったのはアッコ。

「ええっと。何でお前が...。ここはうちだよな。うーん。」
「はは、当たり前じゃない。きのうカゼで倒れちゃったんだよ。覚えてないの?」
「うーん。あ、そうか。家に着いたとこまでは覚えてるんだけど...。あれから倒れちゃったんだ。」
「熱40度出てたんだよ。死ぬかと思った。」
「あいにく生きてるぜ。ははは。」
「冗談言えるようになったらもう大丈夫ね。」
「で何でお前が?学校は?」
「おさむに聞いて今朝こちらに電話したらおじいさんおばあさんが用事でどうしても出かけなきゃいけないって言うもんだから。学校さぼって来ちゃったよ。病人ほっといたら気の毒だしね。」
「ふ、ふーん。えーとえと今何時。」
「午後の4時。」
「ずっと朝からいたのか。」
「うん。まあね。しょうがないじゃない。」


「やさしんだな。意外と。」

「「意外と」は余計だよ。」

「それでさ。さっき俺が目覚ました時、目の前にいたじゃない。あれはその...」
「ばか。何言ってんの。えーとあれは熱見てただけ。      だけ。」


「ふーん。そう。    俺何か言ってたか。」
「ううん。何かもごもご言ってたけど。わかんなかった。」





「腹減ったなあ。」
「元気出てきたね。あ、そうだ。おかゆ作ってあるから暖めてあげるよ。」

10分後

「お待たせー。」
「へえ、お前が作ったのか?」
「まーね。」
ふうふうしている。
「ほら、口開けな。」
「あーん。バカ、自分で食うよ。」
「おいしいは?」
「あ、うまいうまい。」
「ほら、口開けな。」
ふうふうして食べさそうとした時、

ガラッ。
「こんちわー。先輩だいじょぶすかー。」
「わ、あちちちちちち。」
慌てておかゆこぼしちゃったよ。
「おめー、いきなり入ってくるな。びっくりしたなもー。」
「あー先輩、いいことしてたんですねえ。きゃあ、恥ずかしい。きゃあうらまやしー。」
「バカ、違うよ。食ってただけだ。」
そこへどやどやとあと三人。おさむとイットク、マコが入って来ました。
「ショータ、まああんまりからかうな。病人の特権だ。許してやれ。」とおさむ。
「えーいいないいな。僕がカゼひいてもあーんしてくれますか?くれますかー?。あーん。」
ぼかっ。
「治ってますね。先輩。痛いです。」
一同爆笑。


さすがケンちゃん若いです。いったん治り始めたらメキメキと。大事をとって二日目は婆さんに強制的に寝かしつけられ、それでもどかどかメシ食ったもんで三日目にはご赦免、学校にも行きの、もちろん練習にも行きましょう。メンバーの面々はカゼ移したらやばいってことでもう来るなと言ったら来なかった。子供もおるしね。
さあ練習にレッツ・ゴー。
だけど
その前にすることがある。足はまたもやヤマキワのスタジオに向かっていました。

・・何かなあ。熱出して熱醒めたら目も醒めた気分だぜ。・・

・・それにしてもやつらけっこういい連中だな。アッコだって来てくれたし。アッコ・・・


エスカレーターにのってずんずんと上に上がって。少しはドキドキしている。
スタジオのある楽器フロアーに到着。扉の前にコアラのマーチの面々がいた。

「お、ケン。よく来たね。どうしたの?二日間音沙汰無かったけど。心配しちゃったよ。」とジュンコねえさん。
「えーと。カゼひいちゃって。寝てたもんで。」
「げ、うつすんじゃねえ。」と水上。
「あ、だいじょぶ。もうピンピン。」
「まったくよう、あぶねえあぶねえ。」
「それはそうと言うことがあるんだ。」
「なんだい?練習の後のミーティングの時じゃ駄目なの?」とコアラ。
「いや駄目なんだ。実は。実はメンバーになることなんだけど。」
「え、あっちのこともあるからすぐじゃ無くていいよ。と言ってもあんまり待てないけど。」とジュンコ。
「いや、そうじゃ無くて。やっぱりメンバーにはなれません。せっかく誘ってもらってありがたいんだけど。



俺、やっぱブギが好きだ。」
「え、何で。考え直してよ。」ジュンコ。一挙に不機嫌な顔。声も一オクターブ低く。
「この私が頼んでんだから。」



「いや。駄目です。悪いけど。ごめんなさい。これで失礼します。」

「あーははははははははは。」いきなりジュンコ高笑い。びっくりしてケンは立ちすくむ。
「何よあんた。思い上がるんじゃねえ。別にあんたなんか欲しくなかったさ。あんたをあのバンドから抜けば同地区ライバルが減るじゃない。だから誘ったまで。入れたって弾かせはしないさ。このへぼギタリスト!。あんたの方が最高に決まってんじゃない。ねえダ〜〜〜〜リン。」
と笑いながらコアラに抱きついて。
抱きついて、マジかよ、キッスしちゃったよ。



・・
・・・
・・・・
「わー」っと言ってケンはエスカレーターを駆け下りた。

「何だよ、あいつジュンコにほれてたんじゃねえのか。」って聞こえた気がした。

桃屋に向かって歩いてるケン。

・・どっかで見たような光景だったなあ。・・・

・・あ、うなされてた時の夢だ・・・

・・正夢だ・・・・・

キィーーーーッツ。横から自転車。
「あぶねー。ボーッとして歩いてるんじゃねえっ!!」

「わ、わ、わ、わ、頭に来たぞー。くそーーーーー。あいつら俺をコケにしやがった。」
「ばかやろう。見てみろこの。ぎったんぎったんにしてやる。くそー。」
目が醒めたように怒りながら桃屋に到着した。

「おーーーーー!!」
「わ、先輩。もうだいじょぶなんすか。」とショータ。
「やっぱおめえがいないと練習になんねえよ。さ、早く支度して。」とおさむ。
にっっとマコが笑った。
「わははははは。そうだろそうだろ。と   その前に、話がある。全員集合。」
「なんですねん。練習はよしたいなあ。」イットクもおります。

テーブルにて
「みんなに話しておきたいことがある。実はだな。例のバンド、コアラのマーチに俺は入らないかって誘われてたん
だ。」
「で」とおさむ。
「で、って他に反応あるだろう。このー。」
「だって断ったんだろ。さ、練習練習。」って席立とうとする。
「まあ待て待て。俺が言いたいのはだな。そんな汚いことまでして俺らを潰そうとしてるやつ・・」
「ああ、わかったわかった。みんな用心しろ。ショータなんかうまいものに弱いからなあ。」
「えー俺はだいじょぶっすよー。でも開陳楼の肉まんくれたらはいっちゃうかもなあ。」
ぼかっ。
「あー痛。でもうれしー。ぶたれないと頭ボケーとしちゃって。」
全員爆笑。
続く。

「ばかばか。お前がバカ言うと「続く」が出ちゃうじゃないか。えーとまだ話が。」
「何だよはやくー。」おさむ。
「オリジナルが出来たぞ。」



「今度は「続く」出して良いでス。」


続く。




「オリジナルが出来ました。」ケンが言いました。
「いつのまにー。おめえ寝込んでたじゃないか。」とおさむくん。
「夢でみたんだ。ってゆうより聴きましたメロディを。ただで休んでませんぜこのあっしは。へへへ。」
「さすがリーダー。と言いたいたいところですが、聴かせてもらわにゃあ褒める訳には行きませんぜい。」
ばこっ。
「何をー。名曲に決まってるじゃないか。どうしてもって言うのならじゃ聴かせてやろう。」

ケンちゃん、ギターを手に取りアンプにシールドぶっこんでやりはじめます。

♪ずずぢゃぢゃ、づづぢゃぢゃ、ずずぢゃぢゃ、づづじゃじゃ
如何にするかーはどうでもよい このまーま行けたら良いな
如何にするかーは気にしない  間違うくらいが良いよ
如何にするかー 何も浮かばない 何も何も無い




と一通り演奏。
「どんなもんだい。えっへん。」
ショータ「わーすげーなー最初に作ったにしては上出来じゃ無いですか。」
ばこっ。
「いてー。わ、わざわざこっちにやってきてまではたくよこの人。褒めたのにー。」
「ばかやろ。えらそうなこと言いやがって。悔しかったらてめえで作ってみんかい。」
「すんません。無理ですだ。」
イットク「ところで曲名は何ていいはるのでっか?」
ケン「うーん、まだ決めてないけど。そうだな。「如何にするか。」だな。やっぱ。」
「きっと何か悩んでたんですね。ほほほ。」
バこっ。
「うるさい。一言多いぞショータ。
とこで衝撃の発表をば。この曲のヴォーカルは・・・・・・・
アッコにやって貰う。」
「え。えーーーー。聞いてないよー。わ、私が歌うのーーー。」
「そう。しかも今度のコンテストでトリにこれやりたいと思います。はい。」
「何でまたー!!」とアッコ。
「やってみればわかーる。みんなそれでいいなっ。」
おさむ「いいなって言われても完成してみなければわからないけど、とりあえず完成させてみようや。」
ケン「はい。では一通り歌うのでそれを録音してみよう。」


♪ずずぢゃぢゃ、づづぢゃぢゃ、ずずぢゃぢゃ、づづじゃじゃ
如何にするかーはどうでもよい このまーま行けたら良いな
如何にするかーは気にしない  間違うくらいが良いよ
如何にするかー 何も浮かばない 何も何も無い




「はい。こんな感じです。みんなどうぞ。はいはい。」
おさむ「割と構成は簡単だから大体覚えたよ。アレンジ考えちゃおうか。」
ケン「なるほど。えーとイントロはブギでピアノでお願いします。」
アッコ「えーピアノ、弾きながら歌うのー。聞いてないよー。」
「はい。うたうの。歌詞は.....取りあえずこんな感じだからよろしくね。」
すらすーらすらと紙に書いてアッコに渡した。一応コードも書いてある。

「えーやだーこんな歌詞恥ずかしいよう。さては自分で歌うのが恥ずかしいから私に歌えって言ってるんじゃ。」
ケン「違う違う。あくまでも曲本来の良さを引き出すための所業です。堪忍してやってくだせえ。」

ピアノの前に座ったアッコ、弾きだす。

♪ぽんぽんぽんぽん
如何にするかーーーー、かーーーー、かーーーーー


「駄目だよーー。これキイ高くて歌えないよう。」
ケン「いや大丈夫だいじょうぶ。それでいい。イメージ通りだなー。うまいぞアッコ。」
「まったくもう笑っちゃってもしらないから。」

おさむ「じゃみんなで併せてみようか。」

1,2,3,4
♪ずずぢゃぢゃ、づづぢゃぢゃ、ずずぢゃぢゃ、づづじゃじゃ
如何にするかーはどうでもよい このまーま行けたら良いな
如何にするかーは気にしない  間違うくらいが良いよ
如何にするかー 何も浮かばない 何も何も無い





ショータ「へー。けっこういいですねぇ。派手だし。アッコさんかわゆいし。」
おさむ「うん。なかなかいいぞこりゃ。でもあれだイントロのとこが寂しいかな。」

「ちょっと待ったーーーーー!!!!」

突然店の入口の方から大声が

放ったその男の正体は???

2005年09月16日

第8回「明日のために」

008.jpg

おさむ「んだ。じゃ明日日曜だからアッコの家行ってピアノ運ぼうぜ。」
アッコ「運ぼうぜってどこによ。」
ケン「ここここ。ここに決まってます。」
アッコ「馬鹿言わないでよ。親がそんなこと許すわけないじゃん。それに持ってきちゃったら私の練習はどうすればいいの。」
ケン「うーん。そういやあそうだな。そうだ。ショータ、お前ピアノ買え!!」
「買えって。わん。いくらなんでもそれは無理でござんすう。」
バコ。
おさむ「何見栄切ってるんだよ。駄目なくせに。」
「すまないでござんすう。」

そこへ奥から桃屋のマスター、シローが久し振りに登場。
「みなさん、久し振り元気です。」と画面に向かって挨拶。
おさむ「おじさんどこに挨拶してんの?」
「ははは。気にしないで。それはそーと、何もめてんの?さっきから。」
ケン「はい。今度アッコがピアノを弾くことになりました。」
「おー、そうか。それはめでたい。良かったじゃないかアッコ。けっこう弾けるよこの子は。
で、何が問題なんだそれが。いいことじゃないか。」
アッコ「まあ、それはしょうがないんだけど、ピアノをどう調達するかってことになって。」

そこへカウンターで夕方から酒飲んでたヤクザのあにい、ジャックが口出し、
「なるほど。そりゃ大変だ。腐ってもピアノだ。けっこう値も張るしな。おい、お前どっかあてないか」
子分ヤマモトがセッド。
「いやだなあ。兄貴。俺がそんなものに縁があるわけがないじゃないですか。それより兄貴こんなとこで油売ってるとまた大親分に嫌味言われますよ。早く取り立てにいかないと。」おろおろ。
「バカヤロ。俺は取立てが嫌いなの。悪役みたいじゃんか。かわいいんだから実は俺。」
そこへ臨席で同じく油売ってた同じくヤクザのオサムちゃんが
「あのお、ヤノピですかあ。よかったら昔世話になった渡辺プロに聞いてみてやってもいいんすけどう。ショーケンとか。」
アキラ登場。
「あにきいいいい。そんな見栄張ってえええええ。もうすっかり足洗ってオサムちゃんじゃないのう。駄目だよきっとおおお」
「っ前がじゃはうあじゃはじゃふきゃじゅしゅがあ。」
興奮するとオサムちゃん、何言ってるかわかりません。
「いつもこうなんですう。兄貴わあ。」

なんて大騒ぎ。してますと。マスターのシローちゃん肩を揺らして笑っております。
「くっくっくっく。」
ジャック「マスター、何笑ってんのよ。みんなでこんなに考えてんじゃない。何よ。失礼しちゃうなあ。」

シロー「いや何。嬉しいんですよ。嬉しいんですが、ピアノはですね・・・・」
と指をステージの奥のカバーかかってるモノに。
「あるんですもう。」「え」「あるんですよあそこに。」
「いや例の植木が実はペットの他にピアノも弾きましてそれで持ってきたとゆう訳で。」

ケン「わ、ラッキイ!。使わしてもらえるよう頼んでもらえますか?」
「ああ、もちろん。と言うより勝手に使ったっていいんだから。」
おさむ「ありがとうございます。これでピアノの件は解決。アッコ頼むぜ。練習せいよ。」
「練習せいよって、どれやるの。」
ケン「あ、まずは今かけたロックンロール黄金時代を。みんないいよな。」
「はーい」
「テープ作んなきゃ。どうしようか。家帰って作ってこようか。」
シロー「あ、レコードをカセットに録るの?それもここで出来るよ。」
「えっ!ほんとですか。ここ凄いことになってきましたねぇ。」
「あ、いや、夜のセッション見に来てくれてるお客さんの中にオーディオ・マニアの人がいてね、どうしても演奏録音したいってオープンリールとカセットのデッキを持ってきたんだ。自由に使ってくださいって言ってたよ。テープも箱ごとあるからそれ使いなさい」
「ああ、天国だ。ありがとうございます。お言葉に甘えます。」

ガサガサガサ。

ケン「さ、テープ出来たぞ。今日はこれで解散してみな家でコピーしてくるように。」
ショータ「俺、モット他の曲も聴きたいなあ。先輩レコード貸してください。」
おさむ「馬鹿、俺が先だ。」
イットク「あ、わてもわても」
「待ってくれー。俺だってまだ全部聴いて無いんだから。今度みんなに廻すから。」

おさむ「それはそうと他の曲も決めなきゃいけないな。あと4曲くらい全部新曲でやるんだろう。」
ケン「うん、そうだな。俺も明日レコード屋行って他にも探してみるけど。各人どうしてもやりたいってのがあったら今のうちに決めて言ってくるように。」
ショータ「え、俺らの希望も聞いてくれるんですか?」
ケン「それは曲にもよるけど。グッドなやつで全員賛成すればよろしい。」
イットク「うわ楽しみでんなあ。帰ったら色々考えよ。」

ケン「うん。まあまずは新体制での音合わせだ。みんな黄金時代しっかり練習せい。では解散。」
おさむ「その前にシロー大明神に全員で敬礼!」
「ありがとうございましたー」

シロー「いや、いいんだいいんだ。それより君たちはオリジナルそろそろやらないのかい?」
「オリジナルー?」


「オリジナルってたってなあ。考えもしてなかったからなあ。だいたい作曲なんて小学校の音楽以来やってないよ。ぶつぶつ。」
翌日、昼過ぎ横浜西口のレコード店に向かうケン、オリジナル問題に頭を痛めている。
「やりたいのはやまやまなんだけど。ぶつぶつ。」
レコード屋はオカダ屋とゆうデパートの7Fにあるスミ屋、一番大きい輸入盤売り場がある店だ。輸入盤LPにはカット盤とゆうのがあってアメリカでは売れ残りのレコードのジャケットの端を切ったり穴を明けたりして現品処分したりする、それが大量に置いてあって値段が980円、金の無いケンにはとても重宝するものであった。

「ま、いっか。とりあえずコピイコピイ。何かいいレコ無いかなあ。」

パタパタパタパタ、ぱたぱたぱたぱた

もうかなり慣れちゃって忍法高速LPめくりの技、毎秒5枚はいってるな。

ぴた。

「おおお、何だこれはフェイセズだ。こんなんカット盤にあるんだ。もうけー!。」

ぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱ

ぴた。

「うわ、こ、これわ。スレイド。あの噂に聞く。すれいどがあった。うーん2枚。予算的にはつらいけどなあ。この2バンドならやれるよなあ。買うかこのー。」

「よしじゃこれにしよう。」独り言連発で気持ち悪い男になってしもたケン、レジに向かおうとすると反対側ヘビメタ・コーナーにたたづむ、いやレコードめくってるオナゴが一人。どっかで見たような気がすると近づくと。

「あ、君!!もしかしてブギブラザースのヴォーカルの人?そうだよね。」
「え、あ、はい、そうですけど。もしかして君は。」
そのオナゴ、例の凶悪悪役ヘビメタ・バンド、コアラのマーチのボーカルの人であった。みるみるうちに顔が赤くなるケン。
「あのヘビメタバンドの子?」
「ええええそう。あ、ちゃんと話すのははじめてね。私モンキッキじゅん子と言います。この前はメンバーが迷惑かけちゃって
ごめんね。」
「あ、いや、えーとボクはケンと言います。いえあのいいんだ。あれはその事故だから。」
「あー良かったあ。怒ってるんじゃないかと心配してんだ。ところで君たちもちろん予選通過したよね?」
「あ、ええ、はい。何とか。」
「そうかー。うまかったからあとの一つはきっと君たちじゃないかって話してたんだ。」
「とすると君たちも。」
「やだーもちろんじゃない。私がなんてったってボーカルなのよー。あれぐらいで落ちるわけが無いわ。おーほほほほほほ。」
「あ、うん、そうだよね。うまかったし。」
「何言ってんのよ。あんただって相当うまかったわよ。ギターも歌も。あ、そうだ今度うちらの練習に遊びに来ない?もちろんギター持ってね。毎週土日火木の5時から2時間、ヤマキワでやってるから。いつでもいいから来てよ。」
「いやでもみなさんに迷惑では。」
「そーんなこと無いって。みんなももう一回会ってみたいって言ってたよ。じゃあ約束ね。きてね。じゃあ。」
「あ、その、そのレコードの清算。」
「わははははいいっていいって。おーほほほほほ」
レコード一枚持ったまま行ってしまいましたモンキッキじゅん子さん。

「あー、びっくりしたなあ。おおおまだドキドキしてるよ。しかしなあきれーだなあ。」

ポン。後ろから肩を叩かれる。

「ぎゃ」
「何がぎゃだ。何ボケーっと見てるんだよ。」
「あ、お、おさむ。いや何でもない。ないっすよ。」
「ないっすよって、ありありだけど。」
「いや。ところで何だお前は。こんなところで。」
「あの俺だってレコード買いにくるんだけど。」
「ははは、そうだな。でお前何買った?」
「買ったって今来たばかりやんけ。お前は何を。あースレイドとフェイセズだ。てめー先にいいの買いやがって。」
「ははは。いいだろいいだろ。すれいど?っだぜ。まーまだ見てない棚あるからそこを漁りたまえきみきみ。」
「てめ。わかった俺だって探してやるぞ。」
ぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱたぱ。

ぴた。

「おーこれなんかどーだ。スイートだって。良さそうじゃん。」

スイート。そりゃすいーとでやんすよおさむ君。



「やあエブーリバデー。アーユー・ハッピい?。」
ケンが妙な外人化して桃屋に入場。
「へーい、フィル。アリバイやってるかい?」
続いておさむも登場。
「おさむ君、やめてちゃんらいいいかげんそれまーたシンリジでしょ。ボク、リノットじゃないのね。」
「のーのー、いい加減諦めてリノットしちゃいなよフィル。あ、そうだ、俺の希望曲アリバイにしよ。フィルにベース持た
せて、歌わせるのだ。」
「ぎゃはは、そりゃいい。やろうやろう。今度テープ持ってくるから。フィル頼んだよー。」
「頼んだよーってボク、イヤね。ぜたいやらないから。もう。」

アッコが厨房奥から出てきた。
「何ばーかやってんのよ二人で。みんなもう来て待ってるわよ。やるんならやるで早く早く。」
ケン&おさむ
「へ〜い」

ごそごそごそ。本日は初めてアッコがピアノで参加、曲は「ロックンロール黄金時代」でござるー。

「エブリバデー、準備はOKかい?」
「へ〜い」
「ちょっと待って、チューニングがまだ。」
ぼかっ
ケン「またお前かショータ、はやくせんかい。」
「あ、はい、えと出来ました出来ました。」
ケン「アッコは準備OK?」
「えーとOKだけど最初はどうする?ピアノとコーラス一緒に始まるけど。」
おさむ「あ、そうか。うーん。」
ケン「俺がこうやるよ。」と腕で三角形を大きく、「これで1,2,3。で始めればいいじゃん。」
おさむ「わはは、それ小学校の音楽で3拍子だな。」
イットク「すんまへん。でそのコーラスは誰がやるんでっか?」
にょみんと登場。
ケン「わ、何だ何だお前そのガンベルトは?うわそれ全部ハーモニカかー。」
「いやハーモニカって曲のキイ毎に1本なんですって。だからこの際全部揃えようかと思いまひて。」
おさむ「なるほど、やる気ばんばんだ。だからコーラスはお前とケンだぜ。」
ケン「何だと、お前もやるんだぞ」
おさむ「俺もか?後悔したってしらねえぜ。」
ケン「覚悟しております。そうかイットクもその気ならブラスのパートはお前に任せた。」
「へ〜い。そう来ると思ってました。喜んでやらしてもらいはりま。」
ケン「とゆうことです。よろしくお願いしますアッコさま。」
アッコ「なるほど。それならよろしい。」
ケン「あ、アッコさま。アッコさまにもコーラスお願いしたいんですが。」
アッコ「なにー?私もうたうのー。んー後悔したってしらねえぜ。」
ケン「じゃおめえらやる前にまずマイクセッティングじゃ。」

ごそごそごそ


「よし、さあいくぞー」(1,2,3)
ぽん、たたんたたんぽぽん。
ぽん、たたんたたんぽぽん。
ぽん、たたんたたんぽぽん。
ぽん、たたんたたんぽぽん。

たたたたたた、どたたたたたたた、たたたたたた、たたたたたた(以上ピアノの音です)

ぶうばぶっば、べべんぼ、ぶぶぶぶぶぶぶぶぼべんぼー
ぶうばぶっば、べべんぼ、ぶぶぶぶぶぶぶぶぼべんぼー(ハモニカー)


(1番)
エブバリ、へい
みんなでへい、今回行くならインド

時差なら時差早く言って
ハイカラ人間登場。

おおお。おおお。ハッピー、ポッキー、みなホッピイ
おおお、おおお
これでいいんじゃロックンロー

(2番)
上でガラガラぶう、出てきたぶう。
ギタギタはいほーはいほー
弱みもまあ出てきたぶう。
完全無欠の様相。

おおお。おおお。ハッピー、ポッキー、みなホッピイ
おおお、おおお レッツゴー
これでいいんじゃロックンロー

(展開)
これでいいんじゃロックンロー、夢は大
あれを見よ困ったにい、さざれ石

どれみふぁ、そらしど
どれみふぁ、そりゃしんど
どえみふぁ、くるしいからここからはギタアソロだー

グワゴローギルウウ、ギイギタギタギタグルグルウ(ギターソロを描写してる音です)

.....

じゃじゃじおん、じゃじゃじょんじゃじゃじゃじゃーん。

おさむ「わ、相談もしてないのに最後バチっと決まったぜ。俺ら天才か。」
ケン「おおおお、やるじゃんかアッコ。パーフェクト賞進呈です。」
「ありがたきしあわせ。ってなんじゃその歌詞はー!!」
「いや実を言うと考えてなかったんで口からでまかせです。」
ショータ「えー面白かったのにい。2度と歌えませんか?」
イットク「大丈夫。メルマガちゃぶ通読めば良い。」

お後がよろしいようで。



今日は火曜日だよー。新編成でのギグもどうやらうまくいきそうだし、てんでケンはコアラのマーチの練習を見学に行くことにしました。もちろんブギ兄弟の練習の前で行けるからだけど、なんつってもあの人がおるし・・・・。
練習場所はヤマキワ電気のスタジオ。イセザキ町の通りから一つ向こう側、バス通りで長者町5丁目のバス停のところにあります。照明が得意の電気屋さんだけど8階に楽器売り場があってそこに小さな貸しスタジオがあるのだ。一応、ここしかこの辺にここしか貸しスタジオは無し。桃屋で無料(タダ)で練習できてる兄弟はラッキーなのだ。感謝したまへ。
8階までエスカレーターでおっちらおっちら上がったケン君、スタジオ前でマーチのメンバーと出会います。
「おー、君かー。よう来たねえ。嬉しいよ。」とまず声を掛けてくれたのはリーダーらしいコアラさん。筆者必死に話し方を思い出してます。いいか誰もわからねえよ(^0^)。
次に気付いたジョンコさんが
「あらー、ぼうや、よくきたわねえ。よしよし、ギター持ってきたね。さあおめえら練習だ。気合入れていかんかいこらあ。」
「はいっ。」って思わず返事しちゃったよケンちゃんも。
実に狭いとこにえーと男5人、女おとこ一人ですからもうぎっちりこんだ。
「1曲目はパラノイド行くぜー。えーとケンは知ってるかい。パラノイド。サバスのだよ。」
呼び捨てにされてちょっと喜んでるケン。
「えーと一応は。キイはなんですか。」
「そんなんしらんわ。お前弾いてみろ。」
「はい」コアラはギター弾いてます。
じゃじゃじゃじゃ、じゃじゃじゃじゃ♪
「あー、わかったす。はい。」
「じゃあ行くぜーごらぁ。」

じゃじゃじゃじゃ、じゃじゃじゃじゃ、んじゃーんじゃ♪ ふんふんふんふん♪

八丈島のキョンのガキデカ氏でもあるまーに、ジュンコ嬢、ふんふん言いながら踊りまくって歌っております。
ははあ、だもんで男連中は隅っこにいるんだなと思いながら弾いてるケン。曲自体はラクチンちん。それはもうほぼ毎日練習してる身でして、思ってる以上に実力がついている。

じゃーん!!

「いえー、ナイスじゃん、ケン。」とジュンコ。
「ほんとだ。うまいもんだ。」コアラも。
「うんうん。やっぱギターふたつだと音厚くなるよなあ。」と悪役ベーシスト、水上まで。何か気持ち悪い。

「よーし、どんどん行くぞー。」

その後、何てたって18歳、じゃなかったヘビメタバンドですから知らない曲多数やるも簡単な音あわせだけでケンちゃん、何とかついて行きました。
2時間後、練習が終わります。
「お疲れー。ケン、ちょっと時間あるよねえ。あるよね。あるね?そう。」
「あ、はい30分くらいなら」
もう無理やりです。
仕方なくヤマキワ裏の茶店でメンバーとお茶することに。ああ、二人だけのデート?だったらなあとこっそり思ったりして


店に入ってそれぞれにアイスコーヒーを注文。異常な速さで出て来てかんぱーいと一口飲んだその時ジュンコさんセッド、
「単刀直入に言う」
「えっ?」
「ケン、君うちのバンド入ってくれない?君のその腕に惚れました。このマヌケとツイン・リード頼みます。」
「お願いしまーす。」と続けてバンドの全員も。
「うわ、こ、これ引き抜きかよー。」と心で思ったケン君、びっくりして言葉も出ません。

2005年09月15日

第7回「目指せ予選突破」

007.jpg

そこへマコが涙で真っ赤な目の顔をしてケンの脇腹を突付いた。
ケン「ん、何?。しょうが無いよ。マコが悪いんじゃないから。え、何。違うの。」

アッコ「何?うん。うん。うん。」
アッコがかがんで。マコが背伸びして耳打ちする。
アッコ「えーーーーー!!」

ケン「何だって?」
アッコ「この子が叩くって。」
「えっ?」
アッコ「マコちゃんが自分がドラム叩くって言ってるのよ。自分のせいでこうなったんだからやるって。」


ケン「やるって言ったって。出来ないでしょ?」
マコ、アッコに耳打ち。
アッコ「兄ちゃんが学校から帰って来るあいだに家で練習してたんだって。曲も全部覚えてるから大丈夫だって。ほんとなの?」
思いっきりうなずくマコ。
ケン「イットク。お前んとこドラム買ったのか?」
「へい。わて出来んことばかりなんで少しでも練習しよ思って。それにしてもマコや。自分いつのまに・・・」

ケン「どうするよおさむ?」
おさむ「どうするよって....俺にもけんとう付かないよ。」

ケン「うーーーーーん。よしわかった。あそこいこ。」
アッコ「あそこって?」
ケン「桜木町にヤメハがあるじゃんか。あそこならハマ楽器よりだいぶここから近いし。あそこでマコちゃんの腕見せてもらおう。」
おさむ「うんうん。それがいい。それがいい。そうと決まったらもうほら1時半だ。早く行こうぜ。」
ケン「イットク。お前だいじょぶか?」
「はい。おおきに。わてはだいじょぶやけど。」

全員急いでバスに乗って桜木町に移動。ヤメハに向かった。
ケン「ええと。たしか奥にドラムコーナーが。あ、あったあった。」
「すみません。少し音聞かせてもらっていいですか?」
カウンターにいた店員「あ、いいですよ。どれですか?」
ケン「ええと、これがあそこのに近いな。あのこれ良いですか?」
店員「はい。スティックはありますか?」
イットク「はい。ありますう。」

マコがスティック受け取ってドラム椅子に座った。足がやっとこさバスドラペダルに。正面から見ると頭だけがタムタムの上に見える。
どんどんどんどんどんどん。
飛び上がるように叩く。

ケン「マコちゃんじゃちょっと。スローライドの最初の方叩ける?」
うなずくマコ。

カンカンカンカン
ドン・・・・どん・・・・どん・・・・どん
ドン・・・・どん・・・・どん・・・・どん

たん!どんたどんたどんたどんた。どんたどんたどんたどんた。

おさむ「おおおおおお。すげえええええ。」
ケン「うわあほんとかよ。」
どんつどんつどんつ、づだだづだだだ。

ケン「はいー。ちょっと待ってー。」

どんづど。

ケン「じゃじゃ、タッシュやってみてくれる?」
うなづくマコ。

かんかんかんかん

づっづだん。づっづだん。づっづだん。づっづだん。
づっづだん。づっづだん。づっづだだん。づっづだん。

づっづだん。づっづだん。づっづだん。づっづだん。
づっづだん。づっづだん。づっづだだん。だごんだごん。

「うひょー。」

づっづだん。づっづだん。づっづだん。づっづだん。
づっづだん。づっづだん。づっづだだん。づっづだん。

づっづだん。づっづだん。づっづだん。づっづだん。
づっづだん。づっづだん。づっづだだん。だごんだごん。

ケン「はーい。いいよー。」

づんごづ。

いつの間にか店中の店員が集まっている。目が全員まん丸である。

ケン「うほんごほん。ええっと。マコちゃんこれ気に入ったんだね。じゃ誕生日の時はこれにしようか。」
店員に向かって「ありがとうございました。よくわかりました。また買う時に来ますので。はい。」
店員A「はは、はい。お、お待ちしております。」

ケン「さ、みんな行こうか。」

全員でそそくさと店の外へ。

おさむ「凄かったなあ。音はでかいし。ノリもあるし。シャッフルなんてもう・・・・」
ケン「しっ!」
指を口に当てて。
見ればイットク、顔が真っ青である。

ケン、小声で「お前なあ。妹の方がこんなうまいんだぞ。骨折っただけでもあれなのに。イットクの気持考えてみろや。」
おさむ「あ、ごめんごめん。」

おさむ「ごほん。うん。それでどうする?ほんとに全部曲覚えてるの?」
マコ、うなずく。
ケン「うーん、あれだイットクさえ良かったらマコちゃんに頼んでみようじゃないか。どうせチャレンジのコンテストだ。一か八か
で。・・・・・・イットク、どうだ。それでいいか?」

「・・・・・・・・・・・はい。わてらの不注意で迷惑おかけしましたんで。マコお前やってくれるか」

強くうなずくマコ。

アッコ「そうと決まったらもう2時過ぎよ、早く会場行きましょう。遅れたら大変たいへん。」

全員、脱兎の如く移動。はたして間に合うかブギ兄弟。



桜木町から関内まで超特急で移動した彼らブギ兄弟。時は2時半であった。
急いで会場へ。
ホールを覗くとやっていたのは彼らの出番前7バンド目。まだ全然楽勝である。予想通り1時間ぐらい遅れていた。
おさむ「なーんだ。まだまだじゃんか。あせって損した損した。あっ、そうだ。ケンちょっと出掛けていいか?すぐ戻るから。」
「えっ、いいけど。気をつけろよ。お前までケガしたらたまらんからな。」
「おう」
脱兎の如くおさむが会場を後に。どこへ行くことやら。

ケン「一応メンバーが変わったから受付に報告しなきゃいけないかな。」
アッコ「うん多分。言わなきゃいけないかも。」

受付に行きこれこれしかじかと事態を説明、メンバー変更の許しを願った。
受付「困りましたねえ。今頃メンバー変更って言われても。規定だとあくまでも届出のメンバーじゃないと出場出来ないんですが。」
アッコ「そんな。急な事故だし。妹が兄の代わりに出るって言ってるのですから。お願いします。何とかなりませんか。」
ケン「お願いします。精一杯やりますんで。他のバンドには迷惑かけませんし。」
受付「うーん。私の一存ではどうも。いくらここで言われても。うーん。」
イットクいきなり横に現れ土下座して
「すまんです。わてのせいで。お願いします。一生懸命練習してきたんで。ここで許してもらえへんとわてら兄弟みなさんに申し訳がたちまへんのや。」
受付「あ、そこでそんなことされても。うーん。」

そこへホール奥の扉から一人のおじさん登場。立派な口ひげを生やしている。(役:大泉あきら)
「どうしたんだね。君達。受付で騒いで。おおお、君君手を上げて手を上げて。何だね君、若い子にこんなことさせて。」
受付「あ、大泉本部長。今になってメンバー変更させてくれって言ってるのです。規定だと許可できないことなんで...」
大泉「うんうんメンバー変更?うーんどうしたの君たち今頃になって。」
ケン、アッコ再びこれこれしかじかケンケンガクガクええやこらどんとこらと必死に事情説明。
大泉「そうそううんうん。ケガしちゃったの。ここで。それでこのちいちゃな。妹さんが代わりに。くー。泣いていいおじさん。良い話じゃないの。君たち、OKです。丸。出なさい出なさい。一生懸命な若者のためにこのコンテストはあるのです。はい。」
受付「でも規定では...」
「君。固いだけじゃ受付は出来ないよ。私が許可するって言ってるのです。文句何かありますか。」
受付「いえ・・・」

ケン「ありがとうございます。一生懸命がんばりますので。」
イットク「おおきに。おっはん。一生このご恩は忘れませんて」

大泉「うんうんいいのいいの。それよりしっかり演奏してね。許可した私の顔を潰さないように。おっほん。」

アッコ「ありがとうございます。」

ケン「よしこれで演奏できる。おめーら大泉さんのためにも気合入れてぶちかますぞ。っておさむはまだ帰って来ないの?」

そこへおさむが息を切らして戻ってきた。何かを買ってきたようであった。
「はあはあはあ。あー急いだ急いだ。ん。何だ何かあったのか?」
ケン「何かって大変だったんだぞ。メンバー変更許可してもらえないかと思った。今やっとで。もう。どこ行ってたんだ。」
おさむ「ははは、ご苦労ご苦労。ところでイットク、お前これ振れ。」
と手に持ってる包みから出したのはマラカスであった。
「二つは振れないから一つでいい。それで踊ってコーラス付けろや。」
イットク「はい?・・・・・・。おおきに。先輩。ライブ出させていただいてよろしいんでっしゃろか。」
おさむ「ケン、いいだろ?これで。こいつだって一緒に走った仲じゃないか」
ケン「ははは。おさむもたまにはグアイデア出すなあ。こりゃいいや。イットク、踊れ踊れ。それでもしマコが困ったら助けてあげろや。な。」
イットク「はい。そうさせていただきます。ほんと。おおきに。」

ケン「さてステージはどれくらい進んだかな。見に行ってみよう。」

全員会場ホール内に。

ヘビメタ・バンドが轟音演奏中。ボーカルは女性でシャウトしまくっている。

ショータ「ぎゃ、うるせー。」
おさむ「ええとこりゃうちらの3つ前のバンドだ。あれ、あいつら・・・・あれじゃんか。マコにぶつかったやつらじゃないか?ほらあのドラムとキーボード。」
ケン、ぼーっとして女性ボーカルを見てる。
「きれーだなあ...」
おさむ「えっ?何ぼーっとしてんだ。きいてんのか?
ケン「あ、ああ。あー。」
おさむ「あーって。しっかりしろや。どうしたんだ。」

その時演奏終わりステージ上では
「みなさーーーん。どうもありがとう。決勝でまたあえるね。ぐっばあああい。」

「ぐばああい」
おさむ「何言ってんだケン。おお、次の次じゃんか。みんな準備するぞ。さあ行こう。」

いよいよライブ目前である。


「よしみんな行くぞ。いいか?」
「おっし!!」

ステージ上、ライブ前輪になって気合タイム決行。
スポットライトが当たった。

カンカンカンカン
どん、 どん、 どん、 どん、

客席がざわめく。なんせドラムに誰もいないのに音が聞こえてくるのだ。マコの身長では正面からではドラムに隠れて姿が見えず
特に後ろの席の方でざわめきが広がっていった。

じゃじゃっじゃ、じゃじゃっじゃ、じゃじゃっじゃ、じゃじゃじゃー、じゃじゃっじゃ、
じゃじゃっじゃ、じゃじゃっじゃ、じゃじゃじゃー
くいいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜ん

じゃんじゃん

「♪すろーらい          てきにーじい」
「♪スローライ          てきにいいじい」

シンバル連打で歌が始まったとたん大歓声。飛び上がって叩いたマコの姿が会場の全員に見えたのだ。
気がつきゃあとはもう大変、その派手なプレイとグルーヴィなリズムに全員がノックアウト。ブギ兄弟もその熱演に煽られる始末
である。ハナから心配ご無用、むしろバンドを引っ張っているのは初めて参加したマコの方であった。

どがすかぐぎょおおーーー〜ん。
じゃん。

「ありがとう。」

「終わったなあ」
「ああ」
スポットライトが落ちてケンとおさむ。
ケン「おお、マコちゃん!! お疲れー!!」
おさむ「ごくろーさん。まったく今日はマコの日だわ。持ってきやがってもう」
頭をくちゃくちゃになでる。
マコ、ニターって笑って。

驚いたことにステージを降りてホールに向かう通路でも拍手が起こった。
ショータ「いやもう、すんません。はい。がんばりました。」
ボカっ
ケン「ばか。お前じゃ無いだろう。」
「ははは、やっぱし。」

ホールにて
アッコ「みんな、お疲れ様。ウケたわよー。すっっごく」
イットク「まったくこいつのおかげやわ。まじわしよりうまいわ。降参です。」
深々、妹に頭を下げる兄。
「先輩方、もう気にせんでください。バンドの新しいドラマーはこいつでんねん。自分は新しいもんめっけますんで。はい。」
ケン「そうか。俺も考えてることあるから。お前もめげないでいろよバンドに」
「はい」

おさむ「お、あそこに例のヘヴィメタがいるぞ。」

ちょうど反対側に楽器を片付けて帰ろうとしていた。

ショータ「あー、お前ミズカミ!」
ヘヴィメタのベーシスト「お、お前ショータじゃんか。」
おさむ「ショータ、なんだ知り合いか?」
「はい、こいつ、同じクラスなんすよ。ミズカミってやつなんすが」

ミズカミ(役:水上コージ)「へええ、あのヘンテコな弾き方してたベースってお前だったんだ。おかしくって腹がよじれたぜ。しょぼい音出しやがってよう。」
ショータ「なんだとー。お前らこそ。見ろ。お前らのせいでうちのメンバーがこんなことになって。
     まず謝るのが筋だろ。」

ミズカミ「ふん」
それだけ言って全員ホールから出て行ってしまった。

呆然とするブギー兄弟たち。
おさむ「なんだあれは。 うお、今頃腹が立ってきた。そうだろケンっ。ケンっ。」

ケン「きれいだなあ。」

ショータ「くくくくくそー。先輩、俺やります。あんな野郎にバカにされて。くそー。絶対に勝ってやるぞ。くう。」


一週間後。いやコンテストの予選の次の日から中間テストが始まったのである。そりゃもう全員一夜漬けてなもんで無し。落第だけは避けねばならぬと血眼になったもののどうなっていることか。結果が怖い。私は知らない。

で一週間後の今日とゆう日、テスト終了で久し振りに桃屋に集合したブギー兄弟たち。一様に悲惨な顔付きをしていたが、店にたどり着いたとたん嬉しい知らせを聞くことになる。

「こんちわー。やーフィルっ!ベース弾いてるかい?」
「おーケンさん、何ねベース弾いてるって。私料理人よ。」
きんどうフィルさんをいぢりながらケンが店に入ってきた。
「ごめんごめん。遅くなって。レコード買って来たんで遅くなっちゃったよ。」
おさむ「遅いぞこらあ。せっかく良い知らせあるっつうに。」
「何だなんだ。いい知らせって。」

奥から何かをピーラピラさせながらアッコ登場。
「はああい。これこれ。ごらんなさいましい。」
机の上に置いた。

ケン「何じゃこりゃあ。血だ。じゃなくて。えーと。おおおおお。豪華合格通知じゃあーりませんか。」
マコが笑った。
ショータ「ボクにも見せて下さいよう。えー、なになに。あんたがたバンドはこりゃ偉いしうまいしい素敵だしーだったので
合格。次の関東地区大会に出るように。ほれ。」
ぼかっ。
「ばかやろう。そんな文句なわきゃないだろ。」とケン。
「えー。ほんとですよ。ほら。」
「どらどら。あ、ほんとだ。下に何か書いてあるぞ。「がんばってねボクちゃんたち。期待してるわよんbyオオイズミ」。」
イットク「うひょ。あのおっさんカマオさんだったのかー。自分好かれてたらどうしよう。」
ケン「まあ、それはそれでいいとして。場所と日にちは?」
アッコ「えーと7月8日。横浜文化体育館ホールだって。」
おさむ「うげ。また期末テスト前かよ。狙ってんのか落第を。」
ショータ「ま、ボクなんか普段からたゆまぬ努力ですから全然大丈夫なんですけど。」
ボカ。    ボカぼかぼかぼか。

ケン「ところで決戦用の新しい曲なんだけど。」
おさむ「お、新曲。何しようか?何か合格するの当然みたいな準備の良さ。」
ケン「へへへ。あったりめえよ。それでえーっと実は今日これ買ってきたんだ。アッコ、かけてくれる?」
アッコ「また使う。自分でやりなさいよう。しょうがないわねえ。」

アッコ、おっとり刀でレコードをかけに行く。

♪たたたたたたたた、たたたたたたたた、ばーぽばーぽばっばばぽばーぽ♪

おさむ「おーいかすなあ。なんだこれ。」
ケン「モット・ザ・フープル。ラジオでこの前聴いていいなあっと思って。買っちゃった。ロックンロール黄金時代と申す。」
ショータ「でもこれピアノとかラッパ入ってますよ。」
ケン「それが問題で。でもなあピアノ入りの曲もやりたいよなあ。イットクお前ボンボンだからピアノくらい出来ないか?」
イットク「そないなこと言わはっても。できまへんて。やれてりゃとっくにやってますわ。」
ケン「はははそりゃそうだ。うーん困った。どうしよう。やりたいなあ。」

そこへアッコが戻って
「私ピアノ出来るわよ。ま少しだけだけど。」
ケン「えっ、お前弾けるのか?お嬢様じゃないのに。」
「お嬢様なのっ。うちにピアノだってあるんだから。」
おさむ「よし。そのピアノここに運ぼう。」
アッコ「よしって。もう決めちゃって。人にモノを頼むのには何かあってもよろしくって。」

全員「へへえ。アッコさまよろしくお願え申しますだ。」
「うーん、どうしよっかなあ。」
さらに全員土下座。
「お願ええしますだああ。」
「ほほほ。そこまで言うのならやってやってもよろしい。」

ショータ「で、ラッパはどうするんで。」
ケン「それだ。いるじゃないかラッパ隊。」
「へ?」
ケン「おやじ隊だよ。岸田さんと植木さんに頼もうかと思って。派手でいいじゃんか。」
おさむ「がはは、そりゃいいや。あれから毎晩ここでガンガンやってるんだろ。頼んでみようぜ。今晩でも。」
ケン「どうせならおやじさんたち全部出れるようなプログラムにしてみようぜ。」

イットク「あのー、それで自分は何をしたらいいんで。」
ケン「あ、お前は踊れ。ただひたすら。  ってのは冗談で。これ買って来たぞ。これやったらどうだ。」
袋から何か取り出してイットクに渡す。
「あ、これハーモニカ」
「そうだ。プレゼントするからこれ吹けや。教則本はこればっかは許す。自分で買え。」
「もしかしてブルースハープってやつですか。おおきに。うれしゅうおます。やらさせていただきます。これならいけるかも
小学生の時けっこう得意だったんでっせ。」
おさむ「この前買ってやったマラカスも忘れるなよ。」
「へい。もちろん。先輩方感謝します。頑張りますんで。」

決戦の日も決まり又も燃えてきたブギ兄弟たち。
気が付けばマコはドラムを練習している。
ばこばこばこばこ。

2005年09月13日

第6回「目標発見」

006.jpg

何となく帰りが一緒になったケンとアッコ。なことは滅多に無いので無口である。

ケン「なあ。ウエイトレスばっかやってて何も飲んで無いだろ。ちょっとそこで座ってな。」
アッコ「ううん。けっこう合間見て・・・。あ、行っちゃった。」

アッコを商店街の道中央のベンチに座らせケンは缶コーヒー買いに行く。

ケン「ほら。これ。オゴリだぞ。」
アッコ「サンキュ」

アッコ「あったかいね。」
ケン「メシは食えたのか?」
飲みながら
アッコ「う、うん。大丈夫。夜になったらそんな忙しくなかったから。」

ケン「マネージャーのことなんだけど・・・。いいのかな。まあ大して忙しくなるこたアないけどさ。」
飲みながら
アッコ「うーん、しゃあないね。腐れ縁じゃん。」
ケン「(学校じゃ)クラブとか入ってないのか。まさかまた剣道部とか。ははは。」
アッコ「もうこりごり。運動部は。ってゆうか、シローおじさんのとこで働いてお小遣い貰う方が良いから。」
ケン「ま、大したマネージャーじゃなかったからなあ。向こうでお断りとか。」
アッコ「何よー。あんなにやってあげたじゃない。誰が好きで道着の洗濯とかするかー。」
ケン「だってやりたいからやったんじゃないのか。」
アッコ「まさか。部長先生に無理やり頼まれたからやったんじゃない。」
ケン「ほー、おさむとかに惚れてたんじゃないのー」
アッコ「何言ってんの。バカ。下らないこと言うのなら私行くわよ。」
ケン「おい、待てよ。何怒ってんだよ。おい。明日も行くからなー。」

ケン「あああ、行っちゃったよ。俺何か言ったか。んー」

コーヒー飲みながら無性に腹が立って帰るアッコ。
(・・・・もうまったく。あんたの道着いつも・・・。もう)

翌日・・・・・・・
午後5時、ブギ兄弟達は当然桃屋に大集合する。
店の前で4時50分ごろ
おさむ「ちわー。あれー。開いて無いぞ。どうしたんだ。」
そこへケンもやって来た。
「おう。どうしたんだ。」
「何か閉まってるんだ。どうしたんだろう。」
そこへイットクとマコ、ショータも登場。
「こんちわー。」「ちわー」
ケン「おう。ごくろーさん。」
おさむ「おーは良いけどどうする。」
ケン「とりあえずドアを叩いてみよう。」

ドンドンドン、どんどんどん

ケン「こんちわー。いますかマスター。シローおじさーん。こんちわー。」

がちゃ。ドアが開いた。
アッコ、登場。
ケン「お、アッコ。」
おさむ「いたのかー。」
アッコ「いたのかーじゃないわよ。うるさいわねえ。」
ケン「おじさんは?」
アッコ「何か今朝までやったんだってさ。演奏を。当然バタンキューみたい。」
おさむ「え、朝まで。うわ。うーんやりかねない。」
ケン「じゃあ、練習させて貰ったら悪いかな。うるさいもんな。」
アッコ「うーん。」

そこへ奥からシロー登場。

「ああ、君達おはよう。」
ケン「おはようじゃないすよ。もう5時っすよ。しかも新装開店そうそう休んじゃってまあ。」
シロー「あはは。まあ良いじゃないの。先は長いし。」
おさむ「あはは。でも練習させてもらっていいんすか。」
シロー「ああ、いいよ。どうせもう起きるし。今日はもう店開けないからじっくり練習出来るよ。」
イットク「ああ、良かった。またライブだったらどうしよ思ってましたん。おおきに。」
シロー「さあ、入った入った。」

何やかやと全員店の中に。

アッコ「あ、そうだ。マネージャーとして初めの仕事してきました。よく聞く様に。」
おさむ「えー、何何ー?」
アッコ「コンテスト出場応募してきました。よく練習するように。」
ケン「うわ、まさか。ほんとかよ。わ。そ、それでいつだよそれ。」
アッコ「はい。一月後です。曲目は2曲。頑張ってね。」
ショータ「頑張ってねって。他人事だと思ってー。」
ばこん。これはアッコが張り手の音。
アッコ「さあ、ぐずぐずしないで練習練習!!。」

ケン「うーん、この光景どっかで見たような気が・・・」
アッコ「ほらそこのボケタン!はやくせんかい!!」

はーい。



練習また練習である。学校が終わって5時から8時まで3時間。一応お客さんが入ってくると休憩するがそんなガンガンやってる店に誰が入って来るものか。
少しづつ上達している。それは確かだ。ベース・ギターをジミヘン弾きしてるショータも問題無くこなす。初めからそれだから問題は無いようである。しかしながら相変わらずの問題はいまだあり。一抹の不安が彼らの頭の片隅に春の雑草の根っこのようにめりめりともーりもり。
桃屋での最初の練習日から1週間経った土曜日、いつものように店に来たブギブラザースの面々。習慣でいつもみな同じ時間に。店の前で既に集合している。

一同「ちわー。」
「いらしゃーいませーべーいび。」
ケン「わ、どなたですか?」
そこには見たことの無いでかい男が。カウンターにエプロンして仕事していた。
男「はーい。貴方たち、ケンくんたちねー。キイテルヨー。ミーはねえ、フィルいいます。いよろしく。べいべ。」
おさむ「わ、外人さんだ。フィルさんて...。うーんどっかで見たことある風貌だなあ。」
ケン「わ、そうだ。シン・リジイのフィル・リノットそっくりだ。マカロニほうれん荘で見ました。」
おさむ「ま、まさか。ほんものさん!。はう・ワウ・ユー?ミスタ・リノット?」
フィル「ノーノノー。違うねー。よく言われるけど。私の名前フィル・コリンズ・アッテンボロー・ゴンザレスね。大体、知らないね、リノットさんって。誰ねそれ。オウイエイ」
ケン「何だそうかー。びっくりしたなもー。でも何でいるんですか?フィルさん。」
フィル「フィルって呼んでくだせー。親しみ大。いやな、ミスタシローに頼まれて。ほらアコちゃんだけじゃカワイそうだからゆうてねん。」
おさむ「そうですかい。そりゃま確かにそうですねん。いやだわこっちまで日本語おかしくなってきた。それはともかくよろしくフィルさん。みんなもほらキチンと挨拶せんかい。」
一同「は=い。よろしくー。」

奥からアッコ登場。
「来たねえみんな。さー外だ外だ。」
ショータ「何で外なんですかー?」
「荷物早く置いて。外に出ればわかるわかる。」

アッコ、いつの間にか自転車で登場。
「さあ走れ走れ。」
おさむ「走れ走れってなぜ走る。」
「いいからいいから。あんた達の演奏には腰が入って無いよー。だから走れ走れ。」
イットク「そないな殺生なあ。あきまへんでー」
ケン「うん、それもそうだ。お前も文句言ってないで走れ走れ。」バコっ。
ショータ「いたー。わてまだ何も言ってまへんでー。そんしたなー。あ、大阪弁移った。」

全員仕方なくザキの商店街を走リ出す。

アッコ「これは良い宣伝になるわねえ。今度から旗でも立てて走ろうかしら。」
おさむ「ぜえぜえ。何言ってんのかねこの女は。まったく。」

10分後
BGM。♪とんからかったんとんからかったんとんからかったんぷー
ショータとイットクが大きく遅れる。
「おおい速おますね〜。大坂人は走るの苦手やさかい。」
「おーい待って下さいよう。辛いっスよう。」
へなへなへな。その場に座り込む。
上からハトの糞、二人の顔面に落下。
「へーーーーーっ。ついてまへん。何でこないなことになったんやら。。」
マコはゆうゆう先頭を切って走ってる。
「ほらほらマコちゃんだってこんなに元気だよ。あんた達ぐずぐずしてるとケツ蹴り飛ばすぞー。」
「こわー。アッコさんこわー。」

ぜえぜえぜえ。
さらに10分後、その辺を1週して桃屋にご帰還。
「みんな、明日もあさってもずーっと練習前は走るからね。そのお・つ・も・り・で。」
全員、文句言う気力も最早無し。
「は〜〜〜い」

「さあ練習練習とっとと準備する!。」
「は〜〜〜〜〜い」

ようやく練習。音を出す。心なしか足腰据わった音のような・・・訳は無い。

そこへ一人の男が店に入って来た。
「こんちわ。良いかい。ここ座って。」

シロー「あ、ジャックさん。久しぶりです。あ、君達ちょっと音止め...。」
ジャック「ああ、いいいい。そのままそのまま。」

そこへもう一人の男が入店。ジャックに駆け寄る。
「兄貴〜。良いんですか。こんなとこで油売っててー。また親分に文句言われますよ〜。」
「バカタレ。いちいちうるさいんだよお前はー。しばらく俺はここにいるからお前はその辺で客引きでもやってろ。」
「そんな殺生なあ。」
ばかばかばかばか。全身をはたかれてジャックの子分山本が悲鳴を上げながら外に。
「まったくあのバカタレはいつまでたってもバカタレタレタレ」

席に戻ったジャック、ただ黙って練習してるブギブラザースを見続ける。



それから2週間、コンテストの日まであと1週間となり、ブギブロスの面々は、走っては練習走っては練習のひたむきな毎日をおくっておりました。それなりに演奏もしっかりしてきた問題のZZトップのタッシュ、シャッフルの曲もイットクは必死にくらいついて何とか必ず完奏出来るように。タッシュはスライド・ギター、ギンギン、ブルースの基本、シャッフルとゆうことでおさむが絶対やるのだと言って聞かなかったのである。

演奏が上手くなるにつれて問題が一つ。

音量が上がっていった。ロックバンド七不思議の2.5に上げられる音量問題。自信につれてヴォリューム以上に音が前に出ますのね。一応この前の改装で防音処置を追加した桃屋ではあるがこれには分が悪く、ドアの向こう側に音が漏れ出し、前を通る人がぼちぼち中を覗き込むようになってきた。

そんな中...

いつものようにどがんどがん練習中、曲はホット・レッグス♪。
いきなりドアを開けて、ちゅうより蹴り開けて知らない兄さんが入って来た。ポケットに手を突っ込み、ステテコ、腹巻、帽子ってまるで寅さんじゃん。口を意味不明にあごあごして体を左右にマリオネットのようにふりふりカウンターのシローちゃんの方に向かって歩いていく。

ブロスの面々は夢中で気が付かない。

ほっれっ、足が無い♪ あれがほれ♪

近づく兄さん、いきなり椅子を蹴飛ばし両手ををガンとカウンターに叩きつけた。

「われーーーっ。誰に断ってこんな音出しトンじゃい。やめんかいこのー。」
「やめんかいこのー。」
いつのまにかもう一人後ろにいた。いささかおどおど貧弱なリーゼントの兄さん。

ばっ。

さすがにケンたちも気付いて演奏を中止する。
「何だ何だ。誰だ。あの人たち」

「だ・れ・に・断ってやっとんじゃいって聞いとんじゃい。われ〜。こたえんかい。」「こたえんかいおらー」

シロー「誰に断ってって、あんた。ここは私の店だ。好きにやらせてもらうよ。」

おさむ小声で「おー、おじさんかっこいー。がんばれー。」
ケン「ばか。呑気なこと言ってるんじゃない。やばいかも。わわわ。」

「われ〜。くそなまいきなこと抜かしおってからにー。ここがカラタチ組のシマだって知っててそんなこといってんのか。われ
ー」「われー。」

わ、ゴスペルみたいだとケンは思った。コール&レスポンスって言ったっけなそうゆうの。

どん!!

カウンターの奥から大きな音が

「兄さん、騒がしいじゃないか。いい音楽聴いて飲んでるんだから邪魔しないでくれるかな。」

おさむ「おージャックさんだ。奥で飲んでたんだ。気付かなかったよ。」

「誰に向かって口きいとんじゃ・・・・・」
振り返った兄さん、ジャックの顔を見て凍りつく。
「わわわわ。ジャック兄さん。いつのまにこんなとこに。だって親分があのナシつけて来いって。あの。」

ベン!!頭を思いっきり引っ叩かれる。

「バカヤロ!!今時んなカッコでイキガルやくざがいるかい。ちっとは考えろみっともない。」
「えー、でも久しぶりの晴れの舞台だったもんで...」「もんで」
「ばかたれ。まとにかくここのことは親分には話を付けとくから。ま、大人しく座って酒でものめや。」
「はい。すんません。ちそうになるっす。」
「あ、マスター。こいつ俺の弟分の弟分でオサムって言うバカです。こんなんだけど根はいいやつなんで。堪忍してやって。」
「あ、まあ。そうゆうことなら。よろしく。オサム兄さん。おさむが二人になっちゃったな。ははは。」
「アニキイ〜。俺も俺も。俺も紹介してくださいよう。」
「ばか。お前はいいの。」
ジャック「まあ、いいじゃないか。お前名前なんてんだ?」
「はい。わたくしアキラって言いますっ。以後お見知りおきを。」
シロー「アキラさん、こちらこそよろしくー。」

ジャック「あ、おめーら。何やってんだ。ライブ近いんだろ。早く練習戻りな。」

ブギのブロス「あ、はい。あああ、はい。」

オサム兄さん「あのー。いいですか?」
ジャック「何だ。まだ何か文句あっか。」
「いえ、文句なんてとんでも無いっす。あのーお願いが。」
ジャック「何だよー。ぐずぐずしてないで言うことあるなら早くいえよー。」
「えーと1曲歌わせてもらっていいすか?昔ちびっとやってたもんで。あの。懐かしくなっちゃって。」
「何だ。そんなことか。おーい。お前ら。このあんちゃんが歌いたいってよ。頼むわひとつ。」

ケン「あ、はい。えーと弾けるかな。何の曲やるんですか?。」
オサム兄さん「あ、君達。頼むね。これこれ。」なぜか楽譜持ってる。なんでだ。

おさむ「あ、ボクもおさむって言います。よろしくー。あ、これですね。これなら出来るよ。きっと。」

しばしミーティング後、ブギブラザース・フューチャリング・オサム兄さんで演奏開始。
曲はもちろん

「大坂で〜生まれた〜女や堺〜。♪」


「ホールだよ。」 ケンが言った。
「ホールだな。」 とおさむ。

「先輩、感慨にふけってると受付に遅れますぜ。」
ばかっ。
ケン「うるさいなあ。やっとここまで来たんだからもう少し感動させろや。」
おさむ「まあ、いいだろこれくらいで。ははは。先は長いし。」

イットク「では乗り込みまっせ。」

場所は関内馬車道にある横浜市民ホール。ホールはホールだが収容人数は満杯で500人くらいの小ホールである。
それでもケンたちにとっては初の大舞台、緊張するなって言っても無理か。
今日はヤマヘ・ミュージック・コンクール・東西バンド合戦横浜中央地区予選の日。会場にてのブギ兄弟たち。

アッコ「何やってんの早く早く。」
「へ〜い。」

小さいながらちゃんと有るロビーは頭の形が50種類くらいの妙な人間どもで溢れかえっていた。
アッコ「えーっと。受付はどこかしら。  あ、あそこだ。あんたたちここで待ってなさい。何か聞かれるかもしれないから。
うろうろするんじゃないよ。」

「へ〜い」

5分ほどして。
おさむ「ねえ、楽屋は?立ってるのもしんどいなあ。」
アッコ「無いって。」
ケン「へ?」
アッコ「無いんだって。楽屋は。ここで着替えてここで待機してここで待ってろだってさ。リハは3番目あと15分したら始まるから早く準備してね。」
ケン「ひえー。あわただしいな。仕方が無い。あの階段下に陣取ろう。行け!ショータ。れっつごー。」
「はい!。」ぴゅーーーーー。
「陣取りました!リーダー!」
「よくやった。ぼかっ」
「ひー、褒められる時もハタかれるの〜」
マコ、声出さないで大笑い。あ、ちゃんとマコもおります。

15分後。
「えー横浜ブギ・ブラザースの人はいますかー。次の次リハーサルですんでステージのそばで待機してて下さいー。」
「はーい」
アッコ「準備出来た?チューニングは?あ、ショータ、遅いわねえ。弦が少ないんだから速く出来るだろうに。さあさあ。」
ショータ「はいはい。出来ました出来ました。どうも不安で。何回もやっちゃったよ。」

前のバンドはキャロルみたいなロケンロールバンド。マイクにかじりつくように歌っております。
ケン「ぎゃ、やだなあ。あのマイク。リーゼント病が移っちゃうよ。アルコール誰か持って無いか?」
アッコ「そんなもんあるわけないじゃない。文句言ってないで。  ほら終わったわよ。はい。リハ頑張って=」

うんこらしょどっこいしょとセッティングあっとゆうま。桃屋で毎日やってるぶん慣れたものである。

ケン「えーっと。ちぇっくちぇっくチェック。あーあーあー。」
おさむ「ちぇちぇちぇちぇっく。えーっとアンプのボリュームこんなもんで良いですか?あ、良いですか。お前ら覚えとけよこれ。さあやるかケン。」
ケン「みんな行くぞー。」




1,2,3,4

いざリハーサル開始。曲はスロー・ライドである。

どん、どん、どん、どん
ずずっじゃ、ずずっじゃ、ずずっじゃ、ずずじゃー、ずずっじゃ、ずずっじゃ、ずずじゃー
くいー〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん、ずずじゃー
♪すろーらいっ、てきにーじー。すろーらいっ、てきにーじー。
♪すろーらいっ、てきにーじー。すろーらいっ、てきにーじー。
♪飴飲む?〜〜〜〜〜〜

「はーいっ。そこまでー。OKですー。」
ずだだだだだー。

ケン「へっ?もういいんですか?」
PAの兄ちゃん「はい。OKですー。次の人準備してー。」

すごすごと片付ける兄弟たち。入れ替わりのバンドにせっつかれるようにステージを降りホールに再び集合。
おさむ「何だよなあ。短すぎるんじゃないのか。」
ケン「ほんとだ。あれじゃリハって感じにもならないよ。」
アッコ「ええとね。出場バンドが15あるってゆうから時間が押してるんじゃないの?でもばっちり音はまとまってたよ。」
おさむ「うーん。まあ音は。さんざやってきたから。それにしてもお前たち、だいじょぶかこれで?」
イットク「セッティングが違ったんで。とまどいましたけど。まあ何とか。ええんじゃないでしょうか。」
ショータ「ううんと僕はですね。あのですね。モニターがですね。聴こえにくかったんですけど。それでですね。あの・・」
ばこっ。
ケン「そーゆーときはアンプにひっついとけ。とにかくこれで本番だから。頑張るしかないぞおらあ。」
一同「は〜〜〜い」

おさむ「ところで本番は何時頃?」
アッコ「えーとね、始まるのは1時からだけど出番は4時ごろの予定。」「セッティングは5分演奏時間15分で9バンド目
だから」

おさむ「まあ遅れるだろうけど3時半にはここにいた方がいいんじゃないか?」
ケン「そうだな。それじゃ3時半にここに集合ってことで。」

イットク「先輩たちはそれまでどうしてるんでっか?」
ケン「今12時だから。そうだな、まず腹ごしらえだ。2階に喫茶店があるからそこで食おうかなっと。お前たちは?」
アッコ「じゃ私も」
おさむ「俺もそうするか。」
ショータ「えー?茶店ですかあ。うどんが食べた・・ばこっ・・くないです。一緒に行きます。」
イットク「ほなわてもお相伴を。マコもええわな。」
マコ黙ってうなづく。
そして2階へ向かって走り出す。

アッコ「あ、危ない!!」
2階から降りてきたヘビメタ兄ちゃん二人組みにマコが階段でぶつかった。
スローモーションのように体が浮いて下に飛ばされる。
その時、
イットクが走ってジャンプ、横になってマコの下敷きになって受け止めた。
「何だよ。危ねえじゃんか。気をつけろよ」とヘビメタ兄ちゃん。
ケン「なんだとー。お前らこそどこに目を付けてんだよ。」
えーーーーん。マコが大声で泣き出す。
イットク「先輩。ええがな。こいつも不注意だったけんね。すまんです。堪忍してください。」
「ふん」鼻鳴らして二人は行ってしまった。

「ううう。」
おさむ「どうしたイットク。」
ショータ「あ、先輩!イットクの指が。真っ赤です。」
おさむ「やばいなこれ。」
ケン「・・・・。早く病院行こう。近くに外科あったよな確か。あそこは12時半までやってるから。早く行こう。」
えーーーーーん。一際大きい声でマコが泣く。
アッコ「マコちゃん、さあ泣いてないで。早くお兄ちゃん病院に連れて行かなきゃ。」
マコ泣きやみ、こくんとうなずく。

30分後。診察終わってイットクが出て来た。右手が包帯でぐるぐる巻き、肩から吊っている。
ケン「どうだった。」
イットク「・・・・。折れてましたわ。」
おさむ「何ー?。それで演奏はー。」
イットク「無理みたいです。このままにしとかなきゃいかんて。すまんです。ほんとに。」
一同「・・・・・・・・・」
ショータ「どうしましょう。コンテスト。先輩。先輩」
ケン「まいったな。うーーーーーーーーーーーーん。」

そこへマコが涙で真っ赤な目の顔をしてケンの脇腹を突付いた。
ケン「ん、何?。しょうが無いよ。マコが悪いんじゃないから。え、何。違うの。」
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2005年09月11日

第5回「いざライブ」

005.jpg

かくして1979年の5月、新芽吹き出し天気明朗至ってうららかな日にバーガー・シローは新装開店となりました。ついでにお店の名前も変わって「桃屋」に。昼は普通のバーガーショップ。一転夜はライブハウスに変身も可能とゆう2重人格であります。これもひとえにシローちゃんのロッキン心に火を付けた猪突猛進の若者どものなせる業かも。

その日は日曜でありました。朝10時の開店時点には店を手伝うケン、おさむはもちろんのことイットク、マコ、ショータとブギブラザースの面々は全員集合。さらに近所のよしみ来来軒のトクエ親父、マナミ姉ちゃん、ハマ楽器の岸田兄ちゃん、そして歳とってる割りに何かモダンで若作りなおじちゃん連中数人も混じってセレモニイ敢行です。

ぽーん。10時の時報と共に店の前でシローおじちゃんの挨拶開始。店の中からマイク持ち出し、そんな装備はおちゃのこさいさいになっている。

「えー。あ、声が高いな。えー、ごほんごほん。えーえーチェックチェック。入ってるな。えー。」
「おーい、はやくしろー。腹減ったぞう。」
その場の全員爆笑。
それで落ち着いたシローちゃん。
「みなさま。ご紹介にあづかりまして5月の天気明朗うららかな日和いかがおくらしですか。本日はバーガーシロー新装開店、生まれ変わって桃屋の新装開店にお付き合いくださりくだされくださろ」
「きゃあおじさんが壊れたー\(^o^)/」
「えーくださりありがとうございます。これもひとえにここにおります若者二人の甘言、いや熱心さにほだされたおかげさまでございまして、ええいめんどくせい。みんな開店だ。一杯食べていっておくれー!!」
わーわーぱちぱちぱちぱちぱち。大歓声と拍手。

「いらっしゃいませ。いらっしゃいませ。」

ぐっと明るく若返った店構えのおかげで盛況も盛況。店満杯でケンとおさむ、そしてアッコはてんてこ舞い。おじさんはのんびりと挨拶周りしております。残ったブギブロスの連中はと言えば奥のステージの隅に陣取りこそこそとアンプにつながない状態で音あわせをしております。

そんなこんなで夕方6時。シローの閉会宣言。
「えーみなさんありがとうございます。当店の昼の部はこれで終了。これから夜の部になりますがそれは様子を見て再開店とゆうことで今日はどうもありがとうございました。今後ともバーガーシロいや桃屋をどうかよろしくー。」
と一般客ピーポーを全員追い出しにかかる。

「さあ身内だけのパーテーだ。ほらほら君達何してる。演奏だ演奏だ。早く準備したまえ。」
ケン「えー、練習じゃないんすか。お客さんがまだいっぱいいるじゃないですかー。」
「いいんだいんだ身内なんだから。ほらほら。あーのこーの言ってると尻蹴飛ばすぞー。」
今日のシローちゃん。男らしくてす・て・き。
ショータ「わ、わ、わ、わ、どうすんですか。やるんすか。これライブ。ライブ。」
ぼかっ。
おさむ「しゃあないだろ。こうなったら肝据えてやんべえ。最初だから失敗してあたりまえだーのクラッカー。」
隅でそそくさと準備する面々。アンプにシールドぶっさし、シローの手伝いで何とかドラムセッティングし。アンプのヴォリュームもシローちゃんまかせ。

「えーみなさん。パーテーオーン。今日はありがとう。まず最初はこの連中。この若いやつらのおかげでこんなことになりました。横浜ブギー・ブラザース。気合入れて行ってみよー!!」

ケン「チェックちぇっく、おーうーあー。声こんなんでいいすか。うえー。えー、ご紹介にあずかりますたブギブラザースでででででー」
おさむ「ええーい。みんなのってるかー。」
うおー。やれー。
おさむ「いくぞー。最初はスローライドだー!!」
ケン「え、スローライド。おいみんなスローライドだ。いくぞー。」

イットク、スティックでカウント。
かんかんかんかん。
ズズッジャズズッジャズズジャー。ズズッジャズズッジャズズジャー。
ひゅああああああああああああああん。おさむのスライドがカットイン。おおなかなかかっこいいぞ。
「ソーライ。てか意ー地ー。そーだい。てか意ー地い。♪」
途中そろりそろりながらツインリードも無事こなし。なんとか終了。

シーン。

ケン「わわわわ。駄目かあ」

わーーーーーー。わーーー。ぱちぱちぱちぱち。
いいぞう。兄ちゃんもっとやれー。ひゅうひゅううう。

おさむ「わわわわウケちゃったよ」
事前にこっそり音合わせしてて良かったなあと思う全員である。


「わー受けちゃった」
スロー・ライド一発決めたあと、大拍手、大声援をいただいたブギー・ブラザース、興奮で顔真っ赤喜んで顔真っ赤であります。
「よっしゃあ。続けてキャロラインいこう!ステイタス・クオーのナイスなナンバーですっ。」
ステージでMC仕切るのはおさむの独壇場になってしまった。

1,2,3,4
デコデドードド、デコデドードド、デコデドードド、デコデドードド♪
印象的なリフでずんずん
〜会いたーいーお前ーに〜つくづくなんてもんじゃー、ありゃせぬほんとだー♪
〜ちゃおお、すいキャロラー、なんとすいキャロラー、置いてけほらのってけほら♪

ズズジャズズジャズズジャジャー♪

「わー。わー。いいぞおらー。。」「おおおかっこいいいい」

「わーまた受けた。(小声で)しかしすげえ歌詞だなまったく。」とおさむ。
ここでケンも奮起、MCで頑張る。
「ありがとう。ありがとうございま。初めてみんなで合わせたとゆうのに。何とか2曲出来ました。えー続けてこ、この曲で初めてシローおじさんにギターを教えて貰いました。ロッド・スチュワートのスリー・タイム・ルーザーそしてホットレッグス!!」

完全にやりました。できっこないのにここまでかなりいけてる演奏。その2曲も何とかミス無く勢いでかましたブギブラだ。

「ははははははは。やったやった。」
「えーそれではZZトップのタッシュ行きます。    いけるかな。」

何か感じるとこあったか最後の方でやることになったタッシュ。

1,2,3,4
じゃッジャジャーッジャッジャジャー、あう、じゃッジャジャーッジャッジャ
ジャー、じゃッジャジャーッジャッジャジャー♪
〜あげな、ジャッジャジャー、
〜ことじゃ、ジャッジャジャー
〜俺は、ジャッジャジャー
〜まいらーないぞ、俺は負けない、ふううふうう
〜あれなんてことするだ、一目散にダッシュ♪

と歌の部分までは快調。だったが間奏ギターソロに入ってドラムのイットク焦り始める。
「お、お、お、お、お、」
初のシャッフルに合わせられなくなり収拾がつかないことに。
ばらばらとなりでこでんと演奏停止。
ケン「あー、やばー。やっぱしこうゆうことに」

「おーどうしたー兄ちゃん。シャッフルはでけんかー」と一番前席にいる親父。

おさむ「イットク。だいじょぶか?続けて出来るか?」
イットク「えろうすんまへん。何かひっかかっちゃって。すっまへんけどこの曲飛ばしてくれまへんでひょか。もっと練習してきまっから。」
ケン「わかった。じゃ最後のあれ行こう。」

「何してんだー。おらー。しっかりしろー」

ケン「すみません。まだまだ未熟です。それではこれにめげずに最後の曲。シローおじさん、お願いします。監獄ロックやります。」
シロー「お、お、お、俺がやるのか?いいだろう俺は。やんなくて」
ケン「しっかりバックしますからお願いしますぜひ。みなさん。シローおじさんがギターやってくれます。拍手をー」

「おーーーおーーーーいいぞうシロー、やれやれー」

シロー「仕方ないなあ。」と言いつつもすぐギター抱えて登場。どっかで一発やらかすつもりで用意してたようだ。

♪捕まるつもりじゃありゃしない、お手手が勝手に気の迷い、注意一秒怪我一生、気が付けきゃまたまたいつものところで♪

いよいよギターソロ。
爆発シローのギャロッピングギター。さすが元プロ、演奏の格しっかりしてどんどん引っ張り、ひっぱり、ひっぱりひっぱり

「わー、いいぞうやれやれーい」

シローの合図で盛大なるエンディング、  ぎゃんぎゃんぎゃんぎゃんぎゃああああああん。 
  ギャン。
ばっちりきまった。



じゃあああああん じゃん。

おーいえー。いいいぞーいいぞーーー。ぱちぱちぱちぱち。ひゅー。ほーほーほーほー。

大声援の中何とか演奏終了。

「ありがとうございましたー。」

まったく最初の本格的バンド練習がライブになるなんてなあと思いながら一同退場。って行っても楽屋が無い。
汗をぬぐいながら席に付きました。
シローおじさんがやってくる。
「やー、君達なかなかやるじゃないか。まさか初めてであそこまでやるとは思わなかったよ。」
ケン「もーーー。びっくりしたっすよ。」
おさむ「聞いてないっすよおお。」
ショータ「おおおおおれ、音出てましたかでてましたかでてまたしか。」
バコっ。
イットク「・・・・・・・」

そこへアッコが飲み物を。
「お疲れ様ー。コーラをどうぞー。おじさんのおごりだって。」
ショータ「あー、先輩のだけ氷入ってるすよー。贔屓だー。」
確かにケンのだけ氷がサービス。
アッコ「あ、あ、あ、えーと私は君達のマネージャーみたいなもんだからね。」
ショータ「全然答えになってないなあ。」
ばこっ。ケンとアッコ同時にショータをパンチ。
「ぐげ。そこまで気を合わす事ないすよお。」
ケン「うぐ、ああ、うーん。えーとアッコ、マネージャーやってくれんだ。」
「ええ、まあね、あんた達だけじゃ何やらかすかわからんし。」
おさむ「確かに。」

わははははははははは。一同大爆笑。

勢いでマネージャーになってしまいましたアッコちゃん。こうなりゃ腐れ縁だ。

シロー「めでたくマネージャーも決まったことだし、あれだ、ちょっと楽器貸してくれないか君達。」
ショータ「わああこれもつながってない質問だー。」
ケン手を上げるも叩かずすかす。ショータ「ひっ」。
おさむ「え、何ですか。いいすよ。あんなんで良かったら。なあみんな。」
「は〜い」

シロー「よ〜し。おーい、ちょっとやってみないか。昔みたいに。」
シロー、ステージ真ん中まん前に陣取っている謎のハイカラ親父群に声をかける。
無責任そうな親父「ひゅー。やるかやるかー。せっかくだしなあ。」。トランペットを持っている。
サンラ似の親父「おう。それじゃいくか」
ゴリラ似の親父「ういーっす。」

シロー「おーい、岸田君、君もやらないか。持ってきただろ。言われた通りに。」

いつのまにか来ているハマ楽器の岸田さん。しかもウイズ・サクソフォーン・テナー。
「ええ、お祝いですから。やりましょう。」

とゆうことで突然始まる親父バンド・ジャム・セッション。サンラ似の親父はドラム、ゴリラはベースであった。
シロー「えー、みなさん。若い衆の元気な演奏が終わったあとで何ですが・・・昔取った杵柄、おじさんバンドの演奏に良かったらお付き合いください。」

おさむ「なんだなんだー。凄いぞ。うおーーーーーいいぞいいぞおお。」
イットク「いよっ。大統領。死にぞこないっ。」バコッ。
ひゅーひゅーひゅーうううう。

無責任「おーし。何やるか。ズンドコかー。」
シロー「あれやりましょう。」こちょこちょ。みんなそれぞれに耳打ち。

どでどどどど、どでどどどど。ベースから入った。チッコクッタカチンコクッタカ。ドラムがからむ。
ばおばおばおばおばおばお。サックスのリフ。テロリツリリラテリツリロリら。ギター。

ぷぱぱぱーぽぱらつぴー。ぷぱぱぱーぽぱらつぽー。トランペットが主旋律。

ここれは、チェニジアの夜だ。モダーン・ジャズ。もちろんブギブラの面々わかろうはずもなく口あんぐり。

何回かメロ繰り返したあと、いきなりドハデな展開に。

パーロットパーロットパラテュチャン、パーロットパーロットパラテュチャン♪
そしてサックス・ソロに突入。
ブババボブベブリブリブリブリ〜〜〜〜〜〜。

ケン「うわーーーーー。岸田さーーーーーん。」
おさむ「わわわわわ、俺達すげえ人に囲まれてたんだなあ。やべえぞこりゃあ。」

驚くのも無理は無い。それはまさしくプロ。トンでもない演奏であった。


シロー・バンド、親父部隊の演奏はさらに続いた。
続いてベンチャーズのウォーク・ドント・ランを軽やかにかましディック・デイルのミザルーではシローおじさんのトゥワンギン・ギター炸裂、新装間もない店の壁が震える。次のベートーベンの喜びの歌までサーフ仕様。一転マイルス・デイビスのラウンド・アバウト・ミッドナイトでは無責任親父のトランペットが会場を酔わせる。かと思えばミンガスはんの直立猿人で岸田さんのサックス爆発。プレスリー・メドレーをやってマンボやって最後はチャック・ベリーのジョニ・ビー・グッドで〆。シローおじさんボーカルもなかなかやるぞ。あまりのことにブギ・ブラザースの面々は口アングリ。ただただワアワア言って拍手のし通しだ。それはアッコも同様でおじさんの演奏する場面を始めて見てハンバーガー、オーダーされるもいつまでも作る事無くボーっとして見続けていた。

シロー「えー、どうだったかな。最後はそこのおじょうちゃんのためにサザエさんいこか。」
ジャンジャンジャンジャン。インストでサザエさん。
マコは大喜びで踊っている。

「ありがとう。ちょっと休憩です。もうあれだ飲み物とかは勝手にやってください。わはは。」

親父ども全員汗だくで席に戻る。
無責任親父「あー、熱い熱い。おいシローちゃん、ビール無いか?」
シロー「おうおう、今仰山持ってくるから。」
シローとアッコ、そして手伝わされたブギーの面々、大量の大生ジャッキを持ってくる。
サンラ親父「おー、来た来た。さあいくぞー。」
シロー「えー、じゃみんな。久々のギグに乾杯!」
「かんぱーーーーい。」
ぐおおおおおおおおお。
「うめーーーーっ」
「たまんねえなあ。やった後の一杯は。」
「ぎゃはははははははははは」

ケン「お、おじさんたち凄いです。改めてびっくりしたなあ。おじさんたちっていったい。」
シロー「ああ、紹介がまだだったな。えーっとこの無責任そうな兄さんは植木さんって言うんだ。」
植木「よっ!よろしくな。」
「そしてこのでかい顔の親父はハナさん。」
ハナ「よろしくー。」
「ベース弾いてたゴリラさんは、イカリヤさん。チョーさんって呼べばいいよ。」
イカリヤ「ういーっす。ゴリラはひでえやなあ。」
「岸田さんはもうみんなお馴染みだな。」
岸田「ははは。来ちゃったよ。」
「そしてこの若い人たちが横浜ブギブラザースだ。」
一同「よろしくおねがいしまーす。」

ケン「おじさんたちは昔シローおじさんと一緒にやってたんですか?」
植木「ああ。でかいバンドでなあ。もっと他に一杯メンツいたんだけど。」
ハナ「最後まで一緒にやったのはこのメンバーだな。」
イカリヤ「昔はこの辺のキャバレーはみんな生バンドでショーをやってだんだよ。」
シロー「まー忙しいはモテるやらで大変だったわ。」
ハナ「あの頃がハナだったわなあ。ぎゃはははは。」
おさむ「それにしてもレパートリー広いですねえ。と言っても曲はわからなかったけど。」

一同爆笑。

ハナ「まあな。客がやれって言ったらすぐ出来なかったら恥だったから。」
植木「そりゃもう必死に覚えたもんだ。」
ケン「岸田さんも凄いや。全然知らなかったサックスやってるなんて。」
岸田「ふふふ。」
シロー「この人は完全にジャズの人で。うちらとはあまりやったことはなかったけど有名だったぞ。ヨコハマに岸田有りって。」
岸田「いや。それほどでも。」
イカリヤ「ジャズも最近はすっかり下火だからなあ。悲しいよ俺は。ういーっす。」
植木「それはそうと君達さっきのが初練習だって。」
ハナ「そりゃ凄い。初練習がリサイタルかい。」
おさむ「ええ、実は。全然聞いてなかったすよー。おじさん。」
シロー「ははは。すまんすまん。待ちに待ったからなあ。まあ偶然お客さんもいたし良いじゃないか。」
ケン「いいじゃないかってもーーー!」
植木「いやでも大したもんだよ。なかなか最初からああは出来ないぞ。」
ハナ「そうだそうだ。あれでもっと練習したらプロになられるかもしれないぞ。ははは。
おい、ドラムの兄ちゃん。」
イットク「はいっ。イットク言います。どうかよろしゅう。」
ハナ「そうか。イットクちゃんか。うまくやったぞ。シャッフルの曲がうまくいかなかったんでへこんでるみたいだけど気にするな。最初からあれをガンガンやろうなんて百年早いわ。」
イットク「そやけど百年かかったらここにもうおらんで。」
一同大爆笑。
ハナ「なら半年にオマケしてやろう。練習せーや。」
イットク「はい。おおきに。頑張ります。」
マコにやり。
ショータ「ぼ、僕のベースはどーでしたか?」
イカリヤ「いやあのベースは良い楽器だわ。まさか本物弾けるとは思ってなかったよ。」
ショータ「えとえと楽器じゃなくて演奏なんですが」
「ああ、面白かったぞ。でもなんであんな弾き方するんだ?」
「えっ?弾き方?」
ケン「しーーーーっ!良いんだいいんだ。あれで。ばっちし。」
一同にウインクしまくり。
イカリヤ「おっ、何だ何だ。そうかそうか。おう、あれでいい、あれでいいぞ。」
がははははははは。

ハナ「よおし一杯やったし、そろそろ本気出していくかー。」
植木「そうだな。暖まってきたしな。」
シロー「ははは。そうだ。君達は適当な時間に勝手に帰りなさい。遅くなると家族の人たち心配するし。」
「はーい。」

そして親父達の再会ギグは続いた。ブギブラザースの面々、そしてアッコは9時ごろ帰ったが噂に聞くと演奏は夜通し。まじ朝まで続いたそうである。

ケン「そいじゃなあ。みんな。ごくろーさん。」
おさむ「おつかれー。次の練習は明日学校終わってからだ。」
ケン「授業終わったらバーガーシローいや桃屋に全員集合!」
「はーい」
「じゃあなあ」「どうもー」
全員散会。

ケンとアッコの家は比較的近く方向が同じだったので最後は自然と二人で帰ることになりました。
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2005年09月09日

第4回「全員集合」

004.jpg


翌日、各々バーガー・シローに向かう。集合時間は5時。だったがほんとに来るか心配になったケンとおさむ。一足先に落ち合ってイットクとショータを迎えに行くことに。
イットクのうちはイセザキ町からちょっと離れた京浜急行ヒノデ町の駅の向こう側、山間とゆうか丘の中腹にある。ここらでは金持ち住宅街。近くにはノゲヤマ動物園あり。おっちらおっちら坂を上った二人、どでかい邸宅の前に。
ケン「うわ、こんなにでかかったっけ。イットクの家。」
おさむ「親は何やってんだろ。ケン知ってるか。」
ケン「いや、謎。だけど共働きだって言ってたな。だもんでいつも妹の面倒みろって連れてるんだろ。」

ぽーーーん。ひじょーに上品な音のするチャイム。
インターフォンから声が。
「はい。」女性の声だ。
ケン「えーと。こんにちわ。イットク君の友達のケンですけど....。イットク君いますか。」
女性「はい。おります。ちょっとお待ち下さいませ。」
しばし.....。
がちゃ。玄関の白いドアが開いた。
中からマコ連れたイットクが出てくる。
「こんちわ」。マコもペコリ。
おさむ「お、準備いいな。グッドタイミングだったのかな。」
イットク「丁度今出ようと思ってたんで。」
ケン「よっしゃ。まだ時間はたっぷりあるからショータんち行った後、楽器屋にみんなで行こう。」
イットク「は〜い。」
妙に聞き分けが良い。
ケン「そういやインターフォンで出た人誰だったんだ。」
イットク「あー、あの人でっか。お富さん。お手伝いはんです。」
ケン&おさむ「お手伝いはんっ!?」

一同昨夜訪れたばかりの蛇屋に今日も到着。
ケン「問題はここだな。」
ピンポーン
がちゃ。
ショータ「あ、どうもどうも。先輩。迎えに来てくれたんですか?。」
パコっ。頭はたきながらおさむ「おう早くしろよ。」
ショータ「はいはい。準備OKです。行きましょう行きましょう。」こちらもやけに機嫌がいい。
ショータ「あ。これ持って行かなきゃ。」
レコードを袋に入れて手に。
ケン「おー、聴いたかステイタスクオー。気に入ったか?」パカパカパカ、ロールで頭はたく。
ショータ「ひ。気に入ったもなにも。良かったすよー。特にロール・オーバー・レイダウン。あれが一番良かった。」
イットク「おいおいおいおい何いってんねん。イズ・ゼア・ア・ベタアウエイちゅう曲が一番やでー。」
ショータ「なことないよ。レイダウンっ。」

ケン&おさむ「おまえらなあ」

ショータ「これお返しします。ばっちしテープに録ったんで。」
イットク「あ、わても。おおきに。」
ケン、それぞれのレコードをジャケットに納める。2枚組が戻ってきた。
ショータ「あとでそのバンドのこと詳しく教えて下さい。もっと聴きたいんで。」
イットク「あ、わてもわても」

ケン&おさむ、にまあと笑う。

さて
一同向かった先はお馴染みハマ楽器。団体さんで2階に上がる。
ケン「あー、いたいた。岸田さん。」
岸田さんはハマ楽器の店員さん。
おさむ「ベース下さいな。下さいなって言ってもこいつが買うんですけど。」
ごそごそ。
岸田「お、君達か。何やらえらいことになってるな。話は聞いてるぞ。シローさんがこの頃しょっちゅう来て。今朝ももう。あの人のんびりそうに見えてけっこうせっかちなんで。あ、今日、店に行くんだろう。ははは。びっくりするぞう。」
「おう、この子がベースやるのか。こっちの女の子じゃないよなまさか。」
おさむ「ははは、違います。今日何かシローで起きてるんですか?」
岸田「口止めされてるからなあ。親父さんびっくりさせたいんだろう。とにかく行ってみな。」
ショータ「はじめまして。ショータって言います。あのう、ベースっていくらくらいなんですか?。」
岸田「私は岸田。こちらこそよろしく。えーと予算はいくらくらいなんだい?」
ショータ「とりあえず20万持って来たんですけど。足りますか。」
一同「に、20万ーーーーー!!」
ケン「おまえんち、見かけによらず金持ちなんだなあ。」
岸田「20万もあれば本物が買えるな。これなんかどうだい。」
岸田が見せたのはフェンダー・ジャズ・ベース。
「新品だけど17万で買えるよ。弦もサービスで付けちゃおう。」
ショータ「どうなんすか先輩。何かこうかっこがあまり良くないようですけど。」
おさむ「お前何をゆう。フェンダーさまだぞ。ジャズベさまにそんな口きくと口が曲がっちゃうぞ。」
ケン「まーまー。興奮ストップ!。これはだな。アメリカのギターのメイカーじゃ一番を争うとこのもんなんだぞ。ジャズベースっていって音は極上なんだ。そうですよね、岸田さん。」
岸田「そう、その通り。うちにあるのはその中でもピカイチのものだよ。」
ショ−タ「じゃあそれにします。くださいな。」
岸田「ブラウンサンバーストのジャズベお買い上げー。」
もうニッコニコである。
「ソフトケースも付けちゃおう!!」

おありがとーございましたー
の声を背中に一同ハマ楽器出発。
ケン小声で「おいおさむ。やったな。これでベースの音だけはばっちりだ。」
おさむ小声で「ああ。これは何としてもショータをいっちょまえのベーシストにしなけりゃ。」
マコがそれを聞いて思い切りニマーっと笑った。
それ見て二人もニマー。

イットク「あ、わて忘れ物ありまっさ。ドラム・スティックっているんじゃないでっか」
ケン「あっ、そうだ。」
イットク「マコのことちょっと見といてくだはりませーーー」
と言いながら駆け足で店に戻るイットク君。



 慌ててドラム・スティック買いに行ったイットクも合流、5人はバーガー・シローの前に到着する。店の様子がおかしい。玄関が工事中。おそるおそる入って行く5人。

ケン「こんちわー。わ!どうしたんだこれは。」
おさむ「工事中だ店の中も。」

奥にシローを見つけた。

ケン「おじさん、これどうしたんですか?」
シロー「どうしたもこうしたもご覧の通りだよ。」
おさむ「ご覧の通りって....何工事してるんですか?」
シロー「わからんかなあ。店の模様替え。それと防音工事だよ。」
5人「防音工事ーーー!」
シロー「ああ。面白そうなんで夜はライブハウスでもやろうかと思ってね。」
5人「ライブハウスーーーーー!」
シロー「ライブハウスってんだろ。今時のナイトクラブは?」
ケン「うーん、ちょっと違うかもしれないけど...。」
おさむ「よくお金ありましたねえ。」
シロー「へへ。パチンコに使わなきゃこれくらい出来るよ。あ、それはともかくこれをご覧。」
シロー、奥の一角にあるスペースに置いてある荷物の白いカバーをめくる。
イットク「あーー、ドラムやー。」
ショータ「あーー、それ、ベース・アンプですよねー。」ボカっ。
ケン「あ、脇にマイクスタンドまであるぞ。」
おさむ「すげえや....すげえ。」
シロー「ははは。どうだい。一式あるぞ。すぐ演奏出来るからな。バンドさん。早くものになっておくれ。」
ケン「え、バンドってうちらのことですか?」
シロー「ああ、他に誰がいるんだ。」
おさむ「おじさんも気が早いなあ。」
6人、爆笑。

アッコ「ほんとせっかちなんだから。」
奥からアッコ登場。
「君達のおかげでおじさんに火がついちゃったわ。」「まあ、パチンコばかりするよりましでしょうけど。」

ケン「へへへ。あ、おじさん、紹介します。こいつショータって言います。ベースやらせますので。」ペンっ。
ショータ「あ、どうも、あの、あの、はじめまして。ショータって言います。何だかわからないのですが、ベースだけは買いました。はい。」
シロー「おー、君がベーシストか。どらどらベース見せてごらん。」
ショータ、おずおずとソフトケースからベースを出す。
シロー「おっ、これは驚いた。本物のジャズベースじゃないか。よく買えたなあ。」
ケン「おじさん、こいつ、ほらあそこの蛇屋さんの息子ですよ。」
シロー「ああああ、あそこの子か。どうりでどっかで見たことあると思ったよ。あそこの子ね。だったらお金持ってるなあ。ははは。」

シロー「そうだ。せっかくだから音出してみるかい?」
おさむ「音って、工事してるじゃないですかー。」
シ「ああ、いいんだいいんだ。ステージはもう今日の工事、終わってるから。」
ケン「終わってるって、まだあっちじゃ工事中で。おいおいマコちゃん。」
マコ、ドラムセットに座ってパンパン叩き始める。
おさむ「じゃあ、せっかくだからなあ。」「出してみるか」
ショータ「えー、僕初めてベースさわるんですよー。」
ボカっ「テキトーにあわせりゃいいんだ。どうせみんな初心者だし。」
ショータ「うそー。」ベシっ。
イットク「おいマコ。お兄ちゃんが叩くから。どきなはれ。」
ぱたぱたぱた。なかなかどこうとしないマコ。しぶしぶスティックをイットクに渡す。
ショータ「えーと。このコードどこに刺すんですか。」
シロー「ああ、これはここに。ボリュームはこんなもんだ。」
まったくベースを触ったことがないショータ。とんでもなく低い位置でベースを構える。しかも左右逆。それを見たシロー、
「あ、それじゃあ。君弾きにくい....」
ケン「あ、おじさんおじさん。こいつはこれで良いんです。」
シロー「えっ?」
ケン、おさむのほうを振り返って舌を出す。小声で「あの方が何かかっこいいもんな。」「ああ、そうだそうだ。」
「おじさん、この前のロッドの曲、やりたいんですけど。ベースどう弾かせましょうか?」
「そうだな。君は、えーっと。逆だからわかりにくいな。はは。この指でここを押さえて。そうそう。左手の人差し指で弾いてごらん。ほら。」
べんべん。4弦のAの音。
「はは。楽器が良いからちゃんと音が出るな。ぼんぼんぼんとあの二人のギターのリズムに合わせて弾けばいい。」
ショータ「はい。なんとか...。こうですね。」
イットク「あのー?」
ケン「何かー?」
イットク「どうやって叩けばええのでっか?」
シロー「ああ、スティックはえーとロックはこうやって持てばいいんだろ。それで右足はそこのペダル、でっかい太鼓のだ。そこに置いて。左足はその左側の金物のペダル。とりあえずずっと踏んでなさい。それで右手でその金物をぺんぺんと」
イットク「ぺんぺんと」
シロー「左手は真ん中のドラムをたんと」
「たんと」
「それでぺんぺんはずっとやりながら左手でぺんたんぺんたん叩いてごらん。」
「ぺんたんぺんたん」
「そうそう」
「あのう。右足は〜」「あ、右足は調子に合わせてテキトーに踏んでごらん。」「テキトーでっか。」
ぺんたたぺんたどすんぺんたどすん。出来てないと思う。
ケン「よーしこれでばっちしだ。やろうやろう。」
シロー「そうだそうだ。君達バンド名は何にするんだ。」
ケン「それならもう決まってます。」
おさむ「きまってるのかーーー!?」
ケン「横浜ブギ・ブラザース!!。レッツゴー。1,2,3,4.」
ずずちゃちゃずずちゃちゃどんどづべんぼごぶるぶるずずずず。

アッコ「きゃああ。何これ。ひどすぎー。」
シロー「よっしゃよっしゃ。横浜ブギ・ブラザースか。チラシ刷らなきゃな。」




数十分、曲の構成も無視、音楽だか騒音だかわからぬ音を出し続けたブギー・ブラザースの面々。さすがに精も根も尽き果てて演奏を終了する。

ケン「うひょー。楽しいなあ。」
おさむ「やっぱバンドで音出すと違うなあ。」
イットク「でかいすねえ。ドラムの音って」
ショータ「これでいいのかなあ」
マコ、にやり。

アッコ「あー、やっと終わったー。何なのこれ。」
シロー「ははは、最初だからなあ。こんなもんだ。とにかく音を出さなきゃ。」

落ち着くと自分達が出した音がトンデモないものであることに全員が気付き始めた様子。

ケン「うーん、それにしてもやっぱ初心者、何とかしなけりゃ。」
おさむ「そうだな、そりゃ練習しかないけど。・・・・まず何をやるか決めなきゃ。」
ケン「おじさん、ぼくらものになるまでちょっと時間かかりそうです。」
シロー「ははは。そりゃそうだ。音楽はそんな甘くないからなあ。ま、じっくり相談して練習して。ここ夜、店を閉めた後なら使っていいから。」
おさむ「でもライブハウス、すぐ開くんじゃないですか?」
シロー「いやいや。元はといえば君達のせいでこんなになったんだ。最初のバンドは君達だよ。まああせらないでやるといい。」
ケン「すんませんいつも。それじゃてめえら。俺に付いて来い。」
おさむ「てめえらってお前がリーダーかい。このー。」
ケン「わはは。そゆうこと。おじさん、今日は工事中なんで邪魔になるから失礼します。打ち合わせして曲覚えて、練習出来るようになったらまたよろしくお願いします。」

全員「お願いしまーす。」

シロー「へたくそだけど息だけは合ってるな。よっしゃよっしゃ。まかしときなさい。工事は一週間くらいかかるんでその間に曲を覚えたら良い。」

ケン「はい。それじゃ失礼します。」

全員、会釈して店を出る。

歩きながらの打ち合わせ。
ショータ「先輩、それでどうしたらいいんすか。ベース弾けるようになるには。教則本を買わなきゃいかんですか。」ボカっボクっ。
ケン「馬鹿ゆうなよ。ブギに教則本はいらん。おいイットクもおさむもこのバンドでは教則本禁止だからな。」
イットク「そないな殺生な。ほなどうやっておぼえたらええのですか。」
おさむ「へへへ」
ケン「そりゃあもちろん耳で聴いてその音を出せるようになれば良いんだ。さっき基本的なことはおじさんに教わっただろ。そうだわかんなくなったらおじさんに聞けばいいよ」

「は〜い。」

おさむ「それで曲はどうする。」
ケン「そうだなー。とりあえず3曲くらい覚えようか。」
おさむ「1曲はスリー・タイム・ルーザーとして。」
ケン「ホットレッグスもやりたいなあ」
おさむ「スロー・ライドも」
ケン「ZZトップのタッシュもかっこいいぞ」
おさむ「そんなこと言ったらロッキ・オー・オバザワールド♪も絶対だ。」
イットク「もう5曲でっせー先輩〜」
ケン「わはは。5曲だ。じゃあ5曲にしょう。」
ショータ「ええかげんなリーダーだなあ。」ボカッ。

ケン「よっしゃ、おさむ、後でレコード借りるよ。テープ4本作って明日渡すからそれで覚えることにしよう。」

ショータ「あ、先輩。俺もブギのレコードもっと聴きたいんですけど。レコード屋さんに付き合ってもらいますか?」
イットク「あ、わいもわいも」

おさむ、小声でケンに「おいおいこいつら金持ってるからこいつらに色々買わせようぜ。うっしっし。」
ケン、ウインク。

ケン「ごほん。う、ああ。時間無いけどな。しょうが無いから付き合ってやる。」

何と全員いつのまかハマ楽器の前に。

おさむ「お、いつのまに。やっぱ神に導かれてるのか。」



翌朝、製作したテープをケンは店に行っておさむに渡し、さらにショータに殴りながら渡し、ショータは学校でイットクに渡した。ショータとイットクは同じ私立のY高校の生徒なのだ。おさむはY高校と甲子園出場を争うことも多い市立Y商業。ケンは県立H高校。一応受験校だが、そこそこの大学に一発で受かるほどの頭の持ち主はいない。当然、ケンもすぐ就職は嫌なのでどっかの大学に入りたく思ってはいるよう。だが実感全然無く先日学校でやったO文社の模擬試験の結果がすべからく「合格確率0〜5%」でも、おお0じゃないのかと至って呑気。どうするのだ。

その日の夜
おさむの家。
「何だよー。ロッキンじゃないじゃないか。」
テープをかけたおさむが文句を言っている。気が付けばテープのケースの中に紙。
「「ロッキンも良いけどキャロラインの方がのれると思ったぜ。だから替わりにキャロライン。よろしくー」」
「まったく勝手なやつだぜ。キャロラインでも良いけど。でもこれライブのテイクじゃないか。メドレーでつながってるよ。終わりどうすんだ。」
文句言いながら、教則本禁止のお達しに関わらずこっそり買っておいたコード本見ながらコピー開始開始。

ショータの家
シローの店での初ギグの時に教えて貰った通り、ベースを反対側に持ちながら悩んでいる。
「えーと、こうやってベース持つんだよなあ。何かしっくりこないような。うーん。取りあえずアンプのBASSを上げて音を拾ってみよう。あれー、もわもわして逆にわからないよ。普通でとるか。えーとこの音だな。どんどんどん♪。ははは、同じ音ばっかだ。簡単かも〜。どんどんどん♪。ここで替わるんだな。おっし。えと同じのが多いから問題は順番だ。紙に書こう。」
曲が変わったのも気付いておりません。

ケンの家
「あいつら文句言ってるだろうなあ。キャロラインの方が歌いやすいんだもん。へへ。えーと歌詞か。英語だなあ。うーん英語だ。うちにあるレコードは歌詞カードあるからまだいいけど。無いやつは聴きとるのか。出来ん。電話しよう。」

ぷるるるぷるるる
じょわいーんじょわいーん
「はい来々軒。」
電話を取ったのは真奈美姉ちゃん。
「もしもしケンですけど。こんばんわおさむくんお願いします。」
「あらケンちゃ〜ん。おさむ?いるわよ〜。ちょっと待って。」
おさーむうう。おさむーーーー。電話の向こうで物凄い声で呼んでる。
「今来るからね。ああ、そうそう、お兄ちゃん元気〜。帰って来てるの〜?」
「あ、はい。ええと全然帰ってこないんで。あ、わかりません。今度帰って来たら一緒にラーメン食べに行きますんで。」
がっかりした様子で
「あーーんそうなの。(急に立ち直って)ほんと帰ったら一緒に来てね。大盛りにするからーん。」
悶えている。
「あ、ケン。なんだよ。おう、あれじゃんか曲が変わってるぞ。」
「おうすまんすまん。あっちの方がいいだろう。いいじゃんか。大して変わらないし。あはは」
「そりゃ全部ブギだからなあ。変わらないと言えばかわらんけどよ。あっちもこっちも同じくらい好きだし」
「えーとそれで歌詞のことなんだけど。適当に日本語で作っていいか?」
「おいおい日本語かよ。だっせーんじゃないの?」
「だって英語だって俺が歌うんだぜ。情けない発音だからなあ。その方がださいぞ」
「そうか。あはは。それもそうだな。それでかっこいい歌詞つくれんのか」
「まかせなさい。それは。って自信ないけど。取りあえずやって見るから。助け求めることもあるかもしれないけど
そのときゃよろしく」
「よろしくって。まあしゃあないな。とにかくやってみんしゃい。」
「ああ。この件、あいつらにはどうする?」
「ああ、いいよいいよ。どうせそんな余裕はやつらにはないでしょ。気がつきゃせんて。えーとそれだけか?コピーで忙しいんだから邪魔すんな」
「このやろ。俺はコピー+歌詞なんだぞー。じゃあな」
電話を切ったケン。うーんこれはこれで大変だーと思いながらラジカセのスイッチを入れた。

翌日の昼。
私立Y高校。イットクの教室。数学の授業中。
たかたかたかたかたかたかたかたか たかたかたかたかたかたかたかたか
「こらあ誰だ。机叩いて妙な音出してるのわああ!!」

イットク、はたっっと気付き顔が真っ赤に。下を向く。
「どうもすんまへん。」



テープを渡して3日目である。進行状況ととあることをたくらむケンは各メンバーに召集をかけた。場所はおさむんち、来来軒の2階である。

ガラガラガラ。
「こんばんわー。」まずはケン登場。ぞろぞろと後ろからイットク、ショータ、マコがついて来る。ケンと待ち合わせをしてから来たのだ。怖いらしい。

ショータ「こんばんわ。お久しぶりです。」
イットク「こんばんわ。」
マコ。ニコっ。

親父「おう、来たな。みんなでっかくなって。」
マナミ姉ちゃん「ようこそいらっしゃい。あらマコちゃんお姉ちゃんのこと覚えてる〜?」
マコ首を横に振る。
マナミ「あら、あんなにラーメンご馳走したのに。ま。」
親父「おいおいちいせえんだからしょうがねえだろ。ま、ま、そこにすわんな。」

2階からおさむが降りてくる。
「おいおい、父ちゃん。そこに座らせたら話が出来ないだろ。」
親父「何言ってんだ唐変朴。みんな懐かしいじゃねえか。うちに来たらもうラーメン食ってもらわなけりゃなあ。」
カウンターの方向いて
「なあ腹減ってんだろ。まず食って食って。」
全員カウンターで凍ってる中どんどん麺を茹で準備準備。
「はいよ。ラーメン4丁。中学時代以来だからなあ。今日だけはおごりだ。さあ食え食え。熱いから気をつけろよ。」
全員「いただきまーす。」

ずるずる
マナミ「あんたたち剣道は今もやってんの?」
ずるずる
ショータ「あ、いややってません。元々弱かったんで。先輩も悪かったし。」
ボカ。
ゲホゲホゲホ。
ケンが後頭部はたくと麺が鼻から出てむせた。
マナミ「相変わらずねえ。あんたたち。」
イットク「はい。そのようで。」
全員爆笑。

「ごちそうさまでした。」
「美味しかったなあ。」
「やっぱここのラーメンが一番や。」
マコ、うなずく。
親父「ははは、そうだろそうだろ。今度はお客連れて来てな。どんどんどんどん」
「はーい」

ケン「じゃあ2階おじゃまします。」
全員2階のおさむの部屋へ。ショータはベースをケンもエレキを持って来ている。

親父「何するんだろなあ。あいつら。」
マナミ「何か楽器持ってきたみたい。まさかバンドでもするんじゃないわよねえ。」
親父「おい、後で様子見て来い。」

おさむ「今日は何なんだよ。みんな集めて。」
ケン「おう、おじさんの店で練習する前に1回ここで合わせておこうかと思って....。それとな。もう1曲テープ持って来たんだ。」
イットク「も1曲でっか?きついなあ。」
ケン「いや、とゆうのもこうなったのも全部おじさんのおかげだろ。1曲ぐらいおじさんが喜んで参加出来る曲やりたいなあと
思って。」
おさむ「うん、それもそうだ。で何だよその曲?」
ケン「じゃーん!これだ。」
テープには監獄ロックって書いてあった。
おさむ「監獄ロックうう!プレスリーかい?」
ケン「ノーノーノーノーノー。甘いな。我らブギ・ブラザースにとって監獄ロックと言えば....」
全員ぽかん。
おさむ「あ、わかった。ZZトップだろ。」
ケン「ピンポーン。大正解。これなら文句ないだろ。まあ簡単なんで各自、家に帰ってコピイするように。」
「へ〜い。」

ケン「それではと。何かそっと合わせてみようか。出来たんだろコピイ、お前ら」
ショータ「一通りやりましたけど。自信はあんまり。大体良いのか悪いのか。」
ボカっ。
「うじうじ言わないっ。ブギはひたすらやるのみだー。そら全員で。」
「やるのみだー」
おさむ「じゃあホット・レッグスやろうか。最初に入ってた曲だからさすがに出来てるだろう。」
ケン「おう。実は仮の歌詞もそれしか出来てない。わはは。」
イットク「しっかりしてや〜リーダー。」
ケン、イットクをはたこうとするも空振り。しかたないからショータをはたく。
ボカっ。
「いてえなあ。俺じゃないっすよ。言ったのは。」

「よしやろう」
ずずじゃずずじゃ
   ずずじゃ ずずじゃ
ぽぺぱぽこぺんぱ ぷうぺぽーん 「お、すげえ弾けるじゃん」
ぽぺぱぽこぺんぱ ぷうぺぽーん

♪走りたいーけど 走れないのさ ここ最近走り過ぎ (最初は小声で)
  3年続けてー 毎日放課後 
シゴキさ

「はい全員で」
ホットレッグス 飛び出す
ほっれー 君じゃない
ほっれー 叫ぶぜ

「うるせーっ。おめえらいったい何騒いでんだ。コラーっ。」by花沢徳衛in階下ラーメン。

ケンびっくりして急に小声で・・・

「好きよ骨♪」

おさむ小声で「何だよその歌詞。部活動じゃんか。」
ケン「わはは。足の歌だから陸上部だと思って。 まあとりあえず仮の歌詞だ。かっこいいやつに直すよ。」
おさむ「頼むよ。ほんとだろうなあ。」
ケン「えへん。ところで君達なかなか出来そうじゃないか。安心したよミーは。」
ショータ「誰なんすかそれ」
ボカ。
「よしもう少しやってみよー。そっとな。」

5人顔つき合わせてそーっとしょぼーいギグ。

うんうん楽しいなあ。
posted by 山 at 08:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 第4回「全員集合」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月08日

バンドやろうぜ

003.jpg

アッコ「はーい。何。おじさん。」
2階から女子、学生風がのんびり降りてくる。顔には赤透明のざあますおばさまメガネ着用です。
シロー「お客さんなんだが。頼んでもいいかね。」
ア「いいわよ。あ、君たち!」
ケン&おさむ「あ!」
シロー「あ!はいいからとりあえず。お客さん待ってるぞ。」
ア「はい。えーと。何にしますか。」
アッコちゃん急いでエプロン付けて接客中です。
ケン「おい、アッコってあの子アッコじゃないか。」
おさむ「おお、アッコだぞ。なんでここにいるんだ。」
アッコ「はい。チーズダブルジャンボベーコンエッグポテトバーガーとポテトLとコーラLですね。合わせて380円です。」
ケン「おじさん?」
手早く調理するアッコちゃん。相当やらされてるらしく慣れております。
・・・・・・・・
料理が出来ました。お客さんに渡してアッコがやってくる。
アッコ「ケンちゃんとおさむ君じゃない。久しぶり〜。」
ケン「ああ。」おさむ「ああ。」
シロー「ああって君たち知り合いかい?」
ケン「ええ、一応近所なんで幼馴染です。」
おさむ「小学校が一緒。いぢめられたぞ。」
アッコ「何言ってんの。いぢめたの、あんたたちじゃない。」
シロー「ははは、こいつならあり得るな。」
アッコ「おじさんまで、もう。」
ケ「何でここにいるんだ。」
シロー「ああ、この子は私の姪でね。私がやもめなんで彼女の両親が心配してたまに様子見によこしてくれるんだ。」
おさむ「そうなんですか。ちーともしらんかったよ。」
アッコ「ところでおじさんも何かがちゃがちゃうるさいと思ったらみんなで何してんの?」
シロー「見ての通りギターを弾いてるんだ。」
アッコ「見ての通りって何で3人で」
シロー「ああ、この二人がギター始めるって言うんでね。ちょっとレクチャーしてたのさ。アッコちゃんもやるか?」
アッコ「お前もって、お店は」
シロー「ああ、そうか。じゃアッコちゃんしばらくお店頼むよ。」
アッコ「頼むよって。もう。バイト代は貰うから覚悟してね。」「それとあまり大きい音でやらないこと!」
ケ、お、シ「はーい。」
ケン、おさむに耳打ち「おい、アッコけっこうでかくなったな。」
おさむ「何がだ。」
ケン「バカ背丈だよ。背丈。」
シロー「おい、君たちやるのかやらないのか。」
ケ&お「はい。やりますやります。」
妙ないきさつで一つの目的を持った3人、一斉にブギを奏でようとしてます。
音はもちろん...
でっかいに決まってる。
アッコ「もう」。

ケン「いやあ、面白かったなあ。」
シローの店を出てようやく帰路につく二人。
おさむ「うん。でもおじさんがギタリストだったとは。しかもギンギンだし。」
ケ「ほんとたまげたぜ。」
たまげながらぽちぽちギターを背負って歩く。ケンはシローの店にギターを置かず結局家に持って帰ることに。やっぱり触りたかったのだ。

おさむの店の前で二人は別れる。

ケ「じゃあな。明日また。」
お「おう。家でさんざ怒られろよ。ははは。」
ケ「なんだよ。お前こそ。ここでへこまされるの見てようかなあ。」
お「へーだ。」

そーっと店に入るおさむ。客はいない。親父は奥で。しめしめとそーっと歩いて階段上がり無事2階へ到着。と思ったら2階で姉ちゃんにばったり。
マナミ姉ちゃん「何、あんたこそこそと。あー、何かついでんの。白状しなさいよ。ほら。ほらー。」
おさむ「えーっとこれはギターだけど。うんといや買ったんじゃなくてほら友達に借りたんだよ。うん。」
マナミ「いやだー。ほんとうかしら。まあお前にそんなお金無いしねえ。稼いだって言ったってギター買うほど上げてないし。」
おさむ「まあ、そうゆうことだから。あしからずー。」
だーっと自分の部屋に。
お「やべーよなあ。しっかしばれたらどうすんべ。まいっか、それはその時で。」
と着替えもそこそこ早速、ギター取り出して。そして机の上に置いてあった本を傍らに置き、ポッケからスライドバー取り出して。
本の名前は
「スライドギター講座」。
「えーとオープンAチューニングってやつはと....こうだな。」
ぺんぺんぺん。
「俺指短いからなあこうしないとブギーのリフ弾けないのだ。へへへ。」独り言が気持ち悪い。
オープンAチューニングとは開放弦をそのまま弾くとAのコードが鳴る変則チューニング。これなら2フレット分でリフが弾ける代物である。
「うーん、これしちゃうとスライド専門ギタリストになっちゃうけどまあ良いか、それも。」グイーン。



店の前でおさむと別れたケン、足取り相当重い。
「・・・・どうしようかなあ。怒られるよなあ。・・・・」
などと逡巡するも歩いてれば当然自分の家、毛糸屋に到着。店入り口の引き戸をそおおっと開ける。
がらがらがら。そーっとは無駄であった。
「あ、ケン。お前今何時だとおもっとるんじゃ。あ、何じゃそれは何かついでるんじゃ、えギター?。何でお前がギターもっとるんじゃ、え、友達に借りた。うそをつけお前が買ったんじゃないのか、なに本当だって?それにしてもそんなもん...」
「なんだー婆さん。騒いで。」
奥からのんびりした声で爺さんが出てくる。
・・・今だ!・・・婆さんが後ろ向いた瞬間たたたたたと2階へ駆け上がる。
「あ、ケン、話はまだおわっとらんぞ。この腐れ極道が。こら」
とその時電話が鳴る。じょりーんんん。

えんえんとしゃべっていたのはケンの婆さん、泉ばあちゃん。般若の顔の持ち主でこの毛糸屋の主、齢70を超えるとゆうのにさらに編み物教室などやってしまってるとゆう豪傑である。奥から出てきたのがタイジじいさん。仕事などせず髪結いの亭主状態をずっと続けている養子さん。ケンの一応味方ではあるがなんせ力が無い。ケンの父親は石油タンカーの船員でほとんど家におらず、この二人に育てられて今に至るとゆうわけだ。母親は4歳の時病死したと聞かされている。

「・・・まあああやって一回わあわあ言えばな。あとは忘れるだろっと・・・」

場面変わってシローの店。
「うーん、あれだな。これからあの二人が弾きに来るとすると...アンプ一つじゃ足りないな。よっしゃ、あれを修理に出すか。」
シローちゃん、るんるんしている。パチンコ行くのも忘れて奥から古いアンプ引っ張り出して来て楽器屋に行く準備。やっぱ根っからの音楽屋さんだったようであるアイデアル。


次の日うららかな春の日差しも感じられる北風の強い日。
家でのギター購入疑惑を何とかかわした二人が再びバーガー・シローを訪れる。ケンもシローもレコードを持っている。
ケン「こんちわー」
おさむ「どーもおじさん。昨日はありがとう。また来ました。」
シロー「ああ、君達。今日もやるか?」
ケン「あ、アッコだ。今日も使われてるんだ。」
アッコ「あ、じゃないわよ。おじさんあんたたちの来るの首長くして待ってたんだから。どっちにしろギターやるつもりだから私呼ばれたのよ。日曜なのにい。」
プリプリ怒っている。
シロー、視線を合わさずに
「おお、君達なんだいそのレコードは?」
ケン「ええと昨日あの後こいつと電話してどんなのやるつもりか、おじさんにレコード持って行こうって。」
おさむ「企みました。ははは。」
ケ「これがステータス・クオーってバンドのライブ盤です。」
お「これはロッド・スチュワートって歌手のアトランティック・クロッシングってアルバム。」
シ「ふーん。じゃあ聴かせてもらおう。そうだそれならその中の何か1曲聴いてそれを練習するってのはどうかい。」
ケ・お「あ、いいすね。」
シ「なら君達、練習の前にちょっと力仕事だ。ついてきたまえ。」
2階へ上がるシローの後を二人は付いて上がる。シローの部屋に初めて入る二人。
ケ「おーー。いかした部屋じゃないすか。おじさん。」
お「ほんと。ハイカラだぜ。」ケ「ハイカラってお前。ははは」
シ「まあ、それはいいから。ここにしまってあるステレオを下に持って行くんだ。」
ケ「おじさんステレオ2台持ってるんすか。すごいなあ。」
よいっしょっと各自デカスピーカーとアンプとプレーヤーが一体となってるとゆうレシーバーをもって下に降りる。
シ「このアンプの横にセッティングしよう。」
お「あーーー。ケン!ギターアンプが3台になってるぞ。」
ケ「ほんとだ。しかも増えたのはフェンダーのアンプだすげええ。」
お「どうしたんすか、これ、おじさん。」
シ「はは。一台は昔から私が使ってたやつだ。ちょっと修理したらまだ使えるみたいなんでね。もう1台は...。」
アッコ「おじさん、買っちゃったのよ。あの後、楽器屋行って。修理だけだって言ったのに。」
シ「いや岸田君に聞いたら中古があるって言うもんだから。3人いるんだからやっぱり3台ないとね。」
恥ずかしそうに笑っている。
お「いやさすがおじさん。いや師匠。」ケ「ほんとありがとうございます。」
アッコ「3台なんて音絞んなきゃきっと大変よー。」
シ「まーまー。じゃ聴いてみようか。どれが良いんだい。」
ケ「えーと。おさむじゃあロッドにすれば。」
お「おお。スリー・タイム・ルーザーにしようか。」
袋からLP引っ張り出して掛け始める。ミディアム・テンポのロックロール。MG’Sのビートも心地よい3回目の負け犬。
♪   ♪    ♪
シローがニコニコして聴いてる。

聴いてる。

聴いてる。

ノッテル。

ノッテルノッテル。

お「どうすか。おじさん。」
シ「へえ、けっこういいじゃないか。これなら私らがやってたのとさほど変わらんよ。」
ケ「やりー!!」
シ「じゃあ、早速やってみようか。最初だから3人でバッキング合わせてやってみよう。コードはこの前教えたやつだ。それができたら、私がリードとるから君達がバッキングしてみなさい。」
お「えー、おじさんもうコードわかったんですか。」
ケ「それにリードのフレーズも。さすがプロだなあ。」
シ「おべんちゃらは良いから。さあ、このシールド使って」
シールドもちゃっかり3人分用意してあったシローさん。
3人はアンプにそれをぶち込んでヴォリュームアッーーープ。
「1,2,3,4」
ずずぢゃぢゃずずぢゃぢゃ。
アッコ「もーーーーーーうるさーい。お客さん全然来なくても知らないからねっ!。」


1時間終わってはやり終わってはやりでようやく休憩のご様子の三人。
アッコ「あーーーー、やっと静かになった。」
シロー「やー、君達何とか出来るようになったじゃないか。」
ケン「おじさんこそ、すげえや。ばっちりソロ弾けるんだもん。さすがプロだなあ。」
おさむ「うちらも早く弾けるようになりてえなあ。」
シロー「その分ならじきに出来るようになるよ。」
おさむ「楽しいなあ。ほんと。」
シロー「ところで君達、バンドはしないのかい?」
ケン「ええ、もちろんしたいす。でも他の楽器やるやつ見付けなくちゃなあ。」
おさむ「なるべく言うことを聞くやつがいいな。ケンお前後輩で適当なの知らない?」
丁度その時
バーガーシローに久しぶりの客、高校生らしき少年と小学生の女の子が一緒に。
少年「えーと、わいはハンバーガーとチェリオ。じぶんは?」
女の子は黙ってメニューを指差す。なりはかわいいが顔はぶすっとえらい不機嫌。ちいともかわいくない。
少年「あ、チーズバーガーか。飲み物は?ああ、レイコね。お前随分生意気なののみはるなあ。」
女の子、ぷいっと横を向く。奥にいる3人に気付いて指を指す。
少年「あ、ケンさんとおさむさんや。」
ケン「あ、イットクだ。おいおさむイットクがいるぞ。」
おさむ「あ、ほんとだ。久しぶりだなあ。元気かイットク。」
ケンとおさむギターを置いてイットクの方へ。
ケン「お前なんだよ。その女の子は。」
アッコ「あのーご注文作って良いでしょうかあ。」
イットク「あ、はい。すみまへん。お願いしますわ。」
ケン「あ、じゃあ俺もハンバーガーとコーラ頼むよアッコ。」
おさむ「あ、俺も。」
アッコ「何呼び捨てにして。あーこんなにたくさん。」
シロー「おお、友達通しなのか。じゃあ私も一緒に作ろうか。」
ケン「あ、すみません。おじさん。こいつ、中学の時の剣道部の後輩なんです。」
シロー「ほー、そうなのかい。ゆっくりしていきなさい。」
イットク「はい。おおきに。」
イットクは中学の時大阪からケンの学校へ転校して来た少年である。実はケンとおさむも中学時代は同じ剣道部。
おさむが部長でケンが副部長であった。
イットク「あ、こいつでっか。いや妹でんねん。親がめんどくさがりよって何かちゅうと一緒に連れてけぇって
うるさいんでおます。おいマコ、お兄ちゃん達に挨拶せえ。」
マコ、不機嫌そうな顔のまま、ペコリとお辞儀。その顔はどうやら地で実際はさほど不機嫌でないらしい。
ケン「おい、おさむ。こいつって手があるぞ。」
おさむ「あっ、そうか。しめしめ。」
イットク「先輩、何がシメシメでんねん。」
ケン「あ、何でもない何でもない。ところでお前まだ剣道やってるのか?」
イットク「いやもういくら練習しても弱いさかい中学卒業してから竹刀も触っておりまへんわ。」
おさむ「ふーん。まあうちらもそうだけどな。で、もしかして音楽とか興味無いか。」

そこへアッコが出来上がったハンバーガーを持って来た。
アッコ「はい、どおぞ。」
ケン「おいアッコ覚えてないか?こいつイットク。大阪からやってきた妙なやつ。」
アッコ「え、うーん、あ、そうかイットク君。」
アッコは剣道部で試合の時だけ臨時マネージャーをしていたのだ。弱小小規模部だったので常時はマネージャーがいなかったのである。
イットク「あ、この方、アッコ先輩でっか。お美しくなりはったさかいわからんかったわ。」
アッコ「まあ、相変わらず冗談ばっかり。」バシっと強烈な平手をイットクの背中へ。
イットク「おおいて。冗談やあらへん。ほめたのに。」「あ、音楽でっか。好きでっせ。時々歌謡曲聴く程度でっけど。」
ケン「おお、それは良かった。それならお前バンドやる気ないか。何か出来るだろう楽器。」
イットク「何かって...」
おさむ「おお、そうだ、お前ドラムやれ。剣道部だから何か叩くことくらい出来るだろう。」
イットク「えー、そない無茶な。」
ケン「まさか断るなんて・・・・・出来ないよなあ。」
マコがイットクの袖を引っ張る。
イットク「えっ、お前までやれちゅうのんか。うーん、しゃーない。やりまっさ。でもドラムなんて買えまへんで。」

シロー「ドラム・セットなら私が用意しようじゃないか。」

三人「えっ。」

シロー「私の昔仲間で使ってないやつ持ってるのがいたはずだ。借りて来てやるよ。ここに置いて練習すればいい。
あ、そうだ、ついでにベース・アンプと何か鍵盤も借りてきてあげるから誰か探すといい。」

ケン「すげー。いいんですかー。ありがとうございます。」
おさむ「さすがお師匠!。おいイットク、この方が俺らの先生、プロのギタリストのシローおじさんだ。挨拶せぇ。」
イットク「はい。イットク申します。以後よろしゅう。」
・・・・・
 「仕方ありまへんなあ。やりまっさ。そのかわり練習の時こいつもいつも付いてきまっせ。」
ケン「良いよ良いよ。よろしくマコちゃん。」おさむ「よろしくー」
マコ、にこっと笑う。凄い顔だけど一応笑うと子供らしくかわいい。
おさむ「やったな、ケン。これでバンドが出来るぞ。」
ケン「イットクって手があるんならおい、おさむ、ベースにはあいつはどうだ。ほら蛇屋。」
おさむ「あ、蛇屋か。うん、あいつならいけるかもしれない。帰りに寄ってみようか。」
ベーシストの当てもあるようである。
一同何かにとりつかれたように一つの方向へ。これもバンドの魔力であろうか。


「そんじゃおじさん、よろしく。今日もありがとうございました。」
「さいなら。」ペコリ。
夜もとっぷり暮れた頃、バーガー・シローを出た三人。いやあと小人一人、向かうは蛇屋の息子のところである。
イセザキ町5丁目の向こう、シローの店よりさらにさびれた方に5分ほど歩くと右手に古びた漢方薬店がある。一際目立つその店構え。一段下がったところに引き戸の入口があり、中を伺うとアルコール漬けの巨大蛇がどーん。それでこの界隈ではもっぱら蛇屋の愛称で親しまれている。さらにはクマの手、怪しげな虫などのアルコール漬けも並んで置かれているその風景たるや圧巻で普通の人間が入りそうな雰囲気ではとてもありません。

なもんで三人、裏に廻ってそちらから。
ビー。ビー。
「へ。お待ちを。」
ギーっ。
中から老婆が出て来た。
「おお、お前たちか。久しぶりじゃのう。」
ケン「こんばんわ。遅くすみません。ショータ君いますか?」
「ええよええよ。ショータか。今呼んでくるから、ちと待っておくれ。」
今のはショータの母、老婆に見えるが実はそれほど歳取って無いらしい。

どんどんどん。階段下りる音。

「あ、どうも先輩。久しぶりっす。あ、おさむ先輩も。あ、イットクも。」「今日はどうしたんすか。みんなで。」
おさむ「久しぶりー。ちょっと散歩出来ないか。すぐ終わるけど。話があるんだ。」ボカっ。
ショータ「はい。はい。母ちゃん、ちょっと話してくるから。すぐ帰るよ。」
母ヒデヨ「ああ。あまり遅くまでふらふらすんでねえよ。」

三人、いや+子供とショータ、それほど遅くないのにすっかり人通りが絶えた商店街を歩く。
ケン「元気かー。最近何してるんだお前。」ボカっ。
ショータ「いてえすよう。最近って言っても相変わらずで何もしてないすけど。」
ボカっ。
おさむ「そうかそうか。なら好都合。お前音楽好きか。好きだよなー。」ボカ。
ショータ「え、音楽すか。うーん、あんまり聴かないなあ。ひっ。え、聴かないけど好きです好きです。」
ケン「そうかそうか、好きか。じゃお前うちのバンド入れ。ベースだ。入るよなあ。」ボカ。
ショータ「え、ベース。何すかそれ。え、楽器。ギターのでかいの?。だって持ってないす....」
ボカ
おさむ「買うだろう。けっこう小遣い貰ってるって昔言ってたじゃないか。大丈夫簡単簡単。」ボカ
ケン「またお前と何か出来るなんて俺たち幸せだなあ。」
ショータ「買うんですか?ひっ、買います買います。でも全然弾けませんよ俺。え、先生がいるんですか。バーガー・シローのマスター?ほんとですか?練習もそこで。え、明日から。じゃすぐ買わなきゃいけないじゃないですか。明日楽器屋さんに連れて行ってくれる。学校から帰ったらすぐ。明日ですかー?ひっ、いいですいいです明日で。待ってますから。はい。」

ケン・おさむ・イットク「お前、相変わらず聞き分けが良いなあ。」
マコうなづく。

この会話中50回はぶたれた、はたかれキャラ、ショータがバンド入り。これで最小人数は揃ったぞ。

あ、ショータはイットク同様、ケンとおさむの中学時代の剣道部の後輩であります。

イットク「先輩、ところでどんな音楽やるんですか?」
ケン「ああ、そうかそうか。聴かせなきゃわかんないよなあ。」
おさむ「じゃあこれ持ってけ。」
シローに渡したのがロッドのアトランティック・クロッシング。なもんで渡していないステイタス・クオーのライブ、2枚組な
んでこれを一枚ずつ二人に渡した。
ケン「これしっかり聴いとけよ。」
ショータ「聴いとけよってどこのバンドなんだか、イットクのと違う曲入ってるし」
ボカ。

2005年09月07日

登場人物

毛糸屋ケン(植草カっちゃん)
ラーメン屋おさむ(大徳寺くん、酒井トシヤ 。)
ラーメン屋親父(花沢徳衛)
ラーメン屋姉ちゃん(フジマナミ)
バーガー・シロー改めライブハウス桃屋、マスター、シロー(大坂志郎)
質屋店主(田中小実昌)
ハマ楽器店員キシダ。実はサックス吹き。(岸田森)
アッコ(坪田直子)
ケンの家の婆さん(原セン)
ケンも家の爺さん(殿山タイジ)
ケンの兄、トミユキ(国広トミユキat不揃いのリンゴ)new
イットク(岸部いっとく)
イットクの妹マコ(緑マコの子供時代)
蛇屋ショータ(森川ショータ)
ショータの母(天本ひでよ)
無責任そうな親父、植木。トランペッター。
サンラ似の親父、ハナ。ドラム叩き。
ゴリラ親父、イカリヤ。ベース弾き。
桃屋店員フィル・コリンズ・アッテンボロー・ゴンザレス(フィル・リノット)
やくざジャック(石立てつお)
やくざの子分ヤマモト(山本ノリヒコ)
やくざ兄さんオサム(しょーけん)
やくざ兄さん子分アキラ(水谷ユタカ)
コンテスト本部長(大泉あきら)
メタルバンド、コアラのマーチ、ベーシストミズカミ(水上コージ)
メタルバンド、コアラのマーチ、ヴォーカル、モンキッキじゅん子(ミハラジュンコ)
メタルバンド、コアラのマーチ、リーダー、ギター、コアラ(コアラ)
横浜すから座入場券モギリのおじさん(森川信)
横浜すから座売店店員(ウツミミドリ)
横浜すから座キンキン(きんきん)
映画館客親父(エバタタカシ)
ジョニーギター・ワトソン(特別出演)と美女二人(ふぃおな・あぽー誰?とオギノメ・ソレア・k子)
ジョニーのマネージャー(ドン・コーネリアス)
ナリタ・ミキオ(ザキ署刑事)
石橋ショージ(ザキ署刑事)
ショータの同級生ペペ(ほずみぺぺ)
シュータの学校の教頭(ホズミたかのぶ)
ショータの学校の先生(柳生ひろし)
ショータの学校の校長(片岡チエゾウ)
ショータの学校の理事長(りゅうち衆)
タカギアスカ(オカザキユキ)
キャシャリン芸能社社長 センダミツオ
タクシー運転手 谷K
屈強な男A きらカン
屈強な男B マツザキまこと
パンク姉さん(オカダ川井演ずるスージー・すー)
コンテスト決勝PA担当(管ぬき太郎)
コンテスト決勝PA担当会社社長ヒデジ(大滝ヒデジ)
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楽器を買おう

002.jpg

2,3日経過だ。

「おーやってるかあ。働けよー。」
バーガーシロー店先にやって来たはラーメン屋おさむ。今日はまじでラーメン屋。白ユニフォームでオカモチ持って。お前は岡本信人か。
「おーおさむ。やってるぞ。」
「なかなかよくやってくれるよ。ケン君は。最も時々居眠りしとるが。ははは。」
「マスターだってパチンコばっかじゃあないですかー。」
「ははは。けっこうけっこう。働け働け。」
「あ、お前ラーメンのびちゃうんじゃないのかー。」
「あ、いけね。じゃあなあ。」
とお約束の場面の中、♪あーなたーがのぞむなら〜っと♪とロッカーとは思えん鼻歌でおさむ退場。

と働き働きひたすら働き。土日も無しで働き働き。2ヶ月も経ったころかのう。
場所はまたしてもバーガー・シロー、カウンター。
「どうだ。2回目の給料日だったろ今日。けっこう稼いだんじゃないか?」おさむ。
「はは、まあね。お前こそいくら貰ったんだ。」ケン。
「俺か。おれはなあそうだな5万くらいだな。」おさむ。
「俺もそんなもんだ。」
「おお。じゃあ、そろそろか?」
「そろそろだな。」
「どこで買うか?」
「そうだなあ、アンプまで買わなきゃ話になんないだろ。だからやっぱあそこじゃないのか?」
「あそこかあ。しょうがないなあ。あるかなあ良いやつ。」
「まあ、行ってみなきゃな。駄目元だし。」

と2人が向かった先はそうです質屋。大岡川に沿った道沿いにあります。入ってみると店主はどう見ても田中小実昌。
「いらっしゃーい。」
「えと。エレキ置いてますか?2本」
「お、エレキ欲しいのかい。そこにぶらさがってるよ。好きに見て。」
「はーい。」
ぶら下がってるのは5本あまり。
「えーと、モズライトかあ。5万。どこのメーカーだこれ。」ケン
「これはストラトだけど...トムソンだ。ち、せっかく1万なのに。」おさむ
「お、このテレキャスはグレコだ。2万。グレコで一番安いやつだけど...」ケン
「良いじゃんかそれで。お前レット・イット・ビーで感動したんだろ。」おさむ
「うん、これにしよかな。お前は?」
「俺はこれだな。」
「何だよ、フライングVかよ。いくらだー」
「3万だぞ。安いぞ。一応グヤトーンだぞ。なぜ安いんだろう。グヤだからか。まいっか。派手だし。ははは」
「おじさん、ソフトケース置いてますか?」
「うーん、無いなあ」
「無いのかあ。じゃあそれは楽器屋だな。」
「あ、アンプもある。」
「えーとエルクだ。あ、ファズが付いてる。これにしよ。」
「一台しか無いぞ。どっちが買う?。」おさむ
「9800円だから俺が買うよ。お前もう3万じゃん。ギターだけで」
「おー太っ腹。おじさーん。これとこれ下さい。」
「はいはい。」

ついにギターを手に入れたブギブラザース。裸のギターとアンプ抱えて次に向かうはハマ楽器。かなりかっこ悪いす。



「おい、考えてみたらこれ持って楽器屋行くのまずいんじゃないか。」おさむ
「うーん、そうだな。かっこわるいし。ははは」ケン
「どーしようか。」お
「お前のとこに置いてくか?」ケ
「うちはやばいよ。親父にまだ言ってないんだから。とりあえず火吹くぞあいつ。」お
「何だよ。どーすんだ。」ケ
「何とかするよ。一通り怒れば気が済むからあの人。ははは。そーゆうお前は言ってあるのか?」お
「へ、うちもまだだ。」ケ
「婆ちゃん、怖いぞー。」お
「ま、何とかなるでしょ。借りたとか何とかごまかせば...。あ、そーだ、んじゃこれマスターとこ置かせてもらおうか。」ケ
「おお、それが良い。あそこなら安全だ。」
とゆことで二人で楽器屋の前にバーガーシローへ向かいます。中に入るといつもどおりマスター一人。これで食っていけるのが不思議。
「どーも、マスター」ケ
「おー、お二人さん。どうした今日は。働いていくか?。」マ
「働いていくって暇そうじゃないすか。ははは。えーと今日はこれをちょっと置かせて貰えないかと思って。」ケ
「お、なんだい。ギターじゃないか。そうか、買ったなあ。良いよ。そこへ置いていきな。」マ
「はい。すみません、感謝します。」お
「すぐ戻って来ますからー。」ケ

二人で今度こそハマ楽器に。ハマ楽器はおさむの中華料理屋からさらにさびれた方に5分ほど歩いたところにあるレコード屋兼楽器屋さん。1階がレコード、2階が楽器屋になる。二人ともレコ部門の方はひやかしでしょっちゅう行ってるので常連である。2階にもこれはほんとにひやかしで行ってるのでお馴染みさん。そこにはニヒルな店員兄さんがいる。雰囲気凄いけど意外と世話好きで親切。
「こんちわー。」
「あー、おさむ君か。ケン君もか。」兄さん(岸田森)
「えーと、エレキのソフトケース下さい。」ケ
「えっ。ギター買ったの。」
ケン、おさむにこっそりウインク。
「いやー、使ってない友達から強奪したんで。ははは。」お
「二人ともかー。(疑いのなまこ)まあいいや。なんだい。機種は。」
「えと、テレキャスとフライングVです。」
「こりゃまた渋いのと渋くないのの組み合わせだ。よしちょっと待った。.....これを使えば。どうせ金無いんだろう。」
と奥から埃まみれのケース二組持って来てくれた。
「あー、汚ねえなああ。」二人
「でも無料(タダ)だぞ。Vにはきついかもしれないけどこっちはベース用だから何とか入るだろう。」
「えー、貰います貰います。いいんですか。」
「あー。キズ付で売れ残りで奥で腐ってるやつだから。そのかわり他のはうちで買いなさい。」
「はい。えーとじゃあ弦も下さい。」
「太さは?」
「あ、ブギ用で。」ケ
「ブギ用ってお前あるかい。うーん、そうだなそれなら太めの方がいいんじゃないか。ちょっと弾くの大変だけど...
安いのがいいな。これを使ってみたら。」
とヤマハのライト・ゲージを出す。1セット。千円。
「はい、じゃあこれ一つずつ。えーとあとピックも。」
「ピック使うのか。贅沢だなあ。ははは。指で弾きなさい。」
売る気があるんだか無いんだかわからない。
「使いますよー。やってみないとわからないし」お
「ここにあるから好きなのにしなさい。」
「どれがいいかなあ。」ケ
「リッチーモデルじゃないことだけは確かだな。」二人で形見て大笑い。それはべっこうホームベース型。
「やっぱこれがいいんじゃないか。俺はピックだけでも本物。」とケンはフェンダーの三角形型ヘヴィ。硬ーいやつ。
「あーそうか。じゃあ俺も本物で。」とギブソンの黒いやつ。やっぱヘヴィ。
「あと何がいるかなあ。あそうだチュウニングしなけりゃ。」ケ
「チューニングしたいんですけど。」
「ですけどって金無いんだろ。だったら音叉とかでやりなさい。」 「はーい」
「あ、俺これにする。」っておさむが見つけたのが6個吹き口が付いた笛みたいなの。
「なんだそれ。」「ブー。」「俺はこれでチューニングする。」
それぞれ吹くと各弦の音に鳴っている笛のようである。
「ははは」マ
「あ、これも買おう。」プラスチック製のくるくる廻るやつを見つけるケン。
「何だそれ。あ、弦巻くやつか。贅沢だなあ。」「へへ」
それはバンドマンの間で「有ると便利」と呼ばれる弦巻き器。本当にそうゆう名前らしいのだが真偽は不明。
「えーとあと俺これも」
ケンが取ってきたのはスライドバー。金属製のものである。




おさむ「けっこう金使っちゃったな。」
ケン「まあ、サービスしてくれたし、しょうがないな。」
とか何とか言いながらも上機嫌な二人。憧れの楽器屋で買い物をしたんだから無理もありません。
スキップをしながら、なんて訳はありませんがいかにもしそうな勢いで我が愛器の待つバーガー・シローへ向かいます。

てくてくてく。店の近くまで来ました。するとバーガーシローの中からギターの音が聴こえるじゃありませんか。しかもギャロッピング・スタイルの轟音。チェット・アトキンスやジョージ・ハリソンもかくやちゅうもの。
お「何だ何だ何だ」
ケ「おいおいうちらのギターの音かありゃ。」
急いで店内に駆け込む二人。
「ただいまマスター。あーっ。」
店の奥でマスターのシローがケンのテレキャスをアンプ、フルボリュームでぐわんぐわん弾いてる。
「マスター、マスター」
「あ、君たちか。なかなか良いギターだよ。こりゃ。」
ケ「こりゃじゃないですよ。マスター、ギター弾けるんですか?。」
「あ、うん、ちょっとね。」
お「ちょっとねどころか達人じゃないですか。」
「うーん。君たち山下ケイジローって知ってるかい。若い時彼のバックでちょっとね。キャンプとか廻ったりして
「勝手に触って悪かったけど、見てたら懐かしくてねえ。つい触っちゃったよ。」
ケ「マスター、シールド持ってたんですか?あーシールド買うの忘れたー。」
「ああ、一応昔のものは取ってあったんだよ。あ、これで良かったら使っていいよ。」
ケ「あ、すんません。じゃギターとかもあるんですか。見せて見せてー。」
「ああ、あるよ。ちょっと待ってな。」
とマスター2階へ行く。2階が住居になっているのだ。
お「しっかし、仰天したなあ。ありゃ本物だぞ。」
ケ「近くにこんな凄い人がいたとは。」
お「全然知らなかったよ。」

マスターがギターを抱えて降りてくる。
「これだよ。」
ケ「おー、それギブソンじゃないですか。しかもフルアコ。」
お「でっけえなあ。ピカピカじゃないすか。」
マスターの抱えてるのはレッドサンバーストのギブソンES350Tである。
「へへ。何となくほっとけなくてね。手入れだけはしてるんだよ。」
ケ「音聴かせて下さいよ。」
「ああ。ちょっと待てよ。」
びんびんびん。あっとゆうまにチューニング。アンプにシールド突っ込む。
びろりんびろりん。ぎゃおんずおーん。びろびろびろびろー。
ケ「すげー。良い音だなあ。」お「音だなあ。」
聴きほれる二人。

ケ「決めた。俺マスターにギター習うわ。」
「なんだい。勝手に決めて(笑)。そりゃ良いけど。君たち何をやりたいんだい、音楽は?」
お「ブギーです。ブルースの速いやつ。」
「最近のスタイルはわからないけど、出来る事なら教えて上げるよ。
「久しぶりに音聴いたら私もまた少しやりたくなっちゃったよ。ははは。」
ケ「おー、ラッキイ!!ありがとうございます師匠。」
「師匠てあんた。」
ケ「お前はどーすんだ。」
おさむ、何やら考えている。
「うん、俺は遠慮しとくわ。考えてる事あって...。」
「そうかー。何やらかそうってんだ?」
「うーん、まだ出来るかどうかわかんないからなあ。あ、さっき買ったスライドバー、貸してくんない?」
「うん、いいけど。」
ごそごそごそ。袋から出して手渡す。
ケ「師匠。お願いがあるんすけど」
「おいおい師匠だけはやめてくれないかね。ただのおじさんにしといてくれ。」
ケ「このアンプ、ここに置かせてくれませんか。で、バイトの後教えて下さい。良いよなおさむ?」
お「おー、それはいいや。家に持って帰ってバリバリやるわけにはいかないからなあ。」
「ああ、それでいいならいいよ。
ところで君たちチューニングくらいは出来るんだろう?」
とか何とか言いながらやる気満点のシローおじさん。
この間客は一人も無し。やってけるのかこの店は。



「ところで君たちチューニングくらいは出来るんだろう?」
ケン「えっ。出ると思いますけど...」
「思いますけどじゃ心細いな。何か買ってきたのかね。」
おさむ「えー、はい。これと、これを。」
一つは謎のチューニング笛、も一つは音叉をシローに見せる。
「ははは。これは便利なものが今はあるんだな。これなら良いけど。出来れば音叉で合わせた方が良いよ。」
ケ「これどうやって使うのですか?」
「ああ、これはね。こうやるんだ。」
シロー音叉を持って、ひざに軽くぶつける。コーンとゆう音がなる。
「これをな。ギターのここに当てるんだ。するとな。」
音叉をギターボディの下に当てると、音が共鳴してこーーーーおおおんと大きくなった。
お「あーでかくなった。すげー。」
「でな。5弦の12フレット。ここだな。ここに軽く薬指を当てる。まあどの指でもいいのだけど。当てる。そして弦を弾くんだ。」
ピーンと高い音が出る。普通に弦を弾いた時の音とは1オクターブ高いようだ。
「これがハーモニクスちゅうものだ。この音とさっき出した音叉の音が一緒になるようにすれば良い。近くなると音がうねうね言うからそのうねうねが消えれば合ったことになるぞ。」
うねうねが消えた。
「音が高くなりすぎたらいったんペグを多めに緩めて音を下げてそれから合わせれば後で音が狂いにくくなるぞ。」
「これで5弦がチューニング出来た。それでな。まあ簡単な方法だと6弦の5フレットをその5弦の開放弦の音に合わせる。これがAの音なんだが。」
ケ「ちょちょっと待って下さい。何か書くものありますか。かいとかないと忘れちゃうよ。」
「何だ。忘れちゃうのか。ははは。うーんじゃあこれ使いなさい。」
二人にレジ脇の伝票とボールペンを渡す。
「ああ、そこまで自分でここでやってみたらいい。今付いてる弦でもチューニングくらい出来るだろう。」
お「はい。おおお、マイ・ギター持っちゃったよ。あ、フライングVって座って弾きにくいなあ。」
ケ「へへへ。俺は大丈夫。」
ケンが先に音叉で音出してみる。
「あ、やっぱ俺のギター、板だから音が小さいですね。えーと、これに合わせるのか。」
不器用にペグをぎろぎろしては何回も音叉鳴らしぎろぎろしては音叉鳴らしようやく合わせられたようだ。
「むずかしいなあ。お前やってみろよ。」
お「ああ」
シロー「まあ、最初はなれないからね。慣れるとAの音自体覚えちゃうからすぐ出来るようになるよ。」
おさむも七転八倒、何と言ってもギターが安定しません。何とか合わせてみる。
お「ひー、これだけで汗かいちゃった。ははは」
ケ「これを6弦の5フレットと。」
びーんびーん、二人で合わせる。
「そうそう、次は5弦の5フレットの音を4弦の開放弦の音に、4弦の5フレットの音を3弦の開放弦の音に合わすんだ。簡単だろう。」
ケ「はい。」お「はい。」書きながら合わせるのでなかなか忙しい。
「3弦だけは4フレットを押さえて2弦の開放弦にあわせるんだ。あとは2弦の5フレットを1弦の開放弦にあわせると...ほらこれがレギュラーチューニングだ。」
二人必死になってべんべんべんと。
お「お前音うるさいぞ。」
ケ「お前だってうるさい。わからないじゃないか。」
結局背中を向き合って合わせる事に。アンプにはシローのギターしかつないで無いからやりにくいのなんの。
ケ「はい。出来ました。」お「お、俺も。」
「ちょっと貸してみな。」
シローにギターを渡す。微調整するシロー。
「うーん、ちょっと甘いがまあ最初はこんなものか。チューニングがしっかりしてないとどんなにかっこよく弾いても笑い物だからな。これだけは時間がかかってもばっちりやっといた方がいいよ。」
ケ・お「はいっ。」「あ、はっぴおかえしなし。」ベシ。お互いにぶつ。
「ははは。良い返事だ。あーところで音楽は何やるんだっけ。ハワイアンかい。」
ケ「あーーー、違いますよブギ。ロックンロール、ブルースです。」
「あ、ロカビリーかい。それなら任しときな。えーとまずコードだな。君達コードは何か知ってるかい。」
お「ええと。ローコードなら。AとCとEとGと、あとうーんとこれだF知ってます。あーエレキの方が押さえやすい。」
ケ「俺もそれぐらいなら知ってるぞ。こうだろ。」
べろんべろんと不器用に弾いてみる。「あ、ほんと弾きやすい。」
「ケンぼう、君はもっとフレットのそばを押さえる方がいいな。軽く押さえるだけできれいな音が出るよ。」
「はい。」
「そうか。それはそれでいいんだけど、ロックンロール弾く時はなコードはまずほらそのFの押さえ方から始めるんだ。」
「わ、この一番いやなコード。」
この時点でまだお客は一人も来ない。
やってけるのかこの店は。



「そうか。それはそれでいいんだけど、ロックンロール弾く時はなコードはまずほらそのFの押さえ方から始めるんだ。」
お「ひゃーやっぱし。こうやるんですか。」
おさむは指が太くて短い俵のようである。ケンは細くて長いので楽々。
「お、おさむ君は辛そうだな。簡単なやりかたもあるけど、バーにしないでこうやって親指と人差し指で握るようにして残った指でそうEの形で押さえるんだが。でもあれだ。ブギやるんだろ。ならちゃんと押さえないとな。」
お「やっぱ辛いです。何でバーにしなきゃいけないすか。」
「ああ、それは5弦と6弦でリフしなきゃならんだろ。その形のままバーを5フレットにもって行きなさい。そうそうそれでAのコードになる。でその形のまま4弦押さえてる小指を外して5弦の9フレットを押さえるんだ。」
お「わ、曲芸だな。」ケンは軽々。
「ま、言うとめんどくさいんだけど。普通の状態とそれをリズム良く交互にやってごらん。ほらこうゆう風に。」
シローが弾く。ズズジャジャずずじゃじゃズズジャジャずずじゃじゃ。
ケ「あ、ブギのリフだ。」
「そうそう、これがピアノでやると左手で弾くブギのリフ。これやるためにはやっぱりちゃんと押さえないと。」
お「う”−。練習します。    または奥の手で。」
ケ「何だよ、奥の手って?。」
お「秘密ひみつ。」
「でだ。次はこのコードだ。君たちB♭のコードは知ってるかい。」
ケ「えーと。Aの上だからFみたいに押さえるやつですか。うーん。こうかな。」
「そうそう。それそれ。その形を覚えといて。それのバーの部分を5フレットに持っていきなさい。そうするとDのコードになる。Aの5こ上だな。」
お「うーこれも辛い。」
「そしてさっきと同じように小指外して今度は4弦の9フレットだ。」「繰り返してごらん。」
ケ「はい。」
ズズジャジャずずじゃじゃズズジャジャずずじゃじゃ。
「おおケンはうまいな。その調子その調子。それをそのままバーの指を上げて7フレットにして同じようにやってみなさい。」
ケ「はい。こうですか。」
「そうそうそのコードがE。まあブギならその3つでコードは足りるかな。」
お「えー、この3つですか!」
「ああ、まあとりあえずだが。それが基本。しばらくはそれで練習だな。でもそれだけでもブルースの伴奏は立派に出来るよ。ちょっとやってみるか。僕に合わせて弾いてみなさい。」
3人で弾き始めようとしたその時
「あの〜」
お「あ、お客さんだ。」
シロー「おーい。アッコ。お客さん頼むよ。」
「はーい。」
初のお客さん登場。
そして初の女性キャラ登場。

2005年09月05日

第1回 はじまりはロッド

001.jpg

1979年2月地下鉄九段下駅。一人の少年が改札から出てくる。中背やせぎす顔は3人前、上から下まで近所のホテイヤで買った服装、靴は月星、ジャンバー、頭にはハンチング帽、唯一のお洒落らしい。CISCOと書いてある黄色のビニール製のレコード袋と大きなバッグを手に持っている。出たとたんきょろきょろ。どうやら初めてここに来たらしい。壁にある周辺地図を見つけるとなめ回すように注視。しばし考えた後右手の出口階段から外へ。長い坂道がある。凄い人ごみ。頭金髪パンタローンのお兄ちゃん、その彼女らしき派手なお姉ちゃんなんも混じった長い列、そして列。その中で一番目立たないその少年はこれに混じって行けば間違いなかろうとそろそろと後をついて行く。途中何回かビラ配りのお兄さんと遭遇、その全部を貰う。イーグルス来日、リンダ・ロンシタッド来日、ボブ・マーレー来日。2色刷りのそのチラシを大切そうにレコード袋に入れてお堀にかかっている橋を渡る。傍らにたこ焼きの屋台。お腹が空いていたが横目で見て名残惜しそうに通り過ぎる。昼間そのレコードを買うためにお金はもう帰りの電車賃しか残っていなかったのだ。あとあれに使う分と...。

門をくぐると建物が見えてきた。足は棒、かなり疲れていたけど元気一杯、わくわくして目がぎらぎらしてる。

 どこに並べばいいんだろう。きょろきょろして探す。席は2階席だけど...。うろうろして右手に駐車場がある道を進む。いつかあの駐車場を使ってここに来る日があるだろうかなどと考えながら。2階西。あったここだ。長い列の最後尾に並ぶ。周りはもうすっかり暗くなっている。まだかまだかと待っているとようやく開場のよう。凍り付いてた列がいきなりだーっと進み出す。どきどき心臓が。楽しみだってこともあったけど、バッグの中にでかいラジカセを念入りに隠してあるのだ。階段を上ってチケットを切ってもらい問題の手荷物チェックを。冷や汗かいたけど通り一遍中を覗かれただけで済んだ。えーとパンフレットはどこに売っているんだろう。あそこだ。わあわあ言っている。1500円。ひえー。半分泣きながら買う。人ごみでぐちゃぐちゃにされながらドアを開けて中に。ああ、これが武道館だ。

とりあえず席を見つけたかった。西の2階席一番前。えーと、どこだろう。うろうろしながらもやっと席に着く。タンタンタンとかチェックチェックとかサウンド・チェックの音だけでもうどきどきわくわく。足元のデカラジカセの準備を確かめてと。パンフとかゲットしたチラシを眺めてそわそわしてるうちに、場内暗転。いよいよだ。カセットのスイッチを入れてと。
暗闇の中でメンバーが出て来る。
大歓声の中でいきなりガンガンと強烈リフ。
右手からサッカーボールを蹴飛ばして登場は
ロッド・スチュワート。
曲はホット・レッグス。
彼にとって初めてのライブが始まった。


場内照明点灯。少年は凍り付いている。みんなやってくれた。あの曲もこの曲も。アンコールではセイリングも。あの曲あんまり好きでは無かったけど。それでも...。またアンコールしてくれないかなあとパラパラとした拍手が終わる頃名残惜しそうに尻を席から引っ剥がして会場ドアから出た。テープにしっかり録れてるだろうか。何か気になっちゃった。今度のライブでは録るのやめようかな。急に寒くなってきた。トイレに一直線。長蛇の列だ。駅からずっと行ってなかったから相当あせっております。ようやく順番が来てほっと一息。じょわーっと。ふと右を見ると。
「あ、ラーメン屋」
「お、毛糸屋じゃん。」
そこで連れションとなっていたのは近所のラーメン屋の息子だった。

九段下の下り坂。長い行列の中二人は歩く。ライブの興奮がまだ残ってるため口数は少ない。良かったよなあ。かっこ良かったよなあ。同じようなことを言っている。九段下の駅。どぶのような臭いがうっすらとする。東西線に乗って日本橋まで。そこで乗り換えて都営浅草線へ。京浜急行直通の特急で横浜まで行く。当然帰宅大ラッシュ。しかしともかくも落ち着いて来た二人。車内でようやく話始める。
「お前、ロック好きだったんだ。」
「へへへ。」
「ちっとも知らなかったな。中学の時は全然聴いてなかったんじゃないのか。」
「まあね。」
「何が好きなんだ。まあロッドは好きなんだろうけど。」
「まあ、いろいろ。で、お前そのレコード何?」
「あー、これー。へへ。ちょっとね。」
「何だよ、気になるな教えろよ。」
「うーん、これだよ。」
と言って袋から中身をちょっと出す。
「あ、何これ。ステータス・クオーじゃん。」
中身は英国のブギ・ロック・バンド、ステータス・クオーの77年のライブ盤2枚組。
「へへへ。」
「そんなの聴くのか?」
「いいじゃないかよ、聴いたって。」
「あ、怒った。怒るなよなあ。俺も好きなんだから。」
「えー、お前ブギ好きなの?そうなのか。」
「まあね。へへへ。よく買えたなあ。2枚組だろそれ。」
「いいだろ。実はカット盤。1480円。」
「いいなあ。貸してくれ。今。」
「何言ってんだ。駄目に決まってんだろ。」
「くそ。良いじゃんか。じゃあしょうがない。お前が聴いてからで良いよ。」
「なんか偉そうだなあ。しょうがない。数少ない同志だしあとで貸してやるか。じゃあお前も何か貸せ。」
「何だよ。」
「ブギが好きなら何かレコード持ってるだろ。とっておきのを貸せ。」
「なんかえらそうだなあ。しょうがないこの前買ったフォガットのライブを貸してやるか。」
「おお、フォガット!それ聴きたかったんだ。すぐ貸せ今貸せ早く貸せ。」
「なんだよ。交換だよ。」
などど馬鹿話してるうちに横浜に到着。普通電車に乗り換える。
「しかしお前ほんとにブギ好きなんだなあ。」
「へへ。まあな。」
日の出町に到着。橋を渡って二人でイセザキ町の方に向かって歩く。
「あー、バンドやりてぇなあ。」
「やりてえなあ。やりてえええなああ。」
オデオンビルの交差点を右に曲がりすぐのところで
「じゃあな。」
「あさって昼ごろ良かったら持って行くよ。レコード。暇だろお前。」
「忙しいよデートだよ。」
「ばーか。昼に行くぞ。」
「へーい。」
デートなどあろうはずの無いにきび面のラーメン屋、ここにあり。


陽は照っていても底冷えのする冬の日曜、毛糸屋の少年はラーメン屋を訪れた。横浜だとゆうのにここはイセザキ町の中心から外れているためまったく普通の中華料理店である。
「こんちわー。」
「お、ケンちゃん。ひさしぶり。」
「あら〜、ケンちゃんじゃな〜い。随分大きくなったのねぇ。」
「へへへ。オサム君いますか?」
「上で何やってんだかー」。
「おじゃましまーす。」
店内は広くは無い。カウンターと机2つ。椅子は緑色のビニール製パイプ椅子。調理場にはオサムの父親(花沢徳衛)と姉の(富士真奈美)がいてケンを迎えてくれた。

店の奥の階段を上がってすぐがオサムの部屋。寝転んでミュージックライフを読んでやがった。
「おいおい、せっかくレコード持って来たんだから出迎えろよなー。」
「お、来たか、出迎えられるような偉人さんかえ。まあそこらへんに座れよ。」
「おう。はいこれ。」
「おーサンキュさんきゅ。クオーね。くおー」
部屋の壁にはもう地の壁紙が見えないほどポスターが貼られている。ロッド・スチュワート、フェイセズ、ストーンズ、バッド・カンパニー、モット・ザ・フープル、襖にもZZトップ、ヤードバーズ、CCR、ジョン・フォガティ、ZZトップ。
「しっかしすげえなあ。貼りまくってるじゃん。お、モットだ。これよく手に入れたなあ。」
「へへ。T都無線に入り浸ってたもんで兄ちゃんと仲良くなっちゃって。貰っちゃった。」
「え、いいなあ。お前愛想良いもんな。得するよ。」

そこへ下から階段を上がってくる音が。
「おまちどうさまーー。」
ラーメンを持って姉が上がって来た。
「あー、お構いなしで。どうもすみません。」
「何言ってんのよう。うちに来たらこれ食べてってもらわなくっちゃ。嫌でも食べてねぇ。」
「はい。いただきます。」
「ところでお兄さん元気〜。最近見ないけど。彼女とか出来たんじゃな〜い。」
「いや、全然最近帰って来なくて。あの人、よっぽど大学が好きみたいで。泊り込んで研究ばかりしてます。俺と違って頭良いからねえ。」
「あらー。そうなのー。たまには食べに来てねえって言っといてねー。」
姉は独身らしくケンの兄のことをどうやら狙っているらしい。お約束の展開である。

「ラーメン置いたら早く下行ってくれよー。大切な話があるんだから。客が来るぞ。」
「なにが大切だか。そうやってすぐ姉ちゃんを邪魔にするんだから。」
プリプリしながら姉は降りていった。降りながらまだ何か言っている。

「ところでお前、どんなの持ってんだ。レコード。」
「おー、とりあえず食べてるあいだ、この前のロッド聴いてみるか。へへ、俺もテープに録っておいたんだ。」
ラーメンは昔と同じでかなりうまい。これは儲けた、これからも来ようとケンが心に決めてることに気付いてか気付かずか、オサムはラジカセのスイッチを入れた。

ざわざわとした中、ホットレッグスが流れてきた。


ライブの模様を想い出してボケーとしてるうちにテープが終わる。音質はうちのとあまり変わりないなとケンは思う。あれだ手拍子とか入っちゃってまともに聴けないのね。
「いやー思い出すなあ。」
「良かったよなあ。」
「ギター3人でガンガン来るのが良かった。」
「また見てえなあ。」
感慨にふける。
「バンドやりてえなあ。」
「俺も...。」
「お前、なんか楽器出来るか?」
とケン。
「うーん。生ギターなら少しは出来るけど。。。」
「俺もそんなとこだなあ。。。。」
「エレキ買おうかなあ。」
「お、お前がやるんなら俺も買うぞ。おい、バンドやろうぜ。」
「おーやろうやろう。」
「おい、生ギター出せよ。」
「ちょっと待って。」
ゴソゴソ。押入れからギター出すオサム。
「えーと、チューニングはと。」
びゅんびゅん。びゅんびゅん。びゅんびゅん。
「こんなものかな。」
「ホット・レッグス弾いてみろよ。」
「えー出来るかなあ。」
「だいたい3コードだろ。Eなら押さえられるだろ。」
「そりゃローコードなら知ってるけど。EとA押さえりゃいいかー。あ、明星の歌本があるぞ。」
「おへー。お前そんな本買ってるのかー。ははは」
「うるせー。だって洋楽の楽譜が載ってるじゃないか。」

ずんずんずんずん、ずんずんずんずん。

「へーいけるいける。その調子その調子。」
けっこうリズム感は良さそうなオサム。小さな音で遠慮がちに。それを続けてるうちに・・・。

フザノッキンオマドー、ガタビアカタトゥフォー

歌本のカタカナ見て小声で二人で歌い出してしまう。すべからく合っていない。

イズイットユーアゲン、カミランフォモア

だんだん大きく

ウェユキャラッミーツナイフユウォン
バットインザもーにんメイクシェユゴーン
アイトーキントゥユ

絶叫!!

ホットレーッグス!ウェリンミアウー!
ホットレーグス!ユキャンすクリーミンシャウ
ホットレーグス!アーユースティルインスクール。

「うるせーっ。おめえらいったい何騒いでんだ。コラーっ。」by花沢徳衛in階下ラーメン。

二人びっくりして急に小声で・・・

「アラブユほね。」


気まずさと恥ずかしさの中しばし沈黙の時。時々おさむがギターをびろーんとつまびき。
「なあ。....エレキ買わなきゃな。」
「うん。」
「お前、金有るか?。」
「なもんあるわけない。そうゆうお前は。」
「ははは。なもんあるわけない。」
「バイトだな。」
「バイトだ。」
「俺は店の出前手伝えばいくらかくれると思うけど...お前当てあるか?」
「うーん、考えたことなかったからなあ。」
「そうか。.........よしついて来い。」
「何だよ。」
と二人で慌てて階段を降りようとする。
「あ、レコード、レコード。フォガット、貸せよなあ。」
「ははは、やっぱり聴くのかあれ。」
「当たり前だろ。そのために来たんじゃないか。」
「わりいわりい。.......はいこれ。」
「おお。じゃ行こう。」
だんだんだん。
「騒いですみませんでした。」
「おう、もう帰るのかい?ゆっくりしてきな。」親父。
「そうよ。少しぐらい騒いだっていいじゃない。若いんだから。それをお父さんたら。」
「うるせー。客が一番だろが。」
「ははは。すみません。ラーメンご馳走様。ほんと美味しいす。ここのラーメン。」
「ラーメンならいつでも食いに来な。金出したらチャーシューメンにしてやっからよー。」
「ははは。おじゃましましたー。」

店を出る二人。
「俺の親父すぐカミナリ落とすっからなあ。」
「いいじゃんか。うちの婆ちゃんに比べりゃ優しいよ全然。」
「相変わらずこえええんだ。」
「うん。最近ますます迫力出てきてさ。だから頼むよ。(これからも)お前のとこ行くからさあ。」
「それはかまわんけど。」

「おおここここ。」
おさむの店のすぐ近く松竹の映画館の向かいのハンバーガー屋に二人で入る。当時出てきたマクドなんかと違って古くからやっている個人営業の店だ。
「こんちわー。    どーもマスター。」
「お、来来軒のオサム君じゃないか。ひさしぶりだなあ。   近くなんだからたまには食べに来なよ。」
「ははは。すんません。家にいるとラーメンばっか食わされちゃって。」
ハンバーガー店のマスター(大坂志郎)。顔は悪いが気は良さそうな人だ。二人は親しいようである。
「どうも。こんにちわ。」
「お、君は七丁目の毛糸屋の息子さんだね。えーと...」
「ケンです。」
「ああ、ケン君だったね。それで今日は何にする?」
「あ、おじさん、違うんです。今日はお願いが有って...」とおさむ。
「なんだい。やぶからぼうに。」
「えーと。こいつを使ってやってくれませんか?もちろんバイトですけど。」
「バイトかい? うーん、最近不景気だからなあ。.....。よし、いつから来れるかい?」
「えと、すぐ出来ます。平日の夕方からと、土日は全部出来ます。」
「よし、じゃあ頼むわ。さっそくだけどちょっと店番頼むよ。これ付けてさあ。」
とエプロンをケンに着せて行ってしまうマスター。
「あー、あのーおじさん。そうやったらいいんですかーーー!!」
「あー、ありゃパチンコだ。まいいか俺が教えてやる。  実は中学の頃手伝ってたんだ俺。」
てな訳でバイト決定。
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